ブルーアーカイブ~~キヴォトスに舞い降りる嵐≪ストーム≫~~ 作:ジョージ
あと、たくさんの感想大変励みになります。でも皆さんに一言。
『あんなの(アシッドガン)生徒に使えるかぁっ!?』。
ダメだよっ!?あんなの生徒に使えないよっ!この小説がR18かR18Gになっちゃうからっ!あと今大尉たちが行ってるの普通の銃器ショップだからッ!ブレイザーとかライサンダーとか置いてないからっ!そう言うのは『まだまだ』先ですっ!出てくるけどねっ!
あとアシッドガンとか使える相手限られてくるでしょうが。カイザーとかベアトリーチェとか地下生活者とか。
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キヴォトスにきて二日目を迎えた俺たちは、早速業務を開始した。連邦生徒会から送られてくる書類に記載された依頼をこなす、という物だがその多さはため息をつきたくなるほどだった。何とか重要度の高い物を選別したものの、七神との会話で、生徒たちを不用意に刺激しない、隠し持てるタイプの銃を持つべきとアドバイスを貰い、俺たちはシャーレのビルからほど近い、スミスガンショップを訪れていた。
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「えぇ構いませんよっ!どうぞ見ていってくださいっ!」
俺の、『銃を見せてくれ』という言葉に、店員のアンドロイド(?)タイプのキヴォトス人は気前よく言ってくれた。……まぁ、営業スマイルかもしれんがな。さて、何か良い銃は無いか?
周囲を見回してみるが、確かに色々あるな。拳銃から小銃、散弾銃、狙撃銃に、奥には機関銃らしきものまで見えるな。他にも、もっと奥には軍用のタクティカルギアらしきものも見える。とにかく、HGやSMGの類を見て回るか。
と、それらが飾られているガラスケースの方に歩みを進めると。
「あの~、お客様?」
「ん?」
横に回り込んだ店員アンドロイドが声をかけて来た。
「もし差し支えなければ、どんな銃をお探しかお尋ねしても?良ければご案内しますよ?」
「む。そうか」
提案され、少し悩んだ。俺たちは軍人だ。銃器の事に関しては素人とは違う。ある程度の知識はある。案内してもらう必要もない、と考える自分が居た。
しかしここはキヴォトス。俺たちの居た世界とは違う。この世界のライフルであるM16は奇跡的にPA-11とそっくりだったが、他もそうとは考えられない。となると、独自に銃火器がある可能性も否定できない。それに餅は餅屋、と言うしな。ここは、世話になるとしよう。
「実を言うとな、小型軽量で隠し持ちやすいタイプの銃を探していてな」
「隠し持ちやすいタイプ、ですか?あの~、失礼でなければご職業などを伺っても?」
彼の声色には、少なからず警戒の色が見て取れた。だが当然だな。隠し持てるタイプの銃は、犯罪に使われやすい。そして、この店で売られた銃が犯罪に使われた、とあっては店の評判に関わるだろう。警戒するにも無理はないな。ここは、素直に話すか。
「俺たちは昨日付けで連邦生徒会に雇われた者たちでな」
「ほう?」
「所属は連邦捜査部、シャーレと呼ばれる組織だ。と言っても、メンバーは俺たちだけの上、捜査部なんて名乗っているが実態は連邦生徒会の下部組織。いわゆる便利屋だ。そして、お上からのお達しでな。出来るだけ生徒を刺激しない銃を携帯してほしいと言われたのさ。だから探しに来た、という訳だ」
「な、成程。連邦生徒会の」
店員は少し戸惑っているようだ。流石に連邦生徒会の組織である、と言ったのは不味かったか?何しろ昨日出来たばかりだからな。うさん臭く思われたのかもしれん。
「もし疑うようなら、連邦生徒会に問い合わせて貰っても構わんぞ?昨日付けで作られた組織だし、知名度が皆無なのは疑いようが……」
「あぁいえいえっ!疑うだなんてめっそうもございませんっ!」
説明しようとしたのだが、突然遮られた。
「実を言いますと、今朝付けで連邦生徒会からSNSなどで情報発信がありまして。シャーレの先生として元軍属の男性4人が来られた、という事でしたが、まさかそんな方々がお客様としていらっしゃるとは思わず。驚いてしまいまして」
「あぁ、そういう事だったのか」
そう言う事なら話は早い。
「まぁ、そう言う状況では。もしよければ、銃を見繕っては貰えないか?先ほども言ったように、出来るだけ生徒を刺激しない小型で隠し持ちやすく、その上である程度の戦闘を想定した銃が4つ欲しいんだ」
「う~ん。そうですねぇ」
腕を組み、しばし考えこむ店員。
「ご希望に叶う物となると、フルオートかバースト射撃が可能なマシンピストルの、『グロック18C』や『ベレッタM93R』。あとはちょっと古いですが、『マウザーC96』をベースにした近代化改修モデルがありますね」
店員は俺たちをガラスケースの方へと案内しながら説明を続けた。
しかし、銃の多くは俺たちの世界でも見た事があるものばかりだ。M16とPA-11は名称こそ違ったが、これらの銃の名前や形は、俺たちの世界の物と同じだ。名前が違うだけの物もあれば、全く同じ銃もある訳か。
「ただ、マシンピストルは精々『SMGの代用品』止まりですねぇ。標準のマガジンじゃ装弾数は精々20発程度。ストックも無いですから連射時の反動制御も腕力だよりですし。持ち運び、って点ではSMGよりはいいですが、それ以外では劣りますよ」
「だろうな。そうなると、オススメは?」
「そうですねぇ。無難な所で言えば、あの『スコーピオン』でしょうか」
そう言って店員は移動し、ガラスケースにある銃を指し示す。
「『Vz61』、通称スコーピオン。SMGの中でも比較的扱いやすい部類です。弾は32ACP弾。威力はそこそこですが、反動も控えめで
「ふむ。良い銃だとは思うが、万が一撃ちあいとなると、相手はキヴォトスの生徒の可能性があるとなぁ。威力はある程度確保しておきたい」
「そうですかぁ。となると、HGになってしまいますがこちらの『FN ファイブセブン』など如何ですかね?標準での装弾数は20発。ロングマガジンを使えば30発まで増やす事も可能です。弾丸がほぼ専用弾薬になってしまうので弾代は少々お高くなってしまいますが、反動も少なく威力と扱いやすさ、弾の数をバランスよく持っていますよ?」
「成程。確かに魅力的ではあるが……」
HGか。撃ちあいを考慮するとSMGかPDWクラスの銃は欲しいがなぁ。しかし、無いものねだりをしても始まらない。ここはある程度妥協点を見つけないと。さて、携帯性と撃ちあうための性能。どっちを妥協するかだが……。
と、その時。
「ん?すみません、あそこに飾ってあるフレームみたいなのは何ですか?」
レンジャー4が何かに気づいた様子で店員に声をかけた。彼が指さすのは上。天井近くのラックに掛かっていた物だ。あれは?
「あぁあれですか。あれは『コンバージョンキット』って奴ですよ。簡単に言うなら、HGに被せる増加パーツですね」
「増加パーツ?」
「はい。拳銃をそのままか、或いは拳銃のスライド部分などを組み込んで使う物です。あれを被せる事でHGでもSMGのように使う事が出来るんですよ。外見はSMG、中身はHG、って事ですね。まぁフルオート機能が無い銃を組み込んだ場合は、精々がセミオートのSMGモドキ、って所ですからね。拳銃よりは精度とかはあがりますが、その分大きくなりますし、持ち運びには……。ん?」
ん?何やら店員が何かを思い出したように顎に手を当てている。
「どうした?」
それが気になってしまい、少し迷ったが声をかけた。
「っと、失礼しました。ちょっとお待ちいただいてもよろしいですか?お見せしたい物がありまして」
「ん?まぁ構わんが」
「ではっ、少々お待ちをっ!」
そう言うと店員は小走りでバックヤードの方に戻って行ってしまった。
「なんなんだ?」
「さぁ?」
俺の後ろで首をかしげるレンジャー3とレンジャー4。
「何か良い物があるんですかね?」
「だと良いが」
レンジャー2と俺がそんな話をしていると、何か、工具箱のような物を抱えた店員が戻って来た。
「お待たせしましたっ!こちらですっ!」
そう言って手にしていた、長方形の箱のような物を見せてくる店員。しかし……。
「これが銃なのか?」
俺は思わず箱を指さしながら呟いた。
「えぇもちろん。これを、こうすると」
そう言って、店員が箱から飛び出していたでっぱりを軽く引くと、なんと箱が展開して銃の、SMGのような形となった。
「ッ、こいつは?」
思わず息を飲みつつも、問いかける事を忘れない。
「こいつは『マグプルFDP-9』と言いまして。この会社は以前、『FMG-9』という折り畳み式の銃器を開発していたんですが、こいつは言わば、そのFMG-9の正式量産モデルみたいなものですね。どうぞ」
そう言ってFDP-9を俺に差し出す店員。
「あぁ、ありがとう」
俺は差し出されたそれを受け取り、試しに構えている。
「あぁ、弾は入っていませんからご安心を。こいつは先ほどご覧になっていた物、つまりHG用のコンバージョンキットみたいな物です。核となっているHGはグロック17。マガジンもグロックの標準の物やそれ以外が使えますから、装弾数は標準で17発。折りたたんだ状態から展開した際に触れたレバーがチャージングハンドルを兼ねています。左側面にはマニュアル式のセイフティやボルトリリースレバー、グリップにボタン式のマガジンリリースレバーも完備。更にピカティニーレールも装備していますから、光学サイトやフラッシュライトなどのオプションにも対応しています。上部には持ち手となるキャリングハンドルもあり、持ち運びも楽です。何より、折りたたんだ状態では、遠目にこれを銃と判断するのは難しいでしょう」
長々と説明をする店員の言葉を聞きつつ、軽く構えて見たり、チャージングハンドルの動作などを確かめてみる。ふむ、悪くない。ストックがあるから拳銃よりも構えやすいし、標準でオプションを付けられるレールが付いているのも良い。
「組み込んであるのがグロック17ですから、フルオートは内蔵しておりませんが、携行性に優れる上、HGそのままよりは扱いやすいはずです」
「成程。良い銃だ」
フルオート射撃が出来ないのは少々痛いが、携帯性やある程度の射撃性能は保障されている。……相反する要求をすべて満たす完璧な銃ではない。だが、ある程度は要望を叶えてくれる、求めていた銃ではある。
「お前たちも持ってみろ。感想を聞かせてくれ」
そう言ってFDP-9をレンジャー2に手渡す。
「ありがとうございます。……悪くは無いですね。元が拳銃ですから、そこまで重くありませんし、拳銃と違ってストックがあるので肩付けが可能ですし、携帯性に優れたセミオートのSMG、と割り切れば良さそうですね」
レンジャー2は感想を述べ、更にレンジャー3に手渡す。
「うぅん。ま悪くはねぇな。こいつの弾は?」
「9ミリパラベラムです。SMGやHGの弾丸として広く流通していますからね。値段は安い方ですし、それでいてある程度の威力や扱いやすさも保障されています。流石にライフル弾ほどの威力はありませんが、キヴォトスで発生する銃撃戦から身を守るくらいは出来るでしょう」
店員の説明を聞くレンジャー3。
「そうか。まぁ、PA-11、じゃない。M16とかと比べると弾数がちょっと心配だが、まぁ自衛用だからな。俺もこいつで良いと思いますぜ、大尉」
更にレンジャー3からレンジャー4へと渡るFDP-9。
「こいつのマガジンは?標準の17発マガジンしか使えないのか?」
「いえ。グロック用のロングマガジンなどを使う事は可能ですが、長すぎると折り畳み機構と干渉してしまうので携帯性が悪化してしまうんですよ」
「成程。……そうですね。威力や弾の数に多少不安が残りますが、ですがそれ以外では文句もありません。自分もこれで良いと思います」
どうやら3人ともFDP-9で問題ないようだな。となれば、決まりだな。俺はレンジャー4よりFDP-9を受け取り、それを店員に返す。
「そう言う訳だ。すまないがFDP-9の在庫確認を頼む。4丁だ。それとマガジンを頼む。そうだな。4人分だから、予備も含めて1人5本として20本。それと弾も欲しいな。ここだと9ミリパラベラムはひと箱何発だ?」
「当店ではそれぞれ、20発、50発、100発の箱売りですね。例えば200発必要だとしても、50発の箱を4つ買っていただくより100発の箱2つの方がお買い得です」
「ふむ。ならば試射用も含めて、とりあえず100発の箱3つと50発の箱を1つの350発を頼む」
「FDP-9が4丁にマガジン20本、弾が350発ですねっ!かしこまりましたっ!」
どこからか取り出したメモ帳にしっかりとメモを取る店員。
「あっ、それとFDP-9向けの装備がありますので、お持ちしますねっ!」
「ん?そんなのがあるのか?見せてくれ」
「はいっ!少々お待ちをっ!」
そう言って再び裏には知って行く店員。少しして戻って来た彼が持っていたのは、ハーネスタイプの装備と、ジャケット?、だった。
「こいつは脇の下や腰などにホルスターやマグポーチを装備出来るハーネスになりますっ!例えば、右腰か腰部背面にFDP-9のホルスターを装備し、左腰や脇の下辺りにマガジンポーチを装備する事が可能ですっ!更に更に、こちらのジャケットは最近開発されたばかりの新素材を作られた防弾ジャケットになっておりますっ!」
チャンス、とばかりにまくし立ててくる店員。しかし……。
「防弾ジャケット?それがか?」
見た目は普通のジャケットにしか見えないが?
「えぇそうですねっ!疑うのも無理はございませんっ!ですので、どうぞこちらにっ!」
俺からそのことを質問されると分かっていたのか、店員は戸惑う様子もなく俺たちを奥へと誘う。
「ふむ?」
その勢いに乗せられる形で俺たちは奥へと向かう。そこにあったのはシューティングレーンだった。更にレーンの一部には、上半身だけのマネキンが置かれていた。店員は、手にしていたジャケットをそのままマネキンに着せると、戻ってきてガンラックに掛けてあったHGを手に取った。店員はチャンバーチェックを行ってから、自らシューティングレンジに入った。
「実際に見てもらった方が速いでしょうから。ご覧ください。これからこのグロック17であのベストを撃ちます」
「そ、そうか」
突然のことに、少しばかり戸惑った。他の3人とアロナも展開が速い事に戸惑っているのか、無言で店員を見つめている。
「では、撃ちます」
そう言って店員はグロック17を構え、発砲した。銃声が数回にわたって響く。そしてその全てがマネキンに当たった。銃声の度にマネキンが僅かに揺れ動くため、命中しているのが分かる。
6発ほど銃弾を放った所で、店員は手を止め、マガジンを抜いてチャンバーチェックを行ってからグロック17を眼前のテーブルの上に置いた。そしてジャケットをマネキンを両方回収してきて、俺たちの前に置く。
「こいつは……」
「すごい。数発は撃たれたのに、マネキンに貫通銃創が無い」
撃たれた衝撃か、多少へこんでいるような部分はあるが、貫通した銃創が無い。俺とレンジャー2が、思わず声と感想を漏らす。
「こちらのジャケットの内部には、セラミック基複合材と炭素ケイ素を重ね合わせた最新式のボディーアーマーが縫い込まれています。ですので」
そう言って店員は、表面に無数の弾痕があるジャケットを振った。するとジャケットにめり込んでいた銃弾が落下し、カランカランと音を立てる。更に店員はジャケットを裏返す。
だが、裏地には弾丸が貫通した穴が無い。
「ほ、本当にこんなジャケットにボディーアーマー機能が?」
「えぇ。と言っても、流石に重機関銃や対物ライフルで使用されるような12.7ミリクラスの銃弾を防ぐ機能はありません。精々が9ミリから45口径と言った所でしょう。それくらいであれば貫通しません。まぁ、衝撃まで抑制できる訳ではありませんから、当たると滅茶苦茶痛いのですが。ですがこれなら、ボディーアーマーだとはだれも思いません。更にこれを着ればハーネスを隠せます。如何ですか?」
「……」
正直、疑いがぬぐい切れなかった。本当にこんなジャケットに防弾機能があるのか?いや、確かに目の前で実演された訳だが、どうにも信じ切れなかった。……とは言え、買ってからテストが出来ない訳でもない。シャーレのビルには射撃レーンもある。適当な物のジャケットを被せてから、試しに撃ってみても良い。っと、そうだ。
「失礼。少し時間をくれ。他の奴と話したい」
「はい?まぁ、構いませんが?」
小首をかしげる店員を後目に、俺は他の3人を手招きで呼び寄せる。
「どうかしましたか?」
「いや。アロナに少しあのボディーアーマーについて調べて貰おうと思ったのだが、シッテムの箱は七神曰くオーパーツらしいからな。あまり人の目に付けたくないんだ」
「あぁ、それで」
小首をかしげるレンジャー4の言葉に答えると、レンジャー3が同意するように頷く。
「そう言う訳だアロナ。あのボディーアーマーについて調べられるか?」
「はいっ!と言うか、私もちょっと怪しいと思ったので調べてみましたっ!」
「ッ、そうか、助かる。それで結果は?」
アロナの行動の素早さに感心しつつ、問いかける。
「はい。それが驚きなのですが、あのボディーアーマーの耐弾性は本物のようです。開発者のメーカーもタクティカルギアや防弾ベストの生産で実績のある企業でしたし、レビューに不審な点はありませんし、SNSでもその耐弾性を試して、それを証明している動画があります。まぁ、キヴォトスの生徒さんたちは生身で銃弾を弾きますから、それ以外の住人の方くらいしか購入先が無いようなので、かなりマイナーな商品のようですが」
「そうなのか」
アロナの調査能力に関してはまだ未知数な部分があるが、少なくとも否定的な意見は無いようだ。ならば、ここは一先ず買い、だな。
「よし。ならば一先ず購入と行こう」
俺の言葉に他の3人とアロナが頷く。
「すまない、待たせたな。他の奴らとも話し合ったが、ひとまずそのジャケットを人数分、とりあえず1着ずつ頼む」
「かしこまりましたっ!」
その後、俺たちはジャケットのサイズを見るために試着をしてから会計となった。銃が4丁にマガジンが20本。弾が350発にマグポーチとホルスター付きのハーネス4つ。更にジャケット型ボディーアーマーが4着。
「そうですね。合計で、これくらいになります」
電卓を叩いた店員がそれを俺たちに見せる。
「ッ!?たっっっけっ!?」
隣にいたレンジャー3が思わず目を見開いて仰天している。
「この値段だと、4人で割ったとしても1人当たりの金額は……」
レンジャー2も、あまりの金額にめまいでも覚えているのか、額に手を当てている。そしてレンジャー4に至っては白目をむいていた。お前なぁ。……まぁ良い。正直、俺も滅茶苦茶高いと思った。……だが。
「分かった。これで構わない。この決済アプリは使えるか?あと、分割で構わないか?」
「えぇ大丈夫ですよ」
そう言うと、店員はレジに商品などを読み込んでいく。
「よ、よろしいのですか?これですと、出だしからかなりの出費ですが?」
「構わんさ。確かに、分割とは言えかなりの出費だ。支払い終わるまでどれだけ掛かる事か」
レンジャー2の言葉に頷き返す。確かに高い物は高い。が……。
「だがな、装備をケチって死んだら目も当てられんだろう?俺たちは今後、銃撃戦がデフォルトのキヴォトスで先生をやって行くんだ。命に値段は付けられない、とよく言うしな。そんな、値段のつけられない物を守るためだ。どれだけ金が掛かろうが、高いなんて事は無いだろう?」
「……大尉の仰る通りですね」
「まぁ、命には代えられねぇか」
「で、ですね」
俺の言葉に、レンジャー2、3、4が順に同意する。その後、俺たちは会計を済ませると、大荷物を抱えシャーレのビルに戻った。ビルに戻った俺たちは、すぐさま射撃訓練場でFDP-9の感触を確かめ始めた。
無数の銃声が響く。うん。悪くない銃だ。
射撃練習に加えて、ホルスターからの取り出しと展開の練習や、実際にハーネスを装着して、どの位置にホルスターがあれば取り出しやすいかなども検証していく。
そして1時間ほど慣らしの訓練を繰り返した後の事だった。
「あっ、先生。ミレニアムサイエンススクールの早瀬ユウカさんからメッセージが届いていますよ?」
「ん?早瀬からか?内容は?」
床に散らばった空薬莢を片付けていると、近くのテーブルに置いていたシッテムの箱のアロナの声が聞こえて来た。
「はい。『ウィングダイバーユニットの開発者と話をしました。彼女は先生方と会う事を了承しています。本人曰く、『明日からなら、そちらが空いている時間で構わない』と言っているので、そちらのご希望の時間を教えてください』、との事でした」
「そうか。正直、俺としては早く話を聞きたいし。ならば明日の午前中に……」
「あっ。すみません先生。お話の途中ですが、トリニティの守月スズミさんからのメッセージが届いています」
「ん?」
話の途中で、トリニティの守月からも連絡が。タイミングが良いんだか悪いんだか。
「そうか。内容はどんな感じだ?」
「殆ど早瀬ユウカさんと同じですね。要約すると、『天羽フウリさんに事情を説明した所、会うのは何時でも良い、都合のいい日を教えてくれ、と先生に伝言を預かっています』、という感じですね」
「そうか」
成程。時間は何時でも良い、と。しかし、困ったなぁ。
「時間は何時でも良い、といってきているが、俺たちの方の時間がなぁ」
あの書類の山を思い出し、こっちの方が会うための時間を捻出できるか?という疑問が脳裏に浮かんだ。
「あの、それでしたら隊長だけ会いに行くのはどうでしょう?」
「ん?」
その時、レンジャー4が声を上げた。
「どうせ我々全員で会いに行く必要もありませんし、仕事を疎かにも出来ませんからね」
「それはそうだが。……良いのか?仕事を押し付けるような形になってしまうが」
「自分は構いません」
レンジャー4はそう言って軽く首を振った。
「それに相手が元EDFの兵士やその関係者と決まった訳ではありません。何らかの方法でEDFの情報や技術を知りえた第三者の可能性もあります。そんな相手と話をするのなら、やはり階級が一番高い隊長の方が良いかと思いまして」
「それも、そうだな」
確かにウィングダイバーの名前などから、元EDF兵士かその関係者か、と疑っていたが。レンジャー4の言葉を聞くと、その線も捨てきれない。何らかの理由でEDFの技術情報を入手したものが同じ名前で開発しただけ、という可能性も決して0ではない。それを考えると、確かに一番階級の高く、この小隊の指揮権がある俺が行った方が良い、というのも分からんでもない。
が、念のため聞いておかないとな。
「レンジャー2、レンジャー3、お前たちはそれで構わんか?」
「まぁ俺は別に。そもそも俺は頭脳労働とか駆け引きとか苦手だからなぁ。むしろ行っても邪魔にしかならない気がするぜ」
「自分も、ですね。いざという時、大尉の判断を仰ぐような場面になるくらいなら、大尉ご自身が行かれた方が速いでしょうし」
元々腹芸の類が壊滅的なレンジャー3は分かる。レンジャー2も、いざという時の判断の点から、俺で良いと言ってくれている。
部下がこう言っているのなら、構わないだろう。
「分かった。ならばお前たちはそれぞれ、自分が出来そうだと判断した仕事をしてもらう。俺は俺で、明日のうちにミレニアムの開発者と天羽フウリなるトリニティの生徒に接触する。良いな?」
「「「はっ!」」」
3人は即座に敬礼で答えた。よし。これで明日やるべき事は決まった。
その後は明日に向けての準備だった。俺は早瀬と守月に仲介してもらい、例の2人と会う時間を調整。他の3人は受ける仕事を精査したのち、連絡先に問い合わせ明日会えるかどうかの調整などを行っていく。
キヴォトスの二日目は、あっと言う間に過ぎ去った。そして夜、スミスガンショップからの帰り、コンビニで買っておいた弁当を食しながら、頭の片隅で明日会う2人について考えを巡らせていた。
お前たちは、誰だ。かつての仲間なのか。それとも……。
答えは出ない。明日会うその時まで。さて、鬼が出るか蛇が出るか。気を引き締めていく必要がありそうだ。
第8話 END
感想や評価、ありがとうございます。大変励みになりますので、今後ともよろしくお願いいたします。