まのさばしょーと   作:頭文字

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人生初ss挑戦です。
最初は大魔女様である月代ユキちゃんから行ってみたいと思います!!


ユキちゃんとメルル生きて欲しかったなぁ〜(切実な願い)
それではどーぞ!!!


月代ユキ編
大魔女様と清掃爺さん


 

 

七十代後半から八十代前半に見える老人はとある島に流れ着く

 

「ウ~ンここは……?」

 

目を覚ますとそこには可憐な少女の姿があった

 

「あら、あなたは?」

 

少女がそう老人に尋ねる

 

「ん?わしか…わしは佐藤豊。周りからは清掃爺さんと呼ばれておる。」

 

少女は手に持った古びた本を閉じ、不思議そうに首を傾げた。その瞳は冷徹な魔女の深淵を湛えつつも、どこか浮世離れした慈愛を感じさせる。

 

「佐藤、さん。清掃爺さん。面白い呼び名ですね」少女は薄く微笑み、浜辺のゴミを眺める佐藤を静かに見つめた。

 

「ここは忘れ去られた島。私以外の誰もいないはずの場所。漂流者にしては、随分と落ち着いているのですね。」

 

「やっぱりそう見えるじゃろ〜これでも実は心臓バクバクなんじゃ

世の中ハッタリでうまく見せていくんじゃよ。

そういう嬢ちゃんは?」

 

少女は穏やかな笑みを崩さず、静かに佐藤を見つめ返した。その瞳の奥には、彼のハッタリなど見透かしているかのような、深い知性が宿っている。

 

「そうですね。ハッタリは時に、真実よりも人を動かす力を持つことがあります。…私はユキ、月代ユキ。この島の、ただの住人ですよ。」

「ユキちゃんと言うのか、よろしくのぉ。」

 

くすりと、鈴を転がすような声で笑う。その幼い容姿からは想像もつかないほど、落ち着き払った声音だ。

 

「ええ、よろしくお願いします。……けれど、残念ながらお茶をお出しする準備もなくて。この島には、私と、打ち捨てられた残骸くらいしかありませんから。」

 

彼女は波打ち際に視線を流す。そこには、文明の残滓とも言うべき漂着物が点々と転がっていた。

 

 

*風が吹き抜け、ユキの白銀の髪をさらりと揺らす。潮騒の音に混じり、森の奥からは鳥のさえずりも聞こえない、奇妙な静寂が漂っていた。*

 

「そりゃそうじゃ、急にジジイが流れて来たら準備も無かろう。

それにユキちゃんや、嬢ちゃん一人でよくその年まで生きてこれたの。」

 

ユキは小さく首を傾げ、悪戯っぽい笑みを浮かべた。その仕草は少女そのものだが、纏う空気はどこか老成している。

 

「あら、見た目通りの子供だと思いましたか? ……ふふ、女性の年齢を詮索するのは野暮というものですよ、おじいさん。」

 

彼女は軽い足取りで砂浜を歩き、漂着した空のペットボトルを拾い上げる。

 

「生きるだけなら、そう難しいことではありません。ここは静かで、人間社会(むこう)のような煩わしさもありませんから。それに……私は少しばかり、頑丈にできているんです。」

 

だぁはっはっは!ずいぶん使い尽くされた言い方をするもんじゃな。

幾分大人びて見えたがもっと大人と見える。

わしはあの煩わしさも慣れておる、そこに関して言えば子供っぽいんじゃな。」

 

ユキは目を細め、佐藤の豪快な笑い声を心地よさそうに聞き届ける。その口元には、教育者が教え子の冗談をたしなめるような、慈愛に満ちた笑みが浮かんだ。

 

「まだ子供、ですか。ふふ、あなたのように経験を積んだ方にそう言われると、否定する言葉が見つかりませんね。確かに、私は世界の美しさと醜さを知っているつもりでも、人の心の機微というものには、まだ疎いのかもしれません。」

 

 

ユキは拾い上げたボトルをじっと見つめ、それから水平線の彼方へと目を向ける。そこには、彼女が滅ぼすべきか守るべきか、いまだに答えを出せずにいる人類の世界があった。

 

「なんじゃ、やけに壮大じゃのぉ

生きていろんな奴に接して行けば、わかるんじゃないかのぉ。

悩んでる若者は変な価値観に囚われて、心じゃわかっていても動けなかったりするんじゃよ。」

 

図星を突かれたかのように、ユキの睫毛がわずかに震える。彼女は手の中のゴミを静かに砂の上へ置いた。

 

「若者、ですか。私をそう分類するのですね。……確かに、私は囚われているのかもしれません。かつての仲間たちが抱いた絶望と、今を生きる無垢な命との間で。」

ユキは穏やかな口調を崩さないまま、どこか遠くを射抜くような眼差しで佐藤を見つめる。

 

「あなたは、自分が守るべき場所が自らの手で汚されていくのを見ても、なおその場所を愛せると言うのですか?」

 

「わしは清掃屋じゃ汚くしても綺麗にする義務がある。まあ、文句は言うじゃろうが。」

 

ユキは目を丸くし、それからふっと肩の力を抜いた。彼の返答は、彼女がこれまで考えたこともない視点からのものだった。

 

「清掃屋、ですか。……なるほど。汚れたら、綺麗にする。実に単純で、そして……とても難しいことですね。」

 

彼女は小さく呟き、佐藤の顔をじっと見つめる。

 

「文句を言いながらでも、務めを果たす。それが、あなたの言う「煩わしさ」との付き合い方なのですね。少し、羨ましいかもしれません。」

 

「なんじゃ、すごくムズかしい顔して。

人の煩わしさと言うのは消せないんじゃよ、頑丈なヨゴレみたいじゃな、だからわしは文句を言いながら好きになるようにしたのぉ

おぬしはどうしたいんじゃ?」

 

ユキは不意を突かれたように瞬きをし、それから困ったような、それでいて少しだけ晴れやかな表情を見せた。

 

「どうしたいか……。難しい問いですね。私はただ、この世界が本来あるべき姿に戻ればいいと考えていました。けれど、あなたが汚れを愛そうとするように、私もこの「煩わしい」繋がりを、断ち切るのが怖くなったのかもしれません。」

 

 

*寄せては返す波が、ユキの足先を濡らす。彼女は静かに佐藤の隣に立ち、彼と同じように広い海を見つめた。その小さな背中は、先ほどよりもどこか柔らかく、年相応の少女のように見えた。*

 

「わしから言えるのは「好きな煩わしい」のと付き合って行けばいいんじゃないのか?

その他は全部一旦無視、だんだん好きを広げて行けばいいんじゃよ。」

 

ユキは驚いたように目を見開き、それから堪えきれないといった様子で、くすくすと喉を鳴らして笑った。

 

「好きな煩わしさ、ですか。ふふ、あなたという人は……。本当に、私の凝り固まった考えを、いとも容易く解きほぐしてしまいますね。」

 

彼女は視線を海から佐藤へと移し、その瞳に温かな光を宿す。

 

「 確かに、今の私には捨てがたい「好き」がいくつかあります。まずは、その小さな宝物たちを大切にすることから始めても、遅くはないのかもしれませんね。」

 

 

*ユキの表情から険が消え、どこか幼い無邪気さが顔を出す。遠くから吹く風が、彼女の纏う魔女の威厳を一時だけ剥ぎ取り、ただの少女としての等身大の時間を運んできた。*

 

「そうじゃそうじゃ、それからで良いんじゃよ!

大層でめんどうくさいお題目よりまずは身の回りじゃ。」

 

ユキは穏やかな笑みを浮かべ、まるで生徒の話を静かに聞く教師のように、佐藤の言葉に耳を傾けている。

 

「身の回り、ですね。……そうかもしれません。私は少し、遠くばかりを見すぎていたようです。」

 

彼女は小さく頷き、足元の砂を指でそっと撫でた。

 

「 ありがとう、おじいさん。あなたの言葉で、少しだけ霧が晴れたような気がします。」

 

 

*風向きが変わり、森の奥から微かに花の香りが漂ってくる。それは、この隔絶された島にも確かな生命が息づいていることを告げていた。*

 

「そりゃよかったわい。」

 

ユキは海風に髪をなびかせながら、ふと思い出したように手を打った。

 

「そういえば、いつまでもこんな吹きっさらしの浜辺で立ち話というのも気の毒ですね。もしよろしければ、私の家へいらっしゃいませんか? 粗茶ですが、喉を潤すくらいはできますよ。」

 

 

*ユキは森の奥へと続く獣道を指し示す。そこは鬱蒼とした木々に覆われているが、不思議と恐ろしさはなく、どこか神秘的な雰囲気を漂わせていた。*

 

「うげぇ〜ジジイにはちとキツい事を言うの、ユキちゃんは」

 

ユキはわざとらしく小首をかしげ、いたずらっ子のような眼差しを佐藤に向けた。

「あら、お元気そうな声を出す割に、足腰は自信がないのですか? 困りましたね。あそこまで行かなければ、私のとっておきのお茶は飲めませんよ。」

 

彼女は軽やかな足取りで数歩先へ進むと、立ち止まって振り返った。

 

「大丈夫、ゆっくりで構いません。清掃爺さんのペースに合わせて、私が案内して差し上げますから。」

 

「すまんの」

ユキは小さく笑みを浮かべ、まるで子供をあやすように首を横に振った。

 

「謝る必要はありませんよ。さあ、こちらへ。」

 

彼女は手を差し伸べるでもなく、ただ静かに佐藤が歩き出すのを待っている。その立ち姿には、急かすでもなく見捨てるでもない、不思議な包容力があった。

 

「森の中は、少しだけ涼しいですから。歩けばすぐに着きます。」

 

「ホントじゃ、近いの」

 

佐藤の言葉通り、森の中の小道はすぐに開け、そこに大規模で、しかし不思議な魅力を持つ屋敷が現れた。古い石と苔むした木材で組まれ、屋根には色とりどりの野草が自生している。

 

家の扉を開けながら、ユキは振り返って微笑んだ。

 

「ええ、そうでしょう? この島は、見た目よりずっと小さいですから。さあ、どうぞ。散らかっていますが、気にしないでくださいね。」

 

「なら清掃から始めるとするかの。」

 

 

*家の中に一歩足を踏み入れると、そこは異質な空間だった。壁一面を埋め尽くす古びた書物の塔、天井から吊るされた得体の知れない乾燥した植物、そして棚に並ぶ怪しく発光する液体の入った小瓶たち。埃っぽくはあるが、それは汚れというより、長い年月が降り積もった魔女の歴史そのもののようにも見えた。*

 

ユキは口元に手を当て、楽しそうにクスクスと笑った。

 

「あらあら、本当に職業病なんですね。でも、今日はお客様としてお招きしたのですから、まずは座ってくださいな。」

 

彼女は近くの椅子の上に積み上げられていた本の山を、手慣れた様子でひょいと持ち上げ、スペースを作る。

 

「それに……うっかり変なものに触れると、掃除をするつもりが、逆にあなたが何かの『餌』として掃除されてしまうかもしれませんよ?」

 

「怖い事を言うのぉ〜そんなのまるで魔女の家みたいじゃ。」

 

ユキは手を止め、ゆっくりと振り返った。その顔には、先ほどまでの無邪気な笑顔とは違う、どこか妖艶で底知れない笑みが浮かんでいる。

 

あら、鋭いですね……もしここが本当に魔女の家で、私があなたを鍋で煮込んでしまおうと企む悪い魔女だとしたら、どうしますか? 」

 

彼女は冗談めかして肩をすくめると、手近なポットを持ち上げる。

 

 

*部屋の隅にあるガラス瓶の中で、ホルマリン漬けのような何かが蠢いた気がした。だが、瞬きをするとそれはただの根菜のピクルスのようにも見える。部屋全体が呼吸をしているような、奇妙な生温かさが漂っていた。*

 

カチャリとカップをソーサーに置く音が響く。

 

「ふふ、冗談ですよ。さあ、どうぞ。島で採れたハーブのお茶です。毒入りではありませんから、安心してくださいな。」

 

「し、知っとるわい。年上をからかおうなんて変にできた子じゃ。」

 

ユキはティーカップを佐藤の前に差し出し、自分も向かいの椅子に腰を下ろした。湯気と共に、心まで解きほぐすような甘く爽やかな香りが漂う。

 

「あら、年上を敬えというお叱りでしょうか? でも、あなたがあまりに自然体なものですから、ついつい私も調子が狂ってしまって。」

 

 

*窓から差し込む午後の光が、部屋を舞うわずかな埃を黄金色に照らす。その静かな光景の中で、ユキの瞳はどこか懐かしむような色を帯びていた。*

 

「私も、こうして誰かと向かい合って毒にも薬にもならない話をすることなんて、もう何年も……いえ、もっと長い間忘れていた気がします。清掃爺さん。あなたのその「煩わしさ」を肯定する力、少しだけ分けてもらいたくなりますね。」

 

「これはわしが長年生きて得た答えじゃ、ユキちゃんに当てはまるかわからんよ。」

 

ユキは温かいカップを両手で包み込み、昇り立つ湯気越しに佐藤を見つめた。その眼差しは、知識を詰め込んだ書物よりも、目の前の老人の深い皺に刻まれた経験を読み解こうとしているかのようだ。

 

「そうですね。答えは他人に与えられるものではなく、自分の中に芽生えるもの。……ふふ、やはりあなたの方が、私よりもずっと「大人」らしい。私は少しばかり、答えを急ぎすぎていたのかもしれません。」

 

 

*外では風が木々を揺らし、家を包む緑がざわめく。家の中の静寂は、以前のような孤独なものではなく、誰かの体温を感じる穏やかな共有物へと変わっていた。*

 

「ゆっくりと、探してみることにします。この島で、私がこれから何を「掃除」し、何を「残して」いくべきなのか。……まずは、この美味しいお茶を飲み干してから、ですね。」

 

「最初の内は難しくて投げ出す事もあるんじゃよ。めげずに頑張るんじゃぞ!ユキちゃん!

これは先達からの遺言じゃ!

……………………………最期にかなり楽しく、良く導けた気がするのぉ〜」

 

*そう言い、静かに清掃爺さんは目を瞑った*

 

 

*部屋の中を流れていた穏やかな時間が、ふつりと途切れたように止まる。カップから立ち昇る湯気だけが、変わらず揺らめいていた。佐藤の体から力が抜け、まるで古い大木がその役目を終えて大地に還るかのような、深い静寂が彼を包み込んだ。*

 

ユキはカップを口に運ぼうとした手を止め、怪訝そうに眉をひそめた。

 

「……おじいさん? 」

 

返事はない。彼女はそっとテーブルにカップを戻し、身を乗り出して佐藤の顔を覗き込む。そこには、苦痛の色など微塵もない、ただただ満足げな寝顔のような表情があった。

 

 

*彼女はしばらくの間、動かなくなった老人の顔を見つめていたが、やがてその双眸を伏せ、小さく、けれど心からの敬意を込めて微笑んだ。*

 

「……まあ。本当に、「最期」だったのですね。」

 

 

*ユキは椅子から立ち上がり、佐藤のそばへと歩み寄る。彼女の手が、まだ微かに温もりの残る彼の手の上にそっと重ねられた。*

 

「挨拶もなく、勝手に来て、勝手に私を説教して……そして、勝手に満足して逝ってしまうなんて。……ふふ、本当に、最初から最後まで「お調子者」で、素敵な大人でしたよ。」

 

 

*窓から吹き込んだ風が、テーブルの上の本のページをパラパラとめくる。それはまるで、彼が残した言葉をユキの心に刻み込む音のようだった。孤独だった魔女の家には今、確かな「温かい記憶」が一つ、残されていた。*

 

「ありがとう、清掃爺さん。あなたの教え通り、まずは身の回りの……この散らかった部屋の片付けから、私の「好き」を始めてみることにしますね。ゆっくり、おやすみなさい。」

 

もうひとつ吹き込んだ風と共に「頑張れよ~」とユキに声が聞こえた

 

ふわりと頬を撫でたその風に、ユキは目を見開く。その声はあまりに鮮明で、まるで彼がまだそこでニカッと笑っているかのようだった。彼女は窓の外、広がる青空を見上げ、困ったように、けれど愛おしそうに目を細める。

 

「…………ふふ、本当に。最後まで、手のかかる「子供」を放っておけないお人好しなんですね。」

 

 

*風は彼女の銀髪を優しく梳き、そのまま窓から空へと駆け上がっていく。部屋に残されたのは、冷め始めた二つのティーカップと、主を失った静寂。だがその静けさは、以前のような凍てついた孤独ではなく、どこか温かく、日向のような匂いがした。*

 

ユキは立ち上がり、エプロンの紐をキュッと結び直す。その瞳には、かつてのような虚無ではなく、小さな、けれど確かな意志の光が宿っていた。

 

「聞こえましたよ、清掃爺さん。……ええ、まずはここから。私の「好き」な場所にするために、大掃除を始めるとしましょうか。」

 

*魔女は袖をまくり、散らかった部屋を見渡す。その背中は、ほんの少しだけ軽やかに見えた。こうして、名もなき島での、奇妙で短い出会いは幕を閉じた。しかし、老人が残した「煩わしさ」という名の種は、彼女の心の中で、これからゆっくりと芽吹いていくことだろう。*

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

       数年後

 

 

 

色とりどりの野花が揺れる丘に、ポツンと佇む墓標。メルルは首を傾げ、不思議そうにその小さな盛り土を見つめた。

「大魔女様、これ、どうしたのですか? 今までは、魔女様方のお墓などはここになかったはずですけれど……。中に、何か大切なものでも埋めたのですか?」

 

ユキは手にしたジョウロから、墓を囲む花々へ静かに水を注いでいる。その表情は、慈雨を待つ大地のように穏やかだ。

「ええ、そうですよ、メルル。そこにはねですね、とても「煩わしくて」、それでいて最高に「素敵な」魔法使いが眠っているんです。」

 

 

*ジョウロから零れる水滴が日光を反射し、宝石のようにキラキラと輝く。メルルはユキの言葉の意味を図りかねていたが、主が浮かべたこれまでにないほど優しい微笑みを見て、それ以上は何も尋ねなかった。*

 

「私に、この世界の汚れとの付き合い方を教えてくれた……。とっても、お節介な大人ですよ。ふふ、メルルにも一度、会わせてあげたかったですね。」

 

メルルはユキの言葉に、ますます興味をそそられたように目を輝かせた。彼女の知る大魔女様が「お節介」と呼び、楽しそうに語る人物など、想像もつかなかったからだ。

「魔法使い……? 魔女じゃなくて? そんな人がいたんですね! どんな魔法を使ったんですか? 空を飛んだり、嵐を呼んだり?」

 

 

ユキは水の入ったジョウロをそっと地面に置くと、メルルの隣に腰を下ろし、墓標に刻まれた名もない印を優しく撫でた。

 

「もっと、ずっとすごい魔法ですよ。言葉だけで、凝り固まった心の汚れを綺麗に洗い流してしまうんですから。まるで、嵐の後の晴れ間のようにね。」

 

彼女は遠い目をして、青い空を見上げた。

 

*風が丘を吹き抜け、二人の髪を揺らす。それは、どこか懐かしい、あの日の潮の香りを運んでいた。墓の周りでは、名も知らぬ花々が風にそよぎ、まるで老人の豪快な笑い声に応えるかのように、楽しげに揺れていた。ユキの心に灯った小さな希望の火は、まだ消えてはいない。彼女の長い戦いの旅は、まだ始まったばかりなのだから。*

 

***- おしまい -***




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