シェリーの助手君   作:メリーさんのアモル

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第3話「五里霧中」

 シェリーが行方不明になった日、シェリーの両親は捜索願を出した。あなたの知る限り最大限迅速に出していたように思う。

 対して、警察の動きは驚くほどに鈍かった。

 警察は半ばシェリーの失踪理由を家出と決めつけまともに取り合わなかった、とそう見えた。

「シェリーが家出なんてするはずがないよ!」

 なんていうあなたの訴えが通用するはずもない。

 やはり外の世界で頼りになるのは自分だけなんだ、とあなたは思った。そして、信じられるのはシェリーだけなんだ、とあなたは思った。

 だから、あなたはすぐに取り掛かった。もう学業なんてどうでも良かった。

 シェリーのためにあなたはあるのだから、それは当然のことだった。

 施設にいた頃、あなたはシェリーとはもう会えない事を覚悟していた。

 外に出た時、あなたはシェリーと会う希望を抱いた。

 シェリーと再会した時、あなたはもうにどとシェリーと離れたくないと思った。

 なのに、あなたはシェリーを失った。

「どこに行ってしまったんだ、シェリー」

 シェリーの両親にも聞き込みをしたが、まるでシェリーは消えてしまったかのようだった。

 前日の夜、シェリーは両親に就寝を告げて自分の部屋に入っていったのが最後に見た姿だと言う。

 その時刻はちょうど、シェリーとチャットしていた頃と一致する。

 つまり、シェリーはあのチャットの後、本当に就寝して、そのまま行方不明になったことになる。

 窓にも人の立ち入った形跡はなく、玄関の戸締りもされていた。もし、シェリーが自分の意思で外に出たのでないのなら、誘拐犯は、どうやってシェリーの家に入り込み、シェリーを拐ったと言うのだろうか。

「シェリー、本当に家を出てしまったのか?」

 ふと不安になる。

 思えば、幼馴染、と告げた時、一緒の高校に行こうと誘った時、シェリーの返事には一瞬だけ、間があった気がする。

 あれはもしかして、何かを取り繕うための間ではなかったか、あなたはそんな不安に襲われる。

 だとしたら、シェリーは高校に上がったら家を出てどこかに飛び出していくつもりで、ずっと生活していたのだろうか。

 誰からも逃げて、自分からも逃げるつもりで。

 自分は、シェリーにとって逃避したい対象でしかなかったのだろうか。

 考え出すと、ボロボロと涙が出てきて止まらなかった。

 そんなはずはない、シェリーはきっと何かの事件に巻き込まれたんだ、と思い心配する気持ちと、シェリーに捨てられたかもしれない、という可能性が頭の中でぐるぐると周る。

 前者なら、シェリーは安全な状態とは言い難い。早く助けねばならない。自分を捨てたわけではない事は嬉しいが、拐われている現状は悲しい。

 後者なら、シェリーは安全な場所にいるはずだ。誰の助けも必要としていないわけだ。安全なのは嬉しいが、捨てられた現状は悲しい。

 どちらも共に嬉しい一面と嬉しくない一面があった。

 あなたは——。

 

→1.【☠️】後者だと信じていつか来る連絡を待つ

→2.前者だと考えて探し続ける

 

 1なら次のページへ。2ならさらに次のページへ。

 

[次ページ]

 

1.【☠️】後者だと信じていつか来る連絡を待つ

 

 あなたは後者だと信じることにした。

(きっとシェリーにも事情があったんだよね)

 だとしたら、こちらから探すのはきっとシェリーにとっては嫌なことだろう。

(でも、どうしてボクを連れていってくれなかったんだろう……)

 それでも、溢れ出る涙だけは、止めようがなかった。

 

 三年後の夏が来た。

(シェリー、ボク大学に進学しているよ。君はどうしてる?)

 あなたは高校を卒業して大学に進学していた。シェリーに再会した時に相応しい身分にあった方が良いだろうと言う考えからだった。

 

 四年後の夏が来た。

(シェリー、ボク就職したよ。君もどこかで働いているのかな?)

 あなたは大学を卒業して就職していた。ごく普通のサラリーマン。でも、裏でちょっとした趣味もしていた。

 

 五年後の夏が来た。

「あの、先生ですよね? この本にサインをお願いします」

「あぁ、構わないよ」

 あなたはミステリ作家としてデビューしていた。

 ミステリ作家になれば、きっとシェリーは自分を見つけてくれると思ったのだ。

(名義は本名じゃないけど、シェリーならきっと気付いてくれるよね)

 きっと今も、ミステリ小説だけは、変わらずに愛好していると思うから。

(体は一緒にいられなくても、せめてこの心だけは、君と共にいたいよ、シェリー)

 

 夏が来た。

 夏が来た。

 夏が来た。

 

 もう何度目か分からない夏が来た。

 今となっては、再会して遊んだあの一夏こそが幻だったかのよう。

(シェリー、ボクもう、おじいさんになっちゃったよ。シェリーは長生きできたのかな?)

「シェリー……」

 ベッドでただ彼女の名前を呼ぶ。

「またあのおじいちゃん、誰かの名前を呼んでる」

「奥さんかしら?」

「いいえ、生涯独身と聞いたわよ」

「じゃあ、ペットか何か?」

 そんな会話が耳をよぎるけれど、彼には意味のないことだ。

 シェリー以外の存在に意味なんてないのだから。

(あぁ、シェリー。本当に、なんで、ボクを置いていってしまったんだろう……)

 彼女さえ、シェリーさえいてくれれば他に何も要らなかったのに。

 きっと、シェリーと一緒ならどこでだって幸せに生きられるのに。

 彼女は、あなたを置いていってしまった。

 この可能性軸においては、シェリーはとうの昔にあなたではない大切な友達と一緒に岩に生き埋めにされて亡くなっているのだが、あなたはまだそんな事は知らない。この先も知る事はない。

 あの島の牢屋敷で起きた出来事は、あなたには遠すぎた。

「おや、助手君。こんなところにいたんですね」

 ふと、窓の外からシェリーの声がした。

「シェリー!?」

 そこにいたのはあの頃と変わらない、十五歳の少女だった。

「一緒に行きましょう。新しい友達も出来たんです。きっと楽しいですよ」

 シェリーが手を差し伸べる。

 あなたがその手を取らない理由なんて、どこにもなかった。

 だって、シェリーさえいれば、他には何も要らなかったんだから。それ以外のこれまでの人生なんて、なんの意味もなかったんだから。

 それがあなたの最期の記憶。

 きっとあなたはお迎えに来たシェリーと天国で思い出話に花を咲かせた事でしょう。

 そうでないなら、最後のシェリーはただの幻覚で、あなたは最後まで、報われなかった。

 

BADEND

 

[さらに次のページ]

 

2.前者だと考えて探し続ける

 

 あなたは、シェリーが自分から部屋を抜け出して家出したなんて、どうしても信じられなかった。

 だから、探し続けることを選んだ。

 一日目。なんの手がかりも見つからなかった。

 二日目。なんの手がかりも見つからなかった。

 三日目。なんの手がかりも見つからなかった。

「なんでなんだ」

 かつてシェリーを探した時も三日で諦めたりしなかった。

 けれど、一度シェリーと会って、シェリーの住んでいた場所さえ知っている状態からの失踪という圧倒的に情報量に差が違いすぎた。

 一度手元に手繰り寄せることに成功してからほぼ一年を過ごしたのだ。

 あなたの心は当時の鋼の心ではなかった。

「こんな別れを経験することになるのなら……」

 あなたはポツリと呟く。

「もっと早く、ちゃんと想いを伝えておくんだった……」

 そんな後悔したって遅いのに、そんな言葉が漏れる。

「どこなんだ、シェリー。見つけたら、絶対に想いを伝えるぞ」

 そう心に決めて、鋼ならぬ心でシェリーを探し続ける。

 四日目。なんの手がかりも見つからなかった。

 五日目。なんの手がかりも見つからなかった。

 六日目。なんの手がかりも見つからなかった。

 そして、シェリーが失踪して一週間が過ぎた。

「こ、これ!?」

 その日、あなたはSNSでこんな話を見つけた。

 二階堂(にかいどう)ヒロという少女の情報だ。一週間前に行方不明になっていたが、今日、戻ってきたらしい。

 普段なら偶然の一致と片付けるところだが、今のあなたには余裕がなかった。

 一週間シェリーと会えていない。こんなことこれまでなかったのだから。

 それに、一つ予感があった。

 この情報は公権力により少しずつ消されている様子が見てとれたのだ。

 公権力。

 もし、シェリーのケースにもそれが関与していたとしたら? 不可思議な点は解消される。

 そう考えたあなたは即座に家を飛び出した。

 

 まずやるべきはヒロという少女の素行調査だ。

 あなたははじめてシェリーと再会した日のように、学校を突き止めて、尾行を始めた……のだが。

「誰なんだ、君は。人をつけ回す事は正しくない」

 しばらく歩いたところで見つかり、引っ張り出されてしまった。

(……やるしかないか)

 あなたは答えに窮した末、決意する。

「あの、ボクは橘シェリーの幼馴染です。シェリーのこと、何か知りませんか!?」

「なに、シェリーの?」

 ぴくりとヒロが眉を動かす。

「知ってるんですね!?」

 反応した。知らなければその反応は出ない。あなたはずい、と一歩踏みだす。

「……知っている」

 ヒロは観念したように言葉を発する。

「どこにいるんです。ボクは彼女に会いたい」

「心配する必要はない。しばらく待てば会える」

 やはりヒロは何か知っているらしい。

「……それはシェリーの意志ですか? シェリーがボクに会いたくないと?」

「いや、そんな事はない。シェリーも君の話をしていたよ」

 本当はヒロ本人の記憶ではないのだが、彼女の記憶を巡る物語は複雑すぎるのでヒロは自分本人の記憶として語ることにした。

「そうですか。でもそうなら尚更。ボクは早くシェリーに会いたいんです。会わせてください」

「せっかちなのは正しくない。それに、私に決められることじゃない」

「なら、誰なら決められますか?」

 退くつもりはない。ここを逃せば再び追える線は消える。

「……分かった。私から連絡してみよう。それで構わないか?」

「わかりました。それで構いません」

 実際そこが落とし所だと思った。

 

 それから数日後。

 あなたはヘリに乗っていた。

 何処かの海上に浮かぶという島に向かっているのだという。

「見てください、ヘリですよ!」

「本当だ。今度は誰が帰れるんだろう」

 近づいてくるヘリをシェリーが最初に見つけた。シェリーの隣の少女がそれに返答する。

 その様子がヘリの中から見えた。

「シェリー!」

「危ないですから、身を乗り出すのはおやめください」

 淡々とした操縦士から警告される。

「あ、すみません」

 そうして、ヘリは少しずつ高度を下げていく。

「誰か乗ってますわ!」

 もう一人の少女が気付く。

「ほほう。……へ?」

 シェリーが驚いた声を上げる。

 そのタイミングで、ヘリも地面へと着陸した。

「シェリー! 会いたかった!」

「助手君!? どうしてここに来たんですか!?」

 流石のシェリーも驚いた様子だった。

 ただ、ここからはあなたも驚くことになる。

「誰ですの?」

「前に話していた私の幼馴染ですよ。助手君、こちらはハンナさんとエマさん。私のお友達です」

 そう言って、シェリーは二人を紹介した。

 独り占めしたかったシェリーには二人の友達が出来ていたのだった。

 ともかく、こうして、二度目の再会は成ったのだった。

 




 ゲームブック部分は流石にハーメルンのシステムでは再現しきれんかった……。
 とはいえ、私はこれがハーメルン初投稿ゆえ知らないだけかもしれないので、「こんな方法がありますよ」とかあったら教えてください。
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