立ちて死すとも心火は消えず   作:巌颪

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記録——2018年7月

西東京市 英集少年院運動場上空

特級仮想怨霊(名称未定)

その呪胎を非術師数名の目視で確認

緊急事態のため高専1年生4名が派遣され内1名死亡



呪胎戴天・炎舞

総監部の思惑もあり高専に入り、呪術師となることを決めた重國。

 

重國「それでじゃが高専に入ることになったのはいいが儂1人か?」

 

五条「いや今年の入学者は君だけじゃない。君を含め全部で4人だ。」

 

重國「少ないのぅ。」

 

五条「呪術師はその仕事内容の都合上あまり人が増えないし増えたところで死ぬ可能性もあるから万年、人手不足なのよね。ちなみに2年生とか上の学年含めたらもう少しいるよ。」

 

重國「人数の話はわかった。して儂の任務はいつ頃になりそうじゃ?」

 

五条「任務については随時連絡されるよ。スマホだったり補助監督を通してね。そんじゃ僕もう帰るね。」

 

そう言うと五条は足早に部屋を出て行った。

 

重國「彼奴は何というか軽いのぅ。」

 

夜蛾「すまん。あいつは昔からそういう奴なんだ。」

 

重國「お前が謝ることではない。」

 

夜蛾「まぁ何はともあれ任務の通達が来るまで主な活動内容は座学などになる。」

 

重國「座学は得意じゃ。」

 

夜蛾「改めて歓迎する柳田重國。」

 

重國「あぁ。」

 

これにて今日のところは話も終わり重國は帰宅した。

 

どうやら高専は寮があるらしいのだがまだ重國用の部屋を準備している最中のため今日のところは自宅で過ごして良いらしい。

 

そして自宅のベットで重國はまだ見ぬ同期とこれから送る高専生活を思い眠りにつくのであった。

 

・・・そして翌日。

 

重國のスマホに一本の電話がかかってきた。

 

連絡先を見ると伊地知だった。

 

寮の部屋が決まったのかと思い、電話に出ると伊地知は声を荒げ言った。

 

伊地知「重國君、緊急任務です。大至急、外へ出てきてください。」

 

その言葉を聞いた重國はすぐさま身支度を済ませ外で待つ伊地知の車へと乗り込んだ。

 

そして目的地へ向かう最中、任務の内容を確認する。

 

重國「緊急任務じゃと?」

 

伊地知「はい。場所は西東京市、英集少年院です。」

 

重國「少年院か。これはまた呪いが溜まりそうな場所であるな。」

 

伊地知「今回、我々の”窓”が確認したのは呪胎です。」

 

重國「呪胎?」

 

伊地知「読んで字の如く呪霊へと変態を遂げる前段階、謂わば呪霊のタマゴといったところでしょうか。」

 

重國「呪霊にもそのような段階があるのだな。」

 

伊地知「改めて呪胎を確認したのが3時間程前。避難誘導9割の時点で現場の判断により施設は閉鎖。受刑在院者第二宿舎、5名の在院者が現在もそこに呪胎と共に取り残されています。」

 

重國「5名か・・・。時間経過を考えると少し厳しいかもしれんのぅ。」

 

伊地知「さらに確認された呪胎というのがかなり危険な可能性があります。」

 

重國「なんじゃ?」

 

伊地知「もし万が一、呪胎が変態を遂げるタイプの場合ならば特級に相当する呪霊に成ると予想されます。」

 

重國「ならおかしくないか?」

 

伊地知「え?」

 

重國「確かに呪胎がそのまま変態を遂げず接敵しない可能性もあるが特級へとなる可能性もある。ならば同等級の術師を派遣した方が任務完遂は確実ではないのか?」

 

伊地知「残念ながら五条さんを始めとした特級術師は今、忙しくてですね。とてもこの任務をやれる状況ではないのです。」

 

重國「だとしても1級が派遣されるべきだと思うがなんとなく怪しいのぅ。」

 

伊地知「それに今回のあなた方の任務はあくまで生存者の確認と救出です。特級と会敵した場合は絶対戦わず逃げてください。」

 

伊地知の一言に重國が反応する。

 

重國「おっと確か儂以外の1年生もこの任務に就くんじゃったかのぅ?」

 

伊地知「はい、今回は1年生4名で任務を遂行してもらいます。」

 

重國「どんな子たちなのかのぅ?」

 

伊地知「あれ?もしかして五条さんから何も聞かされてませんか?」

 

重國「何も聞かされてないが?」

 

伊地知「そうですか。なら・・・いやこのことに関しては見てもらった方が早いので合流後、説明します。」

 

重國「?」

 

伊地知の言葉に疑問を抱く重國。

 

伊地知「もう少しで少年院に着きます。」

 

任務についてあれこれ話をしているうちにどうやら少年院に着いたようだ。

 

車から降り、最初に重國の目に入ったのは少年院の入り口で集まっている3人の少年・少女。

 

重國「ほう、あの子らが・・・」

 

重國の同級生となる新1年たちだ。

 

そして重國の存在に気づいたのか新1年もこちらに歩み寄ってきた。

 

ようやく高専新1年が集結したのだがここで重國にとって驚くべきことがあった。

 

???「おっす!よろしく!」

 

???「遅れて来たくせに謝罪もないとか信じらんない。」

 

???「お前が新しく入ってきた奴か?」

 

目の前の3人が各々、重國に対して言葉をかけるがそんなの聞こえてはいなかった。

 

重國はただ最初に元気に挨拶を交わしてきた少年の方へと歩いていき少年の肩を掴んだ。

 

少女から「無視かよ!?」という言葉が聞こえたがどうでも良い。重國の目にはピンクに近い色の髪を持つ少年しか写っていなかった。

 

いや正確に言えば少年の内に在るものしか・・・。

 

重國「お主、名前は?」

 

虎杖「い、虎杖悠仁。」

 

重國「悠仁、お主は内に何を飼っておるのじゃ?」

 

???「勘違いするな。」

 

重國「!?」

 

これまで祓ってきた呪霊とは比べ物にならないほど重くどんよりとした存在感に重國は驚き、虎杖から距離を置いた。

 

重國「何者じゃ!」

 

見ると虎杖の頬に何やら口が現れており、それが言葉を発していた。

 

重國の一連の動きを見ていた虎杖と他の2人は呆れたような顔をして伊地知に問う。

 

虎杖「もしかして五条先生、何も話してない?」

 

伊地知「残念ながら・・・。」

 

みんな一斉にため息をつきようやく重國は伊地知から虎杖の内に棲まう者の正体を聞かされた。

 

名を両面宿儺。

 

腕が4本あるだけでなく顔までもが2つあると言われている仮想の鬼神だが虎杖の中に潜む者は1000年以上前に実在した人間であり、呪術全盛の時代において術師が総力をあげてこの者に挑んだが皆、敗れ果てた。最終的にこの者は後に宿儺の名を冠し死後呪物として時代を渡る死蝋となった。

 

そして時は過ぎ現代。時代を渡る死蝋、宿儺の指がとある高校生により身体の中へと飲まれ、ついに受肉を遂げ現代へと宿儺が蘇ったのだ。

 

そのとある高校生が虎杖悠仁である。

 

彼は人を救おうとして自ら宿儺の指を取り込み呪力を得た。だが呪術界はそれを許さず彼を死刑に処す事にしたが五条がどうせ殺すなら宿儺の指を全部取り込ませてから殺せば良いと提案して何とか執行猶予を設ける事ができたのであった。

 

重國「にしてもお主、切迫した状況だったとはいえどよく呪物を飲み込もうと思ったな。」

 

話を聞いた重國は虎杖の度胸に感嘆の声をもらす。

 

重國「おっとそういえば自己紹介がまだだったな。改めて儂の名は柳田重國。よろしく頼む。」

 

虎杖「俺はさっき言ったけど虎杖悠仁だ。」

 

釘崎「私は釘崎野薔薇。紅一点よ、喜びなさい。」

 

伏黒「伏黒恵だ。」

 

重國「悠仁に野薔薇に恵か。」

 

こうしてそれぞれ自己紹介と簡単な挨拶を済ませたのち伏黒から一つだけ質問があった。

 

釘崎「そういえば重國。アンタ何級なの?」

 

伏黒の質問に固まる重國。

 

伏黒「学生証、まだもらってないのか?」

 

重國「いやまだ貰っとらんがそういえば儂、何級なんじゃ?」

 

重國は伊地知の方を見て問いかけるが伊地知は困ったような表情をしながら言った。

 

伊地知「五条さんがその件は僕に任せてと仰っていたのでこちらとしては何も把握しておりませんが・・・」

 

伊地知の言葉に重國を除いた1年生3人がため息をついた。

 

釘崎「あのバカ目隠し適当すぎ。」

 

虎杖「もしかしたらこのまま等級がないなんてことも・・・」

 

伏黒「あの人の事だ。忘れてるかもしれん。」

 

3人の反応から見るにやはり五条はいつもから軽薄な感じらしい。

 

釘崎「まぁ入学したてだし3級かよくて2級くらいでしょ。」

 

とりあえず断定する3人。当の重國はと言うと・・・

 

重國「1年生ですらこの言われようとはな。五条のやつまさか2年生からも悪く言われてるんじゃあるまいな?全く・・・。」

 

3人の反応を見て重國は改めて五条に対してため息をついていた。

 

そして重國の等級の話は終わり再度、伊地知から今回の任務の詳細を聞かされた。

 

数分後、伊地知からの話が終わった直後に伊地知とは別の補助監督が何やら重國に話しかけてきた。

 

男「重國君。」

 

重國「なんじゃ?」

 

男「今、上から通達がありまして重國君はあの3人とは別行動をとってもらいます。」

 

重國「なんじゃと?」

 

突然の通達内容に声をあげる重國。周りにいた虎杖たちも気になったのか重國の近くに集まっていた。

 

重國「どういう事じゃ?」

 

男「どうやら上からの通達によると少年院内部に潜む呪胎の呪力にあてられ、近辺に潜む低級呪霊がここに押し寄せる可能性があるとのことです。」

 

重國「儂の路地裏での状況と同じ感じというわけか?」

 

虎杖「でもそんな大量にいる気配はなかったぜ。」

 

男「詳しいことは上に聞かないと分かりませんがその可能性がある以上、重國君を少年院内には行かせず外で警護をしてもらうというのが通達内容でした。では失礼します。」

 

そう言葉を残し、男は別の仕事をしに行った。

 

重國「さて儂だけここに残る事になってしまったがお主らだけで大丈夫かのぅ?」

 

重國がそう言うと3人はそれぞれ声を上げた。

 

釘崎「あんたなんか居なくてもやってやるわよ!」

 

虎杖「もし辛かったら助け呼べよ!」

 

伏黒「外は任せた。」

 

重國「では任務開始じゃ!」

 

そうして重國の初任務が始まった。

 

少年院へと足を踏み入れようとする虎杖、伏黒、釘崎の3人を見届けた後、伊地知が指を立て言った。

 

伊地知「それでは”帳”を下ろします。お気をつけて。」

 

「闇より出てて闇より黒く その穢れを禊ぎ祓え」

 

伊地知がそう唱えた直後、上空からドス黒い何かが少年院全体を囲むように流れ出てきた。

 

重國「これが”帳”というものか。」

 

“帳”というのは呪霊との戦闘時などに術師または補助監督が下ろす結界のことで外にいる無関係な人間に術師の存在などを隠すことを目的としている。今回は住宅街が近いため下ろされる事になった。

 

そして重國は下ろされた”帳”の外で通達通り待機していた。

 

それから数十分ほどその場で待機していたが一向に呪霊が集まってくる様子がない。

 

重國「ここまで集まってくる様子がないとは・・・。可能性の話じゃったとはいえ怪しいのぅ。」

 

そう思った重國は近くにいた伊地知に聞いてみた。

 

重國「伊地知よ。聞きたい事があるのだが儂みたいに上から突然、別の任務が下るということは呪術界ではよくあるのか?」

 

伊地知「いえ私たち補助監督が現場の状況を見て別行動をしてもらうなどは時折ありますがまさか呪術総監部直々の途中通達など私も初めてです。」

 

重國「やはりこの任務、何かが・・・」

 

伊地知の言葉を聞き何かを言おうとした最中、重國はとある事に気付き走り出した。

 

伊地知「えぇ!?重國君!まだ任務の途中ですよ!」

 

突然、走り出す重國に思わず大声を出す伊地知。

 

重國「任務など今はいい!それよりも奴じゃ!奴が今、顕現しよった!」

 

伊地知「ま、まさか・・・」

 

重國の様子に最悪の想像をしてしまう伊地知。

 

重國「暫しの間、儂が対応する!お主は念の為、被害予想区域を決め近隣の住民に気を配れ!」

 

伊地知「わ、わかりました!」

 

重國「こんな時、護廷の空間凍結技術があれば良かったんじゃが悠長なことも言ってられん。」

 

そうして”帳”の中へ重國は姿を消した。

 

重國「!?」

 

入った瞬間、感じる”帳”内を満たした邪悪な気配。

 

重國「どうやら事態は最悪な方に転がってるみたいじゃな。」

 

ドォン!

 

突如、どこからか響いてきた戦闘音。

 

重國は霊覚を以て場所を特定する。

 

重國「戦っておるのは恵か。」

 

確認が済むと重國は瞬歩を使い、戦場へと足を踏み入れた。

 

・・・何もかもが違いすぎる。

 

呪術うんぬんの話じゃない。膂力(パワー)敏捷性(アジリティ)もその全てが己を大きく凌駕しており格の違いを感じさせる。

 

それだけの存在と伏黒は今、対峙していた。

 

だがそんな時、伏黒の前に1人の男が現れた。それは”帳”の外にて別行動をとっていた同級生、柳田重國だった。

 

重國は伏黒の前に立ち、目の前の敵に視線を向ける。

 

目の前にいるのは変態を遂げた呪胎ではない。見知った顔だ。しかも数十分前に初めて会い、挨拶を交わした顔だ。

 

だがその顔からは優しさなど微塵も感じられず更には先刻までなかった謎の紋様があった。

 

もはや目の前の奴が誰かなんて考えるまでもない。

 

重國「何故、お主が出てきたのじゃ?宿儺。」

 

伏黒がこれまで戦っていたのは宿儺だった。全身は虎杖の姿そのものだが紋様と邪悪な気配が虎杖ではないと告げている。

 

伏黒「重國、お前何でここに・・・!」

 

重國「宿儺の気配を感じたのでな。まず状況を報告せい。」

 

伏黒「在院者の死亡を確認した矢先、釘崎は何処か別の場所に連れ去られ俺たちは変態を遂げた呪胎に襲われた。逃げようにも一筋縄じゃいかなかったから俺たちは賭けに出た。」

 

重國「宿儺を利用して呪胎を祓おうとしたな?」

 

伏黒「あぁ、結果として呪胎を祓えたし、釘崎も無事に救出できて事は順調に進んでいたが誤算が生じた。虎杖が宿儺を抑え込むのに手間取ってる。」

 

伏黒の話を聞きながら宿儺へと注意を向けている時、重國はあることに気づき伏黒に問いかけた。

 

重國「恵、あの宿儺の胸の傷はなんじゃ?」

 

宿儺の体、さらに言えばちょうど心臓のある位置に大穴が空いておりそこからは大量の血が滲んでいた。

 

伏黒「奴が虎杖を人質にとった。」

 

重國「人質など姑息な真似をしおって。」

 

伏黒「どうする気だ。」

 

伏黒の質問に重國はすぐさま返答せず言葉を返す。

 

重國「宿儺はあのような怪我を治す術を持っているのか?」

 

伏黒「虎杖は院内で呪胎と出会った時、左腕を失ったが治ってる。つまり宿儺は治癒・・・反転術式が使える。」

 

重國「なるほど。なら申し訳ないが仮に虎杖がこのまま戻ってこなかったり宿儺が心臓を治す気がないのであれば儂は悠仁ごと宿儺を殺す。悠仁の姿で人を殺させるわけにはいかないからのぅ。」

 

伏黒「賭けだな。」

 

重國「そうなるな。」

 

そう言葉を残し重國は前に出て宿儺と対峙した。

 

宿儺「話し合いは終わったか?」

 

重國「あぁ。」

 

宿儺「お前、1人で良いのか?」

 

重國「お主のような小童如き儂1人で充分じゃ。」

 

宿儺「俺を小童扱いとは余程、殺されたいようだな。」

 

そうして重國と宿儺の戦いの火蓋が切られた。

 

先に動いたのは宿儺だった。

 

拳を固め殴りかかってくるが重國はそのまま即座に抜刀し、宿儺の右腕を斬り落とした。

 

宿儺「!?」

 

斬り落とされた事実に驚き重國から距離を取る宿儺。

 

俺でさえ反応できない速度なのか・・・。

 

宿儺は目の前の男に対して認識を改めざるを得なかった。

 

伸ばした拳がいつの間にか斬られていた事など宿儺にとって初めての経験だった。

 

宿儺「ケヒッ!」

 

突然、現れた強者に思わず笑みが溢れる宿儺。

 

宿儺は腕を反転術式で治癒し今一度、殴りかかろうとした。

 

だがそれもまた重國に見切られており今度は瞬歩で背後を取られそのまま横腹を蹴られた。

 

宿儺「グハァッ!」

 

蹴られた宿儺は吹き飛ばされ何か運動場のような場所にまで来た。

 

宿儺「俺の前に現れた時といい先ほどの背後に回った動きといいもしかしたら瞬間移動の術式かと思ったがどうやらアレはアイツ自身の技のようなだな。」

 

2度、見せつけられた素早さに重國の異常性を改めて再認識する宿儺。

 

宿儺「だがまだ奴の力はこんなものではないはずだ。」

 

今、宿儺が興味を持っているのは重國の刀そして重國の実力であった。

 

奴が持つあの刀、何かある。

 

宿儺には確信めいたものがあった。

 

重國「ここだと周りを気にせず戦える。」

 

宿儺「お前の持ってるその刀、まだ何か力を隠しているな?」

 

重國「・・・。」

 

宿儺「沈黙は肯定と受け取っていいな?なら見てみたいぞ。お前の力を。」

 

宿儺の言葉に重國はため息をついて言った。

 

重國「お主に最後の質問じゃ。心臓を治し、悠仁と代わる気はあるか?」

 

重國の問いに宿儺は笑いながら言った。

 

宿儺「ないな。」

 

重國「そうか・・・。」

 

そう言うと重國は刀を構えた。

 

重國「なら最期にとくと見よ。儂の斬魄刀を。」

 

「万象一切 灰燼と為せ 『流刃若火』」

 

・・・遠くで見ていた伏黒は突然、起こった目の前の現象に驚くしかなかった。

 

重國が刀を構え何かを唱えた直後、一気に炎が重國を中心に周りへと拡がった。

 

炎の中で猛々しくも厳かな佇まいをしている重國はまさに炎神。何か人ならざる者を見ているようだった。

 

伏黒「何だよアレ・・・。」

 

得体の知れない力に伏黒はただ見守ることしかできなかった。

 

そしてそれは目の前の宿儺も同じだった。

 

重國「これで終わりじゃ!」

 

重國は力強く流刃若火を横へと薙いだ。

 

瞬間、宿儺は炎に包まれ衝撃で奥にある少年院の壁に激突し、地面へと落下した。

 

宿儺「ガハッ!」

 

重國の攻撃を喰らった宿儺は直前に呪力でガードしたため何とか死は免れたが火傷を負っていた。

 

宿儺「・・・甘い奴だな。」

 

流刃若火の炎が俺を襲う瞬間、何故かわからないが攻撃の手がほんの僅かに緩んだ。

 

だが理由を考えている暇はない。そんなことより今の攻撃で奴のことが少しは分かった。

 

あの刀、確か『流刃若火』と言ったな。呪具を媒介とした術式の発動。

 

術式の特性ゆえに呪具を用い、戦う者は過去や現代においても多いが呪具自体が術式に組み込まれているとは珍しいタイプだ。

 

・・・全く伏黒恵といい魅せてくれるな。

 

宿儺は立ちあがろうとしたその時、重國が何かを唱えた。

 

「縛道の六十一 『六杖光牢』」

 

瞬間、重國から放たれた光が6つの光となり宿儺の胴体を貫いた。痛みはなく体の自由を奪われた。

 

宿儺「う、動けん!」

 

宿儺は重國を見る。そして重國の横にいつの間にか伏黒もいたことが分かった。

 

最後に伏黒は語った。

 

伏黒「・・・俺はオマエを助けた理由に論理的な思考を持ち合わせていない。危険だとしてもオマエの様な善人が死ぬのは見たくなかった。それなりに迷いはしたが結局は我儘な感情論。でもそれでいいんだ。俺は正義の味方(ヒーロー)じゃない、呪術師なんだ。だからオマエを助けた事を一度だって後悔したことはない。」

 

伏黒は最後に虎杖を助けたことに対する自分の想いを吐露した。

 

その言葉を聞きながら重國は宿儺の方を見る。すると顔面にあった宿儺も紋様は消え、いつも通りの優しそうな顔へと戻った。

 

重國と伏黒の目の前にいるのは正真正銘、虎杖悠仁だった。

 

虎杖「・・・そっか。」

 

笑顔を見せる虎杖。

 

虎杖「伏黒は頭が良いからな。俺より色々、考えてんだろ。オマエの真実は正しいと思う。でも俺が間違ってるとも思わん。・・・悪い。そろそろだわ。」

 

口から大量の血を流す虎杖。

 

虎杖「伏黒も釘崎も重國も五条先生・・・は心配いらねぇか。長生きしろよ。」

 

そう言葉を残し、虎杖は倒れ伏した。

 

降り始めた雨の中、誰もその場を動くことなどできなかったのであった。




等級認定書状

7月16日 英集少年院にて

術式の発動を現場の補助監督や”窓”により確認

術式の登録処理完了

呪術規定及び呪術総監部の総意のもと

同日16時25分を以て柳田重國この者を

“特級”と認定する
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