TS脇役魔法少女は主役じゃなくてもやっていける   作:お布団すやぁ

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1 はじまりの日

 異世界転生と言えば、まず思いつくのはどんな転生先だろうか。

 ド〇クエみたいな剣と魔法のファンタジー?

 空の〇界みたいな伝奇系?

 ぬき〇しみたいなエロゲーの世界?

 俺が転生したのは、前世に数あるその類の創作の中では、まあ上から三番目くらいのシェアを誇っていただろう世界。

 すなわち――

 

「……この場にいる者は皆、魔法少女の素質を見出された者ばかりじゃ。それぞれが持つ魔法の内容は様々じゃろうが、そのどれもが素晴らしいものだと我は信じておる。この学園での生活を通じてその正しい使い方を学び、そしてこの国の、世界の平和のために役立ててほしい」

 

 入学式。体育館に集められた新入生の俺たちは、幼い見た目に似合わない老人臭い話し方の学園長の長話をありがたーく拝聴していた。

 魔法、学園、世界の平和。ここまで言えば、勘のいい人ならば既にお気づきかもしれない。

 

 はい。俺、雲出(くもいで) カエデ。雲出家の次女にして、今現在は国からのお給金で一家の大黒柱(二本目)になっている十五歳。

 

 ひと昔前くらいのラノベでよくあった、『異能力を持った子供たちを育てる学園』の世界に転生いたしました。

 

 

 ***

 

 

「雲出! 聞いているのか!? ここはもう警戒区域の中なんだぞ!」

「――ああ、悪い悪い。ちょっと考えごとしてたわ。んでなんだっけ、今日の晩メシの話?」

「っこの、貴様は本当に……いいか、よく聞け! 今回の任務は学園長から直々に賜った名誉ある役目である!それなのに貴様はヘラヘラと……一度燃やされないと分からないのか!?」

「ちょちょちょ待って、冗談だって! 分かってる、分かってるから!」

 

 右を見れば木、左を見ても木。ついでに前と後ろも木。どこもかしこも木々に囲まれた――要は深い森の中で、俺は情けなくビビって謝り倒していた。相手は同い年だが、それでもこの赤毛のクソデカ女――晴原(はるはら) サクラと俺の力関係はハッキリしているのだ。入学してからはや二年、いよいよ三年生になったというのに未だにコイツには勝てていない。

 

「ま、まあまあ。落ち着いてよサクラちゃん。そう怒らないで?」

「そうですよ。こんな森の奥で隊長の魔法を使ったら、一面焼け野原になっちゃいますから」

「雨野、雪村……!お前ら、俺を庇ってくれるのか……!?」

 

 そして、そんな堅物を宥めてくれる人物が二名。俺達二人の前を進む、同じチームの一員。雨野(あまの) アンズと雪村(ゆきむら) マユミである。

 雨野はともかく、雪村まで俺を庇ってくれるなんて珍しい事もあったものだ。いつもはもっと辛辣な事ばかり言う癖に、案外いい奴じゃないか。

 

「副隊長が不真面目なのは今に始まった事じゃあ無いでしょう、この人は万年ちゃらんぽらんなんですから。だからボクらがいるんですよ」

「おいこら雪村てめぇ今なんつった?」

 

 なーんて思っていたらコレである。こいつ、この四人の中で唯一の後輩だって自覚が無いのか?

 

「確かに雪村の言う通りだったな。気が回らなくてすまない」

「晴原ァ!?」

 

 とか言ってたら、晴原が雪村の軽口に乗っかりやがった。お前堅物キャラでやってるんじゃなかったのかよ。

 

「ちゃらんぽらんって、今どき聞かねえよその罵倒……」

「なんと言うかマユミちゃんって、ちょびっとだけ語彙が古い時あるよね」

「む」

「不満そうな顔すんな、事実だから。んで何だっけ、任務内容?」

 

 と、言っても。この時期に俺たちに回ってくる仕事なんて数種類しかないし、更に目的地が学園近くの森だとすれば更に絞れてくる。今更言われるまでも無く諳んじる事すらできるほどだ。

 

「アレだろ、『不審な魔力反応の調査』とかいう雑なやつ……いつも通りどっかのバカがやらかしたんだろ。四月だし、おおかた入学したての青二才どもが決闘ごっこでもして熱くなってドーン、って感じじゃねえの?」

「いや、私も最初はそう思っていたんだが……」

「だが?」

「さっきも言ったじゃないか。『学園長から直々に賜った任務だ』って」

「……ああ、なるほどね。そりゃあ怪しいわな」

 

 学園長――あの腹黒ロリババアから直接任務が降りてくるなんて、年に数回あるかないか程度だ。しかもその全てにおいて何やら面倒な付帯条件がついてまわる。

 タチの悪い事に、どうやら学園長(あのヤロウ)はその条件を伏せたままで俺たちを任務に向かわせて予想外の事態に戸惑う様を見るのが好きらしい。心底性格が悪いと思うのだが、今まで命に関わるような一大事に発展したことはないし、唯一危うかった時も本人自ら助けに来てくれた。

 だからまあ総じて言えば『俺達の成長を促すため』――それだけ目をかけてもらっているのだろうけれども。

 

「……まあ、あの人の事ですから。本当に危なくはならないでしょうけど……」

「でも、何があるか分からないのは怖いよね。結界、もっと厚めにしとく?」

「ああ、頼む。雪村は透視の距離を上げて見ていてくれ」

「了解です」

「うん、分かったよ」

 

 青い髪のゆるふわ系――雨野がむん、と力を込める仕草をすると、周りの風景が少し青みを帯びた。周囲の環境に変化があった訳ではない。俺たちを包む膜――つまりは雨野の固有魔法によって展開される結界が分厚くなったからである。

 

「……ん、ここから……だいたい1kmくらい先、何かいます。動いてはいませんけど、微弱な魔力反応と生体反応あり……たぶん、あれがその『不審な魔力反応』だと思います」

 

 雪村がその髪と同じ緑色をした目の上に手をかざし、遠くを見るような仕草をする。傍から見れば単に目を凝らしているように見えるが――その実、自身の魔法を行使しているのだ。

 

「おいおい。生体反応って、まだそこにいんのかよ?」

「そう見えますね……隊長、その魔力反応っていつの物だって言われたんですか?」

 

 問われ、晴原は苦虫を噛み潰したような表情で答える。

 

「一昨日だ。任務を受けたのは昨日だが、このところ晴れ続きだから……急ぐぞ」

 

 そう言って晴原が駆け出す。人が水無しで生きていけるのは平均して三日が限界らしい。もちろん個人差はあるだろうが、それでも三日がひとつの区切りだろう。

 最悪を想定して、一つ身震いをして。俺たちは晴原の後に続いた。

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