TS脇役魔法少女は主役じゃなくてもやっていける   作:お布団すやぁ

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3 撤退戦

「っ正面の木の後ろ、角狼(ホーンウルフ)います!そこを右に!」

 

 少年を背負った雪村が叫び、俺たちは進路を右へ取る。すると待ち伏せを透かされて痺れをきらしたのか、正面の木の裏側から角の生えた狼が踊りかかってくるが――

 

「こっち来んじゃねえよ犬っコロ!」

 

 爪が俺に届くよりずっと手前で、周囲を旋回させていたナイフが深々と突き刺さり絶命した――が、そこで終わりだ。

 俺の魔法は“刺した後”が弱い。

 ナイフは狼の首に突き立ったままびくりとも動かない。操り糸が断ち切られたように手応えが消えたのだ。

 

「ックソ……これでまた一本ロストかよ!」

 

 俺の固有魔法は『軌道操作』――自分が投げた物を操る事ができる魔法だ。

 ただしいくつかの条件があり、今回特に厄介なのが『一度に操れるのは二つまで』と『一度何かにぶつかると操作が打ち切られる』というものだ。これのせいで貴重なナイフを使い捨てにせざるを得ないし、数にものを言わせて制圧なんて事もできない。

 今ので一本ロスト。俺の周りを飛んでいた刃は残り一つになって、空いた片側がひどく心細い。

 その上。

 目の前で雪村が、ほんの一瞬だけよろめいた。

 少年の体重がずれたのか、木の根に足を取られたのか。その瞬間、あいつの索敵が――透視がほんの少しだけ()()()()

 

「っ……!」

 

 空気が変わる。

 “見られていない”と悟った獣の匂いが、森の闇から膨れ上がった。

 減ったナイフと、途切れた索敵。そうしてできた警戒網の穴を突こうと、さらにもう一匹角狼が飛び込んで来る。

 

「ッ矢弾(ボルト)!」

 

 だが、その魔物も晴原が横合いから飛ばした火の矢に撃ち落とされ、黒焦げになって横たわった。

 火に怯んで角狼たちの動きが少し鈍り、その隙にポーチからナイフを取り出して放り投げ再び二本体制で警戒度を引き上げる。

 

「助かった!なんだお前精密操作上手くなってんじゃねえか!」

「成功率は六割程度だがな!くれぐれもアテにはするなよ!」

 

 言いながら晴原は炎を纏った拳で近付いてきた別の角狼に殴り掛かるが、火力が足りず倒し切れない。

 毛皮を焦がした角狼へトドメを刺そうとして――拳から散った火の粉が落ち葉に移りそうになり、晴原は舌打ちをした。

 

「チッ……これでは私達ごと燃えてしまうな」

 

 咄嗟に炎を引っ込め、かち上げるようなハイキックで角狼を蹴り飛ばしてぼやく。

 晴原の固有魔法で角狼の群れを殲滅できないのはこれが理由だ。派手に角狼を燃やせば森に引火して、俺たちごと焼け死にかねない。

 雨野がまだ健在ならば、結界で守りながらジリジリと後退していけたのだが。まあ、無い物ねだりをしてもしょうがない。

 

「雲出!ナイフの残りはどれくらいだ!?」

「あと六本!いつもより消費が激しい!」

 

 大声で答えながら、何か使えそうな投擲物を拾えないかと周囲に目をやる。

 石や枝などは潤沢にあるが、雨野を背負ったまま逃げる足を緩めずにそれを拾って、集めて、適宜投げられるか?答えはノーだ。残念ながら俺は天才じゃないのだから、そこまで器用な事はできない。

 

「ックソ!雪村、このままじゃ埒が明かん!どこか開けた場所は無いか!?」

 

 痺れを切らしたように晴原が叫んだ。

 その間にも次から次へと角狼が飛びかかってきて、それらを殴る蹴るの単純な肉弾戦で撃ち落としている。俺と違って体格に恵まれているからこそできる芸当だ。

 

「開けた場所って――晴原お前、まさか全部燃やすつもりか!」

「そうでもしなきゃジリ貧だろう!最悪の場合は多少森を燃やすのも覚悟の上だ!」

「そりゃそうだけどよ――ああもう!雪村!見えたか!?」

「っ今探してます!」

 

 雪村の目の緑色が深く、濃くなる。

 透視の距離を上げ、そして少ししてから叫んだ。

 

「――二時の方向、距離およそ五百!広めの川があります!そこならどうですか!?」

「川ってことは……水があるじゃねえか!この辺よりかは燃えにくいだろ!」

「でかした雪村!まずはそこを目指すぞ!」

 

 目指す場所を定め、ぐるりと方向転換。

 背負った雨野はまだ目を覚まさないが、規則的な寝息を立てて穏やかに眠っている。

 今ここで俺がやられたら、その時は背負った雨野も巻き込まれて死んでしまう。

 俺たちを守ってくれた、そのせいで死なせるなんて、そんな訳にはいかないのだから。

 

 ***

 

 それから少しして辿り着いたのは、清らかな水が流れる広い川だった。流れこそ緩やかだが、中心辺りは深くなっているようで濃い青色に染まっている。

 辺りには開けた河原が広がっていて、身を隠せる場所が無いからだろうか、角狼達はそこまでは追って来ず遠巻きに俺たちを睨みつけていた。

 

「うへえ、深そうだな……こりゃあ俺は足つかねえな」

「最悪の場合は私が担ぐさ。お前と雨野なら……まあ、少しの間はまとめて運べるだろう」

「雲出先輩ちっちゃいですもんね」

「145cmだぞ。キュートで愛らしいだろ?」

「……幼児体型……」

「おいコラてめぇ今なんつった?」

「……お前ら、はしゃいでる所悪いが。今はそれどころじゃない」

 

 河原でヒートアップしかけた俺と雪村を冷たい目線で見下ろしながら晴原が言う。

 

「どうだ雪村、川の向こう側に敵影はあるか?」

「……いえ、ありません。魔物たちは皆後ろの方に――」

 

 答えかけて、雪村が小さく息を飲んだ。

 

「?どうした?」

「何か大きい反応があります。角狼の群れの奥から、だんだん近付いて――」

 

 そして、雪村が言い終わるより早く。

 

 森の奥から、空気を震わせるような遠吠えが響いた。

 低く、聞くもの全ての身を竦ませるような野太いそれを合図にでもするかのように、一斉に森の中から角狼の群れが飛びかかってくる。

 

火壁(ウォール)ッ!」

 

 しかし、群れが俺たちのもとに辿り着くより早く、晴原が地面に手をついて叫んだ。

 一瞬の間を置いて、川を背にした俺たちを囲むようにして円形の高い炎の壁が現れ、角狼の群れと俺たちを分断する。

 俺と雪村も背負った雨野と少年を下ろし、戦闘準備に入る。

 

「獣は本能的に火を恐れる。魔物だろうと、野生の獣がベースならばそれは変わらないだろう!」

「ナイスだ晴原!」

 

 火に怯えて立ち竦んだ角狼達に対して、俺は河原の石を拾っては投げて一体ずつダウンさせていく。勢いよく頭にでも当たれば、たとえ小さい石でもそれなりに威力は出るのだ。

 晴原も森の中では絞っていた火力を上げ、火炎放射器じみて群れを焼き払っていた。

 

「あっはっはっは!さっきは散々邪魔してくれたな狼ども!今度は私達の番だ!」

 

 よっぽど鬱憤が溜まっていたのか、晴原のテンションがかなりおかしくなってる。

 

「そんで雪村、大きい反応ってのは何だ!?」

「――ッ先輩!正面、森の奥です!」

 

 言われ、森の奥へと目を見やると。

 

 木々の間の暗がりに、二つの赤い光が浮かんだ。怪しく光るそれは、段々と近付いて来て――

 

 そして、火壁の向こう側で狼たちが一斉に道を空ける。

 

 まるで誰かが無言で「頭を下げろ」と命じたかのように、角狼の群れが低く身を伏せ、赤い目だけをこちらへ向けているのだ。

 木々の間から、枝を踏み砕く重い足音がして。どさり、と一際大きく幹の影が揺れる。

 

 そうして現れたのは、黒に近い灰色の毛並みを持つ巨大な角狼だった。

 

 他の個体と比べてふた周り以上大きい体躯と、冷たく研ぎ澄まされた視線。

 何より目を引くのは、角が一本ではなく左右に二本生えている点。その先端は二股に分かれていて、鹿の角をより一層凶悪にしたような見た目だ。

 

 そいつは火壁の縁まで来ると、炎の熱を確かめるように鼻先を近づけた。

 次いで、振り返り――何度か吠えると、声に応じるようにして角狼達が一斉に動き始める。それまでの散発的な突撃とは違って、統一された意思の元動いている事が明らかな洗練された動きだ。

 その「意思」が誰のものかなど、言わなくとも決まっている。

 

「……何ですかアイツ、まるで指揮をしてるみたいな……!」

「明らかに大ボスでござい、ってツラしてやがんな」

「関係ない!群れごと焼き払えば終わりだろう!」

 

 晴原が火力を上げて角狼達をまとめて燃やそうとするが、群れは決して一塊にならず、ほとんど一匹ずつ撃破するしかないような状況だ。

 そうこうしている間にも、目の前では二本角の遠吠えに従って次々と狼達の戦列が組み替えられていく。

 

「チッ……魔物の群れがこんなに組織的に動くなんて、聞いた事あるか!?」

「ねえよ!クソ、火壁も乗り越えられそうな勢いじゃねえか!どうなってやがんだ!?」

 

 横列から鶴翼(かくよく)、果ては雁行(がんこう)まで。次から次へと移り変わる陣形に翻弄され、中には仲間の背を足場にして火壁を飛び越えて来る個体まで現れてくる始末。

 

「雪村!雨野と少年の保護は大丈夫か!?」

「ッええ!こちらは大丈夫……ッです!」

「なんだってソイツばっか狙われんだよ!」

 

 そして不吉なのは、その壁を乗り越えた個体の多くが俺たちには目もくれず少年へと向かっている点。

 少年に執着しているようなその姿勢に、なにか薄ら寒いものを感じて身震いする。

 そして、俺や晴原が遠距離で一掃する事も難しくなった頃――死角から一匹の角狼が晴原に飛びかかり、その右腕に噛みついた。

 

「ぐッ……!」

「晴原!?」

 

 咄嗟にナイフを投げ、角狼の頭に命中させる。

 角狼は絶命し晴原の腕から離れたが――わずかに魔力制御が乱れて火壁の勢いが弱まり、火の輪にぽっかりと“薄い場所”ができる。

 そして、魔物たちがその隙を見逃すようなことはない。

 

「ッ――来るぞ!」

 

 その薄い場所へ、群れが吸い寄せられるように殺到した。

 火を恐れるはずの獣が、恐怖をねじ伏せて突っ込んでくる。毛が焦げ、皮膚が焼け、悲鳴みたいな唸り声が上がる。それでも止まらない。

 

「なんで、ここまでやんだよ……!」

 

 思わず漏らした声は震えていた。

 指揮個体が、低く吠える。たったそれだけで群れの動きが揃う。焼かれるのが分かっていても前へ出る個体と、背後から押し込む個体、そして火壁の外周を回り込む個体。野生ではありえない、明らかに戦術を感じられる動きだ。

 

「晴原、腕は!?」

「傷は浅い、問題ない!もう壁も戻した!だが――!」

 

 言い終わるより早く、火壁の向こうで大きな動きがあった。

 角狼達が一直線に並び、助走をつけて跳躍する。先頭の何匹かは炎に巻かれて息絶えるが、脚が焼けるのも構わず別の角狼がその背を蹴って跳ぶ。空中で別の個体がまたその背を蹴り、また別の個体が蹴り、段々と高度を増していく。

 そして。そうやってできた空中階段を駆け登るようにして、二本角が無傷で火の輪を越えて河原へ――こちらへ!

 

「……マジか。ちょっとはダメージ受けててくれねえかとか思ってたのによ」

 

 着地した二本角と俺たちが距離を空けて睨み合う。

 雨野と少年を三人と川で囲むようにして庇い防御を固める俺たちを冷たい視線で見つめる二本角は、まるで威嚇するように低く喉を唸らせていた。

 

「なあ、晴原。アイツがこっちに近付いて攻撃するより早く燃やしきる事ってできるか?」

「……無理だな。先程の炎を飛び越える時にも思ったが、コイツは想像よりずっと素早い。それに、あれだけ大きいと単純に火力が足らん」

 

 幸いと言うべきか角狼達は最初の頃よりはずっと少なくなっていて、火壁の勢いが戻った事も相まってこちらへ飛び込んでこれる個体はいなくなっている。

 だが、しかし。

 

「――ッ雲出先輩!危な――!」

 

 雪村が叫び声とともに、どん、と俺を突き飛ばした。

 

 振り返って見てみれば、川から一匹の角狼が顔を出して雪村の脚に噛みつき、川へと引きずり込もうとしている。

 火壁の隙間――川の底を泳いでくるならばたしかに、壁は無い。

 いつの間に、と駆け出して助けようとしたが、それより早く雪村が叫んだ。

 

「ボクは大丈夫ですから!二本角から目を離さ――!」

 

 身体を魔法で強化して、角狼と殴り合いながらの言葉。

 そして、その声を引き金に二本角が駆け出した。

 

「ッ火壁(ウォール)!」

 

 晴原が咄嗟に炎の壁をつくるが、それを意に介さず二本角は吶喊し――体毛を焼きながらも突破。

 

「おいおい、火をビビれよ生物として!」

「ッすまん雲出!」

 

 晴原も後ろから駆け出すが獣の脚力には勝らず、すぐには追いつけない。

 俺もナイフを飛ばして――二本とも前脚に刺さるが、勢いは止まらない。

 

 すぐ目の前に、二本角の凶悪な牙の並んだ口が迫る。

 

 ――あ、やべぇ。死んだかも――

 

 防御のため、咄嗟に身体強化を最大まで引き上げて硬直。そして二本角がぐわり、と大きな口を開けて俺に噛み付こうとして――その直前。

 ぐっ、と前足の筋肉が膨らんだかと思うと、幅跳びめいて跳躍し――少年の元へ駆けていく。

 

「ッマジか、フェイントかよ!」

 

 川へ引きずり込もうとした個体を処理した雪村も、スピードに翻弄される晴原も、まんまとフェイントに引っかかった俺も、まだ誰も助けに入れる距離にいない。ナイフを投げるが、まだまだ遠く届かない。

 そうして、少年の守りが薄くなる。

 

「マズい、アイツが――!」

 

 そして、二本角の爪が少年に振り下ろされる直前。

 

 地面に横たわった少年の指が、ピクリ、と動いた気がした――次の瞬間。

 どくん、と脈打つように少年が大きく跳ねて。

 

 少年の体から衝撃波のような、何か大きなエネルギーの波が放たれた。

 

「ッ!?なんだ、何が――!?」

 

 そして、それを直に浴びた二本角は大きく後ずさり――少しの間立ち竦んだ後、耐えきれなくなったようにその場に崩れ落ちた。

 全身で荒く息をしているため、死んでいる訳ではないようだ。一体何があったのか。少し考え、そして、俺の操作していたナイフが勢いを失って落ちるのを見てようやく気付いた。

 

「これ、さっきと同じ――周囲一帯の大気魔力が()()()()?」

 

 周囲を見れば角狼達は二本角と同じように蹲って動けなくなっているし、晴原の火壁も消えていた。

 

 この世界では、空気中に俺たち魔法少女や魔物の力の源となる魔力が満ちている。

 そして、特別魔力の濃い場所こそあれ、全くない場所なんてのはありえない。ましてやこんな風に唐突にゼロになるなんて、おおよそ普通では無いけれど――

 

「――今回は助かった!行くぞ雲出!」

 

 晴原が前に出て、その恵まれた体格をもって未だ戸惑い蹲っている二本角に殴りかかる。

 

「――ッオラァ!」

 

 晴原の拳が二本角の鼻先(マズル)に入った。鈍い音と共に何本か牙が折れて辺りに散らばる。

 けれど、大気魔力が無く身体強化が弱い今、倒し切れない。指揮個体は体をひねって晴原の腕に噛みつこうとして――

 

「そうはさせるかよ!」

 

 俺は咄嗟にナイフを投げた。

 大気の魔力が消えたせいで、いま使えるのは内蔵魔力しかない。だから魔法の出力は大幅に落ちているし、軌道を曲げようとしてもろくに動かせないだろう。

 だから狙うのは――真っ直ぐ、逃げ場のない場所。

 晴原へ噛みつこうと口を開いた、その口腔へ向けて飛んでいき――刃が、口の奥に突き刺さる。

 

「――――グァッ!」

 

 指揮個体は悲鳴とも唸りともつかない声を上げ、噛みつきの勢いを大きく落とす。

 今だ。

 

「晴原、雪村!川に押し込め!」

「言われなくとも!」

 

 晴原が狼の角を掴み、腕力だけで引きずるようにして川へ突っ込む。

 水しぶきが上がり、冷たい水が俺の足まで跳ねた。

 二本角は暴れるが――

 

「動きが丸見えで随分と分かりやすいな!」

「ナイフ借りますよ雲出先輩!」

 

 ナイフを二本投げ、前足の付け根に突き立てる。刺さったそれを雪村がより深くまで押し込み、二本角の神経を切断する。

 そうして、両前脚をろくに動かせなくなった状態の二本角を晴原が押さえつける。

 

「いい加減――死に晒せこの犬畜生めがァ!」

 

 そして、その頭を掴んで――思いっきり、川辺の岩へ叩きつける。

 ゴン、という鈍い音。

 もう一度、力任せに叩きつけ――最後に、二本角の頭を水面へ沈めた。

 

「……ッ、ガッ……!」

 

 その口から泡が上がって、やがて止まる。

 二本角の体が、力なく流れに揺れた。

 

「……やった、のか」

 

 脳挫傷と酸欠と、あとは出血多量あたりだろうか。

 自分たちのリーダーがやられたのを見て、他の角狼達は一匹、また一匹と逃げ出していく。

 

「どうする、追うか?」

「冗談だろう?」

 

 その後ろ姿を眺めながら晴原に聞くと、何を分かりきった事を、とため息混じりに言われた。

 

「今回の任務はこの少年を連れ帰る事だ。あの二本角は想定外だったが……まあ、普通の角狼の群れ程度ならそこまで大きな脅威にはなるまい」

「……ま、あのデカブツがやられて後詰も出てこないってんなら、そういう事か」

 

 理由は分からないが、まあ報告しておけば後でどこかの隊が調査に来るだろう。とりあえず俺たちが今この場で出来る事はもう無い。

 

「雪村、そいつ背負えるか?」

「……怖いですけど、まあ。何かあったらすぐ捨てていいですよね?」

「可哀想だから丁寧に扱ってやれよ……?」

 

 どうやらさっきの爆発と今の魔力ゼロ事件で雪村は完全にこの少年を危険物の枠に入れてしまったらしい。残念だが当然っちゃ当然か?

 

「それで、森の出口はどの方向だ?近いのか?」

「はい。見る限り、森の出口は近そうですよ」

「そりゃ良かった。俺はもういい加減疲れちまったよ」

 

 雨野と共に晴原に背負われて川を渡りながら、改めて考える。

 この少年の正体、二本角の角狼というイレギュラー、更に『魔力が消える』という怪現象――

 

「――ったく、戻ったらあのクソババア(学園長)を徹底的に問い詰めねえとな?」

「ああ。まったくだ」

 

 夕日のオレンジ色が長く川に伸びている。

 長かった一日が、ようやく終わろうとしていた。




何となくの身長・体格は
雨野≒(<)雲出(145cm)<<<雪村<少年<<<晴原(190cmと少し)
ぐらいのイメージです。
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