TS脇役魔法少女は主役じゃなくてもやっていける 作:お布団すやぁ
「はっ、はっ、はっ……」
暗く、昏く、黯く。
どこまでもくらい夜闇の中、少年は走っていた。
「父さん……母さん……姉ちゃん……ッ!」
呻くように、嗚咽と共に言葉が漏れる。
だが、振り返れない。振り返れば足を止めてしまう。足を止めてしまえば、彼らの思いを無駄にしてしまうから。
「――『点』『速』」
短く詠唱が聞こえ、背後の夜闇から光弾が飛んでくる。それを打ち返すようにして半ば反射的に右手を振るえば、触れた先から光弾は解けるように消えていった。
だがしかし。振り返ってしたその動作のせいで足が止まる。
しまった、と思う間もなく、すぐ横で女の声がした。
「ああ、そうか。そういえば君には効かないんだったね」
「――ックソ!」
少年はとっさに横を向いて殴りつけるが、その拳はひょいと軽く身を逸らしただけで躱された。それどころかその手を掴まれ、押さえつけられる始末。
「ひどいなぁ。いきなり殴りかかってくるなんて、ワタシはそんなに悪い事をしたかい?」
女がニヤニヤと薄く笑いながら言った。真っ黒いローブを着て、目元を隠すように深くフードを被っている不吉な姿に身震いしながらも、それでも。
「――ッ、ふっざけんじゃねえ!お前が!お前が皆を――俺の家族をやったんだろうが!」
喚くように少年が言い募るが、目の前の女は心底うんざりしたような口調で答える。
「だってしょうがないじゃないか。ワタシだってあんな事したくはなかったんだよ?でも彼らが従わないから……」
「てめえ、いい加減に――!」
「ああもう。どこまで行っても平行線だね」
叫ぼうとした口はしかし、それ以上言葉を紡ぐことはできなかった。
理由は分からない。ただ女が空いた手を少年の顔の前に翳したというそれだけで、体が動かなくなったのだ。
「君の力は強大で危険だけども……大丈夫。ワタシなら、それをキチンと使ってあげられる」
口が開かないのは何かに顎を抑えつけられているからであり、目線だけ下げて見れば透明なクリスタルのような物質で顔の下半分が固められているのが確認できた。
「その
体を蝕むように、透明な何かに周囲を取り囲まれながら。
目の前の女が、唄うように語るのを聞いていた。
***
「うわぁぁぁぁぁ!?」
「どわぁぁぁぁぁ!?」
川で少年を拾った、その日の夜。まったり椅子に座ってパズルゲーをしていた俺の平穏は唐突にぶち壊された。
この世の終わりみたいな大声で叫びながら、いきなり少年が飛び起きたのだ。
「びっくりしたぁ……ようやくお目覚めか?眠りの王子様よ」
「あ、ああ。ごめん…………ここは?」
きょろきょろと辺りを見回して尋ねる少年に短く答える。
「医務室だよ。国立魔法防衛学園のな」
白を基調とした清潔感のある部屋で、少年の体には様々な機器が繋がれ、俺には意味の分からない数々のバイタルサインが測定されている。一番上の心拍数らしきものしか分かんねえ。
そして室内には、ベッドに寝かされている少年以外には俺しかいない。学園に戻ってチーム全員で学園長に任務の報告、もとい文句を言いに行こうとしたのだが、俺だけは何かあった際の監視役として残されていたのだ。
晴原は隊長として任務報告の義務があるし、雪村は完全にコイツを警戒して近寄りたがらないし、雨野はまだ眠っている。マシンガンじみたあの水晶を防ぎきったのだから、まあ無理もない。
「ま、そんなワケでたった一人でお前を見張るなんて言うめんどく……光栄なお役目を預かったんだよ。せいぜい感謝しやがれ」
「それは……ありがとう?」
はあ、とひとつため息を吐いて言うと、おそるおそると言ったふうに少年も礼を言ってきた。素直に感謝が言える、良い奴だ。
「おう、どういたしまして。俺は
「よ、よろしく。オレは……」
と、そこでなぜか少年が言葉に詰まる。
「――名前が、思い出せない……?」
「え、マジかお前。記憶喪失みたいなもんか?」
「……うん。名前も、オレに何があったのかも全く覚えてないし。それに、そもそも魔法少女って……?」
「かーっ、そこからか」
記憶喪失。もしかしたら、と危惧はしていたことだが、実際になっていると本当に面倒だ。名前すら思い出せないレベルとなると、本人から引き出せる情報はガクンと減る。
「魔法少女は、そうだな。兵士というか、対魔物専門の特殊部隊というか……軍人兼害獣駆除業者みたいな感じだ」
「害獣……?」
「おう。魔物っていう、人類に敵意を向ける化け物……猛獣の上位互換みたいな奴らがあちこちに蔓延ってるんだよ。そいつらから一般市民を守るのが俺ら魔法少女の仕事で、ここはその育成機関ってワケ」
「じゃあ、準A級ってのは?」
「魔法少女としての力を表すランクだな。DからA級で五つ。一応、A以上の戦力としてS級もあるにはあるが……まあ、少ないな。本当の切り札ってやつだ」
「……準A級ってかなり上じゃん。君って実は凄かったり……?」
「''実は''ってなんだ、''実は''って。これでもAランク隊の副隊長やってんだぞ」
コイツめ、と肩を小突きながら言う。そうだよ、最近は雪村の成長が著しかったり晴原やら穂村やらのバケモンどもと比較されがちなせいで忘れかけてたけど、俺って一応強者の枠組みには入るんだよな……。
まあ、実際はせいぜい上の下か中の上あたりなんだけども。
「Aランク隊……あれ?さっきは準A級って言ってなかった?」
「隊のランクと個人の級は別なんだよ。隊ランクの方はC、B、Aだけだな」
「……紛らわしすぎない……?」
「俺もそう思う。文句はこの仕組みを作った当時の政治家どもに言ってくれ」
そこで一旦少年からの質問が止まった。俺は椅子の背もたれに体重を預け、天井を見上げる。
国立魔法防衛学園の医務室。 本来なら女子しかいないはずのこの場所に、正体不明の、しかも魔法の結晶に包まれていた少年がいる。聞けば聞くほどおかしな状況だ。
「……そうだ。肝心なこと聞き忘れてた。どうしてオレはここに運ばれたの? さっき言ってた『魔物』に襲われてたから?」
「半分正解、半分はもっと厄介な理由だ。お前、自分がどういう状態で見つかったか覚えてねえだろ?」
「……うん。気づいたら、ここで寝てた」
俺は、彼が巨大な水晶の繭の中で全裸で眠っていたこと、そしてその水晶が弾けた際に周囲の魔力を根こそぎ消失させた(ように見えた)ことを、かいつまんで説明してやった。
「魔力を……消した……?」
「ああ。俺たちの魔法も一時的に使えなくなった。普通の男は魔力に耐性がないはずなのに、お前は魔力を吸い込むどころか無力化しやがったんだよ。これが世間にバレたら、研究対象として利用されるか、あるいは……」
そこまで言いかけたところで、医務室の重厚なドアが音もなく開いた。
「――あるいは我が責任を持って保護するか、じゃの」
俺と少年の視線が入り口に向かう。
そこに立っていたのは、フリフリの黒いドレスを纏い、長い金髪をツインテールでまとめた幼い見た目に不釣り合いな――しかし、圧倒的な威圧感を放つあの「腹黒ロリババア」こと我らが学園長だった。
「目が覚めたようじゃな。体調も問題ないようで何より」
「問題ないこたねえぞ学園長サマよぅ。どうやらこいつ、記憶喪失らしいぜ?」
「ふむ。少年よ、それは本当かの?」
「は、はい。その、助けてもらったのに悪いんですけど、何も覚えていなくて……」
申し訳なさそうに少年が言う。それに対し、学園長は鷹揚に手を振って答えた。
「よいよい。あんな意味の分からない状態で放置されておったんじゃ、そのくらいのイレギュラーは想定しとる」
学園長はそう言って、まるで品定めでもするかのように、じろりと少年の瞳を覗き込んだ。その幼い双眸の奥にある底知れない光に、少年は気圧されたように身を縮める。
「晴原と雪村には任務報告の時に言ったがの。こやつを我が校の一年生として編入させる」
「……マジ?」
「マジじゃ」
顔を見るが、いつもの薄い微笑みでその真意は読めない。
何も知らない人からすればただの可愛らしい幼子のようにも見えるが、実際のところは御歳百歳近いとも聞いている。実際にどうなのかは知らないが、そう噂されてもおかしくないくらい権謀術数に長けているのがこの女なのだ。俺程度の若造じゃ、その足元にも及ばない。
「戸籍も用意した。西園寺家が今年学園に入学する末っ子のために
「戸籍って……コイツの本来の家族はどうなんだよ?」
「――人を使って調べさせたが、分からんかった」
「……どういうことだ?」
「知らんよ。届出が出されんかったのか戸籍謄本には存在しないうえ、行方不明者としても登録されとらんかった。正真正銘、
冗談めかして言う言葉ではない。
だがしかし。このロリババアのような陰謀屋からすれば、このうえなく扱いやすい駒なのだろう。
何かあってもすぐに切り捨てられて、それでいて特異性が高い能力を持っている。特に性格上の問題も見受けられず、なにより後ろ盾も無い。
「……学園長よ。お前はまた、コイツを使って何か企んでるのか?」
「はて。企んでる、とは随分な言い草じゃな。我がそんな悪どいように見えるかの?」
「おう、見えるな。俺らに何も知らせずあの森に派遣したんだ、アンタへの信頼はここ最近で一番低くなってるぜ」
「かっかっか!ずいぶんと嫌われたものじゃな。まあよい、お主らの不満は尤もじゃからの。……少年よ、お主の居場所は我が保証するが、ひとまず今晩はここで寝てくれ。明日の朝、西園寺家から使いの者が来ることになっとる」
それだけ言うと学園長は、よっこいせ、と年寄り臭い声とともに部屋の隅から引っ張ってきた椅子に座った。
「さて。雲出、悪いが外してくれんかの?ここから先は我とこの少年とで秘密のお話、じゃからの」
くふ、と悪戯っぽく笑って言う。まあ、一見すれば妖艶な表情で、幼い外見とはアンバランスな魅力があるとも言えるのだろうけれど。
「ババアのくせになーにかわいこぶってんだよ。年考えろ」
「いいじゃろ我可愛いし。ほれ、とっとと出た出た」
しっしっ、と追い払うように手を振られた。
仕方なく席を立って、そして最後に釘をさしておく。
「……言っておくが。アンタのやり方がいつまでも上手くいくと思わねえ方がいいぞ」
「……ほう?」
「晴原から聞いてるだろうが、森におかしな魔物がいた。学園からそこまで離れてないはずの森に、だ。今までとは違う何かがいるとして――それがこんな近くまで来てるってのは、アンタにとっても良くない事なんじゃないか?」
学園長は何も答えなかったが、さっきまでの薄い微笑みが、ほんの少しだけ形を変えた気がした。
それが肯定なのか否定なのか、あるいはただの気のせいなのか、それは分からないけれど。それでも、言って無駄という事はないはずだ。
「……あ、あの!」
そうして立ち去ろうとする直前。廊下に出てドアを閉めようと手をかけたところで、思い切ったように少年に声をかけられた。
「オレの名前、なんて名乗ればいいと思いますか?」
「……俺に聞かれてもなあ。だいたい、これから西園寺の方で暮らすんだろ?
俺の言葉に少年は少しだけ俯いて、布団を握りしめた。
「……誰かに決められるんじゃなくて、自分で……自分の名前を決めたいんです。そうじゃないと、なんだかダメな気がするんです」
「……じゃあ尚更、俺なんかに聞くこたぁねえだろ」
言うと、ぐ、とその喉の奥が詰まったような音がした。まったく正直なやつである。腹芸とかできなさそうな感じだ。
「お前、何か好きなもんは無いのか?なりたいもんとかは?」
少し考え、口を開く。
「名は体を表す、ってな。そうありたいと願ったんなら、その名前を名乗るのがいいだろうがよ」
少年の顔を見てそう言うと、彼は少しの間俯いて考え込んで。そして顔を上げると、ぽつりと言った。
「……マモル。西園寺 マモル」
その名前がしっくりきたのか、うん、と小さく頷いている。そして、優しく、しかし強い意志の感じられる微笑みで続けた。
「誰かを守れるような、誰も傷つけさせないような。そんな人でありたいんです。それが、真っ先に思いつきました」
「ほーん……まあいいんじゃねえの?」
「ちょいと古風じゃがの。ま、無難なところじゃろうて」
「お前が古風とか言えるクチかよ」
軽口混じりにそう言い残して、ドアから出ようとして――そこで少し、悪戯心が疼いた。
だから。首だけで振り向いて、精一杯の笑顔で言ってやる。
「じゃあ、改めて――日本国立魔法防衛学園へようこそ、西園寺マモル。お前がこの学園での生活を通じて魔法の正しい使い方を学び、平和のために役立てる事を期待してるぜ」
「あー!それ我のセリフじゃ!なに横取りしとるんじゃお主は!」
学園長が立ち上がって文句を言ってくるが、もう遅い。
「じゃーなマモル!いい夢見ろよー!」
「おいこらお主待たん――」
ぴしゃりと扉を閉めて文句はシャットアウト。そしてそのまま、夜の廊下を駆け抜けていく。
そこでふと、違和感を覚えた。さっきまでの会話から、何かを疑問に思ったような気が――
ああ、そうだ。
「――学園長の名前、なんていったっけか?」
***
国立魔法防衛学園に所属する魔法少女達は、併設された寮に入る事が強く勧められる。
医務室を出て、長い渡り廊下を通り過ぎて。校舎の隣に位置する六階建ての大きな建造物――一見すれば病院のようにも見えるそれが、俺たちの住む寮だ。
寮監には帰りが遅くなると既に連絡を入れているため、特に問題なく正面玄関から入る。
そのまま階段を登って、三階、三〇五号室のドアを開けると。
「……遅かったな、雲出」
左右の壁際に並んだベッドの片方に腰掛けた晴原が、読んでいた本から顔をあげて声をかけてきた。
既に入浴を済ませたのかほんのりと湿った長い赤毛は解いておろされ、心なしか少し緩んだ目つきと相まって昼間の凛とした様子とは違う、リラックスした雰囲気に包まれている。
「わざわざ待っててくれたのか、悪いな」
「……あの少年の見張りを押し付けたような形になってしまったからな。そんな私が先に眠るわけにはいかん」
だからといってこんな夜まで待っていてくれるとは。なんとも義理堅いというか、生真面目というか。
その心遣いに感謝しながら、俺はもう片方のベッドに倒れ込む。
「せめて着替えてこい。そのまま寝るのはあまり良くないぞ」
「色々と疲れたんだよ……聞いてくれよ。マモル……ああ、あの少年のことな。あいつ、どうやら記憶喪失みたいでよ」
「それはまた……大変なことだな。しかも転入生として扱うのだろう?」
「なんで知って……ああ、そういや俺よか先に言われてたんだったか」
うつ伏せに突っ伏したまま顔だけを上げ、渋々立ち上がってタンスの前へ。今日はもうシャワー浴びないでいいか……布団も明日纏めて洗っちまえ。
俺がゴソゴソと部屋着に着替えるのを尻目に、隣のベッドに腰を落ち着けたまま、晴原が静かに続けた。
「転入、か。アイツを転入生扱いとは……学園長はまたとんでもないことを考えるな」
「学園長的にはコイツをここに置いとく方が都合がいいんじゃねえの?あんなん外に出したらもっと面倒なことになりそうだし」
「……それはそうかもしれないが」
晴原は少し考えるように口をつぐんで、それから言った。
「お前は、あの少年――マモル、だったか。あいつをどう思う?」
「どうって……」
「怪しいとか、危ないとか、そういう話じゃない。お前個人として、だ」
問われ、少し考え込む。
確かに、マモルは学園にとって異物である。魔力を消すなんていう、魔法少女からしたら危険極まりない力を持ってもいるが――
「……まあ、悪いやつじゃあねえと思うぜ」
それでも。医務室で言っていた『誰も傷つけさせないように』という信条に、嘘は無いように思えた。
「……あいつのせいで雨野はまだ気絶したままなのにか?」
「いやあ、まあ、それはそうなんだけどよ……」
すう、と晴原の目が細められる。
確かに雨野が気絶したのはマモルの――マモルに関係深いだろうあの水晶のせいだ。
けれどそうだからといって、マモル本人まで糾弾しようというのは――俺はあまり好かない。
どう言えばいいか。なんて、あれこれ考えていると――不意に晴原がふ、と小さく笑みをこぼした。
「いや、悪いな。ほんの冗談だ。雨野も明日には起きるだろうし……お前がそう言うんだ。悪いやつじゃあないんだろうさ」
「はー?なんだお前、趣味の悪ぃ」
冗談にしては割と本気度高いように見えたんだが。
「すまんすまん。まあ、私もあいつ自体はそこまで悪くおもっていないさ。あいつのおかげで二本角を撃破できたって所もあるし、それに」
「?それに、なんだよ」
「――お前のこういう時の勘は当たるだろう?」
まっすぐ目を見据えられ、少しすわりが悪い。
「いやぁ……んなこたねえよ。俺がそう思ってるってだけだしよ」
「だとしても。お前は私の隊の副隊長で、友人だ。そんなお前がマモルを悪いやつじゃないというのなら、私が信じる理由としては十分さ」
しれっととんでもない事を言いやがった。なんだコイツ、
なんだか妙に気恥ずかしくなって。話を変えようと、別の話題を振る。
「ま、それはそれとして……なあ、今度は俺からひとつ聞いていいか?」
「ん?なんだ?」
「お前、学園長の名前を知ってるか?」
「何を言っている。知っているに決まっているだろう。確か――」
と、そこまで言って。晴原の言葉はピタリと止まった。
「……あれ……知ら、ない?」
「ちょうどさっき、学園のホームページを見てみたんだが――そこにも名前は書いてない。二つ名の『流星』しか載ってないんだ」
ほら、と携帯の画面を晴原に向ける。そこには学園の代表者として学園長が載っているが――''魔法少女・『流星』''としか書かれていない。
学園の公式ホームページみたいな対外的な場所に責任者の名前が書かれてない、なんて事は有り得るのか。
「……何より――俺もお前も、『学園長の名前を知らない』という事自体をおかしいとすら思えていなかった」
「……じゃあ。なんで今、私たちはそれに気付けたんだ?」
思い起こされるのは、あの少年のこと。
「多分なんだが……森の中で完全に魔力が抜けた瞬間があったろ?」
「……ああ。あの時に何かが綻んだという訳か」
言って、短い沈黙。
パタン、と晴原は本をサイドボードに置くと、ゆっくりと布団に潜り込んだ。どうやら寝るつもりのようである。
それに倣って俺も横になる。
「とりあえず明日、雪村と雨野にも確認してみよう。そこからどうするかは、また後で考える」
「……そうだな。もしアイツが何か企んでるとして――
電気を消すと、しばらく部屋に沈黙が落ちた。
天井のわずかな染みを眺めながら、俺はぼんやりと思う。
学園長が俺たちに魔法をかけているとしたら。
それはどれくらい前から? 学園に入る前から? それとも、もっと――
「……寝ろ、雲出。考えすぎだ」
「寝れるかよ、こんな話した後に」
「寝ろ」
「……はあい」
晴原の声は相変わらず素っ気ないが、どこか無理やり話を終わらせたいようにも聞こえた。
コイツも、怖いんだろう。
俺と同じように。
***
そんなこんなで次の日の朝、登校時間。どんな疑念を抱えていても、学生である以上は登校しなければいけない。
そうして、寮から校舎へと続く渡り廊下から見下ろせる校庭の、そのど真ん中で。
「
金髪ツインドリルのいかにもお嬢様然とした見た目の女子が、ズビシィ!と指を突きつけてマモルにそう言い放っていた。