「ふんすふんす、良いタイツの匂いだ!」
這いつくばってシャカシャカと路上を移動し、女性の下半身に迫る成人男性サイズのイグアナ人間。端的に言ってキモい。
女の子の足元に這いよってくる姿はまごうことなき変態。
「きゃーっ!!!」
誰だって悲鳴を上げる僕だってそうする。
「やめんか!この変質者がーー!!」
故に不意打ち両足踏みつけしても許されると思います。アンブッシュは一度までだが許可されている、ハズ。
「ぐげぇ!」
変な悲鳴を上げて潰れたカエルのようになるイグアナ。その間に追われていた女性に叫ぶ。
「今のうちに早く逃げて!!」
「有難う御座います!」
夕方の人通りが多い大通り、逃げ出す人に恐る恐るこっちを伺う人。人人人。半分ぐらいが何事かと伺っている。
なんで皆避難しないんですかねぇ!?
あれか?まだ特撮の撮影か何かと思ってるのかな!?
そんなこと思いながらもイグアナギルディからは目を外さない。
ゆっくりと起き上がりこちらを見つめるイグアナギルディ。
「ほっほう、なかなかのタイツ力。そしてその堂々たる出で立ち。あえて聞こう貴様の名を!」
指差されて名指しされたなら答えるのが男よ!今は女の子だけど。
堂々とポーズを決めて決め台詞を言う。
「闇夜を照らす煌めく光ッ!テイルシャイニング!!」
「やはりな、我が名はイグアナギルディタイツ属性「フットスキン」に魅せられた戦士よ!」
そして油断なく構え相手の様子をうかがう。
そういえば戦闘員はともかくエレメリアンと直接戦闘は初めてだな。リザドギルディの時は不意打ちした上に様子見で終わったし。
油断なく構えるコチラに対し、相手は構えもせずにこちらを見つめる。そしてじっくり眺めた後に口を開く。
「なかなかのタイツの着こなし、あっぱれである。白のタイツは視覚効果で膨張させ足が太く見えるはず、しかしそれでいてスラっとした脚線美を描くとは、貴様なかなか出来るな!!」
口を開いたと思ったらそれかよ!
足太いとか言うな、ぶっ飛ばすよ?これデフォルトだし僕の意思じゃないからな!と心のなかで言い訳し相手を睨みつける。
「イメージカラーが白である以上それ以外のタイツは似合わんだろうが、しかし素晴らしい。良い脚線美、良いタイツだ。」
「遺言はそれでいいかな?」
腰部のフォースクリスタルを叩き、回転しながら出てきた
「ふん、まだ見ぬタイツを求めるために、今ここで果てるわけにはゆかん。そのタイツ戴くぞ!」
腕を組みながらそんなことを言うイグアナギルディ。畜生無駄にいい声しやがって。
眉が上がるのが自分でもわかる、足が太いと言われたことを怒っているわけではない。
周りに人が近くにいる以上、リザドギルティの時のように攻撃範囲が広く、未だに制御が若干怪しい鞭や連結鎖状刃は使えない。ここはハンマーだ。
「モードミョルニル!」
掴んだマルチプルウエポンを天に掲げて叫ぶことで光の粒子が形作る。その姿はハンマー!
金に輝く巨大なハンマー柄の長さは一メートル、ハンマーの要であるヘッド部分はそれに対応して大きい。形状としてはスレッジハンマー、片面が釘抜きになっているようなネイルハンマーではなく、両方でぶっ叩けるタイプだ。
それを軽く振り回し構える。重さも思いのままに出来るって武装としてかなり優秀だよねマルチプルウエポン。インパクトの瞬間だけ重量上げたり出来るのはかなり便利だ。
「ほう、なかなかに愉快な武装を出す。しかし私には効かぬ!」
ようやく構えを取るイグアナギルディ。
相手に獲物を準備させてからようやく戦いの構えを取るとか言うその余裕、ぶっ潰す!
「それはどうかな!?」
声とともに脚力に任せ一瞬で距離を詰める、そしてハンマーを全力で振り、柄がしなるほどの速度で横に振って腹に叩き込んだ。
「ぎょみょ!?」
変な鳴き声とともに壁にたたきつけられるイグアナギルディ。防御もせずに食らって飛んでいった。
更にたたきつけられた壁が崩れ、その下敷きになる。そしてあまりのあっけなさに叫んでしまう。ガラガラと崩れた壁の下敷きになっては奴も生きてはいまい!
「やったか!?」
ガラガラと崩れた壁の下敷きになっては奴も生きてはいまい!
【それ分かって言ってるでしょう、シャイニング。】
変身してる時は一応シャイニングと呼ぶらしいリフエットのツッコミが耳元に来る。
「まぁね。なんでもいいから振り回したい気分だった、今は反省している。ちょっと気が立ってたかな。」
気にしてないつもりだったけど今日のいろんなことが頭にきてたみたいだ。
そう思い直し、壁の瓦礫に埋もれたイグアナギルディを見る。
「ふぅん!」
崩れた壁の瓦礫を吹き飛ばし、立ち上がるイグアナギルディ。まるで効いていない?
「予想以上の速度になかなかの攻撃力!しかし我がタイツの前に打撃も斬撃もきかぬ!」
そう言われてよく見ると体の周りに薄く膜のようなものが張っている。あれはバリアかな?
タイツ属性ということはその厚さを変えられるかもしれない、つまり強度と伸縮性も変えられるということ、つまり戦闘スタイルは防御型か?
なら撃破する方法は。その防御を超える攻撃を繰り出す事。
つまり力押しだね!
戦略を即効で組み直し、武器を構え直す。
「なら、本体が平面になるまでぶっ叩けばいいんだ。ブッ潰す!!」
「えっ」【えっ】
イグアナギルディとリフエットから疑問の声が飛んだけど無視無視。
対斬撃、対衝撃といえど限界はあるはず、故に限界を超えて叩き続ければいつか潰せるはず。
バリア膜が体の近くにあるということは勢いをつければ本体までぶち抜けるかもと思い、瞬く間に接近しハンマーでぶっ飛ばそうと振り下ろす。
が。
「ぐぬぅ!なかなかの攻撃力だがこの程度の威力では私のタイツは破れんぞ!」
「くっ!こんのお!」
両腕をクロスしただけの防御で振り下ろしが防がれ、ならばと横に振りかぶるが今度は直撃しても微動だにしない。
驚いていると腕を組んだイグアナギルディが余裕そうに声をかけてくる。
「ふん、だから言っただろう?我がタイツの前に打撃も斬撃もきかぬ、と。さあ諦めてそのタイツ属性を渡せ!」
「はい、そうですかと渡すわけがないだろう?」
そう言って僕は後方に大きく宙返りをしながらジャンプする。
しかし新しく武装を作るにはネーミングもあるし、最初のイメージが大切なのだ。つまりかなりの溜めが必要になる。敵の眼前でそんなことをしてる暇はない。多分。
故に今は手持ちの装備で何とかするしかないため武器に意識を集中させる。
「ハンターチャーンス!」
ワードを紡ぎ、さっきよりもハンマーの頭の部分を巨大化する。
サイズは小型バスと同じぐらいまで上げ、重量はインパクト時に同じにするイメージ。攻撃に使う面とは逆の打撃面にブースターをつけ点火!
ガシャコンという稼動音とともに唸りを上げるブースター!よし。
それを振りかぶって構え、駆け出す。
徐々に加速していくその姿は、まるで白き矢が金の尾を引くように一直線にイグアナギルディへ向かう。
「くっ、まさかこんな力押しの作戦で来るとは!タイーツバーリア!デ・ニール!!」
薄く貼られていた膜が厚みを増す。そして体からかなり離れる。一メートルぐらいか?ちょっとそれきいてない!
インパクトの瞬間に合わせるつもりだった振りかぶりの一撃のタイミングをずらされるが、勢いに乗った身体はもう止められない。
すぐさま勢いを殺さずにジャンプし、縦に一回転してハンマーを叩きつけるが、バリアがたわみ、ハンマーの勢いが一気になくなっていく。
「ぐぐっ!」
そして全体重かけて振り下ろしたハンマーは、ぎりぎり届かず勢いが止まる。
「自身の勢いを返され吹き飛ぶがいい!」
急にバリアの反発力が強くなる。いや、戻ろうとしているのか。まずい!
戻るバリアによってトランポリンの要領でかなりの速度で来た方向へ打ち出される。反射方向の調整ができるのか路面と水平にだ。
突っ込んだ勢いよりも早く吹き飛ばされアスファルトに叩きつけられ、その衝撃で武器を手放してしまう。
そのまま受け身も取れず、かなりの勢いでアスファルトを滑り転がる。
「ぐ、ぅ……」
結構ふっとばされたけど、体に問題ないかな?あまり痛みを感じないけど。転がったせいで若干頭がふらふらするけどその程度だ。
確認してみれば衣装がボロボロになっただけで擦り傷一つ無い。ただしずいぶん恥ずかしい格好になっている。
【大丈夫ですよシャイニング。前に言ったとおりこのギアは当事者のダメージを衣装に変換するので体にダメージが入らないんです。痛みはないでしょう?】
「そうだね、でもそれ露出が増えるから精神的には大丈夫じゃないんですけど!?」
タイツはところどころ破けて素肌が見え、脚や腕の装甲にも罅が入っている。軽く動かす度にボロボロと装甲が剥がれ落ち、クリスタルもところどころ欠けている。
中破ってところだろうか?戦闘行動に支障はないけど防御能力が著しく落ちてる気がする。
【大丈夫です!バイザー破損は最後になるので顔バレはしないはずです。それに首元の結晶でイマジンチャフが効いていますし。】
「そうだけど、そうじゃないーー!」
まぁ、自分の見た目気にしてる場合でもないか。
転がってふらつく頭を軽く振って意識を持ち直す。吹き飛ばされて距離を取ったとはいえ追撃を食らってもたまらないからね。
と思ったのだがイグアナギルディはこちらを見つめたまま動かない。
表情はわかりにくいが驚いてるのか?
「なるほど……破れたタイツもまた素晴らしい。不規則に破れ肌を晒す、それは扇情的であり!これもまたタイツの魅力!!」
そう言って僕を睨め付ける。やめろ気色悪い!
「しかし大層な名前の割に大したことないなテイルシャイニング。防御は最大の攻撃とはこの世界の言葉だったか?私は何もしていないというのに貴様はもうぼろぼろだ。」
ふんぞり返ってこちらを指さし講釈を垂れる。
相手の言うとおりなのが気に食わないが、事実そのとおりだ。こいつの戦闘スタイルがカウンターもできるということで物理攻撃は相性がちょっと悪いかな。
今手持ちの最大火力であるハンマーが駄目となると厳しい。使える中の手持ちで鞭と連結刃も多分効かないだろう。
鞭はともかく連結刃の切れ味で今のバリアを切り裂けるとは思えない。
【幾つかの機能の解析が終わりました!新しい武装が使えますよシャイニング!】
常に何かチェックしていたリフエットから武装のロック解除の声が響く。
朗報だ。僕が初変身をした日からギアの不明部分の解析をしていたリフエット。その成果が今明らかに。
【もともと私の使っていた武装が使用可能になりました。他はロックが掛かってて使えませんが、こいつ相手なら十分だと思います!】
「で、その装備の取り出し方は?」
【胸下のフォースクリスタルを左手で叩いてください、すると正面に魔法陣が展開されるので、そこに手を突っ込んで引き抜いてください。】
「了解!」
そう言って鳩尾にあるクリスタルを左拳で叩く、すると軽い衝撃とともに魔法陣が展開される。そして左腕が荒ぶり始める。
腕が熱い……!まるで燃えるようだ。その熱さをこらえながら左手で魔法陣の中心に手を入れ柄を掴み引っ張る。
スルリと出てきたのは太刀。このサイズで言うならば大太刀か。ただの大太刀と違うのは鍔らしきものがなく、刀にしては太いということだ。
そしてそのサイズにもかかわらず、ずいぶんと軽い。多分木刀ぐらいか?
この太刀を手にした途端に左腕の熱が収まり、腕に描かれた紋が鈍く輝く。どうなってるの、この腕の紋様。
「この武器の名前は?」
【テイルセイヴァーです。うに点々ですよ?ヴですよ?きちんと発音してくださいね?】
武装名をリフエットに聞くといつもの感じで返事が返ってくる。
あぁ、うんそこ大事だよね。わかるわかる。
「テイルセイヴァーね。了解。」
そしてテイルセイヴァーを逆手に持ち替え、構える。
バイザーが光り、使い方が頭に入ってくる。この武器の記憶が、戦いの経験が流れ込んでくる。なるほど。
「ほぅ?大層な武器を持ち出してきたな?だがさっきも言った通り、私のバリアを破れるものなどありはしない!」
「それは今までの話だよ。今この時からは違う!唸れ光刃!!」
某宇宙戦争のセイバー音だこれ。
光とともに自分に力がみなぎってくる。足に力を入れ、駆ける。左にセイヴァーを持ち、低く這うように。
「諦めの悪さは評価するが、また同じようにやられるがいい!」
目の前にあの膜のバリアが展開されるが、刃を一振りすることでそれは、さっきの強度と伸縮性が嘘のようにはらりと切れる。その勢いで一回転して僕はそのまま駆ける。
体の各部にある結晶が光を放ち、さらに力が沸き上がってくる。
まるで
その勢いのまま懐に飛び込む!
「なにっ!」
そして表情を驚愕に変えるイグアナギルディ。
自分のバリアが破られたことで動揺したのか、新しく展開せずに両腕をクロスさせて防御する。
ならばと僕はその懐に入り、しゃがみ込み真下からその両腕のクロスしたポイントに蹴りを叩き込む。
「ふっ飛べ!!」
火薬を仕込んでいたかのように足から爆発が起こり、蹴り飛ばした勢いと爆発が合わさりイグアナギルディが無防備なまま宙に浮く。
刀がさらに閃光を放ち、刃の部分だけではなく刀身全体が光に包まれ、白く光る粒子を辺りにばらまく。
その粒子が辺りを満たし、そこだけ真っ白なキャンバスのように白に染まる。
僕の心に言葉が流れる、それは必殺の言葉。何者にも染まらぬ白の無垢なる一撃。
「白き刃が悪を立つ!必殺!シャイニングイレイザー!!!」
宙に浮いたイグアナギルディを一刀のもとに斬り伏せる。
光の線が空に走り、白の一文字が入ったイグアナギルディは光となって散りはじめる。
なんとか、勝った……そう思いながらもへたり込みそうにな体に力を入れる、まだ相手は死んでいない。
「ふっ、タイツの新境地とくと見せてもらった。これを胸に私はゆこう。私はタイツに包まれた足ばかりを見ていたが、なるほど股に張り付くタイツもなかなか乙なものであった。さらばだ!」
「ふ、巫山戯るなああああ!!」
最期の言葉と共に光となって消えるイグアナギルディ。
白く染まっていた世界も元に戻り、いつもの通りになっていく。
確かにかなりの開脚蹴りしたけど!タイツに包まれた股を見られて満足して死なれるとか嫌過ぎるよ!!
光の粒子となって消えたイグアナギルディだったが、最後に僕にさらなる精神的ダメージを残して散っていった。
軽く周りを見れば戦闘員もおらず、戦闘の痕跡は僕がイグアナギルディをぶつけて壊した壁だけだ。
周りの人も恐る恐るこっちを見ているが安心した表情の人が多い。
「ん?これは……」
イグアナギルディが光になって消えた場所には青い結晶が落ちていた。
とりあえず拾ってみる。小粒でありながら、ずしりと重いそれは、何かが詰まった物のようだ。
【それは
そうか、これが
とか感慨にふけってる場合でもないな。愛香ちゃんが戻って来ても面倒なことになりそうだし。とっとと退散するべきだね。
そう思ったところで声をかけられる。
「あのっ……!ありがとうございました!」
振り返ってみればさっきの襲われていた人だ。あれ、今気がついたけど僕の通っているの学校の制服だ。
しかも、クラスメイトだったような気が……気のせいだな!
「いえいえ、お気になさらず。」
そう言って軽く手を振り、去ろうとしたのだがその手を掴まれる。
あれ、今その挙動が見えなかったぞ?
「名前を、お名前を教えて下さい!」
「え、テイルシャイニングです。」
答えたら手を離してくれないかなーと思いつつ回答をするが、一向に離してくれそうにない。
強く掴んではないけど熱っぽい掴み方で、掴まれたままじゃ帰るに帰れない。
と思いながらも質問は続く。アルティメギルが打倒されたために人がだんだん戻ってきて、僕の方に走り寄ってくる。
「ご趣味は!?」「年齢は!?」「好みのタイプは!?」「お姉さまとお呼びしてもいいですか!?」
よし、帰ろう。丁寧に手を離させてすみやかに帰ろう。
「すみませんが、装備の修理のために帰らなくてはならないので。これ以上の質問には答えられません!」
申し訳ないが僕の手を掴む手を軽く振ることで払い、質問飛び交う路上を駆け出す。
そして、ある程度引き離したところで高くジャンプし、ビル壁を蹴り、さらに空へ上がり転送を頼む。
「リフエット、よろしく。」
げんなりしながらの言葉にあまり力がなかったのか、リフエットがいたわるような口調で了承の言葉と慰めの言葉をくれた。
【了解です。今度から一般人に囲まれる前に帰りましょうね?】
「そうするよ。うかつに質問とかにも答えないようにする……」
エレメリアンを倒すのに苦労し、その後帰るためにも一苦労し、僕の二回目の戦闘は幕を閉じた。
そして、僕はまたネットに上がるであろう動画に頭を痛めるのだった。
◆
喫茶アドレシェンツァの地下深く。
正義の味方の秘密基地ともいうべきシチュエーションのようなその場所は、今実際にアルティメギルと言う異世界の侵略者から地球を守るテイルレッドの基地となっている。
今キーボードを叩き画面に映し出される映像を吟味しているのは、基地を超技術で創り上げた異世界の天才科学者トゥアール。
彼女が今眺め見聞しているのは今さっきまでイグアナギルディと戦っていたテイルシャイニングであった。
自分の創りだしたテイルギアに似ている装備をして戦う白の戦士。彼女はその正体を確かめようとしているのだった。
「この人は一体何者なのでしょうか……?」
「とりあえずのところは味方ってことでいいんじゃないかしら?」
ポロリとこぼしたつぶやきにも似た言葉に答えたのは観束未春。
観束総二の生みの親であり、アドレシェンツァのマスターであり、重度の中二病患者である。彼女はこの地下基地の建設にOKを出し、トゥアールを観束家に住まわしている、その理由は簡単だ。
異世界の侵略者、異世界の美少女科学者、自分の子供が変身。
ここまで役が揃いかつ中二病を拗らせた未春が、喫茶店の下に秘密の地下基地と変身ヒーローの家に転がり込む異世界の科学者というシチュエーションを拒否する理由があるはずがなかった。
ただし条件として、自分もその基地に入れてほしいというか、仲間に入れて欲しいという条件が付けられたのは余談だ。
作業を止め、椅子ごと向き直り未春の様子をうかがうトゥアール、未春は良い笑顔だ。
映像はループし今日の戦闘の最初に移っていく。それを二人で改めて鑑賞する。
「変形武装を持ち、相手の能力を測り、切り札で逆転勝ち。いい王道よね!もうちょっと苦戦してくれると切り札がもっと映えたのだけれどね。」
それでも名乗りにポーズを決め、必殺技で技名を叫ぶその姿に未春とトゥアールは総二にはない何かを感じ取っている。
「えぇ!やられた姿も良い感じですね、衣装が破け肌があらわになり装甲が破損する。総二様にはない色気というものを武器にしてきましたね。侮れません!」
幾つか映しだされている別のスクリーンではテイルレッドが女生徒にもみくちゃにされている映像が流れている。
「二番煎じになるかと思えばそうではなく別路線ね!総ちゃんが皆から可愛がられるかわいいマスコット系だとするならばこの娘は青少年のリビドー溢れさせる性戦士ね!」
うまいこと言ったと思っている未春の後ろスクリーンでは、テイルシャイニングの戦闘背景でうずくまって動けない男子生徒の姿が写っている。
「カラーリングからホワイトと思わせてのシャイニング!光の戦士!いいわね!そう言うの私大好き!」
光の粒子をまき散らしながら疾走し、とどめを刺すシャイニングを見ながら目を輝かせる未春。光と闇は中二病患者にとって切っても切れないものであるために、その輝きに彼女は目を奪われるのである。
そして正面のスクリーンの映像はボロボロに成ったシャイニングの全身図で止まる。
「穢れを知らない白のカラーリング、光つまり希望の道標となる符号の戦士。げへへ、汚したらさぞ気持ちが良いんでしょうね未春将軍……!」
「えぇ……白き戦士の悪堕ちもいいわね!なんて言ったって私は悪の女幹部ですもの……!!機会があったら捕まえてきてねトゥアールちゃん?」
その画像を見ながらの二人の顔はおよそ正義の味方のサポートではなく完全に悪の幹部と悪の科学者のそれであった。
天使のような悪魔の笑顔で笑う二人のもとに愛香が辿り着くまで後1分……
大きかろうと小さかろうと悪巧みはいつだって正しい心を持つ誰かに潰されるのである。