ブルアカの生徒達が現代に転移する話   作:松花 陽気

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やあやあ、久しいね。ちょいと作るのに時間がかかっちまったよ。
そうそう。一応、話としては十話で終われたら終わらしたいと思ってます。ただ、急にスピーディになるのは私として避けたいので。書きたい内容もあるしね。

あと、活動報告で次なる現実来訪する生徒の募集アンケートをしています。コメントの数だけ票として受け取ります。この生徒が見たいなど名前を指定してね。詳しい内容は、活動報告にあるから読んでね。


第五話:初めての共同作業

スーパーからの帰り道。冬の日没は早く、空はすでに濃い群青色に染まり始めていた。

両手に重いレジ袋を提げたタロウの隣で、イオリは新しく買ったダッフルコートのポケットに手を突っ込み、心なしか足早に歩いている。

 

「……あー、もう。本当に疲れたわ。鎮圧の現場にいる方がまだマシなくらいだ」

 

「僕も似た気持ちだ。夜の深夜バイトしてる方がまだマシだったよ。僕の精神的なMPも、あそこのレジを通った瞬間にゼロになったよ」

 

彼は前に出て一緒に会計をした際に、恥ずかしさで顔が真っ赤だった。同時に、イオリの顔も赤かったので、すごい生暖かい目線で見られた。

二人して大きなため息をつく。けれど、ふとした瞬間に視線が合うと、先ほどの気まずさがぶり返して、すぐに二人して前を向く。

 

「……まぁ、でも。これでしばらくは不自由しないだろ。パジャマとかの替えも買ったしな」

 

「そうね。何から何まで本当にありがとうタロウ。正直、お前がいなかったらと思うと、今更ながら怖くなったよ」

 

「気にするな。困った時はお互い様だしな」

 

「うん。……ありがとう、本当に」

 

「だから気にするな。ルールで決めただろ?お前を絶対に助けるって」

 

「……あ」

 

そうだった、と自分で言っておきながら思い出すイオリ。今少しだけ、それを少しだけイオリは後悔する。でも、何故後悔したのかという理由までは、彼女にはまだわからなかった。

 

「そ、そうだな。なら、助けるのは当然だよな」

 

俯きながら小さな声でそう呟く。

タロウは、その声を聞き取る事はできなかった。

 

 

 

「重ねて言うけど、お金まで出してくれてありがとう。ルールでそう決めたけど。……結構、いたい出費じゃなかったか?」

 

「だから別に気にすんな。こう見えて余裕はあったからそこまで苦じゃない。なんなら、使い道に困ってたくらいだし」

 

仕送りしてもらいながらバイトをしているタロウだが、別段貧乏とかそういうわけではない。かといって裕福とまでもいかない程度の稼ぎだが、趣味にほとんどお金を使わないので最低限の出費で済んでおり意外と貯金はあったのだ。

 

「でも、今回結構しただろ。合計で3、4万は余裕で超えたし。……ここまでしてもらっておいてなんだけど。あまり無理はするなよ」

 

「無理はしてないけど。……まあ、善処はするよ」

 

まあ本当は少し無理をしたのだが、と心の中だけで彼は思いながら会話を切ると、アパートに帰るのだった。

さて、当分はバイトに少し力を入れた方がいいかもな……と、そんなことを考えながら。

 

□□□

 

辿り着いてすぐ、タロウはイオリに買ってきた衣服などを収納させた。

少し大きめで最低限の服しか入っていないタンスの全く使っていない引き出しをイオリに明け渡して、その中に入れさせる。別の引き出しにタロウの服が入ってるが、まあ間違えるわけないだろうと考えた。

 

収納が終わると、一仕事終えたからか二人同時にお腹が唸りを上げた。時計を見れば既に時刻は18時を過ぎていた。

 

「もうこんな時間か、飯作るか」

 

タロウが晩ご飯を作るため台所に立つと、イオリも手伝おうと彼の隣に並んだ。当たり前のように隣に立ったイオリに、タロウは少し呆気に取られていた。

 

「あの……」

 

「……なに?」

 

「隣に立たれると困るんだけど」

 

一人でやるつもりだったタロウは、頭に疑問符を浮かべてそう問いた。

 

「いや、私もやる。今日はいっぱい世話になったから。こんなことで返せると思ってないけど。朝ごはんの時もフォローしてくれたし。それに、家事をするって約束だから料理はまだまだだけど、これから覚えるから、一緒にやらないか?」

 

イオリは、朝の時を思い出しながら、提案する。

 

「毎度言ってるけど。僕らで決めたルールで君を助けるために動いてるんだ、気にすることはない。家事のことは気にするな。適材適所ってことで別のことを任せることもできるんだし、無理して料理をしなくても」

 

「私が嫌なんだ!このまま料理できない女として見られるのは、私が許せない!だから、お願い……教えてくれる、か?」

 

必死に懇願するイオリ。今の時代、多様性なのだから女が必ずしも家事しなくちゃいけない訳ではないのだからそこまで考え込まなくても……とタロウは考えていた。

イオリは真面目な少女だから、どんな家事でもやるつもりだ。なにより、彼女は義理をしっかり果たしたいタイプの人間でもあったから、そんな自分が返せるものなどそれしかないと考えているのだと、タロウは思った。

 

それを踏まえてしばし考える。

多分、何を言っても納得はしないだろうとタロウは考えて。……イオリのお願いを聞くことに決めたのだった。

 

「わかった。そこまでやりたいというなら、止めないよ。慣れるまでは付き合ってやる」

 

「っ!……うん!それで、今日は何を作るんだ?」

 

「そうだな〜」

 

呟きながら冷蔵庫を確認する。

結果として、中はそんなになかった。ハムとかベーコン、卵複数。家庭に必ずあるマヨなどの調味料、漬物などのご飯のおかず。野菜室には長ネギとキャベツなどの葉野菜が少々。それと、冷凍ご飯があった。

 

(時間も遅いし、早めに食いたいから。……このラインナップなら、あれが作れるかな?)

 

丁度良く残っている材料から、作るものを決めてそれらをそこから取り出し、続いて調理器具を出す。

 

「晩に食うイメージは無いが、あれを作ろうと思う」

 

そうしてタロウは、その最強のコスパ飯を告げる。

 

「炒飯だ!」

 

……と。

 

「……炒飯か。もっと難しいのでもよかったんだが」

 

「おいおい炒飯とか簡単だろとかって思ってるだろ!お店のみたいにパラパラにするの、結構ムズイんだぞ!」

「まあ、楽しみにしとけよ」

 

そう言って、タロウはボウルと卵二つとイオリに渡し、溶き卵を作ってもらう。

 

「じゃあ、まずは卵を混ぜてくれ」

 

「あぁ」

 

その間に、まな板の上に長ネギとベーコンを出し、切る。ベーコン四枚を重ねた状態で短冊切りにし、長ネギは小口切りにする。手際良くスピーディにそれを終わらせて、冷飯をレンジに入れてセットする。そうしてる間に、タイミング良くイオリが混ぜ終わった卵を持ってきた。

 

「これでいいのか?他に調味料はなし?」

 

「あぁ、これでいい」

 

それを受け取って、次は切った物を焼こうと考えてフライパンを出す。

 

「やってみるか?」

 

「うん。やる」

 

イオリをコンロの前に立たせ、フライパンを起き、その中に油を垂らして彼女に広げさせる。

 

「次にベーコンとネギに火を通す。入れていくから、これ使って軽くかき混ぜて焼いていけ」

 

「わかった」

 

イオリに木ヘラを持たせ、投入したベーコンとネギを焼いていく。ふと、イオリの顔を見る。その横顔は真剣そのもので、目は真っ直ぐとフライパンに向いている。

前髪の隙間からチラッと赤眼に鋭く光る目。首から上にかけて、その褐色の肌から溢れる妖艶な雰囲気。真剣な表情も相まって、見惚れしまう。改めて綺麗だなと感じざるおえないその美貌に、タロウは一瞬で吸い込まれた。

 

「……どう?火の通りはこれでいいか?」

 

「えっ……?!あ、うん」

 

不意にこちらを向いたイオリと視線がぶつかり、ぎごちない返事になりつつ、慌てて深皿を出し焼いたそれらを一旦フライパンから引かせた。というところで、電子レンジが鳴り、中からご飯を出す。

そろそろ仕上げの時。片手持ちの中華鍋を出し油を引く。

 

「ここからは、スピードが命だ。行くぞ!」

 

すぐに溶き卵を入れてかき混ぜてから軽く火を通し、即座にご飯を投入。火が通ってきたと思ったら、先ほどのベーコンとネギを投入し、鍋を回し鍋の中のモノを空中で遊ばせる。そこからは、醤油を入れて塩、胡椒を味見しつつ入れながら、パラパラになるようにまた鍋を回していく。そうして五分も経たないうちにそれは完成し、イオリが出してくれた皿の上に盛り付ける。

 

「一丁上がり〜!!」

 

「……すごい。本当にパラパラしてる。魔法みたいだ」

 

イオリが感銘を受けたように皿を覗き込む。その距離が近くて、彼女の甘い残り香と、炒飯の匂いが混ざり合う。

 

「魔法じゃないよ。ただの火加減とスピードだ。……ほら、冷めないうちに運ぼうぜ」

 

「うん。私もうペコペコだ。早く食べるぞ!」

 

「そう焦んなって。……ほら、机にこれ運んで。レンゲとお茶出すから座ってろ」

 

「あぁ」

 

皿を受け取ると、イオリは足早に居間に行き、ちゃぶ台に向かい合う位置にそれを置き座布団を取ってきてそこに座った。

 

「……あ、そうだ」

 

待ってる間、どうせならとイオリは自分のスマホを出し、自分の炒飯にカメラを向けて一枚撮った。一人でやったわけではないが、朝の時よりも達成感があったそれを、イオリは思い出として撮りたくなった。

……ただ、それだけだった。

 

特に何か問題が起きる事もなく、お茶と二人分のコップ、レンゲを持ってタロウは自分の炒飯の前に座り、お茶を注いで片方のコップをイオリに渡して、準備が終わる。

そして……

 

「「いただきます!」」

 

と、共に合唱して飯を食う。

 

「〜〜っ!!おいしい〜!」

 

イオリの顔が幸せそうなものに変わる。

心底それが旨かったのだろうと、タロウはそれに満足げな顔を浮かべながら、夢中になって舌鼓を打つ彼女を眺めた。

 

「ん?……なに」

 

「なんでも。……そうだ、次は何を作ってみたい?」

 

それからは、炒飯の味の感想を聞いたり、これを作りたいとか、なにをやってみたいとかなどいろいろな話をした。

現状、太郎にできることはなにもない。マンホールからこちら側にやってきて、空から落ちてきた人を帰還させる方法などわかるわけがない。あそこの先生という人が、どうにかしてくれるという話なので、そこに希望を見るしかない今。タロウにできることは、イオリが心配しないよう楽しませる他なかった。

 

(任されたからには、ちゃんとやらないとな。……さて、明日どうしよう)

 

と、決意しつつ明日のことを心配するタロウなのであった。

 

□□□

 

ご飯を食べ終わった二人は、共に皿洗いをした。その後、タロウが家にいない間のことを考え、今度は物の場所や他の家事について、いろいろと教えた。因みに、先ほどの買い物の際に、イオリ用のシャンプーやスキンケアとかを買った。一応、タロウの奴があるのでイオリは「それでもいい」とめんどくさがったが。流石に男物と女物ではいろいろと違うだろうと思い、結局買った。

 

最後に洗濯機の使い方を教えて、その日はもう風呂に入ってすぐに寝た。もちろん布団はイオリで、タロウが寝袋である。二人とも疲れていたのか、今日一日の疲労を帳消しにするかの如く爆睡であった。

 

そうして、翌朝。

時計の針が6:30を回ったところでそれはけたたましい音を奏でた。即座にそれを止めると同時に意識が覚醒する。同時に、イオリも起床し腕を伸ばしながら布団から起き上がった。眠気まなこを擦るイオリのヘイローが点滅するが、イオリの意識がハッキリしたのかヘイローがハッキリと映し出される。

 

「ん〜〜〜〜っ。はぁ、おはようーたろー」

 

「……おはようイオリ」

 

その後、順番に居間で着替えてから、タロウは朝飯の用意を始め、イオリが洗濯物を取り出してベランダに干しにいく。

 

「朝飯できたぞ!」

 

簡単に朝食を作り、ちゃぶ台の上に置く。

呼ばれたイオリが洗濯物を干し終わり座布団に着くと「いただきます」と合唱し頂く。

今日の朝飯は、ロールパンの中にハムと葉野菜、マヨネーズをかけて作ったサンドイッチである。タロウは、予想通りのうまさを噛み締めながら、晩のように「おいしい」と口ずさんで食すイオリを眺めながら、お茶を飲みほした。

 

「そういえば、今日はやけにかしこまってるが。何かあるのか?」

 

「……えっ?」

 

急に何を言われたのかわからなかったタロウは、素っ頓狂な声を出してイオリを見た。

今日は月曜日、平日だ。そんな日に“制服”を着ていればどこに行くかなど明白だ。

 

「今日は普通の平日だぞ?学校に行くんだよ学校に」

 

「ってことは、それがお前の学校の制服?」

 

「そうだけど」

 

「そうなんだ。結構落ち着いた感じなんだな」

 

「まあ確かにそうだな。もしかして、結構かっこよく見える?」

 

「フッ。寝言は寝て言ったほうがいいぞ」

 

「おいおい。いくら不細工だからってそこまで言うことないだろうが」

 

自虐的に彼は少し笑って返す。

タロウは自分の顔を良いとは思っていない。別にそう言われたとかではない、自分が勝手にそう思っているだけ。モテた経験のないタロウは、こう返した訳なのだが。

 

「いや、お前の顔で不細工はおかしいだろ」

 

「……ん????」

 

予想外の言葉に、タロウは目を丸くした。

 

「男の顔の基準?とかあまり見慣れないからわかんないけど、初心者目で見ても十分整ってると思うぞ」

 

「……そ、そうなんだ」

 

呆気に取られた顔で、ぎこちなくそう返す。

 

「……なぁ、何時ごろ帰ってくるんだ?」

 

少しぼーっとしたが、イオリの次の質問により意識はすぐに戻された。

 

「えっ……そうだな。今日は特にバイトの予定もないし。終わったらすぐ帰れると思う」

 

「……そうか」

 

「なんだ?もしかして寂しいとか?」

 

「っ!?ち、違うから!断じてそんな事思ってない!……ただ、心配しただけだ」

 

「……え、心配?」

 

「そうだけど。……な、なに?」

 

「いや、お前から心配されるとは思ってなくて」

 

「どういう意味だそれ!」

 

「いや、わるい。でも、そう心配せずともここ日本は比較的安心だ。そっちの世界じゃ銃の常備が当たり前らしいが、ここはそういうのに厳しい。銃や刃物の装備は法律で禁止されてるから、そう滅多に襲われる事もましてや殺されるような心配も少ない。……他の国なら別だけど、日本は比較的治安がいい国だ。イオリのそれは杞憂だよ」

 

「……そっか」

 

少し恥ずかしそうにしながら、安堵しつつイオリはタロウの言葉に短くそう返した。ふと、時計を見れば時刻は7時半を回っており、そろそろ出発しなければならない時間となった。

 

「それじゃあ、そろそろ学校行ってくるわ」

 

「うん」

 

「そうそう。……机の上にお金と合鍵置いとくから、買い物行く時それ使ってくれ。ルールで出かける時は僕と一緒にって書いたけど。多分一人でも大丈夫だと判断したから、あれはもう気にしなくていい」

 

「わかった」

 

「あと、冷蔵庫の中の物減ってたから。多分今日の晩飯分は足りないから何か買って来といてくれ。作りたいのがあったら、部屋にノートPCあるからそれ使って調べていいぞ」

 

「わかったけど。お前のパソコンだろ?勝手に使って大丈夫か?」

 

「家主の僕がオールオッケーしてるんで大丈夫……多分」

 

まあ、見られて恥ずかしいものは、多分ないはずだ。しばらく使ってないから記憶が曖昧だった。

 

「何かあったら、連絡くれ。学校あっても早退してくるから」

 

「流石に授業はちゃんと受けろ」

 

正論で返されたタロウは、冗談だよと笑いながら玄関へと向かう。そして、靴を履きドアノブに手を掛ける。

 

「いってきます」

 

「いってらっしゃい」

 

久しぶりに口にするその言葉の後に、彼女からの返事を聞いて、タロウは少し新鮮な気持ちを抱きながら、穏やかな笑みを浮かべて出発するのだった。




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