従順少女ノ魔女裁判 作:夏目
寝落ちしたので投稿が遅れました。
申し訳ありません。
「やっほー、見えてるー!? あてぃしの【配信】、今日はスペシャルゲスト・レイアっちが来てるよ〜!」
「やあ。今回のコラボは私の方から持ちかけたのだけど、快く応じてくれたココくんには感謝している。今日の【配信】は楽しんでもらえるように頑張るよ」
「いやいや、こっちも感謝してるよ〜レイアっち! えーっと、同接は──9人!? いや、露骨すぎっしょ……いっつも3人とかなのに! 凹むわぁ……」
ココが牢屋敷に少女たちが拉致された翌日から、支給されたスマホを用いて【配信活動】を
内容は様々……だが、しかし少しだけ発言が過激だったためか、同接数は低迷している。そもそも支給されたスマホは【牢屋敷外に繋がらない】ので、最大同接数もたかが知れているのだが。
──さて。
そんなわけで、ココの配信を真面目に毎回見ている者などほとんどいなかったのだけど。しかしトウカは珍しいことに、毎回の配信を欠かさずに視聴していたのだ。
……そのせいで(そのおかげで?)、トウカは配信にご招待とあいなったというわけである。今回の配信場所は2階の【娯楽室】だった。時間としては【三回目】の自由時間である。
「まあいいや。今回はレイアっちに加えて、いつもの配信奴隷のザコ──じゃない、ミリアもいるよ!」
「は、配信奴隷のザコ……? おほんっ……お、おじさんだよ〜、ココちゃんの配信のお手伝いを担当してまーす……」
「はい次! それからなんと今回は、筆頭リスナーであるトウカっちもご招待してま〜す! いつもありがとな、今日は楽しんでけよ〜!」
「うん、もちろん! こんな経験は初めてだよ、ありがとね、沢渡さん!」
ここ数日の間、ココに配信の手伝いをさせられているミリアは、そのあまりの扱いの差に肩を落としていた。なんというか、一人称の通りに哀愁漂う背中である。
一方のトウカであるが、なんと彼女はココの配信を毎日欠かさず視聴していた。見ていた理由は初日に
それはそれとして。
スマホを持ったことのないトウカにとって、ココの配信はちょうどよい【息抜き】でもあった。
だからトウカは、欠かさず配信を視聴していたのだが。
(まさか、配信にお呼ばれしちゃうなんて……!)
スマホを触ったことのなかったトウカでも、流石にテレビくらいは見たことがある。そのせいだろうか、彼女は【配信】のことを、テレビの【生放送】みたいなものだと勘違いしていた。
そのためトウカは、レイアがココに無茶振りを振られて、腰に差しているレイピアで空中リンゴキャッチ(刺突?)チャレンジに興じているのを、ミリアの隣で行儀良く座りながら眺めていた。
ちなみにチャレンジは成功。
トウカとミリアは感嘆の声を上げつつ、レイアに拍手を送る。配信のコメント欄も盛り上がっていた。
「いやあ、それにしても凄いよねえ。スマホってこんなこともできちゃうんだから、文明の利器とはまさにこのことだと思うよお」
「おじさんもそう思うなあ。でもねトウカちゃん、便利なものっていうのは、時に【恐ろしい牙を剥くこともある】んだよ……?」
「えっ、スマホって噛み付く機能まで付いてるんだ……、何のためなんだろう……」
「ああいやっ、違う違う! 今のはいわゆる比喩というやつで……」
「ちょっとちょっと、トウカっちにミリア! 変な話してないであてぃしらの方見ろっての! 今レイアっちがレイピアで3連空中リンゴキャッチに成功したところだったってのにさあ!」
「これ、重みで剣が折れないか心配になるね……というかこれ私、よく一発で成功できたな……」
……【配信】とは言ったものの、しかし
というのもこの配信、特段の台本があったり、何らかの企画が用意されているわけではないからだ。全てがココの【突発的な思い付き】の産物でしかなくて、計画性はまったくの皆無なのである。
だから突然レイアは曲芸じみた真似をさせられる羽目になった──しかも失敗したらかなりがっかりされるタイプのもの──だし、ミリアだって思い付きでアシスタントにさせられている。
となれば。
「よしっ、レイアっちによる
「
「それは、まあ、うん……ぶっちゃけさ? これで終わってもいいくらいなんだけど、やっぱあてぃしのトップリスナーたるトウカっちにも、なんかさせてあげたいな〜、とか? 思ったり?」
「えっ、私っ!?」
「あ、ああ、そういうことだったのか……もちろん? 私は気付いていたから、最初からそのつもりだったとも、うん」
突如として話題を自分に振られて慌てふためくトウカだったが、しかし先ほどから様子がおかしいレイアを【見て】、一旦は落ち着きを取り戻した。
……さて。とは言っても、トウカとしては何をすればいいのか全く分からない。歌でも歌うか? とも思ったけれど、しかしそれでは凡庸すぎるし面白みもないだろうなあと考え直した。
困ってしまったトウカは、こっそりスマホで連絡先を交換したナノカに「
「佐伯さん、私、
「公共の電波かどうかは怪しいと思うけど……まあ、そうだね。
「なるほど……それなら、そうだなあ」
トウカは顎に手を当てて考え始めた。【自分にしかできないこと】となると、やはり【魔法】に関連する何かとなるのだろうか。
ただ、自分だけが目立つのもそれはそれで違う気がする。せっかくレイアやミリアもいるというのに、一人だけで【目立つ】ような真似はしたくない。
とすると、やはり【みんなで楽しめること】をやらないといけないだろう。カードゲームなんてどうだろうか、トランプなんかがこの牢屋敷にあるのかは分からないが、それでも自分一人で楽しむよりは──。
「んじゃあトウカっち、今からあてぃしとレイアっちと、あとついでにそこのザ……ミリアが考えてる数字当てるゲームでもする?」
「えっ、あっ、はい。じゃあそれやります」
敬語になってしまった。
炎上気味とはいえ、ココも流石は配信者。ここぞの企画・進行力はピカイチらしい。トウカは一旦大人しく従っておくことにした。
横をちらと見ると、ミリアが「今またザコって言いかけてた……」とでも言いたげに項垂れていた。かなり分かりやすい。トウカはひとまず、彼女の考えている数字を当ててみることにした。
現在のトウカの【聴覚】は【やや好調】である。
屋敷全体とまではいかなくとも、集中すれば【娯楽室全体の音】くらいは拾うことができるだろう。
「あっ、沢渡さん。このゲームって数字は
「ん〜、あてぃしとしてはやっぱりインパクトある方が取れ高も増すし〜……そういうわけで、
「……四桁かあ! いやあ、やりがいあるよねえ──ちなみに、もうみんなには言っちゃってるから普通に【魔法】使うけど、それでもいい?」
「いいんじゃないかな。むしろこの配信はキミの【魔法】の
「おお〜……レイアちゃん賢いねえ、確かにそうすれば、今後
(……なおさら、失敗できなくなってきたなあ)
まさしくハイリスクハイリターン。
上手くいけば牢屋敷に未だ蔓延る不安も払拭できるかもしれなかったが、下手を打てばむしろその空気感は悪化の一途を辿るだろう。
いち配信とはいえ、手を抜くことはできないし、そもそもそんなことをするつもりもない。自身の【
……有用性を示せば示しただけ、トウカ自身が狙われる危険性も上がっていくのだが。しかしそんなことは織り込み済みだった。
「……それじゃあ、まずは佐伯さんから当てさせてもらおうかな。いくつか質問させてもらうけど、それでいいよね?」
「うん、おじさんはそれで構わないよ。えーっと、じゃあそうだなあ──」
「四桁だったりする? で、最初の数字は4」
「──えっ!? ああ、うん……よく分かったね?」
「じゃあ4649で。どう?」
「なっ、えっ、トウカちゃん凄いね!? どうして分かったの……!?」
「いやまあ、一人称が【おじさん】だったってのもあって、だいぶ分かりやすかったよ……?」
「遠回しにセンスまでおじさんだって言われた……」
正直なところ、ミリアはかなり分かりやすかった。
【魔法】など使わずとも、
続いて、トウカはレイアに【視線】を向ける。
……ココの方が分かりやすかったからそうするつもりはなかったのだが、しかしほとんど【意図に反して】、レイアの方を向いてしまった。
「ふふっ……トウカくん、果たしてキミに分かるかな? この私の思い浮かべている数字が!」
「え? 蓮見さんなら、1とか?」
「…………まあ、うん。さっ……流石だねトウカくん!! やはりキミはこの牢屋敷の希望の光だよ!!」
一番分かりやすいかもしれなかった。
どうしたものか。【魔法】の有用性を見せるつもりだったのに、このままでは自分の【推理力】と【勘の良さ】をアピールしているだけに──。
(あっ、別にそれはそれでいいのか)
別に【魔法】を使っていようがいなかろうが、外から見た時に【魔法を使っていない】と思われさえしなければそれで問題はないのだ。
というかむしろ。
この状況はトウカの目論見の後押しにすらなり得る。
だから。
やはり自身に危険が降りかかる可能性を上げてでも、
トウカはそう考えてレイアから【視線】を外し、ココへと向き合った。
「……沢渡さん。何かヒントとか、貰えたりしないかな?」
「あげるわけないじゃん! つーか、トウカっちマジで半端ねえのな……だけどあてぃしも、そう易々と当てさせてやんねーから!」
「うーん……四桁、では、多分ないよね?」
「…………」
ここに来てまさかの沈黙である。ミリアとレイアは、配信者としてそれはどうなんだと思わないでもなかったが、しかしトウカがこの状況で数字を当てた場合、配信が盛り上がるであろうことは想像に難くない。
ひとまず。
トウカは【魔法】を使い、ココの【表情を見る】ことにした。
すると、ココはどうしても当てられたくないのか、その両目を閉ざした。ズルにも程があるが、それならそれで色々と【推測】できることはある。
(目を閉じたなら、少なくとも【分かりにくい数字ではない】はず……沢渡さんの性格から考えるに、それならもっと堂々としているだろうしね)
トウカは、相変わらず目を瞑り続けているココに対しての考察を続ける。反応からして、答えの数字は【四桁ではない】。
ひとまず虱潰しに探していくしかないかもしれない。トウカはもう一度質問を投げかけてみることにした。
「それじゃあ、【三桁】?」
「ッ…………」
「ほんの少しだけだけど、今動揺したよね。ということは数字は【三桁】で確定かなあ」
「……はあ? いやいやトウカっち、もっとよく考えてみなよ。あてぃしがそんな、
「
「──それは、なんていうか、うん。言い間違いだっつーの!」
ココの反応を見るに、恐らくは【単純な三桁】の数字が答えなのだろう。となれば、答えは自然と限られてくる。
この牢屋敷で【単純な三桁】といえば、それはもう一つのものしかない。トウカはココに対して、決定的な一言を口にした。
「──【囚人番号】、かな?」
「ッ! いやっ、いやいやいや! まさかそんな、ねえ!?」
「もうその反応が
「……あーもう、そうだよ! あてぃしが考えてたのはあてぃしの【囚人番号】! これでもう分かったろ、トウカっちがいる限りこの牢屋敷での情報は筒抜けだし、仮にどーにかなったとしてもその後【見られたり聞かれたり】して全部バレるだけ!」
悔しさからかそう叫んだココは、その後「あてぃしのトップリスナーは凄いだろ、だからあてぃしも凄いってこと!」と締めくくり、半ばキレながら配信を終了した。
こうして。
トウカの【
──ただし。
それは尾形トウカという少女の【完全性】を証明しているわけでは、ない。
かくして、この夜が。
尾形トウカが安心して眠ることができた、最後の夜となる。
本人には、知る
【
☆9
ソハヤノツルギ βアルファ
☆8
松城
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