従順少女ノ魔女裁判   作:夏目

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 本日は夏目アンアンさんの誕生日です。
 おめでとうございます。





【第十九審】反証→反応

 

 

 

 ──実際のところ、【魔女候補】の少女たちは、トウカの言っていることを信用していた。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 確かにトウカはかなりの世間知らずで、色々と抜けている所がある人物ではある。他人との交流も活発で、あまりにも堂々としているから。

 

 だから、彼女の【異常】な所も──()()()()()()()()()()()()()、「()()()()()()()()()」で済ませてしまっていた。

 

 トウカは包帯を取り去った。

 もう、何事からも【目を背けない】ために。

 

 だけど、包帯の向こう側には。

 誰もが【目を背けたくなるもの】があった。

 

「ひっ……!?」

 

「なっ……トウカくん、それは……!?」

 

「一体、何があったら()()()()()になるんですの……!」

 

 アンアンも、レイアも、ハンナも──すんでのところで声を漏らさなかった他の少女たちも、きっと同じことを考えていたはずだ。

 

 どんなことがあれば、そんな挙句になる?

 どんなことがあれば──そんな大怪我を負うことができる?

 

 トウカが隠していた、顔の上半分。

 それは、言うなれば惨憺たる有様だった。

 

 つまるところが。

 焼けて、爛れていた。

 

「……トウカさん。それ、()()()()()()()()()()()()?」

 

「問題なく見えているよ。ほら、私の【魔法】があるからね」

 

「【感覚強化】──だったかしら? それならまあ、見えているというのも【嘘】ではなさそうね……。とはいえそれでも、痛々しいのは変わらないけれど」

 

「本当に、文字通り痛くも痒くもないんだよ。痛々しい見た目だっていうのには、まるっきり同意だけどね」

 

 シェリーの問いかけにも、マーゴの所感にも、まるで何でもないかのように、平然と答えるトウカ。話している際の目の動きからしても、見えているというのは嘘ではないらしい。

 

 しかしそれでも。

 やはりトウカの見た目は、【衝撃的】だったと言わざるを得ない。

 

 だからだろうか。雰囲気的に前を向き始めていた少女たちは、再び俯いてしまったし、目を背けてしまった。

 

(……やっぱり、包帯を取ったのは失敗だったかな……)

 

 こうなるかも、とは思っていた。だけど、こうならないことを願っていた。

 

 トウカなりに誠意を見せたつもりだった。しかしもしかすると、それすらもいつも通りに空回っていたのかもしれない。

 

 自分を曝け出してみた。

 だけどそれすらも、失敗だったのか。

 せっかく勇気を出したけど。

 無駄、だったのかも。

 

「やっぱり、私なんかじゃ──」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

待ちたまえ!!

 

 

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:::

 

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 ──瞬間、その場にいる全員の【視線】が、()()()()()()()()()

 

 目を離そうとしても、それができない。

 つまりは、【魔法】による仕業だった。

 

「突然大声を出してすまないね。だけど状況が状況だから、なりふり構っていられない。私の【視線誘導】を使わせてもらったよ」

 

「……蓮見さん、どうして──」

 

「トウカくん。キミは今確かに『私なんかじゃ』と、そう口にしたね。私にはそれが、どうにも我慢ならなかったんだ」

 

 固定された視線の先にいるレイアは、その両目の端を吊り上げていて、【怒っていること】を隠そうともしていない。

 

 トウカにはレイアが怒っている理由が分からなかった。ただ、心当たりならいくつかある。それは例えば、包帯を突然取ったこととか。

 

 だけど、本当のことを言うなら。

 レイアが怒っていたのは、()()()()()に対してではなかった。

 

「キミが今までその包帯を取らなかったのは、きっと私たちに対しての【配慮】が少なからずあったのだろう? 素顔を晒すのは、かなりの【覚悟】が必要だったはずだ」

 

「そりゃあ、そうだけどさ。だけどそんなことは、私の自己満足だったんじゃないかなって、そう思って」

 

()()が気に食わないんだよ、私は。他でもないキミが、キミ自身の【覚悟】を踏み躙りかけたことが、気に食わない

 

「…………」

 

「そしてキミにそんなことをさせそうになってしまった、()()()()()()()。ナノカくんのために全てを捧げようとした──曝け出したキミから目を背けることは、きっと何より罪深い」

 

 どうやらレイアとしては、トウカ本人に対してというよりも、自身に対する怒りの方が強いらしかった。

 

 捉えようによってはその場にいる全員を公然と非難していると取られてもおかしくはない。しかしきっと、レイアはそんなことも承知の上で自身に【視線】を集中させたのだろう。

 

 不器用なやり方だった。

 だけど確かに、()()な在り方だった。

 

「トウカくんから──その覚悟から目を背けることは、この私が許さない。みんなも、それでいいかな?」

 

 レイアの一方的な問いかけに反応を返したものは少なかった。だがその沈黙は、きっと【肯定】を意味していた。

 

「……蓮見さん、ありがとう」

 

「なに、どうってことはないさ──これくらいのことは当然だとも。私たちは、【仲間】なのだからね!」

 

 胸を張り、表情にたっぷりと自信を(みなぎ)らせながら、大仰な身振りでそう返すレイア。自信たっぷりの彼女のおかげか、トウカにも自身のようなものが湧いてきた。

 

 恐らくは、先ほどまで消えかけていた【覚悟】。

 (くすぶ)っていたそれに、今度こそ()()()()()

 

(そうだ! 私一人では何もできないかもしれない……、だけど、私には信じてくれる【仲間】がいる!)

 

 アリサとレイア。虚偽の【自白】をしたトウカを庇ってくれたということは、きっと彼女たちは、トウカのことを【信用】してくれているのだろう。

 

 信じてくれた【仲間】のためにも。

 そして何より、ナノカのためにも。

 

 前を見て、進むしかない。

 一度は折れかけた【覚悟】が、今度こそ立ち直った。

 

「……何回も話の腰を折っちゃったけど、今度こそ始めようか。ナノカちゃんを殺した【魔女】を見つけるための──【魔女裁判】を」

 

「でっ、でも……本当に、この中に【魔女】なんているのかな? おじさん、その辺りはまだちょーっと半信半疑っていうか、いまいち乗り切れてないっていうか……」

 

「あてぃしも同感、つーかぶっちゃけ信じられないんですけど! 昨日まで普通に暮らしてたのに、いきなり人を殺せる奴と同じ場所で暮らしてるとか、マージで反吐が出そうなんだけど。うぇー、気持ち悪っ!」

 

「……ボクも信じたくはないけど、でも──()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()よ。どうしてこんなことになっちゃったのかな……」

 

 エマの言う通り、ナノカが自殺だったにしろ他殺だったにしろ、どうして死んだのか、あるいはどうして殺されたのかは未だ不明のままである。

 

 ナノカを殺した犯人──【魔女】を探し出すためには、その辺りをはっきりさせなくてはいけない。そうでなければ、【真実】には辿り着けない。

 

 ……と、そこで突如として、メルルが弱々しく口を開いた。

 

「おっ、落ち着いて、ください……! きっと、その……何にせよ、皆さんの【アリバイ】が分からないことには、えっと……何にも、分からないと、思います……!」

 

 所々で言葉に詰まりながらも、メルルは必死にそう言った。

 

 なるほど確かに、この手の殺人事件が発生した際、最も初めに明らかにすべき事柄は、容疑者の【アリバイ】だろう。

 

 メルルはその辺り、しっかりとわきまえている──というか、基礎を抑えているようだった。

 

「メルルさんの言う通りですね! 名探偵シェリーちゃんとしても、各々の【アリバイ】は(つまび)らかしておかなければならないと思っていましたし!」

 

「シェリーさん、あなたちゃんと名探偵っぽく考えたりすることができたんですのね……。てっきり【迷】探偵の方かと思っていましたのに」

 

「ハンナさん、流石に酷すぎますよう! まあそれはそれとして、ナノカさんの死亡推定時刻──つまりは【昨夜の21〜22時】の間、皆さんが何をしていたか教えていただけません?」

 

 ぐっと握り拳を作りながら、あくまでも元気いっぱいにそう言い放つシェリー。こんな状況に置かれても、彼女は彼女らしさを失っていなかった。

 

 そして、そんなシェリーの言葉に否を唱える者は、その場にはいない。だから、ここから【魔女裁判】は、順当に進んでいく。

 

 

 ──誰もが、そう思っていた。

 ──ただ一人、()()()()()()()()

 

 

「……【アリバイ】ってもさ? こんな状況じゃ、みんながみんな【本当のこと】を言うとも限らないんじゃねーの?」

 

「ええ、ココさんの言う通りですね! その辺は互いに話し合って、すり合わせをしていくしかないと思いますが……、その表情(かお)を見るに、もしや何か秘策でもあるんですか?」

 

「ふっふっふ……秘策なんてもんじゃねーし! あてぃしのは奇策──まあつまりはこんな状況からでも、一気に事態を急変させることができちゃうってわけよ!」

 

 ココの表情は自信に満ち溢れている。目の辺りに手を置き、この場合はむしろ【目】をアピールしているように見えた。

 

 不敵に微笑んだココは、そのままこの場を支配する一言を言い放った。

 

「あてぃしの【魔法】は【千里眼】──あてぃしの顔を見ている奴らを、あてぃしからも【見ることができる】!」

 

「──ッ! まさか、ココちゃん……()()()()()で、ボクたちのことを見てたってこと!?」

 

「エマっち、ご名答! つまり? 昨日の配信を見てねー奴らは、もう()()()()()()()()ってこと! つーわけだからお前らの【アリバイ】──まるっとあてぃしが暴露してやんよ

 

 その口を三日月のように吊り上げながら、ココは高らかに宣言した。必然的に、【魔女候補】の少女たちは、息を呑むことになる。

 

 ──【魔女裁判】は順当に進まず、不当に進んでいく。

 きっと誰もが、そう確信していた。

 

 ここからは、晒し合いだ。

 ここからは、貶め合いだ。

 ここからは、疑い合いだ。

 

 ここからは──()()()()だ。

 

 

 







魔女図鑑

【証拠品】

黒部ナノカの死体写真
 湖のほとりで死亡していた黒部ナノカの写真。
 頭部に二発の弾痕があり、即死ではなかった可能性がある。

 左手の爪が剥がれており、土が付着していた。

 レイアの【検死】によれば、死亡推定時刻は【昨夜の21〜22時】らしい。


魔法の銃
 黒部ナノカが所有していた魔法の銃。
 装弾数は六発。一日一発ずつ銃弾が復活する。
 弾を撃ち切っているらしく、引き金を引いても発砲されない。

 現在はトウカが所持している。


黒部ナノカのスマホ
 シンプルながらも所々にゴシック風味の装飾が施されたスマホカバーが装着されている。

 指紋のつき方から推察するに、パスワードは0606だと思われる。


睡眠薬
 青色をしている、即効性のある睡眠薬。
 紫藤アリサが服用しており、尾形トウカもほんの少しだけ口にした。

 かなり強い薬らしく、ビン一本分を一気飲みすれば、即座に昏倒するだろう。


空きビン
 薬液を入れておくためのビン。
 紫藤アリサが黒部ナノカの死体の付近で発見し、持ち歩いていた。


牢屋敷前の壁画
 城ケ崎ノアが牢屋敷前の壁に描いた絵。
 牢屋敷に拉致された少女たち14人をモチーフとした蝶が飛び交っている。

 今後絵を増やしていく予定らしく、今のところ他の絵はない。


腐ったリンゴ
 食堂のフルーツかごに放置されていた、沢渡ココの配信で蓮見レイアがレイピアを用いて貫いたであろうリンゴ4個の内の1個。

 前日まではまだ食べられる状態だったのだろうが、現在は腐ってしまっていて食べられそうにない。


ココの配信アーカイブ
 娯楽室にて行われたココの配信のアーカイブ。
 ゲストとしてトウカが参加しており、手作りのトランプでババ抜きをしていた。結果はトウカの全勝。

 配信は21時30分に終了している。



──◆──◇──◆──◇──◆──◇──◆──





共犯者(評価者)様紹介(敬称略)
 ☆10
 Bepアルベネ 夜世余 あるまじろの炊き込みご飯 扇谷 エイツ

 ☆9
 骨付き肉 Holder 凩凪 無色パステル




 お気に入り登録やここすき、感想など大変励みになります、ありがとうございます。
 今後とも何卒よろしくお願いします。



現時点で怪しいのは誰?

  • 桜羽エマ
  • 二階堂ヒロ
  • 夏目アンアン
  • 城ケ崎ノア
  • 蓮見レイア
  • 佐伯ミリア
  • 宝生マーゴ
  • 黒部ナノカ
  • 紫藤アリサ
  • 橘シェリー
  • 遠野ハンナ
  • 沢渡ココ
  • 氷上メルル
  • 尾形トウカ
  • ゴクチョー
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