従順少女ノ魔女裁判   作:夏目

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 タイトルが定まらなくて二転三転しましたが、ひとまず落ち着きました。

 閲覧環境によって特殊タグの挙動が大きく変化しているようなので、できる限り全ての環境下で同じ挙動をするようには努めているのですが、文章が見切れてしまうことがあるかもしれません。申し訳ありません。





【第二審】異常→非常

 

 

 

 トウカが檻房の外に足を踏み出すと、やはりというか何というか、一直線の廊下に沿った形で配置されている【7つの檻房】が確認できた。それから、怯えた様子の少女たち。薄々勘づいてはいたものの、知り合いは一人も居なそうだった。

 

 ふと隣に視線を移すと、自身の二倍はあろうかという上背の持ち主がいた。鎌を携えているその存在は、明らかに現実味を欠いている。全身が黒ずくめ、不吉なオーラが満載だった。

 

「……おはようございます。もしや、あなたが【看守】さんなのでしょうか? 上から下まで素敵に着飾られていますね、とってもお似合いです」

 

「…………」

 

 眼前の異形はトウカの呼びかけに対して何の反応も寄越さない。言葉が通じていないのだろうか? いやしかし、だとすればゴクチョーはどのようにしてこの怪物を制御しているのだろう。

 

 そうして看守についての予想を開始したトウカだったが、しかししばらく経ったところで、彼女の手のひらが何者かによって握り込まれた──というか、その正体は今なお怯えた表情を浮かべている、聖女のような少女だった。

 

(……()()()()()()()()()?)

 

 トウカが笑みを浮かべながら小首を傾げると、優しげな少女はいっそう顔を蒼白に染め上げ、その首をぶんぶんと横に振る。目尻には光るものがあった。今にもこぼれ落ちそうな有様である。

 

 このままではかわいそうか。

 そう考えたトウカは、さっさと要件を済ますことにした。

 

「あー、看守さん。囚人たる私がこのようなことを言うのもおかしな話だけれど、先ほどゴクチョーさんが口にしていた【ラウンジ】まで、私たちを案内していただけると大変助かります」

 

「…………」

 

「汗顔の至りではあるのですが、私たちは未だこの【館】の構造を把握していませんから。何卒(なにとぞ)、ご案内いただきたい」

 

「…………」

 

 そこまで言ったところで、看守はのっそりとした動きで廊下を進み始めた。トウカたちの檻房は廊下の突き当たりに位置していたため、前方にいる他の少女たちの姿がよく見えた。

 

 未だ混乱の最中にいる者。

 既に割り切っているのか、毅然としている者。

 何故かやたらと楽しげにしている者。

 反抗的な姿勢を崩そうともしない者。

 特に何も気にかけていなそうな者。

 

 三者三様、十人十色、千差万別──は、少し言い過ぎかもしれないが。ともかく少女たちの反応はそれぞれ異なるものだった。半ばパニックに陥り暴れたためか、看守に担がれて運ばれている少女も存在する。というか、目の前で担ぎ上げられていた。

 

 橙色の瞳をした少女が縋るような視線をこちらに向けてきたものの、しかしまさか看守に逆らうわけにもいかない。なのでトウカは「申し訳ない」とだけ口にして会釈を返すに留めた。

 

(……看守さんが【反抗的な態度】とそうでないものを区別できているからこそ、こんなにも対応が違うんだろうね)

 

 トウカが(うやうや)しく語りかけた際には、看守は剣呑な態度やそぶりなどおくびにも出さなかった。しかし【見た】限りでは、()()()()()()()には()()()()()()()で返しているようである。

 

 もしかすると、何か【他の要因】があるのかもしれないが……、どちらにせよ現状はトウカにとって好都合である。無闇に波風を立てるようなことがないようにするためにも、彼女たちは大人しく看守に着いて行くことにしたようだった。

 

 ──しばらく歩いたところで、背後から【何者かが転ぶような音】がしたような気がしたが。しかしゴクチョーから【ラウンジに来てください】と言われている以上、優先すべきはそちらである。

 

「……あっ、あのっ! 私、あの方を助けに行っても……よ、よろしいでしょうか……!」

 

「え? ああ、そういえばお嬢さんは()()()()()()()()()()()()()んだったか……」

 

 先ほど転んだ少女の状態を確認しようと振り返った──瞬間、トウカの脇をすり抜けるようにして看守の後を追う黒と赤の少女が一人。随分と【苛々した音】を響かせながら、廊下の角を曲がって見えなくなってしまった。

 

 振り返ると、そこにはやはり転んでいる桜色の少女。膝を擦りむいたのか、痛々しい鮮血が滲んでいる。恐らく先の黒い少女と揉めたのだろう。すぐさまトウカに伴っていた清廉な少女が駆け出し、涙ぐみながらその膝に手を当てていた。

 

(……何を話しているのかまでは、【聞き取れない】な)

 

 どうやら今日は調()()()()()()()()()

 投獄初日から体調不良など、目も当てられないものな。トウカは何故か少しだけ上機嫌になりつつ、一人ラウンジへと向かうことにした。

 

 

 

──◆──◇──◆──◇──◆──◇──◆──

 

 

 

 どうやら檻房は地下に位置していたらしく。トウカは階段を登って豪奢な作りの玄関ホールに移動したのち、ラウンジへとその足を進めた。

 

 肝心のラウンジはといえば、これまた随分と華やかな空間だった──のだが、壁に架けられたクロスボウや、牛か何かの頭骨などが雰囲気をぶち壊して台無しにしてしまっている。ただ、不気味な雰囲気作りにはむしろ一役買っているとも言えた。

 

 そんな風にラウンジを見回して情報収集に精を出していると、後から桜色の少女と聖女のような少女が現れた。これでラウンジには14人の少女が集められたことになり、それはつまり全員が集合したということを意味している。

 

「いやあ、すごいですね! 突然牢屋で目覚め! 化け物に見張られていて! 何だかすごいことが起こっているのを感じます! 高まっちゃいますね〜!」

 

「なーにが『高まっちゃいますね〜!』ですわ! やっべーことになってるの……なってるんですから、もっと危機感を持った方がいいんじゃないかしら!?」

 

 何やら既に言い争いの気配が立ち込めている。楽観的な探偵風の少女に、口調が不自然なお嬢様風の少女が噛み付いている。しかしそれだけだ。剣呑ではあるが、険悪ではない。

 

 その口論は気にするほどでもないことだったので、必然、皆の注目は扉の横に立つ異形──【看守】に集められることとなる……はずだったのだが、しかしそこで衆目を集めることになったのは、何やらキラキラとしたオーラを振り撒く少女だった。

 

 トウカの隣に移動したその少女は【慣れた様子】で声を張り上げ、ラウンジの空気感を一変させた。だからだろうか、あまり目を背けようというつもりにもならなかった。

 

「さて。みんな初対面だと思うから、よかったら自己紹介をしていかないか?」

 

「自己、紹介?」

 

「うん。こういう状況だからこそ、団結は大事だと思うからね──先に名乗らせてもらうよ、私の名前は蓮見(はすみ)レイア。じゃあ次は……包帯のキミ、お名前を聞かせてもらっても?」

 

「……えっ、あっ、私? 私が自己紹介するのか?」

 

「そう、君だ。君が自己紹介するんだ」

 

 やけに自信たっぷりにそう言い放つ凛とした少女。

 彼女の頼みを、私は──。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《/center》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──断ることにした。

 

「…………」

 

「……あの、自己紹介を……」

 

「…………」

 

「えっと、あはは……自己、紹介……」

 

「…………」

 

「あの、素直に自己紹介をしてくれないか?」

 

(らしくもなくふざけたら怒られてしまった……)

 

 トウカは結局圧に負け、自己紹介をすることにしたようだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──承諾することにした。

 

「うん、承った。私としてもこれから共同生活を送るであろう人たちの名前くらい、知っておきたいからね」

 

「そうだろう? ありがとう、私の話を聞いてくれて。それじゃあ、君の素敵なお名前を私たちに教えて欲しい」

 

(素敵なお名前……ね。ふふ、本気でもそうじゃなくても、そう言われるのは嬉しいな)

 

 やけにキザっぽい表情と声色を浮かべるレイアだったが、しかし悪い気はしない。トウカは大人しく自己紹介をすることにした。

 

「私の名前は尾形トウカ。尾形でもトウカでも、好きに呼んでもらえれば私はそれで嬉しい。みんな、これからよろしくね」

 

 

 

 

 

 その後、少女たちは流れに任せ、互いに自己紹介を進めていった。14人全員が【囚人】として扱われているとは分かっていたが、しかしトウカは、内心こうも思っていた。

 

(なんかこれ、クラス替え直後の空気感に少し似てるな)

 

 もっとも、そんなことを考えていたのはトウカだけで、他の少女たちは未だに困惑の色を強く見せていたのだが。

 

 ともかく。

 トウカは場違いにもそんなことを考えてしまうくらいには、【世間】というものに疎かった。

 

 

 

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