従順少女ノ魔女裁判   作:夏目

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 4月2日は蓮見レイアさんの誕生日でした。
 3日遅れになってしまいましたが、おめでとうございます。

 遅れた理由は色々凝りすぎたからです。
 楽しんでもらえれば嬉しいです。





【第二十審】反応→反論

 

 

 現在、裁判所の空気は「アリバイを暴露する」と豪語した沢渡ココを中心として、混沌さながら渦巻いている状況である。

 

 もちろんトウカとしては、このままココに話の流れを明け渡してしまって、そのまま突き進むことも吝(やぶさ)かではない。

 

 だがしかし。

 それはあくまで、コ(・)コ(・)の(・)発(・)言(・)全(・)て(・)に(・)信(・)憑(・)性(・)が(・)あ(・)る(・)場(・)合(・)の話に限る。

 

(……もしかしたら、沢渡さんも間違った前提で話を進めてしまうかもしれない!)

 

 この【魔女裁判】において、たった一人の発言のみを根拠とするのは、あまりにも致(・)命(・)的(・)──この場合は致(・)死(・)的(・)とすら言い換えることができるだろう。

 

 ココの口から語られる言葉は、あくまでもココ目線(【千里眼】を用いて他人(ひと)の視界を覗いていたとしても、それは言葉のあ(・)や(・)でしかない)から物語られている言葉である、ということを念頭に置かなければいけないだろう。

 

 物事から【目を背けてはいけない】──さりとて【集中しすぎる】ことは愚の骨頂だ。【視野】は広く持たなければならない。

 

 幸いなことに──というかそれこそが狙いだったのだが──現在のトウカは包(・)帯(・)を(・)取(・)り(・)去(・)っ(・)て(・)い(・)る(・)から、【視野はかつてないほど広がっている】。

 

(今度こそ、私の【魔法】でみんなを守るんだ──)

 

 そんな風に、トウカが今度こそ【真実】に向かう覚悟を決めたところで。隣の証言台に立っているメルルが、トウカへと声をかけてきた。

 

「あ、あの……トウカさん、少しお話、いいですか……?」

 

 表情(かお)を【見た】ところによると、どうやら何か共有しておきたい情報があるらしい。トウカは耳を傾けることにした。

 

「もちろん。今の私に必要なのは【情報】だからね──それで、話って?」

 

「はい……、恐らくはこれから皆さんの話し合いが始まると思うのですが、あ(・)ん(・)な(・)こ(・)と(・)があったばかりなので、きっと皆さんも混乱していると思うんです……」

 

「うん、そうだね。ざっと【見た】感じ、ほとんど全員動揺しているみたいだし。もっとも、それがど(・)う(・)し(・)て(・)動(・)揺(・)し(・)て(・)い(・)る(・)の(・)か(・)までは分からないけれど」

 

「で、ですから、もしかしたら皆さん、間違った情報をもとに証言なさるかもしれません。そんな時は、トウカさんが【指摘】してあげてください……!」

 

「ふむ、つまりはそれが私(・)の(・)や(・)る(・)べ(・)き(・)こ(・)と(・)だ、と。ありがとう氷上さん、どこまでやれるかは分からないけれど、やれるだけのことをやってみるよ」

 

 向かうべき場所も、そこに辿り着く方法も。愛すべき牢屋敷の【仲間】たちのおかげで、既に定まっている。だからトウカは、そこに向かってがむしゃらに進めば良いだけだ。

 

 皆が生き残るためにも。

 死んでしまった友達(ナノカ)のためにも。

 

 例え、その先に何が待っていようとも。

 

 

 

 必ず、【真実】へ辿り着け。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▶︎◆三審:問開:始三◆◀︎

 

 

 

 

 

 

 

▶︎◆三審:問開:始三◆◀︎

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆ ◆ 【1】証言者:沢渡ココ ◆ ◆

 

 

 

 昨日の夜に、

 あてぃしとトウカっちの

 配信を見てたのは【5人】!

 

 

 

◆ ◆ 【2】証言者:沢渡ココ ◆ ◆

 

 

 

 エマっちとザ……ミリア、

 レイアっちとマーゴ、

 そして最後にノアっち!

 

 

 

◆ ◆ 【3】証言者:佐伯ミリア ◆ ◆

 

 

 

 こ、ココちゃん……

 おじさんのこと、

 またザコって……じゃなくて!

 

 

 

◆ ◆ 【4】証言者:佐伯ミリア ◆ ◆

 

 

 

 ということはつまり、

 ココちゃんはその他の【5人】が

 怪しいと思ってるの……?

 

 

 

◆ ◆ 【5】証言者:遠野ハンナ ◆ ◆

 

 

 

 なっ……ちょっ、ちょっと!

 冗談言ってる場合ですの!?

 そんな理由で疑われちゃ

 たまったもんじゃねーですわよ!

 

 

 

◆ ◆ 【6】証言者:紫藤アリサ ◆ ◆

 

 

 

 ウチも遠野に賛成だな。

 たったそれだけで【アリバイを

 証明した】とは言えねぇんじゃ

 ねぇのか?

 

 

 

◆ ◆ 【7】証言者:沢渡ココ ◆ ◆

 

 

 

 ちっちっち……。

 お前らもしかして、あてぃしの

 持ってる【魔法】のこと、

 もう忘れちゃった感じ〜?

 

 

 

◆ ◆ 【8】証言者:橘シェリー ◆ ◆

 

 

 

 確か、【千里眼】でしたよね?

 シェリーちゃんは名探偵なので、

 ばっちり覚えていますよ!

 

 

 

◆ ◆ 【9】証言者:沢渡ココ ◆ ◆

 

 

 

 その通り、やるじゃん名探偵!

 あてぃしのことを見ている奴の

 ことを、あてぃしも【見る】

 ことができる。それがあてぃしの

 持つ【千里眼】!

 

 

 

◆ ◆ 【10】証言者:沢渡ココ ◆ ◆

 

 

 

 つまりぃ〜?

 あてぃしは昨日、配信を見てた

 奴らの【アリバイ】を完璧に証明

 することができちゃうワケ!

 

 

 

◆ ◆ 【11】証言者:沢渡ココ ◆ ◆

 

 

 

 そゆわけで、昨日あてぃしの

 配信を見てなかった5人!

 その中に犯人はいるってこと!

 

 

 

◆ ◆ 【12】証言者:沢渡ココ ◆ ◆

 

 

 

 どうよ?

 あてぃしの推理、

 崩せるやつはいないんじゃね〜?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▶︎◆三審:問終:了三◆◀︎

 

 

 

 

 

 

 

▶︎◆三審:問終:了三◆◀︎

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 どうやらココの暴露──【推理】は、ここで一区切りとなるらしい。一見すれば、かなり理に適った【推理】ではある。

 

 だが、しかし。

 トウカは一つだけ、ココの【推理】の中に明確な【穴】があることに、薄々勘付いていた。

 

(……沢渡さんの言うことには一理ある。だけど──それだけじゃアリバイを証明できたってことにはならない……!)

 

 トウカは自分のためにも、そして他のみんなのためにも、【真実】へと向かわなくてはならない。

 

 だから。

 こんなところで、諦めるわけには行かない。

 

 ──もっとも。

 何(・)も(・)分(・)か(・)ら(・)な(・)い(・)のであれば。

 

 ここで諦めてしまって。

 楽になってもいいんだけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──◆──◇──◆──◇──◆──◇──◆──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

GIVE  U P

 

 

 

 

 

 

 

GIVE  U P

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(──ああ、なんかもう、どうでもいいや)

 

 トウカは、全てを諦めてしまうことにした。

 もう疲れた。さっさと楽になりたい。そんな気持ちが脳裏で膨れ上がってしまって、とうとう限界を迎えてしまった。

 

 たとえ、その結果。

 真犯人である【魔女】を見逃すことになったとしても。

 

 もう、どうでもいい。

 だって、これから先のことは。

 

 ト(・)ウ(・)カ(・)自(・)身(・)に(・)は(・)な(・)ん(・)の(・)関(・)係(・)も(・)な(・)い(・)。

 

「……これ以上の意見も出ないようですし、さっさと【投票】に移ってしまいましょうかね。みなさん、各々が【魔女】だと思った人に投票してください」

 

「…………はい」

 

 ゴクチョーの気怠そうな、それでいてどこか気の抜けた言葉に対し、反応を返したのはトウカただ一人だった。

 

 周囲を見渡せば、全員が視線を下に伏せていたり、どこか気まずそうな雰囲気を醸し出している。そこまで思い詰めることでもないだろうに。トウカは場違いにも──他人事みたいに、そんなことを考えた。

 

 そんなことを考えているうちにも、【投票】は無慈悲に、一切の猶予を持たせることなく進んでいく。どうやら他の皆は(葛藤しながらも)票を入れ終えたらしい。

 

 それを受け、トウカも【投票】を済ませることにした。

 

 ──投票先は、尾形トウカ。

 

 それを終えると同時に、スマホから間抜けなファンファーレが鳴り響き──その画面に、ト(・)ウ(・)カ(・)の(・)顔(・)が(・)写(・)し(・)出(・)さ(・)れ(・)た(・)。

 

「はぁい、というわけで圧倒的最多得票だったのは、尾形トウカさんでした。まあぶっちゃけ、最(・)初(・)に(・)自(・)白(・)し(・)ち(・)ゃ(・)っ(・)て(・)ま(・)す(・)し(・)……トウカさんも、別に構いませんよね?」

 

「もちろんです。今は心変わりしていますが、当初はこうすることが狙いだったので。虚偽の【自白】ではありましたけど……、まあ私以外が死ぬよりかは、私が死んだ方が遥かにマシですから」

 

「……尾形、てめぇ……本当にこんな結果で満足なのかよ……!」

 

 諦念を隠しもしないトウカに突っかかったのは、他でもない紫藤アリサだった。思えば彼女は、最初から一貫してトウカの味方でいてくれた。

 

 大切な【仲間】だった。

 だからこそ、守(・)れ(・)て(・)よ(・)か(・)っ(・)た(・)。

 

 票が分散して、他の少女が巻き添えを喰らわないかどうかが、トウカの心配していたことだったのだが。どうやら最後の最後で、世(・)界(・)は(・)ト(・)ウ(・)カ(・)の(・)思(・)い(・)通(・)り(・)に(・)な(・)っ(・)て(・)く(・)れ(・)た(・)らしい。

 

 よかった、よかった。

 めでたし、めでたし。

 

「これでいいんだよ、紫藤さん。庇ってくれてありがとね──」

 

「うるせぇ、うるせぇ……! こんな結末認められるかよ……!」

 

 激昂し、証言台を両手で強く叩き──そして、そ(・)の(・)両(・)手(・)に(・)業(・)火(・)を(・)た(・)ぎ(・)ら(・)せ(・)た(・)アリサは、トウカのもとへと駆け出そうとする。

 

 が、しかし。

 ゴクチョーが放った一言によって、それも制止されてしまうこととなる。

 

「あ、ちなみになんですが。これからトウカさんを【処刑】するわけなんですけど、邪魔したりしたらその人も一(・)緒(・)に(・)【処(・)刑(・)】しちゃうんで。死にたくなかったら騒がないでくださいね」

 

「なっ……てめぇ、どこまで悪趣味なんだよ……!」

 

「そんなことを私に言われましても……、【規則】で決まっていることなので、大人しく従ってください、としか……」

 

「紫藤さん、ありがとう。でも、私なら大丈夫だから」

 

「大丈夫、つったって……!」

 

 直後、裁判所は大(・)き(・)く(・)揺(・)れ(・)始(・)め(・)る(・)。

 何事かと見渡してみると、どうやら【中央の台座が動いている】らしかった。音から考えるに、歯車じかけらしい。

 

 そして、数十秒後。

 裁判所の中央に、【処刑台】が姿を現した。

 

 ──それは。

 ──恐らくは、【絞首台】。

 

「……えっ」

 

 そ(・)れ(・)からは、複数の縄が吊り下がっていた。

 その中に一つだけ、【鋼鉄製】のワイヤーが見える。

 赤子をあやすための【ベッドメリー】のようなのに。

 それだけが、ひどく似合わない。

 

「まって、うそ──」

 

 ゆらゆらと。

 ゆらゆらと。

 ゆ(・)ら(・)ゆ(・)ら(・)と。

 

 様々なものが、吊り下がっていた。

 だから、全てが不釣り合いだった。

 

 全部が全部、普通のものだった。

 全部が全部、異常なものだった。

 

 ぬいぐるみ。毛布。もこもこのパジャマ。

 古びたカバン。少しよれている服。

 キャラクターイラスト付きのコップ。

 ほつれたタオルケット。一輪の造花。

 色褪せたおもちゃ。クレヨンで描かれた絵。

 ひび割れた金魚鉢。止まった時計。

 そして、包帯。

 

 どこかに忘れた、愛情の証明。

 いつかになくした、愛情の証明。

 

 それが。

 なぜか。

 今(・)こ(・)こ(・)に(・)あ(・)る(・)。

 

「──ゴクチョーさん」

 

 だから、トウカの反応も、当然のことだった。

 そんな言葉を吐いてしまったことだって、きっと【普通】のことだった。

 

「裁(・)判(・)の(・)や(・)り(・)直(・)し(・)を(・)要(・)求(・)し(・)ま(・)す(・)」

 

「……はい?」

 

 呆気に取られるゴクチョー。

 無理もない、これまで誰の言うことにも従順であったトウカが、突如として訳のわからないことを言い始めたのだから。

 

 ゴクチョーだけではない。他の【魔女候補】の少女たちだって、少なからず度肝を抜かれた気分だった。

 

 だって、そうだろう。

 先ほどから、ト(・)ウ(・)カ(・)の(・)様(・)子(・)が(・)尋(・)常(・)で(・)は(・)な(・)い(・)の(・)だ(・)か(・)ら(・)。

 

 包帯を取り去っているから、表情がよく見える。

 だからトウカが【絶望】しているのがはっきり分かる。

 両の拳は握り込まれ、何かを必死にこらえている。

 視線が落ち着いていない。時々何かを呟いている。

 今にもその場に倒れ込みそうなほど、弱々しい。

 明らかに過呼吸。パニックに陥っている。

 

「ダメ、だめ、です。【普通】じゃない、間違ってる、私はやってません、わたしじゃ、私じゃない! わたしじゃない!!」

 

「そんなこと言われましても……、先ほども言った通り【規則】で決まっていることなんですから、大人しく死んでください。じゃ、時間ももったいないですし、さっさと始めちゃいましょう」

 

「嫌だ、やだぁっ!! 離せ、離してよ、離してください……、やめて……っ!!」

 

 ゴクチョーの合図と共に、トウカを拘束する看守。必死でもがいてみたものの、しかし想像よりもはるかに力の強かった看守に、まさか非力な彼女が敵うはずもなく。トウカは一段、また一段と階段を上り、【絞首台】へとその足を進めるしかなかった。

 

 そうして辿り着いた、【死地】。

 階段を登り切った先には、難しい仕掛けなんて一つもなくて。頑丈な鋼鉄のワイヤー製の縄と、それから、床が開く仕掛け。たったそれだけの、簡素な【処刑台】。

 

 もはや、どうにもならない。

 トウカは、そう考えていたのだが、しかし。

 

 刹那、と(・)あ(・)る(・)事(・)実(・)に(・)気(・)が(・)つ(・)い(・)た(・)。

 

(……拘(・)束(・)す(・)る(・)機(・)能(・)が(・)、な(・)い(・)?)

 

 そのことに気づいたトウカは、既に仕事を終えてその場に突っ立っているだけの看守を見上げる。反応はない。先ほど上ってきた階段を一段だけ下ってみたが、しかしそれでも反応はなかった。

 

 ……逃(・)げ(・)ら(・)れ(・)る(・)という可能性に思い至るまで、そこまでの時間はかからなかった。それどころか、実際トウカは、速攻で逃走を開始した。

 

 何故かは分からないが、直前で希望の光が見えた。まるでそれは、一縷の望み、さながら天から垂らされた、蜘蛛の糸のようで──。

 

「……ああ、伝え忘れていましたが」

 

 ──だから。

 その【結末】も、決まっている。

 

「別に逃げても構いませんが、中央の台座から外に出た場合は、代わりにあなた以外の【魔女候補】を全員【処刑】させてもらいます」

 

「…………は?」

 

 そんなとぼけた声をあげてしまうのも、無理のないことだった。

 

 つまり。トウカが死ねば、全員助かるし。

 トウカ一人だけ助かれば、他は全員死ぬ。

 

 ──自(・)分(・)で(・)選(・)ぶ(・)し(・)か(・)な(・)い(・)。

 ──自(・)分(・)で(・)決(・)め(・)る(・)し(・)か(・)な(・)い(・)。

 

 今、誰が死んで誰が生きるかは、トウカの手に委ねられていた。

 

「なっ、な……ん、で……? そんなの、【規則】に反してる……」

 

「いいえ? 反していません、この牢屋敷の主が決めたことですから──で、どうするんですか? 死にます? それとも、殺します?」

 

「っ、そんなの、そんな、言い方……!」

 

 どうすればいいかなんて分からない。

 こういう時、どうすればいいかなんて、お父さんもお母さんも教えてくれなかった。

 

 どうしよう。

 どうしよう。

 どうしよう──。

 

 悩みに悩んで悩み抜いた挙句に。

 トウカは、この牢屋敷において、も(・)っ(・)と(・)も(・)リ(・)ー(・)ダ(・)ー(・)シ(・)ッ(・)プ(・)を(・)発(・)揮(・)し(・)て(・)い(・)た(・)人(・)物(・)に、頼ることにした。

 

 その人物とは。

 蓮見レイア。

 

「……蓮見さん」

 

「えっ!? あっ、あぁ……どうか、したのかな、トウカくん──」

 

「私、ど(・)う(・)す(・)れ(・)ば(・)い(・)い(・)!? ど(・)う(・)す(・)れ(・)ば(・)い(・)い(・)の(・)、教(・)え(・)て(・)よ(・)っ(・)!!」

 

「──そ、れを……私に聞くのか!? そんな、そんなのは……そ(・)ん(・)な(・)こ(・)と(・)を、言われてもっ……!」

 

 レイアは、表情を歪めることしかできない。

 だって、そんなことを言われても、彼女が言える言葉なんて、たったの一つしかない。

 

 レイアは、リーダーだから。

 時には、非情な選択もしなければならない。

 

 それはきっと、レイア自身の責任だった。

 

「っ…………トウカ、くん。本当に、申し訳ない──みんなのために、死んでくれ……っ!」

 

「…………う(・)ん(・)、分(・)か(・)っ(・)た(・)。それが私のや(・)る(・)べ(・)き(・)こ(・)と(・)なんだね」

 

 ──こうなることは、分かっていた。認めたくなかったけど、しかし認めざるを得なかった。

 

 そもそも、最初はみんなのために死ぬつもりだったんだ。だからこんなのは、とっくに覚悟も決まっていて。

 

 結局ナノカの死の真相は暴けなかったけれど。でも、もしかしたらそれだって、わざわざ暴くまでもないことだったのかもしれない。

 

 どうせ、遅かれ早かれ、みんな死ぬ。

 トウカは【魔女ではない】から、また【殺人事件】は起こる。

 

 もういい。

 もう、いい。

 もう、どうでもいい。

 

 誰が生きるとか、誰が死ぬとか。

 誰が殺すとか、誰が殺されるとか。

 

 関係ない。

 興味ない。

 意味だって、きっとない。

 

 そうして、鬱屈とした感情を、必死で押し込めているうちに。

 

 トウカはいつの間にか、階段を再び登り終えていたし。

 その首には、縄がかけられていた。

 

「……じゃ、トウカさん一人だけが死ぬってことで。それでいいですね?」

 

「はい」

 

「分かりました。じゃ、みなさんお手持ちのスマホで【処刑ボタン】をぐぐーっと押してください。全員が押し終わった瞬間に【処刑】が開始されますので、ちゃっちゃと終わらせちゃいましょう」

 

 その言葉を聞いた少女たちは、その表情を青ざめさせ、気まずそうに視線を逸らしつつも──しかし、一人、また一人とボタンを押下した。

 

 そうして、誰かも分からぬ最後の一人が、ボタンを押下した瞬間。トウカの足元が、ぱ(・)か(・)っ(・)と開いた。

 

 ……落下の衝撃で首の骨が折れて死ぬまで、あと1秒。

 

 思(・)い(・)出(・)の(・)品(・)々(・)に囲まれながら、トウカは。

 

(……お父さん、お母さん)

 

 両親への懺悔を脳裏に浮かべ。

 

(最後まで悪い子で、我儘な子で、ごめんなさい)

 

 そして。

 ベッドメリーの【モビール】のように、ぷ(・)ら(・)ぷ(・)ら(・)と揺れたトウカの身体が、意思を持って動かされることは、二度となかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

BAD END 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 トウカは声を張り上げ、高らかに【反論】することにした。

 

「ちょっと待って、佐伯さん。私が思うに、昨夜の配信を見ていたのは5(・)人(・)だ(・)け(・)じ(・)ゃ(・)な(・)い(・)と思うんだよね」

 

「……えっ? で、でも……ココちゃんの言っていることが正しいのなら、配信を見られたのって、どうやっても【5人しかいなかった】んじゃないかって、おじさんはそう思うんだけどな……?」

 

「ミリアの言う通りだっつの! まずエマっちだろ? それからミリア、レイアっち、マーゴ、ノアっち……、ほら! 5人! 他に誰があてぃしたちの配信を見られたってのさ?」

 

「うーん……それはほら、あれだよ。こう……、牢屋敷に潜む幽霊とか? あとはこう、何だろうな……。あっ、こんなのはどうかな? 実はこの牢屋敷には私たち以外にも、隠された15人目の──」

 

「いや、トウカっち……ナノカがいなくなって辛いってのは、まああてぃしにも、分からなくもないんだけどさ? でも、多分それは違うと思うわけよ、あてぃしとしては。だからまあ、なんつーか……元気出せよ、な?」

 

(辛くて現実逃避してると思われちゃった……!?)

 

 周囲を見渡すと、裁判所は何だかいたたまれない雰囲気になってしまっていた。メルルがすすり泣く声だけが響き渡っている。

 

 どうやらトウカの反論は、間違っていたようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 トウカは声を張り上げ、高らかに【反論】することにした。

 

「……沢渡さんの【魔法】って、本当に【千里眼】なのかな? 私としては、そうとも限らないと思うんだけど」

 

「あっ、確かに……! ココちゃんの【魔法】が【千里眼】だってことは、あくまでも本人が言っていることでしかないもんね!」

 

「いやいやいや! ちょい待てっての! エマっちもトウカっちも、何で二人してあてぃしの言うことにつっかかってきちゃってんのさ!」

 

「いや、だって……」

 

「だっても何もないっつーの! だったら暴露してやるよ……昨日エマっちは、あてぃしの配信を見てる途中にシャワー室に向かってた! そんで配信見たまま、シャワーを浴びる準備を──」

 

「うっ、うわああああっ!? いいから、分かったから! ココちゃんの言うこと信じるから!」

 

(桜羽さんが辱めを受けてしまった……!)

 

 どう考えてもそんな場合ではないのだが、裁判所の雰囲気が少しだけ和やかになってしまった。中には苦笑いを浮かべている少女もいる。

 

 どうやらトウカの反論は、間違っていたようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 トウカは声を張り上げ、高らかに【反論】することにした。

 

「……【魔女は配信を見ていない5人の中にいる】──それ、本当にそうなのかな?」

 

「えっ? いやいやだからさぁ、トウカっちもまさか忘れたわけじゃないっしょ? あてぃしの持ってる【魔法】のこと!」

 

「もちろん。沢渡さんの持っている【魔法】は【千里眼】──画面越しだろうが何だろうが、自分のことを見ている相手を見ることができる、だよね?」

 

「何だよ、ちゃんと分かってんじゃん? じゃあ尚更、あてぃしの【推理】のどこが間違ってるってのさ!」

 

 ココはトウカに向けてず(・)び(・)し(・)と指たててその手を突き出した。

 

 トウカが【見た】ところによると、どうやら何(・)が(・)間(・)違(・)っ(・)て(・)い(・)る(・)の(・)か(・)を正しく指摘しないと、ココは納得してくれなさそうである。

 

 それならば。

 こ(・)ち(・)ら(・)も(・)突(・)き(・)つ(・)け(・)て(・)や(・)れ(・)ば(・)い(・)い(・)。

 

 トウカは、毅然とした態度で答えた。

 

「沢渡さんの【推理】で間違っているところ、それは──」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「──【魔法】がおかしいんだ! やっぱり沢渡さんの【魔法】は【千里眼】じゃない、もっと別の何かのはず!」

 

「……はぁ? え、いや……まあ、確かに【証明】すんのは難しいけどさ……でも、何つーの? そこを信じてもらえないことには話が進まねーっつーか……」

 

「いや、そうなんだけどね? でもやっぱりその辺り、まだ信用できないというか……どうにかして【証明】してもらえないことには……」

 

「んー、【証明】っつっても──あっ! そーいや昨日、レイアっちがあてぃしの配信見ながらトランプ作ってたけど、多分あれは次配信に呼ばれた時のため、みんなを驚かせるためにマジックの練習を──」

 

「あー! うん! どうやらココくんの【魔法】は【千里眼】で間違いないようだね! あはははは!!」

 

「──……とまあ、そーゆーわけよ。ちょっとアレだけど、【証明】くらいにはなるっしょ……?」

 

(芸能人のかわいい一面を暴いてしまった……!)

 

 どうやらトウカの反論は、間違っていたようだ。

 

(でもこれで、沢渡さんの【魔法】が【千里眼】であるということははっきりした……、それはそれで十分!)

 

 間違ってはいたが、しかし収穫は十分。トウカは気を取り直して再び考えをまとめ、ココに対して【反論】することにした。

 

「沢渡さんの【推理】で間違っているところ、それは──」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「──【推理】だよ。沢渡さんの【推理】は、間違っている!」

 

「いや、だからあてぃしは、その【推理】のどこが間違ってるんだって話をしてるんだけど……」

 

「それはほら、あれだよ。なんかこう……なんて言うんだろうね? とにかく間違ってるよ、うん、そうに違いない」

 

「んだよそれ!? 理由になってないじゃん! トウカっち、お前ついにイかれたのかよ──って、あんまこういうこと言うのはよくないか……。とにかく! あてぃしの【推理】のどこが間違ってるのか教えてって!」

 

「尾形……確かに現実から目を背けたいって気持ちは分かるけどよ。だけど黒部のためにも、お前は前を向かって決めたんだろ?」

 

「トウカちゃん、だいじょうぶ? この裁判が終わった後、のあが一緒にお絵かきしてあげるから、元気出して……?」

 

「そうだとも! キミには私たちがついている──だからこそ! なればこそ! 共に真犯人たる【魔女】を探し当てるまで、キミを激励し続ける覚悟だよ!」

 

(元気がなくなってとち狂ったと思われてる……!?)

 

 どうやらトウカの反論は、間違っていたようだ。

 

(しかし、間違っているのが【推理】そのものではないとなると……。うん、それならこれしかない!)

 

 醜態を晒しはしたものの、しかしトウカはすぐさま思考をまとめ直し。そして今度こそ、自信を持って【反論】した。

 

 

「沢渡さんの【推理】で間違っているところ、それは──」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「これだ!」

 

 

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:反:論:

 

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 トウカはココに対してず(・)び(・)し(・)と指を突き出し返し、そして高らかに【反論】した。

 

「沢渡さんの【推理】だと、時(・)系(・)列(・)に(・)明(・)確(・)な(・)矛(・)盾(・)が(・)発(・)生(・)す(・)る(・)んだよ。多分、気づいていなかったんだと思うけどね」

 

「はぁ? 時系列に矛盾って……具体的にどーゆーところよ。それだけじゃあてぃしは納得できねーけど?」

 

 ココは先ほどまで自信満々に【推理】を並べ立てていた分、そこに【反論】されたことが気に食わないらしい。表情にほんの少しだけ、不快感が表出したのが【見えた】。

 

 しかしトウカとしても、ここで引き下がるわけには行かない。故に、嫌われるのも覚悟で押し通すことにした。

 

「そうだな……宝生さん、一つ聞きたいことがあるんだけど、構わないかな?」

 

「ええ、もちろんよ──とは言っても、この状況で聞きたいことなんて、たったの一つしかないだろうけれど」

 

「うん、多分同じことを考えていると思う──沢渡さんの【魔法】が【千里眼】だってこと、いつ知った?」

 

「そんなの決まっているでしょう? 私が【千里眼】を知ったのは、【つ(・)い(・)さ(・)っ(・)き(・)】のことよ。だってそれまでココちゃんは、【千里眼】を持っていることなんて一度も言っていなかったもの」

 

「──えっ、マジで……!?」

 

 やはり、ココ自身も気づいていなかったことらしいが。彼女が自身の【千里眼】の存在を皆に伝えたのは、こ(・)の(・)裁(・)判(・)が(・)始(・)ま(・)っ(・)て(・)か(・)ら(・)のことである。

 

 だから、「配信を見ていない者の中に犯人がいる」という言説は、この場合は成(・)立(・)し(・)な(・)い(・)。

 

「そうだよね。だって沢渡さんの【千里眼】をみんな知らなかったんだから、う(・)っ(・)か(・)り(・)配(・)信(・)を(・)見(・)な(・)が(・)ら(・)犯(・)行(・)に(・)及(・)ん(・)だ(・)可(・)能(・)性(・)だって考えられるんだよ!」

 

「うっ……た、確かに? トウカっちの言うことにも、一理あるかも……」

 

「うーん……どうやらもう一度、全員のアリバイを洗い直す必要がありそうですね! ココさんには申し訳ありませんが、振り出しに戻った、と言ったところでしょうか!」

 

「う、うるせぇっ! わざわざ言わなくていいんだよ、そういうのは……!」

 

 ココの顔がみるみる紅く染まってしまって、【魔女候補】の少女たち(一名除く)は少しの哀れみを持つことになったが……。しかし、そうゆっくり和んでもいられない状況である。

 

 ナノカを殺害した【魔女】を特定するための材料は、未だにほとんど集まっていないと言っていい。だから、少女たちは【魔女裁判】を進めることを、第一に考えなければならないのだ。

 

「……少し、いいかな?」

 

 そんな所で、突如として口を開いたのは。

 牢屋敷のリーダー的存在である、蓮見レイアだった。

 

「ココくんの【千里眼】に関連して、少し気になったことがあってね──悪いけど、少しだけ時間をいただくよ」

 

 ──【魔女裁判】は、止まらない。

 

 悪しき【魔女】の掌の上で踊らされるか。

 その【魔女】を排除することになるのか。

 

 未だどちらに転ぶかは分からないけれど。

 しかしそれでも、少女たちは進むしかない。

 

【絶望】の暗闇を掻き分けて。

【希望】の光を掴み取るまで。

 

 

 







【魔女図鑑】

【証拠品】

・黒部ナノカの死体写真
 湖のほとりで死亡していた黒部ナノカの写真。
 頭部に二発の弾痕があり、即死ではなかった可能性がある。

 左手の爪が剥がれており、土が付着していた。

 レイアの【検死】によれば、死亡推定時刻は【昨夜の21〜22時】らしい。


・魔法の銃
 黒部ナノカが所有していた魔法の銃。
 装弾数は六発。一日一発ずつ銃弾が復活する。
 弾を撃ち切っているらしく、引き金を引いても発砲されない。

 現在はトウカが所持している。


・黒部ナノカのスマホ
 シンプルながらも所々にゴシック風味の装飾が施されたスマホカバーが装着されている。

 指紋のつき方から推察するに、パスワードは0606だと思われる。


・睡眠薬
 青色をしている、即効性のある睡眠薬。
 紫藤アリサが服用しており、尾形トウカもほんの少しだけ口にした。

 かなり強い薬らしく、ビン一本分を一気飲みすれば、即座に昏倒するだろう。


・空きビン
 薬液を入れておくためのビン。
 紫藤アリサが黒部ナノカの死体の付近で発見し、持ち歩いていた。


・牢屋敷前の壁画
 城ケ崎ノアが牢屋敷前の壁に描いた絵。
 牢屋敷に拉致された少女たち14人をモチーフとした蝶が飛び交っている。

 今後絵を増やしていく予定らしく、今のところ他の絵はない。


・腐ったリンゴ
 食堂のフルーツかごに放置されていた、沢渡ココの配信で蓮見レイアがレイピアを用いて貫いたであろうリンゴ4個の内の1個。

 前日まではまだ食べられる状態だったのだろうが、現在は腐ってしまっていて食べられそうにない。


・ココの配信アーカイブ
 娯楽室にて行われたココの配信のアーカイブ。
 ゲストとしてトウカが参加しており、手作りのトランプでババ抜きをしていた。結果はトウカの全勝。

 配信は21時30分に終了している。



──◆──◇──◆──◇──◆──◇──◆──





【共犯者(評価者)様紹介】(敬称略)
 ☆10
 ランチョンマット

 ☆9
 特撮オタク(にわか) 黙撃者




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 今後とも何卒よろしくお願いします。


現時点で怪しいのは誰?

  • 桜羽エマ
  • 二階堂ヒロ
  • 夏目アンアン
  • 城ケ崎ノア
  • 蓮見レイア
  • 佐伯ミリア
  • 宝生マーゴ
  • 黒部ナノカ
  • 紫藤アリサ
  • 橘シェリー
  • 遠野ハンナ
  • 沢渡ココ
  • 氷上メルル
  • 尾形トウカ
  • ゴクチョー
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