Like Yourself   作:心愛さん

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第5話 観測衛星

 次の仕事は、観測用の人工衛星の設置。

 ……えーっと、人工衛星って、どこで手に入れたらいいんだ?

 当然俺はそんなもの持ってない。

 持ってない物は設置できない。

 ……うん。そりゃそうだ。

 ええと、ナビゲーションに情報載ってたりしないか?

 依頼を受けたときに転送された情報に仕入れ先が載ってたり……しないか。

 それじゃ、ええーっと。

 シミュレーションで勉強してた時に使った教本を引っ張り出す。

 えーっと、人工衛星は……ふむふむなるほど、『各勢力の埠頭で購入できます』と。

 人工衛星は艦船に積み込むことのできる消耗品。

 埠頭ではそれ以外にも様々なものが売っていて、艦船に関するものは大抵ここで仕入れることができるらしい。

 そうと分かればあとは簡単だ。

 宙域マップから埠頭を探して、ナビゲーションを起動。

 埠頭を目的地に設定。

 あとは船を飛ばすだけ。

 

 さて。

 船が到着するまで少しだけ時間があるので、その間に姐さんに通信を入れておこう。

 人工衛星、1機あたりおよそ5千クレジット。

 さっきの輸送依頼の報酬で十分購入できるし、なんならこの依頼を終えれば増えて戻ってくるわけだけど、口座のお金を使う以上、報告は大事だろう。

 ……という建前で、姐さんと話したいだけなんだけどな。

 モニターを操作し、姐さんに通信をつなぐ。

 

「姐さん! 人員輸送の方も無事に終わりました! それで次の依頼の事で確認したいことが……姐さん?」

 

 ……あれ?

 返事が返ってこない。

 耳を澄まして集中してみると、バンバン、ドンドンと聞こえてくるので通信には成功しているはずなのだけど……いや待て、この音まさか、戦闘音か!?

 

「姐さん!? 無事ですか、姐さん!!」

『わっ。声大きい、大きいってばたっくん』

「……あ、すいません」

 

 良かった。

 元気そうな声が聞けて。

 

『すぐに応答できなくてごめんねー。もう片付いたから大丈夫。それで、なんだっけ?』

「あ、はい。今埠頭に向かっていまして。観測衛星の設置の依頼があったので人工衛星を購入しようかと……大丈夫そうですか?」

『うん。もちろん。せっかく埠頭に向かうなら、そのディスカバラーもアップデートしとくかい?』

 

 艦船のアップデート。

 言ってみれば部品の換装だ。

 艦船は部品の集合体。

 武器もエンジンもシールドも、全て組み替えられる。

 もちろん性能が良いものに組み替えれば、その分値段も上がるわけだが。

 

「けど俺、どんなパーツがいいのかよく分からなくて……姐さんのおすすめの組み合わせとか、あったりします?」

『んー。そうねえ。おすすめは色々あるけど……とりあえず内部コンピューターに、ドッキングアシストの機能つけるのはおすすめかな』

 

 なるほどなるほど? カタログを確認してみる。ドッキングのストレスを軽減、か。

 ドッキングの操作をコンピュータに任せられるようになるって事だろうか。

 割と緊張する操作なので、これはいいかもしれない。

 

『それじゃ、私は先に戻ってるから。たっくんもその依頼終わったらおいで。じゃあね』

 

 通信終了。

 そしてちょうど良いタイミングで、ナビゲーションの音声案内が響く。

 

『目標地点まで、あと20キロ。まもなく到着です』

 

 そろそろだな。

 トラベルモード、解除。

 急なブレーキはかけず、自然減速に任せて様子をみる。

 残り15キロ……10キロ……

 速度計のメーターが、通常モードの巡航速度である230m/sまで下がる。

 あとはこのまま近づきつつ、ドッキング申請を送信。

 

『ドッキング許可を受諾しました』

 

 うん。この流れもだいぶ慣れてきたな。

 一連の流れをかなりスムーズにこなせるようになってきた。

 最初の頃は、接近して、停止して、申請して、ドッキング。そんな流れでやっていた。

 今は接近しつつ申請を送り、許可が返ってくる頃にはドックに向けて回頭を済ませておく、そんな流れになりつつある。

 止まってから行動するのではなく、動きながら次の行動も行う。

 なんだか自分がベテランのパイロットになったようで気持ちがいい。

 

「ようこそ、いらっしゃいませ。本日は部品の換装ですか?」

「ああ、まず人工衛星の積み込みと……」

 

 整備士に注文内容を伝える。

 ドッキングアシストは……MK1とMK2の2種類があるのか。

 まあ、安い方でいいな。

 MK1の方を注文して、換装の作業時間にナビゲーションを確認。

 観測衛星の投下予定地点は、宙域内のジャンプゲート前。

 このジャンプゲートってのは、通ると全く別の場所に抜けることができるワープ装置のことで……それが今分かってる全てだ。

 

 ……いや、マジでそうなんだって。

 オレがバカな訳じゃないから。

 それ以外の詳細は、一切不明。

 いつ、誰が、なんの目的で作ったのかも分からないワープ装置。

 教本にそう書いてあるんだってば。

 偉い人の書いた本にも、どうやってワープしてんのかさっぱり分からんって書いてあんの。

 しかもある日突然使えなくなったり、そうかと思えば突然また使えるようになったりする気まぐれなヤツである。

 数十年前にはこいつの気まぐれのせいで、大変な混乱が起こったらしい。

 

「換装作業、終わりました。いつでも発進できますよ」

「うん。ありがとう」

 

 整備士に礼を述べて、離陸、発進。

 指示されたジャンプゲートに向かって船を飛ばす。

 ジャンプゲートは戦場の入り口だ。

 脅威となる敵が襲ってくる場合も、逆に友軍からの援軍が送られてくる場合も、基本的に艦船はジャンプゲートを通ってやってくる。

 なのでゲート前の視界を確保することは軍事作戦上、とても重要な意味を持つのだ。

 ……って、偉い人の教本に書いてあったぜ。

 

「軍事作戦かあ。ベヒーモスの艦長、大丈夫かな」

 

 時計を見ると、俺がベヒーモスを飛び立ってから20分が過ぎていた。

 今頃は戦闘の真っ只中だろう。

 別に、仲良くなったわけでもなんでもない、赤の他人。

 他人のことなんてどうでもいい。

 今までずっと、そう思って生きてきた。

 寝過ごした船員を送り届けて、そのお礼を受け取った。

 本当にただそれだけの、それ以上でも以下でもない他人なのに。

 ……生き残っていて欲しいなと思うのは、どうしてかな。

 

『目標地点に到着しました』

 

 ナビゲーションが、目的地に着いたことを知らせる。

 人工衛星、投下。これにて依頼達成だ。

 俺にはこの程度しかできないけれど。

 この衛星から得られる情報が、少しでもベヒーモスの人たちの役に立てばいいな。

 

「……さて、帰るか!」

 

 特に動作不良を起こすこともなく、正常に動きだした人工衛星を確認して。

 姐さんの待つステーションへと船を飛ばす。

 なんだか、とってもいい気分だ。

 

 この2日間、いろんな仕事をやってみたけれど。

 ワルモノを退治した時より。輸送を無事に終えた時より。

 今が1番、いい仕事したなあって感じだ。




お待たせしました。第5話、読んでいただきありがとうございます。次回もどうぞお楽しみに。
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