人類のみなさまへ。
みなさまは、『魔法』という力をご存知でしょうか?
……そうですか。博識でいらっしゃいますね。
……少し、昔話を聞いてくださいませ。
わたくし達の故郷では、そんな魔法の力によって発展しておりました。
例えるなら、そうですね。
人類のみなさまが、『科学』と呼ばれる力によって発展を遂げているのと同じようなものでしょうか。
わたくし達は、魔法によって遠く離れた友人と会話し、離れた場所へ一瞬で移動します。
日常生活で、あるいは職場で。
魔法は当然のように使われ、魔法なしの生活なんて考えられないほど。
時として国同士で戦争になったりもしましたが、その時も惜しみなく魔法の力が使われました。
魔法の力をより発達させた方が戦勝国となる。
そんな風にも言われておりました。
そして、誰もその言葉を疑わなかった。
当時のわたくし達は、魔法を一切使わない戦いというものを、想像すらしていなかったのです。
……もう、あの戦いからどれほどの時がたったでしょうか。
300年でしょうか。あるいは400年でしょうか。
真っ暗な宇宙空間を漂っていると、時間の感覚なんてさっぱり分からなくなってしまいます。
本当、困ったものですね。
ある日とつぜん宇宙からやってきた敵に対して、わたくし達はまったくの無力でした。
……ゼノン、彼らはそう呼ばれているそうですね。
言葉も通じず、焼いても凍らしても顔色ひとつ変えない未知の外敵に対して、わたくし達はただ逃げ惑うことしかできませんでした。
当時戦争状態であった魔王軍とすら休戦し、共に生存の道を探したものです。
そうして3日3晩考えた末の結論が、『可能な限り、少しでも遠くまで逃げる』しかなかったなんて、本当に笑えますよね。
『外宇宙テレポーテーション計画』
そう名付けられた計画は、それはもう壮大なものでした。
大陸1つを丸ごと使って巨大な魔法陣を描き、魔力自慢の魔術師、エルフ、アンデッドから果ては魔王までが協力して全ての魔力を総動員しての外宇宙への脱出計画です。
今までいがみあっていた相手とも共同作業の中で少しずつ打ち解け始めたりもして、そこは少しだけ楽しかったですよ。
ともかく、そんなこんなで外宇宙テレポーテーション計画は無事に成功しました。
……けれどまあ、そこからがまた大変でして。
本当に、とんでもない宙域にテレポートしてしまったものです。
まさか、ゼノンの生みの親とその子孫までいるなんて聞いてませんよ。
人類のみなさまへ。
みなさまは、電波を飛ばして遠くの友人とコミュニケーションを取るのだとか。
なんですかその特殊なコミュニケーションは。
そもそも電波って何ですか。電気とは別なのですか。
テレパシーで話しかけてもフルシカトとか、人としてちょっとどうかと思います。
いやまあ、こちらからもできる限り歩み寄る努力はしますけども。
魔法によって電波に似せたビームを打ち出してみれば、鉛玉を打ち返してくるってどういう事ですか。
流石に温厚なわたくしもそろそろブチキレそうでございます。
みなさまは鉱物やシリコンを集めているようですので、それをどのように使っているのか知りたいだけですのに。
……ああ、鉛玉が直撃してしまいました。
なんですかその『夜露死苦』とかいうバカみたいなデザインの服は。
まったくもう。これ以上はバリアがもちませんね。
ひとまず退散すると致しましょう。
それでは、ごきげんよう。
幕間の物語、読んでいただきありがとうございます。
宇宙の歴史やカークの正体については、作者の独自解釈が多分に含まれております。