山手線とは、ロマサガ2とはいったい……うごごごご   作:葛城

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申し訳ない、投稿するところ間違えました
許してください、何でもしますから


第9話: スケット(七英雄)

 

 

「……君は、オアイーブか? まだ何か私たちに伝えることでもあったのか?」

 

 

 王都アバロンにある王城へと案内された俺たちだが……まあ、案の定というか、相手方は困惑していた。

 

 

 そりゃあ、そうだ。

 

 

 七英雄(推定)への対抗策として『伝承法』を託してから、するっと消息を絶っていたのだ。

 

 ふらりと姿を見せるにしても、王都がモンスターに襲われている最中に戻って来るとは想像すらしていないだろう。

 

 当然のごとく、王の側近というか、王を支えている者たちは一人の例外もなく警戒心もまた見せていた。

 

 特にひと際強い警戒心を見せていたのは、少々奇抜な格好をした、男の剣士であった。

 

 明らかに、他の兵士たちと装備というか、佇まいというか、雰囲気が違う。

 

 兵士たちは統一された武具防具を身にまとっているが、その男に限って、装備の一つ一つに年季が入っていて、彼自身にカスタマイズされているように見えた。

 

 

 ……もしや、傭兵の類だろうか? 

 

 

 気になって、いまだ腕を組んだままのテレーズへと視線を向ければ、察した彼女はそっと俺の耳元に口を寄せて来た。

 

 

『彼は傭兵のヘクターです。今回の撃退作戦には参加していませんが、先王レオン様からの信頼が厚かった凄腕の剣士です』

 

 

 こしょこしょ、と教えてくれる。ちょっと、耳がくすぐったい。

 

 ていうか、やっぱテレーズさん、おっぱいでっけぇ。

 

 ここに来るまでの短い道中にて軽く説明されたが、テレーズは『帝国猟兵』という役職に付いている、弓兵である。

 

 機動力を武器の一つとしているだけあって、重装歩兵などに比べて軽装で、その分だけ装備が身軽である。

 

 具体的には、全身鎧(フルアーマー)ではなく、急所を最小限守っている程度。

 

 胸の部分に至っては、弓当て代わりに半分守られているだけで、反対側は少し分厚い……おそらく固定する意味も込めてのインナーだけ。

 

 つまり、私服よりは固いのだけど、中身がデカいから、押し当てられると普通に変形した感触が伝わってくる。

 

 おまけに、テレーズさん……普通に美人である。

 

 いわゆる、仕事のできる女性って感じで、先ほどまで戦闘を行っていたからなのか、暖かい体温と立ち上る香りが、ふわりと俺の方に……これ、もしかしてわざとやっているのだろうか? 

 

 

「……皆、落ち着け」

 

 

 嬉しい反面、ちょっと気まずいぞと思っていると、この中でも年若い男が手を挙げて場を制した。

 

 命令口調とは裏腹に、どうにも威厳に欠けているというか……あ、いや、なんだこれ? 

 

 その男を見やった俺は、その内に宿る違和感に意識を向け……ああ、なるほど、これが『伝承法』かと納得した。

 

 と、なれば、だ。

 

 

「今は緊急事態で、畏まった手順を踏む暇が無いので省略するが……私の名はジェラール。つい先ほど、先王の意思を継いでこの国の王となった」

 

 

 やはり、彼がこの国の王であり……『伝承法』はしっかり役目を果たしているようであった。

 

 

「君たちが何者なのかを問いただしたいところだが、今は一刻を争う。クジンシーの事もあるが、まずは後方の憂いを絶つために、我が国を襲ったゴブリンの巣を叩きに行く」

 

 

 なにせ、穏やかな見た目とは裏腹に、その目には強い光が宿っていたからだ。

 

 

「あまり時間をかけていては、クジンシーの戦力も増してしまう。この戦いが終わってから、改めて──」

「──陛下、その前に、どうしても貴方にお話ししなければならない事があります」

 

 

 そして、そのままの流れで門前払いされかけた俺たちだが……直前、オアイーブはスッと前に出て膝を付き、深々と一礼をした。

 

 本来ならば、後にしろと怒られて終わるところだが……さすがに、『伝承法』や『七英雄』の脅威を先王に伝えていたからだろうか。

 

 一瞬ばかり迷いを見せたジェラールだったが、すぐに迷いを断ち切った様子で、「では、一緒に来てもらおう」そう言って俺たちに背を向けて歩き出した。

 

 つられて、俺たちも歩き出す。グイグイと、テレーズに腕を引かれる。

 

 傭兵のヘクターから、警戒心とは別に、俺の事を興味深そうに見ていたが……いや、彼だけじゃないけど。

 

 

(あんまり引っ付くの、やめてほしいなあ。気まずいし、その、俺も男なんで……)

 

 

 気のせいではなく、俺たちは初対面だ。

 

 最初は俺を逃がさないつもりで腕を引いていたっぽいが、さすがにこのタイミングで逃走なんてするわけがないのだが……まあ、いいか。

 

 考えるのが面倒になった俺は、そのままテレーズに腕を引かれるまま流されるのであった。

 

 

 

 

 

 …………。

 

 ……。

 

 ……。

 

 

 

「…………なに臭い息吐きかけてんの汗だくで全身汚いしそもそも髪ボサボサで手入れも行き届いていないしクジンシーもクジンシーよこれだから童貞は年増でもちょっと引っ付かれただけでデレデレしてだいたい明らかにお世辞じゃないのつまり金目当て身体目当てああやだやだ性欲持て余した女はモテなさそうな男を見つけたらす~ぐくっさい唾を付けようとするしそもそもなにがテレーズよテレーズがなんなのよ朝から晩まで筋肉鍛えている男女でしょそもそも助けただけで尻振って媚売ってくる時点でろくな女じゃないしクジンシーも何時までも優しさみせて構ってないで振り払うぐらいしなさいよこれだからあんたはダメなのよやっぱり私がちゃんと見てないとあんたろくな目に合わないわよだってそうでしょうあんた──(ビキビキビキビキビキビキビキビキビキビキビキビキ……)」

 

 

 

「あ、あの、ノエル……ロックブーケはどうしたの? さっきから小さな声で何事か呟いているし、一度も瞬きしていないし、顔とか首筋に血管が浮いていて、怖いのだけど……」

「何も聞くな、ロックブーケは……その、そういう年頃なんだ……」

「思い出したくないが、あれは何時だったか……大大大天才教授から、ご褒美のキッスをされたときか?」

「頬にキスをしてきたやつか……あいつ、ずーっと瞬きせず見ていたな……」

「……知っていますか? その日の夜、寝ているクジンシーの頬をずーっと見ていたんですよ……見かけた時、腰が抜けかけましたよ……」

「やめろ、思い出させるな……」

 

 

 

 ……。

 

 ……。

 

 ………………。

 

 

 

 

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………そうして、原則一部の者を除いて立ち入り禁止の王の私室へと案内された俺たちは……いや、違う。

 

 

 この場で唯一、ジェラールたちと認識のあるオアイーブが、話を始める。

 

 その話は長く、要点をまとめたモノであっても、途中でお茶が運ばれてきたぐらいの時間を必要とした。

 

 その中身は、何一つ今に至る経緯を把握していない俺たちに対する確認作業というか、説明も含まれていた。

 

 むしろ、それでも短時間で済んだあたり、オアイーブの説明の仕方が上手いからなのと、『伝承法』を授けたという意味での信頼があったからなのだけど。

 

 

「……にわかには信じがたい。だが、一言で切り捨てるには、あまりにも信ぴょう性が高い」

 

 

 そして、オアイーブからの説明を一通り聞き終えたジェラール……ジェラール皇帝は、顔をしかめていた。

 

 それもまた、当然である。なにせ、俺たちですら困惑しているのだ。

 

 

 ジェラール皇帝からしたら、だ。

 

 

 自分の父親(先王)を殺しただけでなく、領土をも占領しようとしている七英雄クジンシーと同じ名を持つ男が来ただけでなく。

 

 彼は名前だけでなく本物のクジンシー、されど、この国に脅威をもたらしているモンスターのクジンシーもまた、本物のクジンシー。

 

 そのうえ、彼と一緒に居る他の6人は、なんと全員が本物の七英雄であり、同時に、6体のモンスター七英雄が居ると聞かされたのだ。

 

 これ、相手がオアイーブでなかったら、なにをふざけた戯言をと怒鳴られて追い出されても仕方がない話である。

 

 だって、七英雄どころじゃない。

 

 伝説として語り継がれていた七英雄が実在したってだけでも騒ぎになるのに、その七英雄が人々を苦しめる。

 

 そこに、新たな七英雄が姿を見せて、我らこそが真の七英雄だと言い出すばかりか、名前まで同じときたもんだ。

 

 こんなの、悪い冗談にも程がある。

 

 合わせて十四英雄とか、語呂が悪いうえに多すぎだろ。両手の指で足りないって、それもう部隊の名称だろ。

 

 

「改めて貴方達を見て、父上より受け継いだ経験もあって、それが良く分かる。英雄と呼ばれる者とは、貴方達の事を言うのでしょう」

 

 

 言われて、俺は首を傾げた。

 

 ワグナスやノエルならともかく、俺はそこまで言われるほど……強いて挙げるならば、ただ時と機会に恵まれただけ──ん? 

 

 

「さすがです、ジェラール皇帝。事実、ここに居るクジンシー殿は、私など足元にも及ばない見事な弓さばきでモンスターを瞬く間に仕留めました」

 

 

 なんか、テレーズが変な事を言い始めた。

 

 

「ほう……?」

 

 

 いや、ほう……じゃなくて、皇帝様? 

 

 そんな、とても感心したかのような反応を示されても……ていうか、俺の話題とかじゃなくてさあ……ねえ、ワグナス? 

 

 

「……ずいぶんと、くすぐったくなる評価だが……我らのことを、七英雄と呼ぶのは止めてもらいたい」

 

 

 俺の視線に気づいてくれたのか、代表する形でワグナスがそう言えば、ジェラール皇帝は首を傾げた。

 

 

「ふむ、それはどうしてかな?」

「英雄と呼ばれたのも、遠い昔の事だ。今はもう、貴方達の時代なのだからな」

「……承知した」

「その代わり、我らも少しばかり協力することを約束しよう」

 

 

 それから、改めてワグナスが提案した。

 

 

「ジェラール皇帝。突然のことで申しわけないのだが、我らも『七英雄クジンシー』の討伐に参加させてもらいたい」

「ほう、それはどうして?」

「人々を苦しめる『七英雄クジンシー』が、いったいどのようなやつなのかを一目見ておきたい。もちろん、ゴブリン討伐にも我らは力を貸そう」

「ふむ……」

「正直なところ、我らも困惑しているのだ。どうして人々を襲っているやつが我らの名を名乗っているのか、それすらも我らは分かっていない」

「……分かった。協力、感謝する。貴方達の目には、光を感じる。ソーモンのクジンシーには無かったモノを、強く感じる」

 

 

 そこまで話を終えたあたりで、ジェラール皇帝は……この場にいる全員に聞こえるよう、力強く宣言した。

 

 

「翌日、ゴブリンの巣へと向かう! この作戦は少数精鋭かつスピードが勝負だ、各自明日まで身体を休めるように!」

「了解!」

 

 

 帝国兵……おそらく、当日参加する……ヘクターやテレーズが、ジェラール皇帝の号令に敬礼──っお? 

 

 

 グイっと腕を引かれたのでそちらに目を向ければ、ロックブーケだった。

 

 急にどうしたと思ったら、「城下町を見に行くわよ!」空気を読まずに宣言……いや、待って、いまそういう場面じゃなかったよね? 

 

 視線でワグナスに判断を仰げば、好きにしろと言わんばかりに肩をすくめて……ノエル隊長もそうだが、他のやつらも知らんふりをしている。

 

 の、ノエル隊長……恋人(?)と再会したからって、妹をたぶらかす不埒な男への監視はどうしたんですか??? 

 

 そう言いたくなったけど、思いのほか腕を引くロックブーケのパワーがすごい……っていうか、ちょっと痛い。

 

 

 あと、なんか甘い匂いがする。

 

 

 これって、香水だろうか……あれ、さっきロックブーケから香水の匂いなんてしていなかったのだけど……いつの間にしたんだろうか? 

 

 でもなあ、聞いたところで教えてくれないだろう。

 

 基本的にクソわがまま気質なロックブーケが止まるわけもなく……俺はやたらと柔らかく立派な感触を腕に感じながら、引っ張られるしかないのであった。

 

 見に行くって、モンスターに襲われてボロボロに……え、負傷者の治療……あ、そういう事っすか、そうっすか。

 

 

「ふむ、ならば我らも微力ながら救助活動といきましょうか」

 

 

 あ、ボクオーンも来るの……え、なんで朗らかな顔で離れていくの、あの、ちょっと??? 

 

 

 

 

 

 

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………そんなこんなで、夜。

 

 

 残党が残っていないか綿密に調査を行い、合わせて、水術による治療が出来るロックブーケが、怪我人を……という分担作業を行って。

 

 気付けば、すっかり日が暮れていた。

 

 それから食事も取って、火術にて湯を沸かして疲れを取り、さあ後は寝るだけ……という段階で割り当てられた部屋に戻れば、ベッドにロックブーケが居た。

 

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………もう一度言おう、ロックブーケが居た。

 

 

 俺たち全員に個室が割り当てられたけど、部屋を間違えるような内装ではない。部屋の位置も、全然違うし。

 

 ていうか、わざわざ全部見てココってこだわったのはロックブーケだけだから、間違えるはずがない。

 

 なのに、ロックブーケが居る。

 

 しかも、何が楽しいのか、全身を使って子供のようにどったんばったん跳ねて……おい止めろ、埃が経つし、天日干しされた色々なフワフワ感が無くなるだろうが。

 

 

「あ、おかえり~」

「お帰り、じゃねえよ。おまえ、ピシッと整えられたベッドメイクが台無しじゃねえか……」

「じゃあ、お休み~」

「おまえ、まさかこのためだけに……???」

 

 

 冗談だろって思ったけど、本当にそれ以外は何もせず部屋に帰って行った。

 

 後に残されたのは、どったんばったん跳ねてグシャグシャに乱れたシーツや布団やら……おおう、せっかく綺麗に整えられていたのに。

 

 あいつ、他のやつらにはしないのに、俺にだけはこういう事をするんだよなあ……まあ、もう慣れたけど。

 

 いわゆる、愛されキャラってやつなのかねえ……そりゃあ、ノエル隊長があれだけ甘やかすのも、見た目からして分かるけど。

 

 

(救助活動でストレスでも溜まったか……疲れたし、さっさと寝るか)

 

 

 グシャグシャにされたシーツを直すのも面倒だった俺は、もうそのまま中に入って目を瞑り。

 

 

「……あいつ、寝る前にも香水して寝るのか?」

 

 

 シーツどころか、枕からも自分とは違う匂いがして……俺はため息を吐いたのであった。

 

 

 

 

 

 




ビューネイの凝視(魅了)と、ロックブーケのテンプテーションを交互に掛けられて脳みそ壊れかけたクジンシーさんの雄姿は、涙無くして見られませんでしたね(存在しない記憶)

その後、ノエルさんちょっとだけ妹関係でもクジンシーに優しくなりました
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