山手線とは、ロマサガ2とはいったい……うごごごご   作:葛城

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第11話: オアイーブは黙して絶対に語らなかった

 

 

 ──結果を先に語るならば、『七英雄クジンシー』はジェラール皇帝一行の手によって討伐された。

 

 

『七英雄』の名を語るだけあって、ソーモンに居るどのモンスターよりも別格の強さを持っていた。

 

 確かに、並みの兵士では束になっても敵わないし、部下として引き込んだモンスターの戦力を考えたら、下手しなくても城一つ落とせるだけの力を持っていた。

 

 特に厄介なのが、『ソウルスティール』という、相手の生命力を一瞬にして根こそぎ奪い取る冥術を使ってくるところだろう。

 

 

 これには正直、驚いた。

 

 

 俺も似たような術である『ライフスティール』を使えるが、さすがに根こそぎ奪えるわけじゃないし、多少相手を疲れさせるだけだ。

 

 もちろん、相手が弱っていたら、その限りではない。

 

 実力差があり過ぎる場合、あるいは俺が本気で殺すつもりでやれば、やれない事はないが……正直なところ、使い勝手は悪い。

 

 対して、『七英雄クジンシー』が放つ『ソウルスティール』は、厄介を通り越して、極悪と評価できるとんでもない術である。

 

 相手にもよるだろうが、上手くやれば超格上すら一撃で仕留められる可能性があるのだから……まあ、その代わり、だ。

 

 その『ソウルスティール』さえどうにかしてしまえば、『七英雄クジンシー』は、それまでの実力でしかなかった。

 

 実際、『伝承法』でパワーアップを果たしているとはいえ、それでもジェラール皇帝と手練れが攻めれば、徐々に息切れする程度だ。

 

 実際、先王の弔い戦もあって手出し無用と言われ、俺たちはやつが逃げ出さないよう囲んでいたけど……途中から、もうやつは俺たちに注意を払う余裕すらなくなっていた。

 

 

「……アレが『七英雄クジンシー』、か」

「どうも、俺とはそっくりらしいっすよ」

 

 

 ジッと、その動きを観察していたノエル隊長が、これ以上ないぐらいに顔をしかめていたので、軽口を叩いてみたら。

 

 

「程度の低い冗談だな。動きもそうだが、立ち振る舞いからして、アレは小物だ」

 

 

 すると、ノエル隊長は深々とため息を吐いて、首を横に振った。

 

 

「そう言ってもらえるのは嬉しいっすけど、あの『ソウルスティール』は実際、ヤバいぜ」

「見方を変えたら、ソレさえ気を付けたら恐れるに足らん。そもそも、人間相手ならともかく、俺たち古代人に対してはアレは脅威ではない」

「あ~……そう思える?」

「久しく『同化の法』を使ってはいないが、俺たち古代人は人間よりも魂の強度が高いからな。寿命間近ならともかく、若い古代人相手にはまず通用しないだろうな」

 

 

 率直に尋ねたら、ノエル隊長は苦笑をこぼした。

 

 そう、俺が『相手にもよるが──』と称した理由が、そこにある。

 

 ぶっちゃけてしまえば、通じない相手にはまったく通じない。

 

 格下相手には無双の強さを発揮するが、格上相手には、特に魂に関する対策が出来るやつには、まず通じないと判断して良いだろう。

 

 なにせ、『冥術』に適性がある俺にはまず通じない。いくらでもガード出来るからだ。

 

 適性がなくとも、『七英雄クジンシー』に比べて圧倒的に格上なノエル隊長にはそよ風程度にしか感じないだろう。

 

 同様に、ワグナス、スービエ、ボクオーンにも通じないだろうし、ダンターグにいたっては、吸おうとしたら逆に吸い取られそうな予感すらする。

 

 そして、ロックブーケにも……っと、思っていたら、なにやらロックブーケが近寄って来た。

 

 

「こそこそお兄様と何を話しているのよ」

「ん? あいつの『ソウルスティール』って術が、俺たちに通用するかなって話してた。ちなみに、おまえはどう思う?」

 

 

 その瞬間、ふん、とロックブーケは目じりを釣り上げた。

 

 

「はぁ? あんなそよ風みたいな術、私たちに効くわけないでしょ。そんなのされた瞬間、私の魔力で一瞬に虜にしてやるわよ」

「……だよなあ」

 

 

 あまりにも呆気なく決着がついてしまう光景を想像して……と、同時に、ジェラール皇帝の雄叫びが、『七英雄クジンシー』を怯ませ……そして、一閃のきらめきが、やつを切り裂いたのであった。

 

 

 

 

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………それから、けっこうドタバタと落ち着かない出来事が続いた。

 

 

 まず、『七英雄クジンシー』は今際の際に、こんな言葉を残した。

 

 

『──く、くそー! 再びよみがえるために、また長い間眠ってパワーを蓄えねば……次に相まみえる時、ぜったいに復讐してやるからな!』

 

 

 それは、負け惜しみ……と呼ぶには、あまりにも具体的過ぎた。

 

 また、『七英雄クジンシー』の身体は、他の生き物とは違い、弾けて爆散し、跡形もなく消えたことも……その答えを、オアイーブが知っていた。

 

 

 曰く、『七英雄クジンシーの死で確証を得た。先ほどのやつは幻体……すなわち、幻の身体である』、ということらしい。

 

 

 つまり、あの身体は幻影であり、本体ではない。

 

 復活するまで長い時を必要とするが、見方を変えたら、本体を倒さない限りは何度も復活を果たしてしまう。

 

 そして、おそらく他の七英雄に、情報が伝わってしまっている。

 

 すなわち、七英雄の一角を崩したバレンヌ帝国の皇帝の事が他の6人に伝わっていて……敵対関係になった、ということ。

 

 この国がこれから先、どのように進んでいくのかは分からない。

 

 しかし、かつての栄華を取り戻すために再び領土を拡大していけば、必ず他の七英雄とぶつかるし、七英雄を恐れて引きこもったとしても、必ず向こうからぶつかってくる。

 

 ゆえに、バレンヌ帝国は総力を結集して、七英雄との長き戦いに備えなければ、必ずどこかで滅ぼされる……というのが、オアイーブの話であった。

 

 

 ……が、しかし、だ。

 

 

 そんなオアイーブですら、どうしてモンスターとなった七英雄……という、よく分からない存在が居るのか、そこまでは分からなかった。

 

 見たままから推測する限りでは、人々を苦しめる『七英雄』は、七英雄ではない。本当の七英雄は、俺たち7人の事を指し、それ以外には存在しないという。

 

 けれども、姿形こそ違うが、どうにも全くの別人であるとは思えない……というのが、オアイーブの仮説であった。

 

 

 曰く、『魔力の気質が……わずかではありますが、貴方達と同じ部分を感じます』、とのこと。

 

 

 それに、理屈は分からないが、あまりにも七英雄に関して詳し過ぎるし、戦いのときに、名乗ってすらいない本物の七英雄たちの名を、正確に言い当てた。

 

 つまり、ただ名前を勝手に借りたモンスター……というわけではない、ということ。

 

 これに関しては俺たちも全く分からないし、中には同じ名を持つ俺たちを不審な目で見てくる奴も居たけど。

 

 

『──これが姦計であるならば、あまりにも回りくどい。そもそもわざわざ七英雄クジンシーを犠牲にしてまで取る作戦とはなんだ?』

 

 

 という、もっともな疑問によって、俺たちへの疑惑は氷解したのであった。

 

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………まあ、それとは別に。

 

 

『ところで、オアイーブ』

『あら、ワグナス……なにかしら?』

『君は以前、『七英雄』のノエルとロックブーケと、私と会ったと話していたね』

『そうだけど、それが何か?』

『いや、ちょっとした疑問なのだが……その時の私は、異形の姿をしていたのだろう? 興味本位で聞くが、どのような姿をしていたのかなと思って──ん、おい?』

『あら、蝶々よ、ワグナス。珍しいわね、城内に居るだなんて』

『そうだな、蝶々は珍しい──いや、そうではない、なんでいきなり後ろを向いたのだ?』

『あ、あんなところにも蝶々が……ノエルにも教えてあげなきゃ(全力ダッシュ逃走)』

『おい待て、なんだ、その反応はなんなんだ!? 待て、その時の異形のワグナスはどんな姿をしていたんだ、おい、おい! オアイーブ、おい!!』

『あらあら、忙しい忙しい、うるわしの~ア~バロ~ン!』

『クジンシーよりはマシなのだろう!? なあ、そうなのだろう!? そうと言ってくれ、オアイーブ!!』

 

 

 そんな感じで逃走するオアイーブと、強張った顔で追いかけるワグナスの姿が、無駄な警戒心を削いだ……その、うん。

 

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………話を戻すが、だ。

 

 

 停滞はそのまま緩やかな衰退に繋がる以上は、ジェラール皇帝も黙っては……いられなかったのだけど、残念ながら、動けなかった。

 

 なんでかって、それは『七英雄クジンシー』との戦いによって先王と長兄を失った事に加え、モンスターの来襲によって王都もダメージを受けたからだ。

 

 ぶっちゃけてしまえば、土台にドカッと傷が付いてしまった。

 

 それゆえに、まずは土台の回復を待ち、帝国全体が落ち着くまでは、打って出たいと思っても、どうにもならなかったのである。

 

 

 ……とはいえ、俺たちもまあ、そう自由には動けなかった。というか、動かなかった方が正しいのかもしれない。

 

 

 俺もそうだけど、とりあえず俺たちは元の世界に戻って来るという目的は果たした。

 

 なら、次の世界へ、次の世界へ、そんな感じで移動する必要もないわけで……『七英雄』の脅威があるとはいえ、少しばかり腰を据えたいという気持ちがあったわけだ。

 

 あと、ボロボロになったアバロンの姿を見て、ある程度は立て直してから……とも思ったわけで。

 

 

 その流れで、俺たちがその間、何をしていたかというと……まあ、色々である。

 

 

 ワグナスとボクオーンは、帝国立て直しのために文官を補佐する役職として臨時に雇われることになった。

 

 ワグナスは元教授、ボクオーンは法律家。

 

 共に頭を使った仕事は得意であり、元々頭が非常に良かったのもあって、あっという間に帝国法を熟知し、気付けば共に『先生』と呼ばれるようになっていた。

 

 ノエル隊長は、剣術指南役だ。

 

 赤竜隊隊長の実力は伊達ではなく、ほとんど本気を出さなくてもジェラール皇帝を片手間に倒せる。

 

 そんな実力者を城の武芸者たちは放ってはおかず、気付けばノエル隊長より指導を受ける皇帝の姿が見られるようになった。

 

 スービエとダンターグは……まあ、うん。

 

 この二人はアレだ、良くも悪くも自由人。

 

 スービエは、なんか『海が俺を求めている。今こそ船出の時だ!!』とか言い出して、なんか槍を片手に行方をくらまし。

 

 ダンターグもまた、『身体が鈍って仕方がない、身体を動かしに行ってくる』と言って、これまた行方知れず。

 

 風の噂だと、何やら武装船団相手に大笑いしながらランデブーして、海賊どもを震え上がらせている船乗りの姿とか。

 

 人間の3倍以上はある巨大なモンスターを相手に、満面の笑み(諸説あり)で突っ込んでいくヤバいやつとか……まあ、うん。

 

 正直なところ、自由人の二人がしばらくの間おとなしくしていただけでも……というのが、俺たち全員の感想だったので、誰も何も言わなかった。

 

 むしろ、まだ噂とはいえ、まだ心配する必要がないだけマシだ。

 

 異世界の話だけど、スービエは自由人を満喫できずフラストレーションが溜まり過ぎると、だいたい奇行に走る。

 

 記憶に新しいのが、何食わぬ顔で『ぼく、今日から海賊団員! ファリス船長、行きやしょうぜ!』って言いながら海賊ファッションで海賊船に乗り込もうとした時。

 

 あの時は、マジで大変だった。

 

 久しぶりに潮の香りを嗅いだせいで色々と爆発したみたいで、駄々っ子みたいにジタバタし始めて、ファリス船長ドン引きだったし。

 

 まあ、ダンターグも大概なやつだけど。

 

 あいつ、何を血迷ったのか『俺たちより古代を生きる者ども、その名を恐竜人! 歯応えがあって申し分なし!』とか言いながら、原始時代にこっそり残りやがったんだよ。

 

 もうね、発覚した時はマジで呆れたよ。

 

 なにせ、弱点の電撃を浴びせないとまともに攻撃が通らないってボクオーンが再三警告していた相手を……拳で戦って、殴り殺したんだぞ。

 

 アレには俺だけじゃなく、恐竜人の女王であるアザーラってやつも、ノエル隊長すらもドン引きで言葉無くしていたよ。

 

 なので、そんな姿を知っているからこそ、俺たちは『とりあえず、堅気に迷惑かけてなければそれでヨシ』ってことでスルーするのがいつもの流れになっていた。

 

 

 ……で、だ。

 

 

 俺は何をしていたのかと言うと……頭も良くないし、指南役をやれるほど器用でもないし、愛想も大して良くない。

 

 いちおう、弓矢の指南役として少しの間雇われていたけど、なんか途中からノエル隊長より、『そのうちロックブーケが爆発するから』という理由で理不尽にクビとなった。

 

 おれ、けっこうテレーズたちと仲良くやれていたと思うんだけど……まあ、いいけど。

 

 そのロックブーケからは、『あんたクビになったの? 仕方ないわねえ、私が面倒見てあげるから』と満面の笑みで言われたけど、さすがにヒモになる気が無かったので辞退し。

 

 

 そうなったら、城の外でさあ……働くしかないじゃん? 

 

 

 そんなわけで、アバロンを少し離れ、南バレンヌよりさらに南へと向かい……『ルドン地方』にある宝石鉱山の町、『ティファール』へとやってきていた。

 

 目的は、宝石。目指すは、帝国財政の確保。

 

 この鉱山で採れる宝石の原石は非常に質が良いらしく、帝国の貴重な財源らしいのだけど……ここしばらく、住み着いてしまったモンスターのせいで採掘が滞っているのだとか。

 

 まさしく、暇を持て余した俺にとってはうってつけな仕事であり……ツルハシ片手にデカいリュックを背負い、『宝石鉱山』にてえっほえっほと頑張っていた。

 

 

「クジンシー、あそこの緑色の部分ってなぁに?」

「あ? あ~……原石じゃん、よく見つけたな」

「私ぐらいになるとね、綺麗なモノはおのずと向こうの方から私の視界に入って来るものなのよ」

「すげえな、炭鉱夫としてやっていけるんじゃねえの?」

「嫌よ、あんな泥臭いの。宝石を眺めるのは好きよ」

「じゃあ、お前も掘れよ」

「嫌よ、そのためにあんたがいるんでしょうが」

「こいつ……」

 

 

 何故か、ロックブーケも俺に付いてきたのであった。

 

 

 

 

 

 

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