山手線とは、ロマサガ2とはいったい……うごごごご   作:葛城

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第1話: なかなかどうして、上手くいかないものだ

 

 

 

 門前払いをくらってしまった俺だが、これに関しては俺以外に悪者がいないので、素直に受け入れることにした。

 

 

 いや、そりゃあ、アレだよ。

 

 

 『同化の法とか、気持ち悪っ!』みたいな感じで世捨て人生活しているのは、あくまでも俺の勝手だ。

 

 誰かに強制されたわけでもないし、人前ではちゃんと服を着ましょうっていうのは、それ以前の話である。

 

 いちおう、最低限の部位だけは隠されていたからギリギリ……いや、ちょっと激しく動いたらポロリする時点で駄目だな。

 

 むしろ、よくもまあ、街に入る前に止められなかったもんだ……それだけ、タームに怯えていたのだろう。

 

 まあ、怖がる気持ちは良く分かる。『神の知識』にてタームの情報を引き出せたからこそ、余計に。

 

 なにせ、『ターム』と人々が読んでいるモンスター……アリ系のモンスターなのだが、とにかく、生態が対人間に特化している。

 

 

 まず、主食=人間。

 

 人間が狩りやすいから人間を狙うだけではなく、肉食ならぬ『人肉食』という食性だから、とにかく人間だけを集中的に狙いに来る。

 

 たぶん、味の好みが人間の肉に特化しているんだと思う。

 

 

 次に、卵を植え付ける場所=人間のみ。

 

 本当の本当に緊急事態なら、他の生物にも卵を植え付けるらしいのだけど、そうでない限りはほぼ100%人間にだけ卵を植え付ける。

 

 当然、卵を植え付けられたやつは死ぬ。

 

 卵が体内に潜り込む前に摘出出来たら助かるが、無痛のまま体内に入り込むので、ほぼほぼ気付けないまま、卵が孵化すると同時にそいつは内側から破られて死ぬ。

 

 

 次に、孵化した直後にはもう、だいたいの人間より強いということ。

 

 何故なら、タームと呼ばれているやつらは、ほとんどの場合、そこらの成人男性よりも巨体である。

 

 そのうえ、パワーも並みの男性よりはるかに強いし、機動力も桁違い。魔術を含めて戦闘訓練を積んでいないやつなら、なす術もなく殺されて終わりだ。

 

 

 それぐらい、初めから強い。これが、一番驚異的な部分だろうと思う。

 

 

 人間だって、せめてまともに戦えるようになるまではおおよそ18年は掛かるっていうのに、こいつらは孵化して十数秒で、その18年を上回る戦闘能力を発揮するのだ。

 

 しかも、こいつら人間の数だけ確実に増える。

 

 100人攫われたら、タームが100匹増える。

 

 実際には、その内のいくらかは食われるだけだから、キッチリ100匹増えるのは稀だが……それでも、その増え方は脅威と断言していいだろう。

 

 なにせ、都市のやつらが討伐体を編成して、100人犠牲にしてタームを1000匹殺したとして、だ。

 

 こいつら、警備が手薄な僻地の村を二つ三つ四つ襲っただけで、あっという間に元の数に戻してしまうのだ。

 

 20年以上掛けて成長し、時間を掛けてようやく一人前になった兵士を100人犠牲にして1000匹殺したかと思ったら。

 

 その1年後には、僻地の人間が2000人殺され、1000匹のタームが補充されている。しかも、その土地すら奪われた状態での再スタートときたもんだ。

 

 

 無理ゲー、糞ゲー、程があるって話だ。

 

 そりゃあ、怖いと思って当たり前だ。

 

 

 俺だって、『神の知識』によって世捨て人生活を送りつつ、ひたすら自己鍛錬を送っていなかったら、怯える日常を送っていただろう。

 

 実際、俺が都市に到着するまでの間に、2つほどタームどもに壊滅させられていた村を見た。

 

 あまりにも胸糞が悪かったから、鍛錬がてら殲滅してやったが……それでも、非常に空しかった。

 

 なにせ、その程度の損害、タームどもにとっては被害の範疇に入らないからだ。

 

 例えるなら、髪の毛の端っこを切った程度。

 

 なんでかって、地上に出ているターム……いいや、アリどもは、言うなれば末端で、本体から飛ばしているラジコンみたいなものだ。

 

 どれだけ殺したって、本体には傷一つ付かない。

 

 それどころか、ひたすら人間側が疲弊し続けるだけとかいう、理不尽の極みみたいな存在……それが、地上のアリだ。

 

 タームという種族を本当に倒すのであれば、大地の下……どこかの地下の奥深い場所にて隠れ潜んでいる、『女王(クイーン)』を仕留める以外は無い。

 

 女王さえ仕留めたら、それ以上アリが増えることはない。

 

 言い換えたら、女王を仕留めない限り、それこそ女王以外のアリを全て殺しても、時間が経てばまた数を増やしてしまう……というわけだ。

 

 だからこそ、殲滅したところで徒労感しか残らないわけだが……さて、無駄話もこのぐらいにして、だ。

 

 

 ──とりあえず、服だ。

 

 

 しかし、俺は服を買う金なんて持っていない。

 

 世捨て人生活を送っていたわけだから、金なんて本当に最小限で……さすがに、パン2,3個分の金で服が買えないぐらいは、俺だってわかっている。

 

 

 なので……俺は、働くことにした。

 

 

 最近はアリの影響だけでなく、異常気象の影響もあって流通が滞っているところが多く、輸送関係の仕事なら、俺みたいな半裸の男でも働き口があった。

 

 ちなみに、この異常気象とやらも、アリと同じ原因だったりする。

 

 つまり、『同化の法』を使い続ける世界からのカウンター的なアレだ。

 

 まただよ、また『同化の法』だよ、もう諸悪の根源、コレだろ、コレさえなんとかしたら、ひとまず目の前の危機が一つ減るんじゃねえの? 

 

 どいつもこいつも、自分で自分の足を食って生きながらえているような状況なのに……いや、まあ、仕方ねえんだ、俺だって『神の知識』無しでは分からなかったわけだし。

 

 正直、盛大な自殺を人類総出で企んでいるのでは……って気すらしてきたけど、まあ、知らないだけだろうし……仕方ないんだろう。

 

 

 まあ、そんな事よりも、だ。

 

 

 とにかく、俺はそんな恰好をしているから、めたくそに不審な者を見る目をされるわけだ。

 

 でも、俺に犯罪歴が無い事と、死んでも何処其処から非難が出ない立場にある事が分かれば、門前払いな扱いはされなかった。

 

 

 ……冷静に考えたら、それだけ切羽詰まっているってことなんだろうけど、まあいい。

 

 

 とにかく、ただ荷物を運ぶだけならば、大して頭が良くない俺にも出来る。

 

 さすがにアリの大群に襲われたら荷物を捨てて逃げるしか手が無くなるが、道中にて何度か遭遇する程度なら、何の問題も無かった。

 

 

「──待て、止まれ! そこの半裸の男、服はどうした!?」

「その服を買うために、この荷物を届けて金を貰うんだよ」

「……そ、そうか、頑張れよ」

「おう、まずはズボンからだ」

 

 

 まあ、その代わり、門番(ピンキリある)からの目が、だいたいかわいそうな者を見る目になったけど……いや、まあ、うん。

 

 我ながら、無頓着過ぎたなと思っていたわけで……とにかく、行きと帰りで仕事をこなしたおかげで、服の他に身だしなみを整えられる程度には稼げたのであった。

 

 

 ……アリに襲われなかったのかって? 

 

 そりゃあ、襲われたぞ。

 

 

 でも、女王相手ならともかく、地上に出ている先兵アリ程度、100匹200匹が束になって向かってきたところで、俺の敵ではない。

 

 というのも、だ。

 

 天啓である『神の知識』には、それまでの俺では思いもよらない様々な技や術があり、俺はその中でもいくつか既に習得している。

 

 俺の頭の出来が良かったら、全部覚えられたかもしれないが……残念ながら、極々一部の技や術しか習得出来ていないのが現状だ。

 

 ──しかし、それでも習得出来たそれらのいくつかは、自信を持てるだけの威力を誇るモノがあるわけで。

 

 

「『ミリオンダラー』」

 

 

 魔力を具現化させて弓矢を構成し、相手に対して、それこそ雨のように矢を降らせて皆殺しにする技の一つ。

 

 これの何がすごいって、一発一発の威力もあるけど、あくまでも降り注ぐ矢は実物じゃないから、突き刺さった後は消失して消えるところ。

 

 つまり、いくら使っても俺がやったって証拠にならないし、元手が掛からないから、経済的にも大変優しい技だってことだ。

 

 タームの中には機動性に優れた個体がいるが、巨体であるがゆえに、避けきることが絶対に出来ない。

 

 ドカドカと、雨のように頭上から絶え間なく直撃すれば、すぐさま地面に崩れ落ち、そのまま……てなもんである。

 

 そう、タームの弱点を突いた技ってわけじゃないけど、物量はそれを容易く塗り替える。

 

 火に強いモンスターだって、炎の化身じゃあるまいし、超高温に晒されたら焼け爛れるのは一緒……ぶっちゃけ、パワーで押し切ればなんとかなる。

 

 

 それよりも難儀するのは、異常気象の方だ。

 

 

 なにせ、いきなり身震いするほどの冷気が流れてきたかと思ったら次は、真夏を思わせる灼熱のような日差しが来る。

 

 いきなり生ぬるい大雨に晒されたかと思ったら、怪我するサイズのヒョウが降ってきたり……ぶっちゃけ、アリより……って思うぐらい、こっちの方が辛かった。

 

 なんとなくだけど、以前より異常気象の度合いが上がっているような……まあ、そんな感じで、だ。

 

 時々は立ち止まって戦闘にはなったけど、基本的には特に問題らしい問題は起こらず、無事に仕事を完遂したのであった。

 

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………まあ、それはそれとして。

 

 

「……今回の討伐隊の募集は、先日打ち切ったぞ」

「あ、そう……」

「また次回がある、それまで待て」

「タイミングが悪いなあ、どうもなあ……」

 

 

 どうやら今回は縁が無かったようで、せっかく身だしなみを整えてきたというのに、参加出来なかった。

 

 こればかりはタイミングなので、誰にも文句は言えない。

 

 それに、討伐隊の募集は定期的に行われているようで、ちゃんと服を着たら何一つ止められなかったから、おとなしく次回まで待つしかない、か。

 

 

 ……けれども、だ。

 

 

 このまま、ただ次回の募集が始まるまで待ち続けるのは、どうにも腰が落ち着かない。

 

 せっかく、都市にまで来たのだ。

 

 それならば、アリの討伐の他に……そうだな、異常気象を今すぐ解決は無理でも、進行を遅らせるよう動くことは可能だろう。

 

 そう判断した俺は……広場へと向かった。

 

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………。

 

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………その結果、どうなったかと言うと。

 

 

「ん? ずいぶんと若いのが牢屋に居るな、あんちゃん、何をして捕まったんだい?」

「大したことじゃない。ちょっと広場で、人は自然の流れのまま、自然にその命を終えるべきだって訴えただけだ」

「おま、それ……寿命教ってやつだろ、そんなの捕まって当たり前だろうよお……」

「そうなんだよ、まさか、ちょっと広場で宣伝しただけで捕まるとは……」

「いや、あんちゃんよお。やっていること、思想犯みたいなものだからな、田舎じゃ知らねえが、都市でやったら一発で牢屋行きだぞ」

「いま、それを思い知っているところだよ」

 

 

 俺は、有無を言わさず牢屋にて5日間の反省を強いられたのであった。

 

 

 

 

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