山手線とは、ロマサガ2とはいったい……うごごごご   作:葛城

4 / 21
第3話: シスコンは怖い

 

 

 

 そうして、今回の討伐が終わるまでひたすら扱き使われていた俺は、都市に戻され……ようやく、お役御免となった。

 

 なんか、神官だとか何だとかが、死刑の代わりに働かせ続けろとか騒いでいたが、さすがにそこまでしてやるほどの義理もないし、俺は信心深くもない。

 

 街中で本気の殺し合いするかと睨んだら、ノエル隊長が間に入って仲裁してくれたから、最悪の展開にはならなかった。

 

 

 思想犯だとはいえ、既に刑は執行された後だ。

 

 

 言うなれば、懲役終えて出所した瞬間、それだと足りないからと問答無用に牢屋へ戻すような話だ。

 

 少しでも法律とかを知っていたり、社会常識(笑)ってやつを知っていたら、めちゃくちゃマズイ事をやろうとしていたわけだ。

 

 一度下した審判を反故にした挙句、一方的に刑期を追加するって、下手しなくてもいろんなところに喧嘩売るようなもので……そりゃあ、神官共以外はザワザワっと動揺するわけだ。

 

 

 なにせ、ノエル隊長ですら、「……正気か?」と絶句し、それ以上の言葉を無くしたぐらいだから、よほどのアレだったのだろう。

 

 

 まあ、それはそれとして、ノエル隊長から是が非でも次回の討伐隊に出てくれって誘われたけど、とりあえずは一旦保留という形で俺はその場を後にした。

 

 

 なんで保留にしたかって? 

 

 

 とりあえず、この騒動の後にひと悶着あったせいで変に疲れていたから、そういうのは考えたくなかったからだ。

 

 別に、討伐そのものは嫌じゃない。

 

 ノエル隊長を始めとして、討伐隊に参加しているやつ(俺のような犯罪者を除いて)は、本気で人々を守ろうと自ら剣を取ってくれているから、力になってやりたいとは思う。

 

 

 ただなあ……この戦い、正直なところ、負け戦っぽいんだよな。

 

 

 アリを倒すだけなら、そりゃあなんとかなるかもしれない。多大な犠牲とやらを払って、ギリギリ勝つことは出来るかもしれない。

 

 だが、その後に来る異常気象だけはどうにもならない。生物でもない自然現象、どうにかできたならとっくにやっているからだ。

 

 俺としては、1%でも次に繋がるのなら、どこかで繋がってくれるならやる気も出るが……100%そうならないと分かっているのに、いったいどうしてやる気なんて出ようものか。

 

 あと、なんかノエル隊長は良いやつなんだけど、ちょっと面倒くさいところがある。

 

 

 いや、別に悪く言うつもりはないんだ。

 

 

 本当にノエル隊長は良いやつなんだよ。頭良くないしひねくれている俺が言うんだ、間違いない。

 

 ただ、どうも抱え込む性格というか、自分を自分で追い詰めやすいというか……あと、それ以上に面倒くさいのが、その妹。

 

 

 名を、ロックブーケ。

 

 

 見た目は、マジで美人だ。

 

 胸がかなりデカくて尻もかなりデカい、なのにやせ型だけど太ももはムチムチ、顔も美形で、男を狂わせる類の色気がある。

 

 マジで、四六時中男から熱い視線を注がれていても不思議じゃない、そんな美貌の持ち主だ。

 

 なんか美人を表す言葉を何度も使ったような気がするけど、とにかく、男を切らしたことがないと言われたら、そりゃあそうだろうなと即座に頷くぐらいには綺麗なやつだ。

 

 だが、性格があまりにもゴミクズ過ぎる。

 

 俺自身ひねくれ者のゴミクズだって思っているけど、そんな俺ですら、この女ってば性格終わってんなあ……って呆れるぐらいには、ゴミクズな性格をしていた。

 

 

 まず……この女、とにかく人の選り好みが激しすぎる。

 

 

 自分が認めた相手にはまともだし、なんなら兄のノエル隊長とかには甘えた態度を見せるけど、それ以外のやつにはめたくそに辛辣である。

 

 だって、ただ挨拶しただけで、『田舎者ね、近寄らないで』と返答してきたぐらいだ。

 

 さすがの俺も、呆気に取られたね。

 

 会話が出来ねえのかコイツって思ったぞ……ノエル隊長の方も、何だかんだ妹には甘いようで、注意はしつつも『仕方がないやつだな……』って甘やかし……うん。

 

 分かるだろ、俺がどうにも疲れた理由。

 

 ノエル隊長単体なら、それほど問題じゃないんだ。

 

 ただ、妹のロックブーケが関わると、てんで面倒くさいというか、アレだ……シスコンな気配をバシバシ出し始めるんだよなあ。

 

 しかも、ロックブーケはロックブーケで、なんか戦場で武功を立てたとかいう俺の話を聞いて、露骨に態度が悪い。

 

 

 誰にって、もちろん、俺にだよ。

 

 

 たぶん、敬愛する兄が、何処の誰とも知らない田舎者を褒め称えるのが気に食わないのだろう。

 

 こいつがノエル隊長の妹じゃなかったら、乳揉んで張り倒していたところだ。

 

 ていうか、あまりにも態度が悪くて頭に来たからケツを揉んでやったらガチな電撃をロックブーケから飛ばされたし、ノエル隊長からガチな拳が飛んできて酷い事になった。

 

 

「なんだよ、乳と尻を合わせたら四つあるんだから一つぐらい揉んでも罰は当たらねえだろ!!」

「当たるわよ!!! ていうか、人のおっぱい揉むつもりだったわけ、あんた!?」

「ノエル隊長も、妹のケツ揉まれたぐらいで拳は止めてくださいよ!! そっからうんこひり出しているんすよ、大したもんじゃないですって!!」

「次に似たような事をしたら、今度は切らせていただきます」

 

 

 とまあ、そんな流れで思いもよらぬダメージを受けたのもあって、俺は疲れたわけである。

 

 なお、ケツはとんでもなく柔らかかったし、ただ柔らかいだけじゃなく筋肉もしっかり付いている、ナイスなケツだった。

 

 あと、なんか良い匂いがしていた。こりゃあ、ノエル隊長もシスコンになるわなってちょっと納得した。

 

 ちなみに、俺がケツを揉むに至った最大の原因は、一般参加ではなく徴集枠で、罪状が寿命教を布教しようとした思想犯だってことを知ったロックブーケから。

 

 

「……バカじゃないの?」

 

 

 といった感じの言葉を、それこそ虫を見る目を向けられながら言われたから……まあ、とにかく、だ。

 

 プリプリ怒っているロックブーケの事とは別に、純粋に俺と言う戦力を失うのは痛手だと判断出来ているノエル隊長より、必ず次回も来いよと言われて……さて、と。

 

 

(はあ……しかし、この先どうなるのかねえ)

 

 

 都市を出るのもなんだし、外れの方にある小さな店にて、まずは一服。

 

 ライムを絞ったという果実水は、疲れた体に染み渡る。

 

 俺は、ぷかぷかとキセルを吹かせながら……今後の事を考えていた。

 

 

 ──なんか都市に来てからろくな目にあってない俺だが、分かったことがある。

 

 

 まず、神官共はゴミクズだ。

 

 俺たち人間の邪悪な部分を寄せ集めて煮詰めて冷やして固めて、そこからさらに不純物を取り除いた、純粋なゴミクズだ。

 

 そいつら殺して異常気象が少しでも緩むのなら、俺は喜んで殺すね。それぐらい、存在することすら嫌になるぐらいに嫌いになった。

 

 もうさ、あいつら顔どころか全身から邪悪な気配が垂れ流しなんだよな。

 

 おそらく、小便も邪悪がたっぷりだと思う。あいつらの小便は真っ黒、こびり付いたら中々取れないから、便器が真っ黒に塗装されているだろう。

 

 

 次に、思っていた以上に、戦況が悪い。

 

 ノエル隊長から『言いふらすなよ』と念押しされたのだが……ぶっちゃけてしまえば、アリとの戦いは一部を除いてほぼ負け戦が続いている。

 

 局所的に勝利を収める時はあっても、全体で見ると、もう全部が真っ赤っか。

 

 幸いにも、ノエル隊長の『赤竜隊』が参加した戦いでは、今のところは勝ち戦が続いているようだけど……それも、時間の問題だろう。

 

 俺の見たところ、ノエル隊長が別格な強さだが、それより下は……正直、かなり弱い。

 

 そりゃあ、並みの兵士よりは強いけど、ノエル隊長すら手こずるようなやつが1匹でも出てきたら、あっという間に部隊は壊滅してしまうだろう。

 

 

 そして、最後に……異常気象の問題だ。

 

 こればかりはもう、マジで俺達にはどうしようもない。

 

 コップの水が溢れるのを防ぐとか、そんな話じゃない。

 

 既に、溢れているのだ。

 

 溢れているだけでなく、コップそのものにヒビが入り、そこかしこから中身が零れ出ている……そんな段階だ。

 

 だから、これからやるべきなのは、アリ退治だけじゃない。

 

 というか、アリよりも異常気象への対策に目を向けなければ……ってのが、俺の考え。

 

 アリなんて、どうせ異常気象が本格的に始まったら、俺たちと同じく巣穴から動けなくなる。

 

 なら、今の俺たちが出来るのは、アリの進行を抑えることに留め、これから先何十年、何百年続くか分からない異常気象に備えるべき……とまあ、そう思っているわけなのだけど。

 

 

(無理だろうなあ……俺たち人間、プライド高いから、受け入れるやつ居なさそう……)

 

 

 どうにもならねえし、こりゃあしばらくは、実質的には負け戦かなあ……と、なんともやるせない気持ちになるのであった。

 

 

 

 

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………で、まあ、そんな感じで、俺はしばらく、ノエル隊長監視の下で、アリ討伐作戦に参加する際は必ず一緒に編成されることになった。

 

 

 俺としてもやること無いし、さすがに二回目以降の報酬はちゃんと出る。死ななければ、の話だが。

 

 ただ、金があると色々と便利だ。

 

 何をするにしても、金があればだいたい買える。そして、俺の欲しい物は、だいたい金で買える範疇の品物ばかり。

 

 

 いったい、何を買っているのかって? 

 

 

 そんなのおまえ、決まっているだろ……調味料の類だ。

 

 塩と砂糖は絶対だとして、その他様々なハーブ。他の奴らは知らんが、俺にとってもはやそれらは必需品なのだ。

 

 前者二つは別として、ハーブ系は、一般的には薬草の類として使用されていたり、あるいは見向きもされていないといった感じだ。

 

 

 ……なんでそんなの買っているのかって? 

 

 

 これはなあ……たぶん、下手しなくても1000年2000年とか生きちゃう(身体を乗っ取って)せいなのかは知らないのだけど。

 

 俺以外のやつらって、基本的に『食』に対する考え方が雑なんだよな。

 

 もちろん、上手い料理が無いわけじゃない。

 

 ただ、『神の知識』の中にある様々な料理を知っている俺からしたら、どうにも物足りないというか。

 

 肉を焼くにしても、塩を振って終わり。

 

 スープを作っても、灰汁とかそういうのは取らない。

 

 美味い料理って、どうも嗜好品の範疇らしくてな。美味い酒なんかと同じ扱いで、一般的な食事ってとにかく淡泊なんだよ。

 

 ノエル隊長ですら、鍋に穀物を入れてミルク投入&煮立たせてはい終わり、塩はお気持ちで……ってのが、手が込んでいるって判断するぐらいだ。

 

 あの態度クソ悪なロックブーケですら、食事の内容は他のやつらと同じだし、そのことに欠片の疑問も抱いていなかったんだぞ。

 

 俺、それを知った時、かなりのカルチャーショックってやつを受けたね。

 

 

 ……ちなみに、なんでそうなったのかって、それもまあ『同化の法』のせいだ。

 

 

 どうも、俺たちのご先祖様、あまりにも長く生きていたせいで、途中で大半のやつら、食事を取るのが面倒になり始めた時期があったみたいでな。

 

 まあ、食事ってつまりは生きるために必要だけど、『同化の法』を使えば……それこそ、食事なんて雑に済ませても問題なくなるわけだ。

 

 例えば学者とか、不健康だろうが何だろうが寝食疎かにして学問に励んで、体調悪くしたら『同化の法』で……ってのが、常態化していた時期もあったわけ。

 

 もう何千年も前のことらしいけど、似たような理由から料理関係の知識が途絶えたらしく……食に対する意識も途絶えたらしいんだよな。

 

 

 だからまあ、仕方ないんだよ。

 

 でも、俺からしたら、他の奴らが作る料理って雑なんだよ。

 

 

 腹さえ満たせばいい、食えたらそれでいい、身体を動かすには血肉になる物が必要……そこで止まっているわけだ。

 

 俺も知識が無かったら疑問に思わなかったけど、知識があるばっかりに、どうにも我慢ならなくてなあ……あと、やっぱ食う物は美味い方が良いに限る。

 

 だから、ハーブ関係が見つからなかったら、それこそ子供を雇って人海戦術でかき集めたりする。

 

 本当に見向きもされていないし、なんか植生が合っていたのか、けっこう都市のすぐ近くで大量に見つかって……で、それをどうするかと言うと。

 

 

 ──俺はそれを、自分の『影の中』に仕舞う。

 

 

 俺の得意な術の属性は『冥』である……自分の影の中に特殊な空間を作り、そこに物などを保管することができる。

 

 極めたら、自分の分身を生み出して行動させることが可能になるらしいが……俺はそちらよりも、自分だけの物置が欲しかったので、これで良いのだ。

 

 

 ちなみに、だ。

 

 

 影の中では時間が限りなく遅く流れているらしく、暖かい物を入れても半年以上はそのままなぐらいで、食べ物も腐らない。

 

 俺はこれを利用して、影の中に大量の試作品……要は、『神の知識』を頼りに試行錯誤して作った料理を、これでもかと押し込んでいる。

 

 本音を言わせてもらうなら、綺麗な妻が作ってくれた料理が欲しいんだけど……田舎者の独り身、これぐらいの楽しみがねえとやってられないってわけだ。

 

 

 ……女は買わないのかって? 

 

 

 いや、その、俺も興味が無いわけじゃないんだけど……そういうのって、ちゃんと好き合っている人とやりたいもんじゃない? 

 

 とまあ、そんな流れもあって、俺はアリ討伐に参加している時は、自分の飯は自分で用意するようになった。

 

 ちゃんと支給されるけど、あまり美味くないし……勿体ないから、後でアレンジして出そうと影の中に保管はしている。

 

 飯って、マジで大事だ。美味い飯が有るか無いかで、けっこう気力が違ってくる。

 

 まあ、他のやつらは、仕留めたモンスターの肉を調理したりしている俺を見て、薄気味悪そうにして近寄ってこなくなったが……それはまあ、良いとして。

 

 

「意外っすね、ノエル隊長がこんなゲテモノを食おうとするだなんて」

「確かに、常識的に考えたらゲテモノだが……それにしては、ずいぶんと慣れた手つきだからな、前から気にはなっていたんだ」

「ほ~ん、赤竜隊の隊長の気を引けたとなれば、俺も鼻が高いってもんすよ……で、感想の程は?」

「……想像していたよりずっと美味くて、困惑している。いや、本当に美味いのだ……前に、人気の店で食べたやつよりも、ずっと美味い」

 

 

 まさか、他のやつらが遠巻きにする俺のゲテモノ料理に真っ先に反応したのがノエル隊長とは思わなかった。

 

 この反応を見て、他のやつらも欲しがり始め……気付けば、けっこう声を掛けられるようになり。

 

 

「──紹介しよう、ワグナスだ」

「ワグナスだ、君が噂の思想犯か……」

 

 

 なんか、やたらとイケメンな、ノエル隊長の知り合いから挨拶され、気付けば家に招待されるようになり。

 

 

「──あんた、また人のお尻を!!!」

「注意しているのに、つまみ食いするお前が悪い──ノエル隊長!? 無言のままに剣を抜かないでくださいよ!?」

 

 

 なんか、ワグナスさんにお熱っぽいロックブーケから幾度となく悪態をつかれ。

 

 そのうえ、ノエル隊長と好みが似ているのか、俺の料理をロックブーケがつまみ食いするようになったのは。

 

 俺が都市に来てから、1年が経とうとしていた頃であった

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。