山手線とは、ロマサガ2とはいったい……うごごごご   作:葛城

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第4話: 逃亡者(失敗)クジンシー

 

 

 

 

 俺の弓は中々に使い勝手が良いようで、まず俺が先制してから、流れを見てノエル隊長たちが臨機応変に動くという形になった。

 

 

 とても効率的だと思う。

 

 

 アリに限った話ではないが、攻撃ってのは結局のところ、当たらなければ意味は無いし、怖くも無い。

 

 2,30人を消し飛ばすような魔法を放てるモンスターが居たとしても、そのモンスターは空に向かってしか放てないとなれば、誰が恐れるのか。

 

 同様に、いくら人間を捕食するタームたちとはいえ、その戦い方は自らの肉体を使った近接戦闘のみ。

 

 絶対にアリどもの攻撃が届かない位置から一方的に攻撃できると分かれば、使わないなんて選択肢などノエル隊長には無い。

 

 実際、俺の有用性は抜きんでていたと言っても過言ではない。

 

 さすがに数十匹ほどが群れを成して来られたら押し切れないが、偵察隊みたいな感じで2,3匹で動いている時がある。

 

 

 そういう場合なら、楽勝である。

 

 

 中には飛べるアリも居るが、巨体であるがゆえに、鳥のように素早くはない。少なくとも、俺の弓矢ならば余裕を持って狙える程度の速さだ。

 

 だからまあ、戦闘らしい戦闘を挟まず、一方的に虐殺である。

 

 俺としては、魔力で生み出した矢なんて何千発放ったところで大した疲労にはならないし、ノエル隊長たちも戦力&体力を温存出来る。

 

 俺の弓矢で押し切れないにしても、突撃の勢いを軽減させることは出来るし、足を止めたら有利に立てるのはノエル隊長の方だ。

 

 その有用性もまた既に幾度となく実証済みで、実際に俺が参加した戦いではほとんどの場合死者0のまま終わるのだから……我ながら大したもんだと思ったよ。

 

 

 ……ちなみに、だ。

 

 

 アリ共って食えないから、一切手加減せず仕留められるという精神的な楽さも……そう、食えないんだよ。

 

 あいつらって自然発生的なやつじゃなくて、『同化の法』によって世界のバグになりつつある俺たちを滅ぼすために生み出された生物だからな。

 

 まず、根本的な成り立ちからして、モンスターとも全く違う。アリの亡骸は、他のモンスターにすら還元されない。

 

 そもそも、倒しても時間経過で跡形もなく消滅するし、その前に調理しようとしても、味覚があるやつは例外なく吐き出すぐらいの渋みがあるようなので……まあ、そんなわけで、だ。

 

 ノエル隊長率いる赤竜隊は、連戦連勝……とまではいかなくとも、9割以上の勝利を積み重ねることに成功したのであった。

 

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………で、まあ、それで、だ。

 

 

 俺は客観的な立場が思想犯(禊済み)なので、詳細を詳しく教えられてはいなかったのだが、ある時から別の部隊に配属されるようになった。

 

 名目上は、赤竜隊とは別の、『タームに対抗すべく結成された少数精鋭の部隊』……とかいう、フワッとした感じの部隊。

 

 なんだその窓際族の別名みたいなのは……って最初に聞いた時は思ったけど、蓋を開けるとガチの少数精鋭だったからびっくりしたけど。

 

 

 というのも、だ。

 

 

 まず、リーダーなのだが、それはワグナスだ。

 

 

 やたらイケメンで、ロックブーケがチラホラ褒め称えている男だが、見た目に負けず劣らずの実力者だった。

 

 さすがにノエル隊長よりは劣るが、そこらの兵士よりはるかに強い。それなのに、本業は戦いよりも内政……政治の世界らしい。

 

 マジで意味わからん奴だ。

 

 俺は『神の知識』と長年の鍛錬によって今に至るけど、この人知識無しの独学でどちらも1流っていう……そりゃあ、ロックブーケも首ったけになるわけだ。

 

 だからなのかは知らんけど、ロックブーケがまあ、これまたうざったい。

 

 事あるごとに『ワグナス様に比べたら~』って、いちいち突っかかって来るし、無視していると『この私の話を~』っていちいち俺の足を蹴ってくるし。

 

 なので、5回に1回ぐらいは腹が立ってケツを揉む俺は、けして悪くないだろう。

 

 5回も蹴られて、1回ケツを揉むだけで済ませるんだ。そこらの金貸しよりよほど良心的な設定だと思うね。

 

 むしろ、手のひらに収まらないケツの重みで指先が疲労するから、その分の慰謝料を払えって請求したいぐらいだ、やらないけど。

 

 なにせ、ケツを揉んだ時は必ず電撃を放ってくるし、時には拳を放ってくるし……後、傍にノエル隊長が居たら無言のままに鞘から剣を抜くから、タイミングを見計らう必要があるけど。

 

 

 次に、ノエル隊長。

 

 

 リーダーはワグナスだけど、総合力ならノエル隊長の方に軍配が上がる。

 

 内政とかそういう面ではワグナスには負けるけど、それは相手がワグナスだからで、そこらの文官よりもよほど頭が回る。

 

 それでいて、戦いの腕は達人ってやつで……あと、すごい。何がすごいって、まずワグナスに匹敵するぐらいのイケメン。

 

 人望だって厚く、オアイーブって名の彼女(許嫁?)も居る。一回だけ顔を合わせたけど、ミステリアスな美女って感じだった。

 

 性格クソブスだけど見た目だけはオアイーブに匹敵するどころか、彼女よりも美人な妹がいる。

 

 俺が『神の知識』なら、ノエル隊長はそれ以外を与えられたって思うぐらいに色々とすごい人だ。

 

 だからなのかは知らんけど、ロックブーケがまあ、これまたうざったい。

 

 事あるごとに『ノエルお兄様に比べたら~』って、いちいち突っかかって来るし、無視していると『あなたも少しは見習ったら~』っていちいち俺の足を蹴ってくるし。

 

 なので、10回に1回ぐらいは腹が立って乳を揉む俺は、けして悪くないだろう。

 

 10回も蹴られて、1回乳を揉むだけで済ませるんだ。そこらの金貸しよりよほど良心的な設定だと思うね。

 

 むしろ、手のひらに収まらない乳の弾力と厚みに指先が疲労するから、その分の慰謝料を払えって請求したいぐらいだ、やらないけど。

 

 なにせ、乳を揉んだ時は必ず電撃だけでなく小剣でも突撃してくるし、かなりキレ散らかすし……後、傍にノエル隊長が居たら無言のままに切りかかってくるから、タイミングを見計らう必要があるけど。

 

 ノエル隊長もさあ……俺に切りかかるよりも前に、ロックブーケの情操教育ってやつをさあ。

 

 まあ、認めていない相手に対しては辛らつだけど、認めている相手に対してはそりゃあもう可愛く甘えてくるから、妹が可愛いって思う気持ちは分かるけどさ。

 

 ちなみに、ロックブーケの乳は見た目以上にデカい。

 

 着痩せするタイプには見えなかったけど、ちょっと違う。

 

 パッと見ただけでも大きく見えるけど、見た目以上に大きい。着痩せしているのに大きく見える時点で、そりゃあ男からモテるって納得できた。

 

 

 で、話を戻すけど、お次はスービエという男。

 

 

 ワグナスの従兄弟だか親戚だか知らないけど、槍の達人らしい……っていうか、達人だ。

 

 この人もまあ、たいがいに強い。

 

 槍を手足の延長線がごとく扱うし、ただ器用に操るだけでもない。本職は建設業らしいが、趣味が建設の方かと思ってしまうぐらい、べらぼうに槍が上手い。

 

 こいつもまあ、ワグナスとはまた違った方面でイケメンなのが腹立つ。

 

 あと、なんか海が好きっぽくて、魚の話とかをよくする。魚食えないのではとも思ったけど、それはそれ、これはこれ、魚好きなようだ。

 

 この人は、どうもロックブーケの好みからは外れているようで、引き合いに出すことは無い。

 

 

 次に、ワグナスの知り合いだという男、ボクオーン。

 

 

 こいつもまあ、たいがいなイケメンだ。

 

 かなり頭がキレるらしく、討伐においても2手先3手先を呼んで作戦を立てるし、終わってみればアレが実は……ってなことがけっこうある。

 

 実感的な話だけど、勝率9割を刻む一因はこの人にあると俺は睨んでいる。

 

 もしもこの人に『神の知識』が宿っていたら、どうなっていただろうか……そんな考えが時々脳裏を過るけど、考えたところで意味はないだろう。

 

 ちなみに、ロックブーケとはあんまり仲良くない。

 

 ロックブーケは良くも悪くも直情的で、ボクオーンは冷静に盤上の駒を動かせるタイプ。水と油って程じゃないけど、相性が悪いのははた目にも分かった。

 

 だからなのかは知らんが、『あんたはボクオーンみたいにはなるな』って、時々だけどロックブーケから背中を叩かれる。

 

 

 そんなん俺に言ってどうするんだよって話だが……で、最後は、ダンターグ。

 

 

 こいつはもうアレだ、脳筋ってやつ。ただ、糞程厄介なのが、戦いに関しては頭を働かせる強かさを持った脳筋。

 

 そう、バカじゃないんだ。ただ、戦闘大好きなだけ。

 

 俺より強いやつに会いに行く、強いやつとの戦いこそ生きがい……そういうやつだ。

 

 体格も一番デカくパワーがあるくせに、スピードもある。単純な1対1の戦いだと、下手したらノエル隊長より強い。

 

 俺は後から聞いたのだけど、どうもノエル隊長を助けたことがあるらしい。ノエル隊長から特別扱いされている時もあるから、事実なんだと思う。

 

 ていうか、ロックブーケが何も言わないどころか、なんか感謝の視線を向けているのだから、疑う理由はないのだが。

 

 なお、『お願いだから、ダンターグには憧れないでね』って、俺の背中も足も蹴らずマジ顔で忠告してきたのは……ソレはソレ、コレはコレというやつか。

 

 

 ……で、これで全員。

 

 

 俺を含めて(何故か、俺もメンバー入りしていた)、6人しかいない、少数精鋭にも程があるだろ。

 

 俺としては義理はもう果たしたし、後は金が貰えるから参加しているだけで、そんな命知らずのバカ野郎部隊になんて参加したくはないのだが……そんな時に、だ。

 

 

 ──なんと、ロックブーケが参加すると訴えてきたのだ。

 

 

 これには、シスコンのノエル隊長だけでなく、ワグナスから難色が示された……ていうか、普通に拒絶していた。

 

 

 そりゃあ、そうだ。

 

 

 アリとの戦いなんて、自殺の別名みたいなものだ。

 

 一歩間違えたら死ぬような戦いに、誰が溺愛している妹を連れて行こうと思うのか……が、しかし、ロックブーケも負けてはいない。

 

 こいつ、見た目とは裏腹に、術に関する能力もノエル隊長に引けを取っていないのだ。

 

 独学で様々な術を習得したばかりか、小剣でそこらの兵士を数人まとめてなぎ倒せるぐらい強くなっていたという……とはいえ、だ。

 

 

「……駄目だ」

「どうして、ノエルお兄様! ワグナス様も!」

「おまえの気持ちは嬉しい。だが、堪えてくれ……俺たちは、おまえが平和に暮らす場所を守りたいのだ」

「そんな……そんなの、勝手過ぎます……!!!」

 

 

 それだけで、二人が許可を出すかと言えば、そんなわけもない。そして、他のやつらも似たような反応だった。

 

 ボクオーンからは、『足手まといになるだけです、おとなしく家に帰りなさい』といった感じで。

 

 ダンターグからは、『弱かったら死ぬだけだ、弱いやつは邪魔になるだけだ、失せろ』といった感じで。

 

 唯一、スービエだけが、『見上げた根性だ、その勇気を認めてやらねばならない』と好感触。

 

 つまり、反対4、賛成1。

 

 俺は、『あ、ロックブーケ入るんだ、じゃあキリが悪いから僕は抜けるね』ってしようとしたら、『逃がさん、おまえは……』ってダンターグの分厚い拳で止められた。

 

 いいじゃねえかよ、6人ならキリ良く六角形が作れるじゃねえか、クリスタルみたいで良いじゃん。

 

 ──って誤魔化そうとしたけど、無視された……ひでぇな、こいつら。

 

 

「クジンシー、君からも言ってくれ」

 

 

 まあ、そんな感じで俺も我関せずの立場に滑り込もうとしたら、なんか俺にまで話を振られた。

 

 おいおいおいおい……やめてくれよ。

 

 二人から向けられる、『おまえ、分かっているんだろうなあ……』っていう冷たい視線。

 

 ロックブーケから向けられる、縋るような、涙で濡れた視線……離れたところから、野次馬的な目で見てくる他の奴ら。

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………仕方なく、俺は深々と……それはもう、別途料金を請求したい気持ちをこれでもかと込めたため息を吐いてから、二人へと答えた。

 

 

「連れていってやれよ」

「──クジンシー!!」

 

 

 予想外だったのか、二人がそれはもう怒る、怒る、怒る。

 

 ロックブーケの方は、まさか俺が了承すると思っていなかったのか、ポカンと呆けて……もう一つため息を吐いた俺は、改めて二人に話した。

 

 

「冷静に考えてみろよ、こいつが駄目だと言われておとなしく引き下がる女か? 賭けてもいいぞ、ぜったいこっそり後をつけてくるから」

「それは……」

「それなら、目の届く範囲に居た方がまだ良いだろ。知らないうちにアリに襲われて死亡だなんて事になったら、おまえら耐えられるのか?」

「……だが、それでも安全な場所に居てほしいんだ!」

 

 

 言葉を無くすワグナス、ノエル隊長は苦悶の顔で、それでもと妹の参加を拒絶する。

 

 

「安全な場所に居てほしいって思っているのは兄の特権じゃねえだろ? 妹の方だって、兄にも安全な場所に居てほしいんだよ」

 

 

 もう、その時点で色々と面倒くさくなった俺は、思っていることをぶっちゃけた。

 

 

「兄が妹の盾になってやりてえように、妹だって兄のために頑張りてえんだよ」

「──っ!」

「その気持ちを無下にされたら、立つ瀬が無くなるだろ。俺は兄弟姉妹が居なかったから分からねえけど、妹の気持ちも少しは汲んでやれって」

「…………」

 

 

 すると、ノエル隊長も、ワグナスも、ロックブーケも、黙ってしまった。

 

 上から目線で言い過ぎたかとは思ったが、「少し、離れる……」ワグナスは特に何も答えず、そう言ってノエル兄妹と共に……離れていった。

 

 後に残されたのは、ボクオーン、スービエ、ダンターグ……そして、俺を入れて4人。

 

 

「……湿っぽく、らしくもない話をしたな。俺もちょっと失礼させてもらうぞ」

 

 

 この場の空気を察した俺は、そう言ってその場を後に──。

 

 

「おっと、失礼するんじゃないよ」

「クジンシー、貴方はそう言って二度と戻って来ないつもりでしょう? その手は通じませんよ」

 

 

 ──しようとしたのだけど、出来なかった。

 

 

 

 

 

 

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