山手線とは、ロマサガ2とはいったい……うごごごご   作:葛城

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独自設定だゾ


第6話: だって、腹は減るじゃん?

 

 

 

 断言しておくが、意地悪でやったわけでもないし、スケベ心を出したわけでもない。

 

 

 魂の扱いって、けっこうイメージが大事なんだよ。

 

 これは魂を操作する俺だけでなく、操作を受ける相手側にとっても、とても大事な事だ。

 

 というのも、『冥術』というのは、他の属性術と違って、実物を確認することが出来ないからだ。

 

 

 火ならば、焚火でもすれば炎そのものを目視で見られるし、熱気を始めとして、肌で感じることができる。

 

 水ならば、雨が降るたび、湖などに行けば、いくらでも。

 

 土ならば、それこそ普段から踏みしめている大地から。

 

 風ならば、それこそ素っ裸になって全身で感じ取れる。

 

 光は適正さえあれば、日の光を浴びることで、光の感覚を掴みやすい。

 

 対して、『冥』というのは、いまいち言葉では説明できない領域にある。

 

 

 影を操るぐらいならば適正次第だが、『魂』という、触れることも見ることも感じることも出来ない領域を操るとなれば、その難易度は一気に跳ね上がる。

 

 ぶっちゃけてしまえば、生きている者では、本当の意味で『冥術』を使いこなすことが出来ないのだ。

 

 俺の場合は、それこそ『神の知識』が有ったからこその話でしかなく、もしもそれが無かったら、俺自身に『冥術』の適正があることすら把握出来ていなかったと思う。

 

 それこそ、ノエル隊長たちじゃないけど、アンデッドやゴースト系のモンスターを『吸収の法』で取り込み、魂や死の感覚を習得しなければ……で、話を戻そう。

 

 

 俺はこれまで、『吸収の法』を汚らわしいモノだと、そう思っていると、全員に幾度となく伝えていた。

 

 

 同時に、こいつら全員、俺に言われるまでもなく、必要だとは思っていても、『吸収の法』に対して、あまり良い印象を抱いていなかった。

 

 なんでかって、そもそも、『吸収の法』がリスクあるモノだと理解していたからだ。

 

 そのうえ、いくら人々を守るためだとはいえ、自分の魂にモンスターを混ぜるだなんて、嫌悪感を覚えるのが自然である。

 

 

 嫌悪感とはすなわち、穢れである。

 

 

 穢れとはすなわち不浄、不浄とはすなわち、汚い……ここまで言えば、分かるだろう。

 

 汚いものを身体から出すと言って尻を叩けば、誰しもが想像してしまう……そう、〇んこだ。

 

 別に、本当に〇んこが出るわけではない。

 

 ただ、無意識のイメージだろうと、自分の身体から不要物を出す……そんなイメージを無意識に抱いて、それに合わせて尻を叩いてイメージを補強すれば……それで、俺としてはOKであった。

 

 

「だ、だふぁら、ひりほ、ははふひふほう、あっはんへふね……」

「なら、初めからそう説明をなさいな……!!!」

 

 

 俺としては、完全なる善意であったのだが……まさか、ロックブーケから顔が腫れあがってまともに喋られないぐらいにビンタされまくるとは思っていなかった。

 

 

 いったい、俺が何をしたというのだろうか? 

 

 

 ただ、別次元に渡ったことで、俺たちの存在そのものが異物となった。その中でも、モンスターは、その世界のシステムの一部と言っても過言ではない。

 

 俺たち自身も異物だが、モンスターは、その比ではない。世界そのものから、拒絶される。

 

 その拒絶反応を上手く利用すれば、混ざった魂からモンスターの部分だけを抽出して排除できる……そう思って、賭けてみた。

 

 

 結果は、大成功だ。

 

 

 けっこうな回数叩く必要があったし、終わった直後、ロックブーケは腰が抜けてしまったのか、足が震えて立てなくなっていたが……それでも、ロックブーケの魂から異物が消えていた。

 

 このタイミングを逃せば、次は無いかもしれない。

 

 そう思った俺は、他のやつらも同様の処置をしてやろうとしたのだが……どうやら誤解されたようで、5人がかりで抑え込まれてしまった。

 

 そうして……その後に待っていたのは、ようやく立てるようになった、真っ赤な顔をしたロックブーケの、渾身の往復ビンタであった。

 

 

 それはもう、視界に火花が散るぐらいの威力だった。たぶん、アリを殺せる威力だったと思う。

 

 

 さすがに、ダンターグのバカ力で羽交い絞めにされてしまったので逃げることができず……顔の形が変わり、まともに喋られなくなるまで、俺はリンチ(ロックブーケのみ)を受けたのであった。

 

 その勢いは凄まじく、剣を抜いたノエル隊長が無言のままに鞘に戻し、止めるべきか判断が付かないワグナスがオロオロと視線をさ迷わせ。

 

 ボクオーンとスービエは我関せずと言わんばかりに周囲の様子を確認し、ダンターグは顔の形が変わっていく俺を見て、ゲラゲラと笑っていた……地獄絵図かよ。

 

 

「ひ、ひどい目にあった……」

「少しは反省なさい!!」

 

 

 なんとか説明を終えて、『次から、何かやる前に説明しろ』という有難い説教を受けて、改めて治療をロックブーケから受けて……この騒動はお開きとなった。

 

 ちなみに、他の5人にも同じことをしたのかと言えば……別に、イメージさえ合わせてくれたらOKだったので、全員の背中を叩いて除去した。

 

 これも、ロックブーケのケツを叩いて異物を除去した経験のおかげなのだが……それを告げようとしたら、ロックブーケが無言のままに小剣の柄に手を掛けたので、お口にチャックである。

 

 

 ……そうして、とりあえず、俺たちは……焚火を囲む形で円形に座りながら、改めて辺りを見回した。

 

 

 俺たちの周囲に広がっているのは、広大な森林だ。

 

 時刻は夜なのか、それとも、夜しかない世界なのかは知らないが、夜空に浮かぶ星々はかなり明るく、うっすら手元が確認できるぐらいには……周囲より、生き物の気配は感じ取れる。

 

 しかし、どうにも違う。

 

 何がどう違うのか、上手く言葉で説明できないが……とにかく、俺が、俺たちが知る、あらゆるナニカが違う……そう、思えてならなかった。

 

 

「……ここが、別の世界なのか?」

「おそらく、そうだろう……感覚的に、皆も分かっているな?」

 

 

 ポツリと零したスービエの疑問に、ワグナスが確認を取るように促せば……俺を含めて全員が、頷いた。

 

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………そこから、無言の間が生まれた。

 

 

 たぶん、別世界へ追放されたショックが大きいのだろう……そう、俺は思った。

 

 それも、当然だ。

 

 国を、人々を、守るために、リスクを承知の上で、命を賭けてアリどもを倒して危機を一つ打倒したかと思えば、その助けた側から化け物扱いされて追放されたのだ。

 

 そんなの、言葉に出来ないほどのショックを覚えて当然だおる。

 

 ワグナス、ノエル、スービエ、ボクオーンは、難しい顔をして焚火を見つめている。誰も、何も、話さない。

 

 ダンターグすらも、顔をしかめて夜空を見上げ……ロックブーケは、俺の袖をつまみながら……不安そうに、ワグナスたちを見やっていた。

 

 そんな中で、俺は……耳を澄ませ、意識を集中し……森の中から、気配を消して近付いてくる……あ、こいつ食えるやつだ。

 

 

「……どうしたの?」

「まずは、飯だ」

「は?」

「食わねえとな、身体が持たんぞ」

 

 

 普通ならば分からないが、『神の知識』にて、ソレが食えるやつだと分かった俺は……袖をつまんでいるロックブーケの指を外し……素早く、暗闇の向こうへと矢を放った。

 

 一瞬後で、悲鳴が上がる。

 

 それは獣の断末魔であり、ハッと我に返った他のやつらを他所に、俺は小走りに駆け寄り……暗闇の中で、一瞬にして皮を剥いで肉塊に変えると……『影』より取り出した布に包み、戻る。

 

 

「ロックブーケ、水を出してくれ。まずは、洗わんとな」

「こんな時に、よくもまあ……」

「こんな時だからこそ、食うんだよ。生きるってのは、食うってことだからな、ちゃんと調味料も持っているぞ」

「……あんた、本当に底なしのバカね」

 

 

 呆れた様子のロックブーケが、ブツブツと文句を言いながらも水術にて真水を出してくれて……っと。

 

 

「……ふ、ふふ」

 

「ふふふ、ふふ……」

 

「あは、あはは、あははは!!!」

 

「がはははははは!!!!」

 

 

 何故か、他のやつらが笑い始めた。

 

 なんと珍しいことに、基本的に仏頂面なボクオーンも笑っていて……俺は、どうにも状況が分からず、ロックブーケを見やれば。

 

 

「……分からなくていいわよ、あんたはそういうやつだから。そのまんまで居なさい、ずっとね」

 

 

 何故か、ロックブーケも笑い……しかも、他のやつらのような大笑いではなく、クスっと微笑むような笑い方をされたので。

 

 俺は……マジで意味が分からず、肉を洗いながら……首を傾げるしかないのであった。

 

 

 

 

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………獲った肉は、俺たち全員が腹いっぱい食べてもまだ余分があるぐらいで、『影』の中に入れている乾燥スープも使用した。

 

 人間、とりあえず、肉を食えば気持ちも回復する。温かい飯を食えば、張り詰めた心も少しは解れるってもんだ。

 

 

「……クジンシー、それは本当なのか?」

 

 

 それはみんなも同じなようで、最初の頃に比べて、いくらかいつもの調子を取り戻したっぽいワグナスに対して。

 

 

「ああ、おそらく、俺たちの後に、改めて別の世界に渡った大神官たちは、俺たちよりはるかに悲惨な末路を辿るだろうよ」

 

 

 俺は、残った肉に塩をたっぷり擦り込んでから『影』の中に仕舞い……キッパリと、そう答えた。

 

 いったい何の話なのかって、それは……俺たちを追放した大神官(上層部)たちの、その後の事だ。

 

 おそらく、俺たちを追放したのは、単純に俺たちに濡れ衣を着せただけでなく、実験を兼ねていた可能性が高い……というワグナスの話を聞いて、俺は悟ったね。

 

 

 ──俺たち7人だけで追放されて、マジで良かったって。

 

 

 なんでかって、それは『神の知識』によって分かっていたというか、今になって『ああ、そういう意味だったのか』ってな感じだけど……まあ、つまりは、だ。

 

 今になってようやく『神の知識』にて分かった事なのだが、大神官たちがやったのは、禁忌である。

 

 それも、『同化の法』や『吸収の法』とは桁違いの、絶対的な禁忌……犯してはならない、不変の領域。

 

 俺たち7人ぐらいならば、まだギリギリ。

 

 都市の一角……何人移動したのかは知らないが、いくらかの土地を含めて数百人、数千人が移動したとなれば……間違いなく、超えてはならない一線を越えた。

 

 

 その結果、どうなるかと言えば……不変の存在になるのだ。

 

 

 受け入れられるわけでもなく、拒絶されるわけでもない。全ての世界から存在しないモノとして認識され、全てから宙ぶらりんになる。

 

 そうなれば、どうなるか? 

 

 答えは、先ほども言った通り、不変の存在になる。

 

 何をしても体は傷つかず、死なない。

 

 何年経とうが老化しないし、若返りもできない。

 

 何をどうしようが、自分たち以外に触れることができない。

 

 狂うことすらできず、何億年、何兆年、何京年……無限に等しい月日が経とうとも、全ての世界から存在しないモノとして認識され、無視される。

 

 景色も、何も無い。音すら何も無い真っ白な空間に、永遠に取り残される。ただただ、無限の時間の中で、漂い続けるだけの存在になる。

 

 そんなの、俺たちですら間違いなく気が狂うだろう。俺なら、間違いなく気が狂う。

 

 話を聞いたワグナスも、少しばかり顔色を悪くしていた……いや、ワグナスだけではない。

 

 ノエル隊長も、スービエも、ボクオーンも、ダンターグも……あ、いや、ダンターグはなんか想像したのか、『なんてつまらない世界だ』って感じで顔をしかめ……ロックブーケは──いてぇ。

 

 

「抓るなよ、痛いだろ」

「あんたが怖い話をするからでしょ」

「安心しろよ、俺たちはそうならねえから」

「おバカ、そういう事を言っているんじゃないわよ」

 

 

 相変わらず、ポンポンと人を馬鹿にするうえに、枕か何かのように粗末に扱いやがって……っと。

 

 

「……前々から尋ねようとは思っていたのですが……クジンシー、貴方はその知識をどこで得たのですか?」

 

 

 どうにかしてケツか乳を揉んでやろうと考えていた時、唐突にボクオーンから尋ねられた。

 

 

「先ほどの話もそうでしたが、貴方の話はあまりにも具体的過ぎる。いえ、それだけではない。これまでの貴方の行動を思うと、貴方はこうなる可能性すらも考えていた……私には、どうもそう思えてならない」

「あ~、う~ん……」

「今更、隠し事はよしてください。どれほど荒唐無稽な話であろうと、まずは話してもらわなければ、こちらは何の判断も出来ませんから」

 

 

 それは、ボクオーンだけでなく、他のやつらも似たような事を考えていたのだろう。

 

 なにせ、隣のロックブーケですら、『さっさと言え』と視線で訴えてくるのだから……まあ、今更隠すような事でもないし、いいけど。

 

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………そんな流れで、俺はなんとか皆にも分かるよう、『神の知識』という天啓が下りた時の事からを、端的に説明した……のだけど。

 

 

「なるほど……神が実在するかどうかはさておき、貴方に天啓が下りたのは納得出来ました」

「え、マジで?」

「貴方ぐらいのバカな方が、余計な事を考えずにマシな行動を取れるから、でしょうね」

「なんでいきなり喧嘩を売られているわけ?」

 

 

 意図が分からず首を傾げれば、「そう聞こえたなら申しわけありません」ボクオーンはこれまた珍しく苦笑しながら……説明してくれた。

 

 

 もしも、ワグナスが『神の知識』を得ていたなら。

 

 おそらく、アリは倒せる。

 

 ただし、少しでも多くを助けるために、重要度の低い村などを盾にする形で延命を図りつつ、別の世界への転移人数を増やす方向に動いていただろう。

 

 

 もしも、ノエル隊長の場合。

 

 こちらも、アリは倒せる。

 

 ただし、その場合は今よりもずっと前に『吸収の法』を編み出し、自らをモンスターに変えて撃破し……大神官たちに濡れ衣を着せられて同じ結果になっていただろう。

 

 

 もしも、スービエならば。

 

 この場合は、アリは無視されている。

 

 それで終わるならば、それが人の定めだと達観し、自らもその流れに従って……そのまま、どこから見知らぬ土地で、自由のままに命を落としていただろう。

 

 

 もしも、ダンターグならば。

 

 こちらは、アリを倒しているだろう。

 

 だが、強敵を求め続けるだけでそれ以外の事には何も関与せず、それどころか、自然などに俺は負けんと大災害に真っ向から挑んで……になっている可能性が高い。

 

 

 もしも、ロックブーケならば。

 

 こちらの場合は、アリは別の誰かが倒している。

 

 直情的で上手く説明できず、おそらくはワグナスなどに上手く知識を活用されて……あるいは、先走って勝手に命を落としていた可能性が高い。

 

 

「そして、私ならば……おそらくすべてに対して冷笑を浮かべ、ひっそりと世界が終わるのを見物していたでしょうね」

「……俺でも、似たようなモノだろ?」

「一歩間違えていたら、貴方も似たような結果になっていたでしょう。でも、その一歩を貴方は踏み間違えなかった……というわけです」

「それ、褒めているのか?」

 

 

 尋ねれば、ボクオーンは肩をすくめただけで、何も答えなかった。

 

 

 

 

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