山手線とは、ロマサガ2とはいったい……うごごごご   作:葛城

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第8話: 五英雄「ロックブーケちゃん、目ぇ怖っ!!!」

 

 

 

 ──あの後、ようやく動ける程度に落ち着かせたオアイーブを伴って、移動することしばらく。

 

 

 とりあえず、近くに町が有ったこともあって、俺たちはそこのパブの一角にて一休みし……ついで、オアイーブから話を聞いた。

 

 

 その内容を簡潔にまとめると、だ。

 

 

 まず、この世界はやはり、俺たちが追放された元の世界であり、大災害が起こってから数千年ほどの月日が流れている、とのこと。

 

 今の世界は、大災害を経てあらゆるモノが激変したが、今ではすっかり新たな命が芽生え、かつては弱小種族とされていた者たちが繁栄しているとのこと。

 

 その代表が、かつて俺たちが短命種と呼んでいた者たちだ。

 

 彼らは知恵と勇気を合わせて、俺たち長命種が逃げ出した世界を生き延び、今に至るまで種を繋いできた……現在の人間である、とのこと。

 

 

 ……そして、オアイーブは、他の者たちと違って別世界へ逃げることはせず、この世界に留まっていた。

 

 

 理由は、俺たち(たぶん、ノエル隊長だろう)を出迎えるために。

 

 また、いつか帰って来たとしても、目印が無かったらここが元の世界か分からなくなるから……最後まで待ち続けるつもりでいた。

 

 他にも、サグザーを始めとして、世界を捨ててまで逃げることを良しとせず、俺たちの帰りを待つことを決めた者たちが居ること。

 

 かつてこの世界の頂点に君臨していた長命種(俺たちのこと)はすっかり歴史の影に埋もれ、今はひっそりと暮らしている……とのことだった。

 

 

「……辛くなかったのか?」

「とんでもない、貴方たちの苦難を思えば、私の苦しみなど取るに足らない事です」

 

 

 思わずといった様子でノエルが気遣えば、オアイーブは嬉しそうに……それでいて、悲しそうに首を横に振った。

 

 

 辛くないわけが、ないのだ。

 

 

 元々、俺たち人間……いや、古代人(オアイーブ曰く、今はそう称するのが正しい、だとか)は、耐えられないと判断したのが始まりだ。

 

 それを、オアイーブは、耐え忍んできた。

 

 罪悪感に苛まれながらも、これからの生涯全てを徒労のまま、ただ時を重ねて終わるのを覚悟したうえで、今日まで命を繋いできた。

 

 その日々は、『同化の法』で軽減できるようなモノではない。

 

 寒さに凍えて死にかけたことだって何度もあるだろうし、空腹で餓死しかけたことだってあるだろうし、病に侵されて苦しんだ時もあっただろう。

 

 それでもなお、諦めずに今日まで耐えきったのだ。

 

 それを考えずに責め立てるような者など、この場には居ない。

 

 ノエル隊長も、「もう、良いんだ。許すよ、オアイーブ……」目じりに涙を浮かべながら、彼女を許したのであった。

 

 

「しかし、サグザーもか……あいつは、元気にやっているのか?」

 

 

 と、同時に、親友の姿を思い浮かべたノエル隊長は、涙を拭いながら尋ね……しかし、裏腹にオアイーブは……悲しそうに俯いてしまった。

 

 

「……貴方たちがあの丘で転移させられた時の光景を、あの人はずっと覚えていて……今も、自責の念から地下から出られないの」

「そんな……」

「それだけじゃない。もしかしたら既に耳に入っているかもしれないけど、つい先日、貴方たちの名を語る何者かが、サグザーと接触したの」

 

 

 絶句するノエル隊長に、オアイーブは……俺たちにとって全てが謎の『七英雄』について語り始めた。

 

 

 ──七英雄の伝説。

 

 

 それは、まさしく俺たちの事を示していた。

 

 オアイーブを始めとして古代人たちが広めたものではなく、当時の人間たち(短命種のこと)が広めたもの。

 

 当然ながら、人から人へと語り継がれる過程で、話の中身が変化してく。

 

 だから、随所に食い違いがあったり、時を重ね、世代を重ねるにつれて脚色されていたり、当時は無かったモノが追加されたりした。

 

 その内の一つが、七英雄を表す二つ名だ。以前は全員にあったらしいが、今は一部だけ残っていたりする。

 

 

 ──例えば、ダンターグは……暴れ者。

 

「うわ、見たまんまじゃねえか──いででで!! 頭が割れる割れる割れる!!!!」

「ふん、ビクビクと震えるしかない虫けらの、せめてもの意趣返しに過ぎん、情けないやつらだ」

「それなら、クジンシーの頭から手を放しなさいよ……」

 

 

 ──例えば、狡賢いボクオーン。

 

「悲しい事に、自分でもあまり否定出来ないというのが……」

「狡賢いかどうかは置いといて、けっこうちゃっかりしているからな、勝算が低い戦いは逃げの一択を取るし」

「勝つためには狡賢さも必要だ。試合ならともかく、命がけの真剣勝負の場で真正面からしか認めないというのも不自然だな」

 

 

 ──最後に、卑怯者で嫌われ者で臆病者のクジンシー。

 

「待って? なんで俺だけ三つもあるの? 俺だけあまりに酷い扱われようじゃない? 七英雄なんでしょ?」

「あはは、あははははは!!! ボロクソじゃないの、あははははは!!!!」

「こ、こら、ロックブーケ、そ、ふふ、そんなに、ふふふ……」

「そうだ、ふふ、そうだぞ、ふふふ、クジンシーはぷふぅ!」

 

 

 咎めようとしたノエル隊長とワグナスだが、耐えきれないといった様子で笑みを噛み殺し切れなかった。

 

 ちなみに、椅子に座ったままバタバタと足を動かして、それで大爆笑しているのがロックブーケ、おいパンツ見えてるぞ。

 

 そっぽを向いて肩を震わせているのがボクオーン。聞いていないフリをしつつ、やっぱり全身が震えているのがスービエ。

 

 

 ……ダンターグ? 

 

 

 笑い過ぎて、声が出なくなっていた。

 

 他人様を指差して、腹を抱えてうまく呼吸ができないようだ……なんだろう、こんな形でダンターグに勝てたなんてまったく嬉しくないんだけど? 

 

 

 ていうか、俺ってマジであの時はどういう目で見られていたんだろうか? 

 

 

 そりゃあ、法律家とか赤竜隊隊長(と、その美しい妹)とか教授とか、二人と居ない槍の名手だとか、見た目に加えて隊長を助けたとか……それに比べたら、だよ。

 

 はた目に分かるぐらいな田舎者ファッションに、直後に思想犯で投獄されて、それからずっと隊長の監視の下でひ~こらひ~こら、気付けば七英雄の一人に……あれ? 

 

 冷静に考えたら、内情を知らんやつからしたら『なんで、お前そこに居るの?』ってやつじゃん。

 

 

 ……いや、まあ、うん。

 

 

 これに関しては、本当にロックブーケを始めとして古代人たちは関与していないから、なんでそうなったのかは断定できないらしい。

 

 

 ただ、憶測は立てられる。

 

 

 ダンターグは、当時から力こそすべて、強いものが偉いという認識であり、それは人間たちにも同様だったから、その印象が強く。

 

 ボクオーンは、当時は法律家だったことから、人間と古代人とでトラブルが発生するたび、古代人側が有利な結果になるよう動いていたから、その印象が……ん? 

 

 

 そうなると、クジンシーは『思想犯』になるのではないかって? 

 

 

 それに関しては、単純に伝説を広めた人間と、古代人との意識の差というか、考え方の違いである。

 

 肉体を乗り換えて生きるのが当たり前だった古代人からしたら、当時の(今もだけど)クジンシーの思想は異端も異端、即刻処刑されてもおかしくはなかった。

 

 しかし、人間たちからしたら、生まれたら年老いて最後はそのまま死ぬ……なんてのは当たり前過ぎて、『思想犯……?』という認識しか持てなかったのだ。

 

 だから、代わりに……当時のクジンシーに向けられた言葉が多く、田舎者で学無しのくせに七英雄の一員になったやっかみが残ったのではないか……というものだ。

 

 なるほど、それならばまあ、納得は出来る……と、頷いたクジンシーの頭を、怒ったロックブーケが叩いて、だ。

 

 

「それで……これは、私の仲間が特殊な術を用いてなんとか撮影に成功した、現在確認出来ている七英雄の姿です」

 

 

 ぺらり、と。

 

 何気なくオアイーブより出された一枚の紙。

 

 そこに描かれた『七英雄』の一人を見た俺たちの誰もが……思わず、ドン引きした。

 

 なんでかって、一言で言いあらわすならば、それは正しく化け物であり、モンスター以外の何者でもなかったからだ。

 

 まず、身体が明らかに人間より何倍も巨体だ。両足は消失し、代わりに長く伸びた尾が蛇のように。

 

 ゴブリンを彷彿とされる顔に、趣味の悪いボロボロのマントを羽織っていて、これまた趣味の悪いドクロの装飾が施された大剣を……まあ、うん。

 

 

「うわ、趣味わる……ぜったいこいつ、ダンターグだろ」

「クジンシーです」

 

 ──は? 

 

 

 という俺の言葉と、頭に振り下ろされた拳骨は、ほぼ同時であった。舌を噛まなかったのが幸運としか言い表しようがないタイミングだった。

 

 というか、マジでダンターグの拳骨は痛い。

 

 1に戦闘、2に戦闘、3も4も5も戦闘という、骨の髄まで戦闘成分で満たしているのではってぐらいのバーサーカーだから、その拳もまた岩のように固い。

 

 なので、本当に痛い。

 

 『神の知識』によって習得した技術がなかったら、俺の頭はとっくの昔に割られて流血しているところだ。

 

 ていうか、これこそ暴れ者の……止めよう。

 

 勘の良いダンターグは、疑いの段階で拳が出る男、さすがに何度も殴られたらヤバい、俺は身をもって知っているのだから。

 

 

「……とりあえずは、だ」

 

 

 こほん、と。

 

 わざとらしい咳き込みと共に、緩んだ空気をワグナスが引き締めた。

 

 

「オアイーブ、どうしてこいつを君はクジンシーと判断したんだ?」

「それは……」

「いくら名前が同じだとしても、見た目は明らかに異なる。もしかして、クジンシー以外の私たちと、接したのではないか?」

 

 

 そう、問いかけられたオアイーブは……静かに、頷いた。

 

 曰く、『その時は撮影出来なかったが、ノエルとロックブーケとワグナスの3人と応対し、ワグナスがあまりに異形の姿になっていたことから……』との事らしい。

 

 なるほど、それならば、納得出来る。

 

 全員が名前だけ同じの異形だったならば、そんな馬鹿なと信じなかっただろうが……見た目がほとんど変わっていない、ノエルとロックブーケが居たのだ。

 

 その二人が異形の怪物をワグナスと呼び、クジンシーと名乗る怪物まで現れたとなれば……そりゃあ、嫌な予想をして悲観に暮れても仕方がないだろう。

 

 

「それだけではありません。私を見る、貴方たち3人の目が……もはや、私の知る貴方たちではなかった」

「と、言うと?」

「幼馴染だから、見逃す。しかし、復讐を……彼らを追いやった大神官たちへの復讐の邪魔をするなら、仕方がないから殺して吸収するしかない……そんな、冷たい眼差しでした」

「……そうか」

「そして、クジンシーだけではありません。他の者たちも、様々な場所で人々を苦しめているのを知っているのに、貴方たちは……ノエルですら、欠片も気にしていなかった」

「もう、いい」

「いえ、まだです。私は、だから、罪を犯しました。彼らに、長く苦しい戦いの道を選ばせてしまった」

「なに?」

 

 

 止めようとしたワグナスを遮るように、オアイーブは……悲しい眼差しを、俺たち全員に向けた。

 

 

「一目で、分かりました。残った古代人全員が束になって不意を突いたところで、怪物となり果てた七英雄は倒せない」

「しかし、私たちが盾になったところで瞬く間に殺されて終わってしまう。彼ら七英雄の力は、あまりに強大過ぎました」

「そして、かつての心を失った七英雄を止める者はおらず、復讐を遂げる過程でいかほどの人々の屍が積み重なろうとも、彼らは気にも留めないでしょう」

「ゆえに、私は彼らに、七英雄と戦う術を与えました」

「『同化の法』と原理は同じですが、魂を乗り移らせるのではありません。記憶や経験……それらを伝え、力を継承する」

「その時は勝てなくとも、次の世代、次の次の世代、次の次の次の世代へと受け継ぎ、その力を増してゆく」

「その名を、『伝承法』。人々が七英雄の暴虐に抗えるように……と」

 

 

 そこまで、オアイーブが話し終えたら……後には、沈黙が流れた。

 

 七英雄がどれほどの強さかは分からないが、強大過ぎると称するだけあって、本当に人知を超えているのだろう。

 

 見方を変えたら、人間を利用して代わりに討伐させようと取れなくもないが、『伝承法』無しでは人間が七英雄に太刀打ちできないのは事実なのだろう。

 

 

「……オアイーブ、その『伝承法』は、誰に授けたのだ?」

 

 

 そんな中で、やはり沈黙を破ったのは……ワグナスからだった。

 

 

「北バレンヌ地方にある、バレンヌ帝国の王に……」

「ならば、一目見ておかねばならん。それに、偽物の七英雄が何なのか……調べねばならん」

 

 

 そして、その提案に……反対する者はいなかった。

 

 

 

 

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………で、まあ、うん。

 

 

 そこまでは、良かったんだ。

 

 今の世界のモンスターとか地形とか、色々調べる意味でも、目的があるのは都合が良かったし。

 

 それで……まあ、本当に、意図していなかったんだ。

 

 たまたま、首都アバロンに到着した時……偶然にも、アバロンはモンスターの集団に襲撃され、酷い状態になっていたから。

 

 本当に、他意は無く助けに入っただけだったんだ。

 

 それは、俺だけじゃない。

 

 みんなもそうだし、オアイーブも治癒術を使えたから、ただ助けようとした……それだけだった。

 

 ただ、ちょっとばかり、状況が俺に味方しただけなんだ。

 

 戦っているのが市街地だから、下手に暴れると余計に被害を生み出しかねないダンターグは当然のこと。

 

 下手に術を使うと二次被害が生まれてしまうから……必然的に、最小限の攻撃でモンスターを仕留められる俺が、比較的活躍の場が多かった。

 

 別に、そこに他意は無かった。

 

 適材適所ってやつで、お礼を言われたいとは思わないし、無事で居てくれたらそれで……その程度の感覚だった。

 

 

「──先ほどの助太刀、感謝いたします」

「ん、いや、お気になさらず……」

「そんな、謙遜を。なんと美しい弓さばきだったことか……このテレーズ、心から感服致しました。是非とも、名前を──」

「あ~、クジンシーって言う──んぶ!?」

「──シッ! その名は……なにか事情がおありのようですね、どうぞこちらへ」

「え、あ、いや、その……(腕を組まれて、逃げられねえ……ていうか、この人けっこうおっぱいデッケェ、柔らけえ……)」

 

 

 だから、うっかり七英雄と同じ名を名乗った俺が悪かった。たとえ、本名だとしても。

 

 むしろ、反射的に俺の口を手で押さえた、テレーズと名乗った女性の機転が良くて、彼女に腕を取られてしまった俺がバカだった。

 

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………だから、そう、本当にそれ以上でも、それ以下でもなかったのだけど。

 

 

<●><●>

 

 

 なんでか、ロックブーケから、とんでもない爆音の舌打ちと共に、すごい目で見られて。

 

 

「ハワワワワ……」

「あ、あの……ノエル?」

「シッ、今のロックブーケを刺激してはいけない」

「そうだ、ダンターグですら目線を合わせないぐらいだからな」

「ビューネイ……うっ、頭が……」

「おい、思い出させるな……」

 

 

 

 なにやら、そういう時に限って、みんなは俺から離れてコソコソしていて……もうね、うん。

 

 

(俺がいったい何をしたというのか……)

 

 

 そう、思わずにはいられなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 




クジンシー、自己評価メタ糞に低いし、自分がモテるとか欠片も考えていない、周りの男たちが軒並みイケメンだから……

ロックブーケ、意地っ張り小学生レベルのコミュニケーション、なお、クジンシーに対してのみ
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