ゲーム世界転生〜現代ダンジョン世界かつ1900年開始で生き残るには〜 作:星野林(旧ゆっくり霊沙)
2学期終盤になると、殆ど全ての転生者が6階層を突破し、教官達を驚かせていた。
「幼年学校始まって以来の高水準……平民出身者というのが気になりますが、優秀な国民が増えるのは学校側としても喜ばしいことでしょう」
「しかし校長、武士階級の者が不満をため込んでいるのも事実、ある程度ガス抜きをしなければ爆発してしまうのではありませんか?」
江戸校の校長と教頭も話し合いをしていたが、校長は
「いえ、武士……いえ遅れている皆さんを後ろから尻を叩く為にもここはあえて放置しましょう。武士階級の皆さんは現実があまり見えてない方もおりますからね……そういう人達は脱落してもらいましょう」
「しかし」
「教頭、我が校は日ノ本の未来に繋がる人材を作る場所ですよ。未来に繋がらない者に支援を続ける必要はありません……頭が硬い頑固者等は特にね」
「そうですな、いやはや、私も頭が固くなっていたようでして」
「年度に見合ったカリキュラムにする必要があります。1学年の進級基準の引き上げをしましょうか」
こうして今までは3階層突破が進級基準だったが、4階層突破に変えられ、2学期の終わりに進級条件が変えられて一部の生徒は阿鼻叫喚しながらダンジョンに潜り続けることになる。
そうなると事件も起こるようで……。
「あ~」
「うわ、死人出てるじゃねぇか」
俺こと山田は一尾のタマモと大妖精のアリスと一緒にダンジョンに潜り、アリスのレベル上げの為に3階層で骸骨足軽狩りをしている帰りにダンジョン内を歩いていると、ゾンビになっている同学年の女子生徒を見つけてしまった。
ダンジョン内でNPCキャラが死んで蘇生処置が遅れるとゾンビになってしまう。
レベルは生前よりも低くなる傾向があり、知能なども低くなり、歩く屍となってしまう。
ただこの状態でもテイムすることができるのがこのゲームのぶっ飛んでいるところで、ゾンビをテイムした場合、ゲームでは普通にテイムモンスター扱いになるのである。
「死体を運ぶ訳にもいかねぇし……テイムするかぁ……」
俺はゾンビを軽く痛めつけると、テイムして地上に運び、教官に報告するのだった。
「宮本がダンジョン内でゾンビになっていたか」
「はい、この通り」
「あ~」
担当教官に説明すると、どうするかと問われた。
「一応レベルを上げれば生前の意識が戻ってきて、フレッシュゾンビまで育てればほぼ人と変わらなくなる。ダンジョン内でゾンビになった者の対応はテイムしたらその人物に委ねられることになっているが……楽にさせてやりたかったらこの場で斬首して火葬するけど」
「きょ、教官それで良いんですか?」
「いいも何も、例年数人はゾンビになることがある。基本ダンジョン内で処理されるのだがな……事故死した場合は自己責任と入学の際に言われていただろう」
「それはそうですが……」
「親御さんに死亡した事を伝える必要があるから、どうするかちゃっちゃと決めてくれ」
「テイムしてしまったので彼女を治していきます」
「うむ、じゃあ親御さんには死亡した事を伝えておくから、ゾンビに関する取り決めを渡しておくな。はー、恋人がゾンビになって引き取る奴は偶にいるけど、お人好しで引き取るのはろくなことにならねぇからな」
「忠告感謝します」
「で、宮本さんを連れてきたと」
「ああ……ウィキ、ゾンビってどんな感じで進化していくんだっけか?」
「ゾンビは2種類の方向に進化するな、生前と同じ様にしたいならゾンビからエリートゾンビ、フレッシュゾンビになるルートとゾンビからキョンシー、道師、地仙人、仙人or天女になるルートがあるな。ゲームだと後者一択だけど」
「だよな……ゲームだと弱いNPCキャラをわざとゾンビにしてから仙人か天女に育成する方法があったけど」
学校側もだいぶイカれているねと王子が言う。
生徒が死亡しても親御さんに死亡届け送るだけで、死体は生徒が自由にしていいとかヤバすぎる。
命が軽い今の時代だから許されている所業でもある。
「引き取った以上育てるのでござろう? どうするのでござるか?」
「そりゃ責任持って育てるよ……攻略班に情報提供しないといけないし……当面俺宮本さんの育成? 蘇生? にかかりっきりになるからダンジョンの奥に進むのは……」
「ああ、大丈夫でござるよ。拙者達は既に10階層突破したでござるし、3人で12階層の金鬼狩りで金策をしているでござるよ」
「すまないな……」
「でも蘇生できれば彼女にできるんじゃないか? 宮本さん大和撫子って感じで綺麗だし、胸も大きいし」
「まぁゾンビからまずは喋ることができる道師まで育てないと……」
「頑張れー」
「さて、キョンシーにするためには御札というアイテムが必要になるけど……ある所にはあるんだよな」
俺は工員を自称している御守りを量産している女子の下に行き、御守りの中に入れているダンジョン産の素材で作られた紙にキョンシー化を求めることを書き込んだ御札を作ってもらった。
「同級生を蘇生させるために御札が欲しいですか……良いですよ……て、亡くなったの宮本さんですか……武士達の男性から人気な方だったのですがね」
「工員は同じクラスだったのか?」
「ええ、5組で一緒でした。彼女も学校側が急に進級の階層を高めた事で焦ったのでしょうね。パーティーメンバーの他の方はどうしたのでしょう?」
「発見したときに居たのは宮本だけだったな」
「そうですか……さてこちらをどうぞ」
「はや! 今の一瞬で?」
「御守り作りの応用ですぐできますからね。紙に文字書くだけですし。一応予備も5枚渡しておくので、剥がれたら付け直してあげてください」
「ありがとうな工員」
「いえ、宮本さんをおねがいしますね」
その後はゾンビに木刀を渡して、4階層の空き部屋でタマモに相手をしてもらい、模擬戦を繰り返させた。
宮本のレベルは8、ゾンビになってレベルが下がったのを考慮すると生前は11レベルくらいか?
そのレベルだと3階層は普通に危険だな。
油断すれば死ぬか。
模擬戦相手のタマモは現在一尾でレベルは55。
回復役の大妖精のアリスはレベル32と彼女からしたら圧倒的格上で、モリモリ経験値が入ってくる。
そのおかげで模擬戦開始した2日後には20レベルになり、キョンシーに進化し、更に2週間模擬戦や錦蛇レベリングを続けると40レベルに到達し、道師へと進化することになった。
「ん……ん……あれ? 私死んだはずじゃ……」
「お、目覚めたか……意識あるか? 宮本」
「あなたは……ごめんなさい、ちょっと思い出せないみたい」
「あー、9組の山田だ。知らなくて当然だと思うぞ」
「そう……あなたが蘇生してくれたのかしら?」
「いや、宮本は人間としては死んでいるぞ」
「死ん……え?」
「俺が見つけた時にはゾンビになっていた。それを俺がテイムして地上に運んで、教官に聞いたら自由にして良いっていわれたからモンスター……魔物として復活させた」
「え? じゃあ私って今魔物と同じなの?」
「今道師って魔物だ。魔物は進化すれば生前の記憶を思い出してくれるかと思ったけど、大丈夫そうだな」
「魔物……あれ? じゃあ私って学校側からは」
「死亡扱いで除籍だな」
「……あれだけ頑張ったのに……」
宮本はがっくりと地面に膝をついて崩れ落ちたが、今後どうするかについて聞いてみる。
「宮本、一応今は俺の使い魔ってことになるんだけど、どうする? 成仏させて欲しいなら成仏させるが」
「い、嫌です……また死にたくはありません」
「じゃあ俺の使い魔として過ごすことになるが良いか?」
「選択肢が無いようですし……よろしくお願いします」
「決まりだな」