ゲーム世界転生〜現代ダンジョン世界かつ1900年開始で生き残るには〜   作:星野林(旧ゆっくり霊沙)

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北海道防御戦争 1

 ロシアとの緊張が高まる中、幕府首班達は探索者達に部分動員を発令し、従軍するように指示を出した。

 

 特に探索者として成績が良好な者は学生でも動員され、高校だけでなく幼年学校の生徒まで駆り出されることとなってしまった。

 

 一応徴兵制等を部分的に動員したりはしていたのだが、戦争が起こった際に戦うのは武士の役目とみなされる考えが根強く、それでいて従軍可能な武士は日本陸軍と日本海軍に割り振られて近代化に注力されたと言っても、日本陸軍の兵力は常備兵力が20万人、予備役を掻き集めても50万人にしかならなかったのである。

 

 ちなみに史実日露戦争の日本軍の動員兵数は108万人である。

 

 いかに軍の近代化が遅れているか分かる。

 

 また日本が日清戦争で賠償金が取れてない弊害は他にもあり、海軍の軍艦の建造の遅れが指摘できる。

 

 一応独力で八幡製鉄所や近代化に必要な工場、武器弾薬を作る大阪陸軍工廠や海軍の軍艦を作る海軍工廠の整備は史実より少し時期が遅れながらも完成していたのであるが、幕府は関係が深かったのが陸軍国のフランスというのがあり、史実手本にできたイギリスからの軍艦製造技術に関する導入が遅れたり頓挫してしまった。

 

 更に日本が限定的鎖国を続ける選択を取ったため、金食い虫の軍艦に予算があまり付かず、戦艦は1隻も無い状態であった。

 

 史実日露戦争で勝利を決定づけたバルチック艦隊撃破はこの世界では不可能と思った方が良い。

 

 ここまで近代化が遅れているのを見て、ロシアは日本を絶好の鴨扱いしていたのが分かる。

 

 しかし、ダンジョンという異世界がある日本の恐ろしさをロシアは嫌というほど味わうことになるのであった。

 

 

 

 

 

 

 1908年1月20日、ロシア帝国は日本国に対して宣戦を布告。

 

 ここに日露戦争が勃発することとなる。

 

 

 

 

 

 

「上層部の決定は?」

 

「水際作戦で行くらしい」

 

 転生者達は北海道からロシア軍が攻めてくるのをゲーム知識で知っていたが、今のロシアは朝鮮半島も支配下に置いた為、日本海に接しているどの地点からでも軍を送り込むことができるのである。

 

 勿論日本海軍は限りある軍艦を日本海に派遣し警戒していたが、陸軍はどの地点から上陸してくるか分からないロシア軍に備えて各地の基地に分散配置するしかなかった。

 

 宣戦布告から2日後の1月22日、ロシアは凍った海を渡り、樺太島よりロシア陸軍が送られ、樺太に留まっていた船で北海道の上陸を許すことになる。

 

 日本海軍は北海道の北の方は船の性能不足で流氷漂う場所を突破する能力が足りずに北から流れ込んできたロシア軍の発見が遅れてしまったのである。

 

 ロシア軍は上陸後、コサック部隊という騎兵部隊により一気に北海道内に浸透していき、北海道北部の村民が略奪や虐殺に晒されてしまうことになる。

 

 北海道の防衛を主任務とする第七師団はすぐに駐屯する部隊を動かしロシア軍迎撃へと兵を動かした。

 

 その中には転生者達も複数名がいたものの、基本江戸から西の学校に通っていた人が多かったので数は少なかった。

 

 日本陸軍第七師団は国内の鉄道を使って北海道中部へ移動し、初の遭遇戦となる名寄攻防戦が勃発することとなるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 日本陸軍は経験した戦争が直近だと30年近く前の薩長反乱まで遡る事になり、フランス陸軍の軍事技術を導入していたのだが、この頃のフランス軍はエラン精神主義と呼ばれる史実の帝国陸軍が大和魂と呼ぶ悪名高い精神主義の大元となる主義が大流行しており、日本陸軍も影響を大いに受けていたのである。

 

「突撃!」

 

 エラン精神主義の根本は常時攻勢と呼ばれる常に攻撃を続ければ負けることは無いという考え方で、それに日本陸軍はダンジョンによる強化によって薩長反乱では薩長側の銃火器に耐えきってしまい、間違った戦術を重視していたのである。

 

 一方でロシア軍は騎兵中心ながら、大砲よりは軽く、運搬しやすい機関銃を多く配備していた為、突撃してくる日本陸軍に対して普通の銃より威力が強い機関銃が火を噴き、初戦に投入された約1000名の日本軍のうち半数の500名が死傷し、敗北してしまった。

 

 しかし無謀な突撃が繰り返され、ロシア軍に対して打撃を与えぬまま屍だけが積み上げられていった。

 

 こうした中、転生者で緊急的に尉官として小隊を指揮することになった転生者が、上官戦死の為指揮を引き継ぎ、闇夜に紛れて奇襲を行い、激戦の末に勝利し、名寄攻防戦は終結。

 

 ただこの戦いで第七師団の約3分の1の兵員が死傷し、軍事的には壊滅判定を受けることになるのであった。

 

 

 

 

 

「探索者でも小銃より威力が高い機関銃の陣地に突撃させられればそりゃ兵も溶けるわ」

 

 この度の戦いで小隊を指揮し、戦果を挙げた村上少尉は各地から合流してきた戦時特例で部隊指揮を任されている転生者の同僚と愚痴を言い合う。

 

「でも当分無謀な突撃が繰り返されると思うぞ」

 

「上官が理解ある方なら良いが、そうでない場合は戦死するまで突撃するぞ」

 

 下手に武士道精神が根強い為、出血しながら改革を進めていくしか無い。

 

 同時期には羽幌村や雄武村といった場所でも戦闘が勃発し、無数の死傷を日本軍側が受けてしまっていた。

 

 その間にもロシア軍はどんどん兵を北海道に送り込み、1月30日には3個軍団約6万人が上陸し、どんどん戦線が押されていっていた。

 

 その頃には日本各地から集められた援軍が到着し、そして突撃が繰り返され、日本軍は更に消耗していくことになる。

 

 ただこれにより日本軍は現場に出ていた佐官クラスが大量に消費させることになり、現場にいる若年の転生者達の階級が生き残って活躍するだけで上がっていく現象が発生。

 

 18歳で少佐というファンタジー世界でしか聞いたことが無いような階級に就任する者すら現れる始末であった。

 

 

 

 

 

 

 

「上官の圧力はほぼ無くなった、亡くなった方には悪いが、これで転生者達も動きやすくなったな」

 

「村上少佐、あなたの大隊が一番転生者の比率が多い……行けますか?」

 

「ええ、攻勢とはこうやるのだというのを上層部に教えましょう」

 

 順調に支配地域を広げていたロシア軍に対し、村上少佐は防御陣地を無視した浸透戦術を開始する。

 

 大砲による短時間の砲撃の後……いや、砲撃の最中から進撃を開始し、砲弾が撃ちやむ頃には至近距離までロシア軍に接近し、前線司令部を強襲する。

 

 指揮する者が居なくなった軍隊ほど脆い物はない。

 

 そのまま近接戦闘に持ち込むことができれば白兵戦で日本軍に勝てる者は居ない為、これが見事に刺さっていく。

 

 旭川決戦と呼ばれる旭川町郊外で起こった戦闘で村上少佐や転生者達が率いる小部隊が展開していたロシア軍を包囲の上で殲滅させ、指揮官を捕縛することと1万人近くを捕虜にする大戦果を挙げることに成功する。

 

 転生者の掲示板では即座に戦術が共有され、日本海側と太平洋側沿岸部から南下していたロシア軍は直ちに撃破され、一気に戦線を押し戻す事に成功する。

 

 既に両軍で10万人以上の死者を出した凄惨な現場になっていたが、武士階級に依存した指揮官の構築は時代に合っていないということがまざまざと分かる結果となるのだった。

 

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