ゲーム世界転生〜現代ダンジョン世界かつ1900年開始で生き残るには〜   作:星野林(旧ゆっくり霊沙)

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将軍様の苦悩

 第17代将軍徳川家房は目まぐるしく変化する国際情勢に頭を抱えていた。

 

 16代将軍だった家房公の父親は大御所としてまだまだ影響力は残っているのだが、国際情勢や影響力を復活させた朝廷への牽制の為、親子2人で幕府を支えている状態であった。

 

「ロシアとの戦争に勝利することは出来たが……敵首都に特殊部隊を送り込むという作戦を立案し、実行した者はイカれているな」

 

「父上もそう思われますよな」

 

「それに近年は飛び抜けて優秀な者が多く幼年学校より輩出されていると聞く。その者達をなるべく早く引き上げることが国益に繋がるであろう」

 

「しかし、旧態然とした幕府の制度はもう国際的に通用しなくなりつつあります……」

 

「うむ……しかし、それで幕府を解体するような事があれば日本は大混乱に陥る。人の流入に制限をかけているのも、攘夷を叫ばれていた時期の反動でもあるがな……朝廷を抑えている今上陛下(明治帝)が開明的な方のお陰で幕府は維持できているが……」

 

「とにかく部分的にも政府改革を断行していかないと不味いです。薩長反乱や廃藩置県による幕府によって日本を統一し、反動で起こった反乱は鎮圧したが、それによって軍に誤った考えが浸透していたのがこの度の戦争で明らかになった」

 

「国軍が50万人しか居ない中、10万人の戦死者……徴兵の範囲拡大及び軍の近代化を急がなければ……」

 

「この度の戦争で活躍したのは殆ど若年の士官達というのもあります。彼らは精神主義に陥っていた日本軍において柔軟に作戦を立案し、地形や探索者という強兵を巧みに使い、ロシア軍を撃退したと書かれておりました」

 

「……軍の上官達にも意見を聞いておこう」

 

 大御所と将軍の2人は軍の上層部を呼び寄せて、若年士官の活躍及び、評価を聞いてみることにした。

 

 すると陸軍上層部の意見としては、彼らと話していると同じ軍の教育を受けてきたとは思えないほど先見性があり、別次元の視野をしていると話す。

 

 例として軍神扱いされている若年将校の筆頭である村上大佐は探索者を用いた戦術は銃火器の威力向上により効果が薄くなっている為、兵器の近代化を急ぐべきとレポートを提出していた。

 

 そこには各国が研究を始めている自動車や航空機を用いて高速で部隊を展開し、敵よりも早く火力を集中して各個撃破をしていくべきであること、航空機が発達すれば上陸してくる敵艦隊を早期発見及び迎撃することが可能である等、今の常識とは異なる考えを展開していた。

 

 また欧州で大規模な戦闘が起こった場合、国力と人口では他国を圧倒しているドイツ帝国であるが、イギリスの大規模な艦隊戦力により海上封鎖が続けば食糧供給が滞り、餓死者が発生……そのまま革命が起こる可能性や、北海道防衛戦争においてロシア軍と日本軍双方が塹壕を掘っていたが、より範囲が広く、迂回して突破ができないような大規模塹壕戦に発展する可能性が高いとも書かれていた。

 

「塹壕戦というのはどの様な物なのだ?」

 

「地面に穴を掘り、土塁等で壁を作った即席の陣地で、こちらが突撃をした際、ロシア軍の機関銃と鉄条網により多大な損害をこちらは出しました」

 

「その様な簡単な物で被害が増大するのか?」

 

「はい、それの解決策を見いだしたのが村上で、彼は陣地の迂回と使い魔を用いた敵陣地を高所から座標を割り出し、優位な位置から砲撃することで機関銃が置かれている場所を破壊しました」

 

「それに村上が提唱した浸透戦術と呼ばれる砲撃の後すぐに突撃を開始する攻撃は短期間の集中砲撃直後は敵軍が混乱する性質をよく理解しておりました。これに対応するには陣地を複数用意することや、最前線の陣地の人数を少数にし、浸透に対して多重防御を行う等限られた防衛戦術しか取れないことが判明しています」

 

「探索者等の肉体的に強靭な兵を用いての浸透戦術を防御するのは難しいながら、村上が提唱した航空機を用いて探索者を敵陣地に降下させて司令部を破壊する戦術や浸透戦術も自動車を装甲化させて敵陣地の奥へと浸透できれば、前線全体に大穴を開ける事ができるなど村上や若手将校達が提唱している戦術に我々老将達は追いつけなくなりつつあります」

 

「……そうか」

 

「村上や若手将校達は国の宝です。あの者達をなるべく早く階級を上げて大規模な作戦立案に携わらせるのが国防を担う上で一番手っ取り早いでしょう」

 

「反対する者も多いであろう」

 

「いえ、一番反対しそうな中間層がこの度の戦争でごっそり居なくなった為、上の席は多く空いているのです」

 

「それに彼らは戦場で実績を残しています。実績を残した者に口を出せるほど我々は実戦経験があまりに無いのです」

 

「なるほどな。そなた達の意見は分かった。そなたらが彼らを早く引き上げろ。陸軍大学校の入試に関与しても良い。若くても使えるのであれば相応の席を用意する」

 

「「「は!」」」

 

「海軍の方はどうなのだ?」

 

「陸軍同様に何名か天才と言える若者が士官学校に居るようで……残念ながら陸軍ほど海軍は実績を残せませんでしたが、相応の人材は育ちつつあります。それに賠償金によりようやく日本にも戦艦を導入できる予算が付いたので、予算内で整備できる分だけ戦艦部隊を整備したいと思います」

 

「日本は自国である程度資源を完結できるとはいえ、貿易によって成り立っている国家でもあります。海洋の貿易路の護衛及び、敵国が日本に近づいた場合上陸を阻止できるだけの海軍は整備しなければなりません。もう二度と黒船を起こさないためにも」

 

「分かっているならよい。村上が提唱していた航空機を用いた早期警戒網の構築……これは広い海で敵を探す必要がある海軍にこそ必要だろう……航空機の研究に予算を付けるから、陸海軍両方航空機を研究せよ」

 

「「は!」」

 

 

 

 

 

 

 

「村上という将の報告書を見るに国内産業を発展させていかなければならぬが……基礎技術では欧米に太刀打ちできる分野がほぼ無い……となると異界の産物に頼る必要がある……か」

 

「父上、ここは探索者を育成する幼年学校や高校の予算の増大及び低難易度の異界を解放し、若いうちから異界の魔物との戦闘に慣れさせる必要があるかと……異界で戦闘するとより上位に成長すると報告もありますし」

 

「うむ、その点に関しては家房がやれ」

 

「は!」

 

 こうして幕府も富国強兵に向けて今まで以上に動くことになるのだった。

 

 

 

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