ゲーム世界転生〜現代ダンジョン世界かつ1900年開始で生き残るには〜 作:星野林(旧ゆっくり霊沙)
私の名前は鷲巣……掲示板では飛行機ニキと呼ばれている人物だ。
前世では自家用の航空従事者技能証明書……まぁ飛行機版の免許証みたいな物を自費で取りに行って自家用機を飛ばしまわっていた生粋の航空機オタクであり、技術文献は色々読み漁っていたし、このゲームをしていたのも、自分の航空機をカスタムができるからという事で遊んでいた。
プレイヤーを強化すればG耐性も上がるので、無茶苦茶な機体設計にして米軍機に悲鳴を挙げさせるプレイが最高に気持ちよかったと記憶している。
「もっとも、今は堅実な実験機を作り出すしか無いがな」
目の前には宝田動力が開発していた自動車エンジンを航空機用に改造した物を搭載した複葉機が鎮座していた。
そのまま私が乗り込み、運転を開始する。
「一応パラシュートは身に付けているが、探索者である私がテストパイロットをしないと危ないからな」
1909年……この時まだ日本に航空機と呼べる物は存在しておらず、史実ではこの翌年の1910年に初飛行が行われ、27年で零戦開発へと繋がっていく。
航空機の進歩は兵器進歩の歴史から見ても異常な速度であり、40年後にはジェット機の時代に突入している……。
そんな黎明期から過渡期の今を生きる者として航空機に情熱を注ぐため、起業家のニキ達に協力を仰ぎ、探索者兼技師として雇ってもらい、使い魔の河童達や地母神達の力を借りて、ようやくそこそこの初の国産飛行機が完成したのである。
50馬力のエンジンにフレームはネオジュラルミン合金を使って軽量化し、翼には布を使ったりと黎明期特有のシルエットをしていた。
とにかく軽量で浮力が働く作りをしていたのである。
エンジンを点火し、プロペラを回し、ハンドルを握る。
レバーを押し込んで翼の角度を調整し、ペダルを踏み込んでプロペラの回転数を調整し、滑走路を進んで一気に飛び立つ。
「これよこれ……うむ、ちゃんと飛ぶことができた」
「ご主人、空を飛んだ気分はどうですか?」
「最高だよ」
飛行機の横を使い魔の地母神が飛んで事故が起きないように待機するが、風を受ける心地よさの方が気持ちがよい。
30分ほど飛行し、地面に着陸すると、待ち構えていた記者達から質問を色々された。
「日本での初飛行成功おめでとうございます!」
「国産機ということでしたが、日本にも海外に負けない物が造れるということでしょうか!」
「写真撮らせてください」
記者達は飛行機の写真や私の写真を撮って飛行の成功を祝福していたが、私はこれで満足はできなかった。
「もっと強力なエンジンを積み、より洗練された形に飛行機を設計し、より重い物を運べるようにしなくては!」
転生者のチャット機能を使い、宝田動力の担当者とうちの会社の社長……武田飛行機の社長と3人で脳内回線を繋ぎ、今後の飛行機開発について話し合う。
「とりあえず社長と宝田動力さんのお陰で他社に先駆けて飛行機を飛ばすことができました。ありがとうございます」
『いや、飛行機ニキが航空機の知識あっての事だし、複葉機の実験機で妥協してくれたお陰だ』
『とりあえず同型の複葉機をライバルに売りつけて、航空機開発競争を加速させるが良いな』
「ええ、それは勿論。負けるつもりは無いのでね」
『君がそういうのなら大丈夫だろう』
『宝田動力としては来年には100馬力エンジン量産の目処が立つので、出来上がり次第、武田航空機さんに売りますので』
『飛行機ニキ、100馬力あれば全金属製飛行機は作れるか?』
「ネオジュラルミン合金を使えば可能ではありますが、実用性を考えると200馬力は欲しいですね。他国の上を行くなら1915年を目安に400馬力は欲しいです」
『自動車用のエンジンなら作れなくは無いが、航空機用エンジンについては宝田動力も専門外なので、武田航空機や他の航空機メーカーの皆さんに改造してもらうことになりますが』
『それは勿論。あと自動車用エンジンは当面は液冷と空冷どちらのエンジンも技術習得のために行いますが、時期が来たら、自動車は液冷1本に絞る為、空冷航空機用エンジンの独自開発の準備は進めておいてください』
エンジンには液冷と空冷と2つの種類があり、液冷は文字通り冷却水でエンジンを冷やす機構であり、ラジエーターと呼ばれる冷却装置を取り付けたり、冷却水を貯蔵しておくタンクを必要とする。
メリットとして安定した冷却が行えるため、アイドリング状態で長時間稼働してもエンジンがオーバーヒートしなかったり、水が防音壁となって静寂性にも繋がった。
あとは水冷式の方が馬力を上げやすいというメリットがある。
一方で空冷はラジエーターや貯水タンク等のパーツが不要かつ、簡素な作りで動かすことができるので、構造が簡潔で、製造が容易であり、寒冷地だと水冷式のエンジンは冷却水が凍ってしまうのに対して、空冷は空気を取り込めればしっかり動くので上空の寒い空気を取り込める航空機と相性が良かった。
欠点は馬力が上げづらい点と空気を取り込む設計……日本のエンジンで有名な星型エンジン(星の様な形をした航空機エンジン)は空気を取り込みやすいかわりに大型化しやすく、空気抵抗が大きくなる欠点があった。
また自動車用だと冬場以外でアイドリング状態で停車すると空冷ではオーバーヒートするという欠点がある。
どちらも一長一短があるが、未来では空冷エンジンは規模を縮小……自動車産業では2000年代前半で生産が終了しており、自動車では液冷の方が利点が大きかった。
まぁ戦車だと装甲がしっかりしてないと破片が液冷のパイプを損傷しただけで行動不能になるので、故障しにくい空冷でも良いっちゃ良いのだが……。
『まぁ時期が来たらと言っても、それは将来の話で、当面は安価で作れる空冷エンジンが主力となりますので安心してください』
「こちらでもエンジンの出力を上げるチャージャーを開発したりしますが、宝田動力さんにはもう少し力をお貸しください」
『ええ、より良い航空機を作っていきましょう!』
こうして史実よりも航空機開発は転生者達の手で加速していくのであった。