ゲーム世界転生〜現代ダンジョン世界かつ1900年開始で生き残るには〜 作:星野林(旧ゆっくり霊沙)
戦車狂いニキと自動車王ニキ、そして村上様と陸軍中佐の陸軍大臣ニキの2人は陸軍大学校に進学して佐官教育を受けている最中であったが、試作自走砲と戦車が製造できたというので、確認しに愛知まで出張っていた。
愛知自動車の工場の片隅に、2両の車両が鎮座している。
「愛知自動車の協力で完成した七十式十五糎自走砲ホイ車と七十式軽戦車ケイ車だ」
「宝田動力から100馬力エンジンが作られてな、中型トラックやタンクローリー、重機の動力として量産され始めたから、余ったエンジンを搭載して作った試作車両だ」
自走砲というのは大砲を車両に載せて、素早く移動して砲撃を加える為の車両であり、戦車は水平射撃……直線的な攻撃をするのに対して、自走砲は曲射……山なりの弾道で大砲を撃ち出す事を目的とした車両である。
まぁ防御力が薄く、足の速い大砲程度に考えてくれれば良い。
それぞれの名前の由来は七十が皇暦2570年であるので後ろを取り七十式、十五センチは大砲の大きさで、転生者の企業で開発されたばかりの十五糎榴弾砲を搭載していた。
最後に略称のホイ車というのは砲の頭文字を取りホといろはにほへとの先頭であるイから取られた。
日本軍で有名な戦車や飛行機はこんな感じで名前が決まっていく。
有名な零戦は1940年が皇暦2600年と零が重なるとして零戦と名付けられたし、日本の戦車で有名なチハという某戦車道というアニメで日本軍を扱う学校が大量に突撃させていた車両も中戦車……中型の戦車の中からチを取り、ハはいろはにほへとの3番目のハから取られていた。
七十式軽戦車のケイも軽戦車のケといろはにほへとのイから取られていた。
まぁ試作品なので軍で決められた名称ではなかったが……。
「ホイ車はゲームでも中盤で開発可能になる初期型自走砲そのまんまだ。ジャパニウムと鋼を混ぜた独自の合金で車体を作り、砲はJハイテンが使われている。射程は約6キロ……歩兵支援用の重砲だな」
十五糎榴弾砲は史実ではドイツに発注して国産化した大砲であり、第二次世界大戦でも主力砲として活躍した大砲で、威力はそこそこあるのだが、運搬に難があり、史実の日本軍は扱いに苦労し続けた困った大砲でもある。
しかし、転生者が関与して国産化する際、軽量かつ従来の鋼より強靭なJハイテンという鋼を使うことで、従来2トン近くあった砲の重さを1トンまで軽量化することに成功し、砲の寿命も800発から1000発とされていたが、3000から4000発まで可能と大砲の量産が難しい日本にとって長く使えるありがたい仕様に変わっていた。
そんな砲を搭載したホイ車は全長5.5メートル、幅2.8メートルのゆとりある車体の真ん中に砲身が固定されていた。
戦車の車体に薄い鉄板で箱型に大砲をすっぽり覆った様な見た目で、大砲の射角……撃ち出せる角度は-10度から60度となっており、50度の角度で撃ち出すと最大射程になるように調整されていた。
時速は前進30キロ、後退10キロで動く事ができ、携行する砲弾数は30発、乗員は6名。
「初期型の自走砲としては完成度が高いなホイ車は」
「一応1940年代前半までは使える戦力として作ってますし、将来的には他国に輸出できればと」
「輸出前提の自走砲か」
「ええ、この性能なら20年は主力でいられるので、最初は陸軍に購入してもらって、装備更新の際はこの車両を他国に売却。その資金で新型車両の購入を検討してもらえればと」
「大戦時にも売り込めそうだな。フランス人が好きそうだ」
「この比較的高性能な自走砲で欧米が戦車開発を混乱してくれればいいのですが……陸軍で実際に使っているとなれば宣伝にもなりますし」
「ふむ……まぁ機械化部隊編成に説得力は持たせやすいか……大砲を素早く移動できるっていうのは」
「ええ、そしてケイ車は探索者にせっつかれて作った妥協の産物になります」
「ゴキブリだな」
「ええ、軽戦車というより豆戦車ですね」
大きさは軽トラックより少し大きいくらいで、運転席の隣に銃座があり、M2ブローニングをコピーした六九式重機関銃を搭載し、荷物や採取した物を乗っけることができる荷台が取り付けられた戦車もどきである。
装甲は薄いながら、弓を放ってくるリスアーチャーや普通の鬼の棍棒による攻撃を耐える防御力と、レベル100以下のモンスターは問答無用でひき肉にできる火力を有していた。
値段も戦車としてはべらぼうに安く、100円(現代換算で100万)で購入できる代物となっていた。
銃でモンスターを倒しても経験値は入るので、初心者探索者を戦車の力で鬼をひき肉にしてレベリングができたりもする。
「戦車と呼んで良いかちょっと考えもんだけどな」
「いやいや、探索者が欲している戦車はこういうのだろうな。速度は?」
「前進50キロ、後退30キロ。力が強い探索者なら軽いからひっくり返っても自力で起き上がらせられるだろうな」
「軍でこれを購入してもいいけど……」
「悪いが発展性は皆無だぞ。エンジンや色々な技術が発展できればもっと良いものができるから、探索者達に売り込む製造ラインしか作ってないし」
「いやいや……移動銃座というのは普通に価値がある。荷台部分に補給物資や人員を積載できれば長く活躍できるだろう。追加で側面に鉄板を付ける必要があるが」
ケイ車も軍としては普通に購入しても良いと考えているらしい。
「探索者達に公開してどれくらい購入するか試してからになるな」
「ホイ車は大量生産してもいいだろう。需要は確実にある。ちなみに値段は?」
「ホイ車は500円だな」
「大砲としても十分安いな。自走砲だと格安だ。100両単位で発注すると思うから頼むわ」
「わかりました。愛知自動車の全力で生産を開始します」
自動車王ニキと陸軍が自走砲や戦車の導入についてあれこれ言っている間にとある場所では新しい工場が建築されていた。
「こんな田舎に大きな工場が作られただね」
「はぇ……何が作られるんだべ」
「知らねぇのか? スライムを加工して色々な素材を作る工場だと」
「あのぷにぷにした魔物だべ? オラたちでも倒せる?」
「んだ。それでゴムや糸、木よりも軽くて鉄並みに強度がある透明な素材なんかが作れるらしいだよ」
「はぇ……すげぇな」
実際は合成ゴム、合成繊維、プラスチックの他に染料や窒素肥料とは別の有機肥料なども作られる工場である。
勿論スライムが多く湧くダンジョンの隣に併設されていた。
「オラの息子もあの工場で働くだよ」
「うちの娘も働かせてくれるらしいだ」
「村が豊かになるんだったら何でもええ」
この様にダンジョンを活用した工場が転生者の手により各地に建設されていくのであった。