ゲーム世界転生〜現代ダンジョン世界かつ1900年開始で生き残るには〜 作:星野林(旧ゆっくり霊沙)
「チャーチル閣下、頼まれていた日本国に関するレポートでございます」
「うむ、確認しよう」
1910年……35歳という若年ながら、本人の備えたカリスマにより大臣の1人として活動していたウィンストン・チャーチルは戦争をこよなく愛する戦争狂とも呼ばれるほど闘争心溢れる人物であり、庶民から人気のある人物でもあった。
史実でも第一次世界大戦には海軍大臣、第二次世界大戦ではイギリス首相として2度の大戦に指導者として大きく関わる不屈の男はロシアと日本の戦争について私的に研究を続けていた。
他国ではロシアの敗戦が日本の特殊部隊に皇帝一家が捕まり、脅されて講和を結んだと見られていたが、イギリス諜報部は更に踏み込み、北海道で行われていた戦争自体ロシア不利の状態が続いていたとレポートが上がっていた。
「日本にはファンタジーに出てくるダンジョンと呼ばれる特殊な環境があると諜報部が掴んでいたが、どの様な資源があるか等は確認できているのか?」
「諜報部では有力な金銀の鉱脈を有しているとしか……日本の商品でイギリスが欲する品は生糸と茶葉、そして金銀以外は特に無いので……イギリスからの工業製品もよく買ってくれますし、ロシアとの戦争に勝った日本に喜ぶ国民も多いので」
「うむ、国民感情は無視できないからな」
イギリスは19世紀のライバルはフランスとロシアであった。
フランスは19世紀前半のナポレオンの大陸封鎖という経済政策により苦しめられたし、幾度と海戦をしていた。
ロシアはナポレオン没後に世界帝国となったイギリスと世界最大の国土を有するロシアで世界覇権をかけたグレート・ゲーム……世界を舞台とした各国をチェスの駒に例えた覇権争いで熾烈な戦いを繰り広げた国家である。
今はドイツの急成長と植民地獲得の野心あふれているかの国との緊張が高まっていた為フランスとロシアと連携しているが、国民の中にはロシアとフランスと手を組むのに否定的な人物も多く居た。
「ただの盤面だと思っていた日本という国が清国とは違い、駒として使える事が分かっただけでも収穫か。かの国は領土的な野心は特に無いのか?」
「ええ、ロシアに勝っても常識的な賠償金と安全保障上必要だった樺太島の確保だけに留め、大陸への進出は特に狙っていないようです」
「ふむ……ロシアは日本によってアジアを出るためには清国を更に南下する必要が出てきたが、清国南部はイギリスとフランスが抑えている……ロシアも朝鮮半島という不凍港を手に入れたから、これ以上の膨張は止まるだろうとなると次はバルカン半島に視線が移るな」
「バルカン半島は様々な人種が坩堝の如く存在していますから紛争が絶えませんからな。何か衝撃が加われば大爆発を起こすでしょう」
「ロシアのヨーロッパ方面での膨張は止めなければならないが、ドイツの暴走はそれ以上に警戒する必要がある」
「建艦競争ですか」
「そうだ」
イギリスとドイツは建艦競争という海軍軍拡を続けていた。
ドイツはイギリスを圧倒する海軍を手に入れることで海上優位を獲得し、植民地の獲得競争を優位に立とうとしたのだが、イギリスはこれを挑戦と受け取り、真っ向から王者の立場として立ちはだかったのである。
これに反応した諸国もなし崩し的に建艦競争に参加することになったのだが、イギリスが開発した弩級戦艦……既存の戦艦とは性能を隔絶させた強力な戦艦を建造したことで1906年に全ての戦艦が旧式認定されることになってしまった事件……戦艦の名前がドレッドノート級という名前だったことでドレッドノートショックとも言われた。
これにより戦力が一旦リセットされてしまったので、建艦競争はヒートアップ。
イギリスはドレッドノート級を最初に開発した優位で1910年までに14隻の弩級戦艦(ドレッドノート以上の戦艦を弩級と表する)を建造したが、ドイツは1908年から年4隻ペースで弩級戦艦の建造を開始していた。
まぁイギリスは関係がよい国や中南米の国向けの戦艦も作っていたので、自国に全力というわけではなかったが、それでも大量の戦艦を作り続けていた。
一応日本はロシアに勝ったことにより駒としてイギリスが見てくれたので、列強入り……とはならなかったが、中南米の国並みには戦力があると見なされ、戦艦を持つことを許されたので、イギリスから巡洋戦艦を購入することに繋がった。
巡洋戦艦は通常の戦艦よりも防御力が劣る代りに高速で移動することができる戦艦を意味し、大きさも普通の戦艦よりは劣っていた。
戦艦>巡洋戦艦>重巡洋艦>軽巡洋艦みたいな感じで大きさや攻撃力が分かれている。
なお日本はJハイテンという安価で高性能かつ軽い特殊鋼を使うことで超弩級巡洋戦艦と呼ぶべき何かを追加で5隻、4年かけて建造していくことになる。
なおドイツとイギリスは4年で戦艦を15隻近く新造するため、国力が違いすぎた。
ちなみにアメリカはモンロー主義というアメリカはアメリカ大陸で、ヨーロッパ諸国はヨーロッパでと棲み分けを行っていたので、イギリスとドイツの建艦競争にはあまり参加しなかったのだが、アメリカはフィリピンに利権を持っていたので、日本海軍が力を持つとフィリピン防衛に影響が出るとして日本が戦艦を自国建造し始めた1913年から戦艦を馬鹿みたいに作り始めることになる。
閑話休題
「ドイツが諦めてくれれば良いのだが、辞める気配がない以上、防衛のためにこちらも造り続けるしかないのだがな」
「難しいでしょうな……それと日本についてもう一つ」
「なんだ?」
「ロシアに勝ったは良いものの、国際的に孤立している事を痛感したかの国はフランスやイギリスへ接近することを決めた様です。かの国も島国な為、海軍整備を援助してやれば極東のドイツアジア艦隊への牽制になるやもしれません」
「つまり日本にも戦艦を売り込むと」
「はい、できれば1隻を割高で売ってしまい、後は自国で建造できれば良いかと」
「ふむ……考える余地は十分にあるな……良い献策をしてくれた。下がっていいぞ」
「は!」
チャーチルは部下を下がらせると、太い葉巻に火を付ける。
「ヨーロッパで戦争が起こった際、どこまで戦争が拡大するか見当がつかん。局地戦でガス抜きができれば良いが、全面戦争になる可能性についても研究しなければならんな」
チャーチルの予見は数年後に的中することとなる。