ゲーム世界転生〜現代ダンジョン世界かつ1900年開始で生き残るには〜 作:星野林(旧ゆっくり霊沙)
「特別教員免許?」
1910年のある日、教員になるために大学に通っていた転生者の1人が大学の職員から特別教員免許という制度を利用してはと提案を受けていた。
「はい、吉田さんは学校での成績も優秀ですし、探索者を育てる教育カリキュラム作成でも優秀。そして探索者としても江戸最難関と呼ばれる神宮異界を単身で30階層突破できる実力者です。その実力を見込んで特別教員になられてはと提案する次第で」
特別教員は言わば私立学校で元スポーツ選手を外部コーチとして雇うのと同じで、探索者を育てる学校と契約し、臨時教師として働く制度である。
学校教育が始まる前に寺小屋で働いていた師匠の方々に教員試験を再度受けさせるのは実用的では無いとし、この特別教員に任命することで、初期の学校教育の教師不足を穴埋めした役割があった。
今は形骸化した制度であるが、優秀な探索者に特別教員に任命し、後進の教育に当たらせる……というのが普通に行われていた。
「普通に教員免許取るまで大学で勉強しちゃまずいですかね?」
「吉田さんほど優秀な方を遊ばせておくほど日本は余裕が無いのです。なので大学としても特別教員をしている間も単位は出すのでどうか付属の高校の面倒を見てはくれませんか」
「給料でるんですよね?」
「それは勿論」
「……仕方がない。受けますよ。付属というと複数校ありますが、どこですか?」
「諏訪に行ってほしいのです」
「諏訪! 長野県の?」
「はい……」
「わかりましたよ。単位頼みますよ」
太平大学付属諏訪高校……そこは探索者を育てる学科もある高校であった。
普通科、特進科、探索科と学科が分かれており、どちらかと言うとスポーツ特待生に近い学科である。
なので腕っぷしでなんとかなると思っている脳筋だったり、幼少期からダンジョンに潜ってレベリングをしていた野生児等、入学時に実施される体力テストを合格した生徒が在籍していた。
「えー、本日から探索科の副教官をやってくれる吉田先生です」
「吉田です。1年かけて皆さんを使える人材に育てるつもりなので、覚悟してください」
そう言う、何人かの生徒はダルそうにしながら話を真面目に聞いていなかったり、髪の毛をいじっていたり……。
「先生、俺達馬鹿だけどよぉ、探索者は腕っぷしがあればなんとかなるんだろ? 魔物を倒せば強くなれるし!」
「そうだよ先生、だから勉強とかどーでもいいし、異界に潜るための休憩として授業受けてるの……だから真面目に勉強教えても無駄だよー」
(うわ、学級崩壊してるじゃねぇか……舐められているなぁ……)
「お前らに良いこと教えておくぞ……そんな人材探索者に要らねぇから」
担任の先生がアワアワしているが、俺は断言しておく。
「良いか、探索者は有事の際には軍属になる取り決めがされている。それに優秀な探索者は企業の支援を受けれることもあるが、馬鹿や社会常識がねぇ奴は上に上がることができねぇのよ」
「特別教員に成り下がった先生に言われたくないんですけど」
「どうせ先生も高校からの繰り上がり組だろ?」
「勘違いしてるな……俺幼年学校卒業者だぞ」
幼年学校卒業と言うと学生たちの目の色が変わる。
幼年学校卒業者は超エリートであり、現実なら慶應義塾幼年舎(慶應義塾所属の小学校……大企業の社長のご子息か大病院の医者の子、政治家や芸能人の子供しか入学が許されない)に匹敵する超エリートって言う印象がある。
更に近年だと奇跡の5年間と呼ばれる例年の幼年学校の成績を圧倒する生徒が多数在籍していたり、軍神扱いされている最年少大佐の村上様を筆頭に日露戦争で大活躍だった軍人や探索者を輩出した超人集団……という扱いであった。
「先生もそうなの?」
「あー、これで良いか」
俺は胸元のポケットから箱を取り出し、開いて見せると、勲章が仕舞われていた。
「金鵄勲章! しかも兵の中では最高位である功五級!」
横に居た先生が解説してくれる。
軍属として活躍すると与えられる勲章であり、功5級
担任の先生が驚愕しているのを見て、生徒たちもざわつき始める。
普通の先生では無いと格付けが出来たっぽいな。
勲章の入った箱を胸ポケットに仕舞い、質疑応答に答えながら授業を始めていくのであった。
(転生者としてチートを使って学生教育進めていくか)
「吉田先生、教室に何置いてるんですか?」
「ん、あぁ、授業の集中力を上げる一環として軽食をな」
「軽食?」
「そそ」
転生者の仲間で農村に住んでいる奴が住民を育てるために育成の種を栽培していたので、それを大量に購入してきた。
生徒達には専用のコップを用意し、教室の後ろに栓を捻ると種が出てくる装置を作った。
「お前ら成長期だからお腹が空くだろ。だから休み時間か俺の担当する授業ではここから種をとって食べながら授業受けていいから」
「それ授業態度悪くないっすか?」
「物事を集中する時に歯に力が入るんだ。それに空腹だと集中できないから小腹を満たす程度に食って集中力を発揮してくれ」
「へぇ……吉田先生って生徒の事も考えてくれるんだ」
「ちょっと怖い威圧的な先生かと思った……」
そう言われると心に来るものがあるが、授業をしてみたところ、高校にちゃんと入学しているので勉強が苦手な人は居るが、ある程度基礎は出来ているように思える。
それに俺の能力であれば各生徒に合わせた授業を進めることも可能であり、放課後には各自チームを組んで学校指定のダンジョンに潜ったりしているため、随伴してアドバイスを送ったりするようになった。
そんな生活を2ヶ月ほどしていると、成長の種の効果で能力が上がり始める。
レベルアップにより各種ステータスが上がっていたが、ムラがあったため、そこを補う形でステータスが加算されていく。
知性の能力が上がればその分だけ学習能力も上がるし、俺が教育者として手腕を発揮できれば、その分だけ生徒達の教育ステータスも上がっていく。
「吉田先生の授業って凄いわかりやすいよな」
「小テスト全員問題が違うんだって」
「吉田先生社会科の先生なのに数学や国語、理科も凄いわかりやすい!」
生徒からの評判も上々で、授業だけでなく、探索者を育てる者としても生徒から頼りにされるようになっていくのであった。