ゲーム世界転生〜現代ダンジョン世界かつ1900年開始で生き残るには〜 作:星野林(旧ゆっくり霊沙)
私……外国人部隊ニキこと大木戸は絶賛塹壕の中で奮闘しております。
「これでよしっと……止血したが立てるか」
「お、おお! 立てるし、あんまり痛くない。オオキドの手当てのお陰だ!」
「そりゃ良かった」
ドイツ軍はベルギー国境を越えてフランス領内に侵入し、一時はパリの陥落も時間の問題かと思ったが、フランスのマルヌ川にて決戦が起こり、フランス軍が限界まで抵抗したため、ドイツ軍の損害許容範囲を超えてしまい、ドイツ軍のクルック将軍が反転した隙を突き、フランス軍が反撃したことで戦線は膠着。
その後両軍は塹壕を掘るに至り、重機を投入できないので、スコップ片手に塹壕を掘り続けていた。
北は北海、南はスイス国境までとんでもなく長い塹壕が掘られ、連日とんでもない量の砲弾が塹壕に降り注いていだ。
「今日もドイツの野郎が砲撃をしているな……となると砲撃が止んだら突撃かね?」
「そうだなジャック……というか補充兵はどこいった?」
「あそこ」
戦友のジャックが指差すと補充兵だった若い兄ちゃんは砲弾の破片が直撃したのか、顔面がザクロみたいになっていた。
「またかよ……これで5人目だぞ……砲撃が始まったら避難所に行かねぇと死ぬのによ」
「オオキドの聴力が凄すぎるだけだよ。よく敵も味方も砲撃バンバンしているのに敵の砲撃音を認識できるな。お陰で着弾前に逃げられるが」
「まぁこの戦争生き残っていたら聞き分けられるようになるよジャックも」
「……砲撃が止んだか?」
「いや、まだ出るな。偽装だ。避難所から出た奴を狙っている」
「おお、おっかね」
「飯食っておくぞ」
背嚢(リュックサック)から取り出したのは缶詰。
銃剣を使って缶詰を空けていく。
「ビスケットとコンビーフ、ピクルスか……どれどれ」
私はビスケットの上にコンビーフとピクルスを載せて、更にビスケットで挟んでハンバーガーに見立てて食べる。
うん、しょっぺぇ。
「俺もやろっと」
「ジャック思ったよりもしょっぱいから気をつけろ」
「まぁ塩っぱくて死ぬことはないだろう」
飯を食べていると、上官が巡回に来た。
「よくこんな環境で食えるな」
「私もジャックもそろそろ塹壕には慣れてきましたので、上官殿は大丈夫ですか? やつれているようですが」
「最近寝れなくてな。ドイツの野郎が夜間にも砲撃しまくるせいでな」
「というかドイツはよく砲弾が尽きないな。イギリスが海上封鎖して弾薬の調達も難しくなるって話じゃなかったのか?」
「確かに、ドイツの砲弾が尽きる気配がねぇな」
「上官殿、ジャックもドイツは空気から火薬を作る方法を生み出しているので尽きませんよ」
「なんだそりゃおとぎ話か?」
「いや、空気を圧縮して触媒に電気を流し、窒素を固定化すると化学反応で窒素を取り出せるんですが、その時の副産物で硝石も生み出せるんですよ。戦前に大規模な工場が出来たってニュースで知ってたんで、ドイツの砲弾は尽きないって思った方がいいですよ」
「マジかよ」
「今年のクリスマスに戦争が終わりそうはなさそうだな……」
すると砲弾が飛び交う中、伝令が走ってきた。
「で、伝令。敵砲撃が止まり次第、突撃してきた敵兵を殲滅後前進されたし……」
「チッ……了解した」
上官殿は同じ命令が繰り返されることに辟易としていた。
完全に命の消耗戦に移行していたからである。
「砲撃が止んだか」
「持ち場に戻れ! フリッツ(ドイツ軍の蔑称)が来るぞ」
私は直ぐに避難させていた機関銃を担いで、設置すると、突撃してきたドイツ軍に機関銃弾が降り注ぐ。
突撃してきたドイツ軍は、砲撃しまくって機関銃は潰したと思っていたのに、大量の銃弾に晒されて、次々に戦死していってしまう。
「ジャック、射手代われるか? 弾丸が心もとなくなってきた。ちょっと取ってくる」
「取ってくるって後方にか?」
「いや、この機関銃はドイツ軍の鹵獲品だ。目の前の陣地からかっぱらってくる」
「あ、ちょっと! 待て!」
ジャックの静止を聞かずに、俺は塹壕から飛び出して、フランス軍塹壕とドイツ軍塹壕の間にある空白地帯を走り抜ける。
勿論銃弾が俺を襲うが、近くに転がっている死体で弾除けをしたり、撃たれたフリをしてほふく前進に切り替えて、塹壕の中に入ると、愛刀でドイツ軍に白兵戦を仕掛ける。
「流石ドイツの塹壕は立派だね」
フランス軍の塹壕とそもそも作りが違う。
コンクリートで足場を固めて、所々にはトーチカの様な将校用の休憩室みたいなのが、巧妙に隠されている。
土嚢と木材で作ったフランス軍塹壕がちゃっちく見えて仕方がない。
「まぁ死んでしまえば一緒だけどね」
銃弾を刀で切り裂き、敵兵を一刀両断。
近くで転がっていた機関銃のパーツと弾薬を持てるだけ持つと、フランス軍塹壕へとんぼ返り。
「ふぅ、帰ったぞ」
「オオキド無事か! さっきジャック曹長が戦死した」
「あら、ジャック死んだんか……ジャックの持ち場代わります」
「お前その弾薬類は……」
「ああ、ドイツ軍からかっぱらってきました。将校っぽいおっちゃんも切り捨てたんで、戦果になりますかね?」
私は切り捨てた将校が着ていた服を上官殿に渡す。
「確かにこれはドイツの士官服……直ぐに軍功に加算しよう」
「ありがとうございます」
そんな訳分からないことを続けていたせいか、私にはどんどん軍功が溜まっていき、遂には将校でないと付与されないレジオンドヌール勲章のオフィシエ階級(4等級)を授与された。
それに伴って国家存亡の危機ながら2週間実家に帰る猶予が与えられ、嫁のルイーズとヤりまくったりしてから戦場へと戻り、今度はヴェルダン要塞というフランスの精神的支柱とされる巨大要塞へ配属されることとなった。
ここは前線ではあるもののドイツ軍が襲うには相応の攻勢が必要なので、放置されており、比較的平和な場所であった。
ただこの要塞もある日を境に激戦区となることを私は知らなかった。