ゲーム世界転生〜現代ダンジョン世界かつ1900年開始で生き残るには〜 作:星野林(旧ゆっくり霊沙)
ぐつぐつと煮込まれているすき焼きを前にしながら、とある転生者達が集まり、会合を開いていた。
その者達は普段は閣僚ニキと呼ばれる転生者達の中でも政治ができる人物達であった。
今世でも転生者としての能力と日露戦争で実際戦争を経験した戦場帰りとして出世を続けていた。
「それでは皆様忙しい中集まっていただき感謝します」
「いやいや……中々こうして面と向かって集まれる機会に恵まれませんでしたからな」
「私なんか海軍所属なので鎮守府に居なければ船の上ですからね」
「海軍大臣は確か金剛の航海士でしたか」
「ええ、若輩ながら航海長として勤務しているのですが、金剛は欧州大戦では留守番でしたのでね……比叡と榛名の活躍は耳にしておりますよ」
そんな事を話しながらすき焼きをつつき、食事を楽しみながら、話し始める。
「さて、自己紹介もほどほどに、まず我々輪廻会の初会合を有意義なものとしよう。一先ず経済について聞こうか。経済産業大臣から」
「はい、じゃあ首相に指名されたので私から。幕府の予算については大奥が切離されたり、行政の効率化によって縮小傾向が続いています」
「ただし鉄道奉行や郵便奉行など各省庁に値する物が奉行と一纏まりとなってしまっているため、完全に近代諸制度を実行できる政治体制かと言われると微妙と言わざる得ません」
「それを踏まえての経済ですが、輸出向け商品の整備を日露戦争後転生者達が行っていたので好調です。四大財閥の皆さんも資本力を活かして輸出攻勢を仕掛けてボロ儲けしています。一方でゲームでは成金として出てくる企業は転生者たちによって作られた高性能の品々に品質で負けてあまり売れてないようですがね」
「成金の企業は一部除いて景気悪化で勝手に潰れる程度の体力しか無いからな。各財閥との接触は進んでいるのか?」
「転生者の一部が内部に潜り込んだり、専属契約を結んで専属探索者として働いてますがね。そうそう西澤財閥の重工業部門長に転生者が抜擢されたとか。何でも高校時代に令嬢を射止め、一門入りしたと」
ただ経済産業大臣だけでなく大蔵大臣からも
「私が聞いた話では四宮、中川、骨川にも転生者のうち何名か中枢と関わりを持っていると聞いているのでね。元々金を持つ者を利用した方が金になりますからね」
「ならその転生者達には頑張ってもらわなければ……」
経済産業大臣曰く、国力という面では、テコ入れをしなかったゲームの場合を20とすると、既に50はあると伝えられた。
転生者達によるダンジョン資源と技術の有効活用で、徐々に成果が出始めていると言われた。
特に史実やゲームでも弱かった自動車産業が活性化しているのは良い点と言えよう。
「次は農林水産大臣に聞こうか」
「はい、ダンジョンで栽培される成長の種、こちらの有効性を記載した論文が転生者の手により発表され、栽培が本格的に始まりました。更に農作物を栽培可能な特定のダンジョンで栽培された作物が一定確率で変異しているため、それを使うと品種改良の時間を大幅に短縮することに成功しました」
「肥料は必要なものの、マナタイト発電と窒素肥料工場の稼働によって十分な量の食料を供給できる体制が整いつつあります。米に至っては自給率150%となっており、韓国や戦国時代を迎えつつある中華の国々に輸出を行なっています。他作物や家畜類もダンジョンを用いた品種改良により10年後を目処に食料自給率100%を超える様に目指していきます」
「その為にはさらなる農業や漁業、畜産業の機械化を推し進める必要もございます」
農業に関しては順調に伸びていた。
畜産業に関してもダンジョンの類似するモンスターと動物の交配により品種改良が進められており、家畜化が行われていた。
人口も現在5300万人であるが、食料の供給能力は農村の機械化と集約的農業の実践でここ数年で飛躍的に進歩が続いていた。
ここに農業可能なダンジョンの管理ができる人材が更に増えれば農業の生産性は爆増する。
ダンジョンで行う農業の利点はダンジョンの一部と認識されると刈り取っても翌日には収穫可能になる点であり、定着するのに時間がかかるものの、一部にしてしまえば、ほぼ永続的に収穫ができるようになる。
ただそれを食べたり利用するモンスターが湧く様になることもあるので、管理できる人材の育成が必須。
そこらの探索者よりレベルが求められたりもするのである。
ただ成功した農家は飢え知らずであり、大金持ちになったという伝承も存在する。
骨川財閥はそんな農業型ダンジョンを幾つも有しているため、穀物の供給能力がべらぼうに高かったりする。
あと滞っているのは漁業であり、転生者が潜水艦を発見するためのソナーを開発する技術を転用して高性能な魚群探知機を開発していたり、スライムを用いた特殊プラスチックで格安かつ丈夫な漁船を作り、それを漁師にばらまいていた。
「冷凍、冷蔵技術の進歩で、より鮮度を保った状態で魚を届けることができるでしょう。まぁその技術進歩の為にはまだまだ必要技術が足りてませんが……」
「ふむ……外務大臣、外交の方はどうかな?」
「はい、ドイツ盟主の同盟国側とイギリス盟主の連合国側で大戦争が勃発しておりますが、一応日本は連合国側として参戦しております。ドイツ領の山東省と青島の攻略を史実の日本は行いましたが、この世界では既にイギリスとロシアが連合で攻略してしまったので、日本は台湾と南洋諸島の一部占領に留めているようです。もしかしたらおこぼれで台湾が貰えるかもしれませんがその程度でしょう」
「おお、台湾貰えるかもしれないんだ」
「ゲームだと半々の確率で貰える事もありますが、国内開発が遅れるデメリットもありますので一長一短かと。まぁ貰えたらラッキー程度でしょう」
「戦争の状況は?」
「ゲーム通りに進んでいます。ドイツの初期攻勢は失敗、一方でロシア戦線はドイツの勝利でロシア軍が後退、第2戦線であるオスマン帝国ではイギリスが上陸作戦を行ったものの、失敗。全体的に膠着しつつあります。日本にとっては商品が売れるのでよい期間ではありますが」
「うむ……」
すき焼きに追加の肉を入れながら、会合は進んでいく。
結局は少しでも今の地位を高めること、そしてクーデターを行うとしても首脳部とより接触しなければならないなど話を詰めていくのであった。