ゲーム世界転生〜現代ダンジョン世界かつ1900年開始で生き残るには〜 作:星野林(旧ゆっくり霊沙)
城塞都市ヴェルダン……ムース川沿岸にあり、フランス北東部に存在する都市であり、かつてローマ人によりゲルマン人の侵攻を防ぐために作られた歴史ある町であり、フランク王国、フランス王国、帝政フランスそして現在のフランス共和国においても随時要塞の機能が拡張されたフランス随一の巨大要塞である。
あるフランス人は言う。
ヴェルダンはフランスの象徴であると。
ヴェルダンが陥落する時がフランス敗北の時であり、その絶対的な防御陣地はフランス軍も並々ならぬ誇りを持っていた。
そんなヴェルダンにドイツ軍は目をつけた。
初期攻勢でパリ攻略に失敗し、パリ手前150キロ地点で戦線は停滞。
塹壕による防御を固めたフランス軍陣地を短期間に突破することは不可能と考えたドイツ軍参謀本部は戦略を変更。
戦略名を出血戦略と命名する。
要は相手により多くの犠牲者を出すことで、国家的出血死を目指すという狂気の作戦であり、ヴェルダンはフランス軍の象徴故に後退は許されない為、出血を強いるとするならばここであるとドイツ軍がフランスの急所を見抜いたが故の作戦であった。
更にドイツ軍の士気を高めたのはこのヴェルダン攻勢の現場指揮を執るのが皇太子殿下であった点である。
欧州大戦が始まる前まではドイツの皇太子殿下はあくまで飾りであるとされていたのだが、大戦が始まると軍事的才能を発揮し、フランス軍のドイツ逆侵攻作戦であるプラン17という攻勢を防衛し、ドイツ国内に侵入を許さず、見事に開花。
更に兵達からも生きていれば敵前逃亡以外は勲章を貰えるからと人気も高く、士気も旺盛であった。
そんなドイツ軍はヴェルダン攻勢に向けて11個の師団(1師団約2万人)を用意し、更に大量の大砲を用意した。
一方でフランス軍は既に徴兵人口を無理してひり出しており、ドイツのヴェルダン攻勢を察知しても6個師団を防衛に付けるのがやっとであった。
1916年2月21日……欧州大戦西部戦線史上一番の激戦とされるヴェルダン攻防戦が始まるのであった。
その日は砲弾の雨というべき天候であった。
朝からドイツ軍の数千門の大砲がヴェルダン全体に振り注ぎ、要塞の機能を低下させていく。
ヴェルダンの第一防衛ラインに居た外国人部隊ニキ事オオキドは相棒となったオッチキス重機関銃を自在に操り、更に目を保護するため鉄仮面を付けた金曜日のジェイソンの様な格好で砲弾の雨を耐えていた。
ドイツ軍の正確無比な砲撃により、破片が要塞内に散乱し、頑強であるはずのコンクリート製の天井はドイツ軍の重砲による砲撃で崩落し、昨日まで喋っていた仲間を床の染みへと変化させた。
瓦礫の中、生き残った俺は奇跡的に壊れていなかった通信機で司令部に連絡を取り、部隊が自分を残して壊滅したこと、援軍が到着するまで戦線を維持することを約束し、連絡を切る。
「さて、英雄になろうか」
午後4時、数万発という砲弾の雨がピタッと降り止むと、ドイツ軍の突撃が始まった。
砲撃中にかき集めた機関銃の弾の入った箱を体に巻き付け、突撃してきたドイツ軍を銃弾で蜂の巣にしていく。
「この地区は集中砲撃で壊滅したはずじゃ! うわ!」
「フランス軍の生き残りがいやがる!」
「怯むな突撃をしろ!」
ドイツ軍は俺の機関銃による射撃をものともせずに突撃を続け、目視できる距離まで近づくと、俺が15キロ近くある機関銃を抱え、鉄仮面を被っている様子を見て動きが止まる。
「化け物!」
動きが止まった者から銃弾が命中していき、床に倒れ込むが、訓練されたドイツ軍は建物の陰に隠れ、手榴弾を投げ込んで攻撃してくる。
ドン
俺の足元で破裂した手榴弾により、服が裂けて肉体が露出するが、傷を負ってない俺を見てドイツ軍は流石に躊躇し始める。
ガシャン
機関銃が床に落ちる音がしてドイツ兵が物陰からこちらを覗くと、目の前に俺が迫っていた。
「ひい!」
悲鳴を上げたドイツ兵を銃剣で顔面を突き刺して、銃を奪うと、近くのドイツ兵の体に鉛玉をプレゼント。
穴だらけで血を吹きながら倒れるドイツ兵。
しかし、次々に突撃してくる為、銃を撃ち切ったら、別のドイツ兵から銃を奪い、次々にドイツ兵を葬っていく。
突撃開始から約3時間。
俺は300人近くのドイツ兵を屠り、ドイツの無線機を用いて連絡をする。
『ここのドイツ兵は皆死に絶えた。追加オーダーはまだか』
結局俺は最前線で5日に渡りドイツ兵を殺し続け、他の区画が陥落する中、抵抗を続けた。
自軍の通信機を復旧させて、まだ自分の区画で抵抗が続けられていると報告すると、直ちに援軍が送られ、援軍の将兵が見たのは1000名を超えるドイツ兵の亡骸の上でタバコを吸う上裸のオレであった。
「フランス外国人部隊第一外人連隊所属、ヴェルダン第二要塞C区画防衛担当オオキド曹長であります!」
「君がここの区画を防衛していたのか!」
「はい、友軍壊滅につき、独自判断で防衛戦闘を継続していた次第」
「……分かった。一時的に本隊に編入されたし」
「は!」
その後も俺は損耗率300%(部隊が丸々3回人員が入れ替わった)のヴェルダン攻防戦を戦い抜き、戦時昇進を繰り返して下士官で最高階級の准尉まで登り詰める事になる。
公式記録でもヴェルダン攻防戦中敵兵を1635名殺害し、ドイツ軍の攻勢を3日遅らせたとして後々表彰され、戦後には救国の英雄の1人として東洋人ながら映画化されたりとスター扱いされることになる。
ヴェルダン攻勢によりフランス軍は北部地域で攻勢のために準備されていた予備兵力全てをヴェルダンに投入することを決定。
ここでドイツ軍が当初の予定通りフランス軍の出血を果たす目標は達成し、後はどれだけ出血させられるかの戦いへと移行する。
フランス軍は予備兵力投入だけではヴェルダンを防衛することは不可能とし、防衛指揮を執っていたフランス将軍の手腕を疑問視した上層部はヴェルダンの要塞司令官を更迭し、現状のフランス陸軍の中で卓越した指揮官と評価されていたフィリップ・ペタン中将が抜擢された。
このペタン将軍は大戦勃発前までの階級は大佐、しかも年齢も予備役にはいる直前の58歳と高齢で、大戦が起こらなければ60歳で引退が視野に入れられていた人物であったが、ドイツの初期攻勢を自身指揮下の連隊で防衛に成功すると、卓越した指揮で損害を最小限に抑える事に成功。
その手腕が上層部の目に留まり、約3ヶ月で中将まで昇進。
指揮部隊も連隊から旅団長、師団長、軍団長、そして第2軍司令官を得て中央軍総司令官へと昇進していった。
本来なら降格人事であるが、ヴェルダンを防衛できるのは防御戦の天才であるペタン将軍しか居ないと上層部は判断し、ヴェルダン防御戦の総指揮を執ることとなる。
その効果は劇的であり、5月の人事交代以降、フランス軍の死者数は目に見えて減り、逆にドイツ軍の死者数の方が増える自体が発生。
更にペタン将軍は国中のトラックを集めて輸送路を確保する光の道作戦を成功させ、補給状況を改善。
8月からは攻守が逆転し、フランス軍の逆襲が始まると、ドイツ軍はロシア軍、イギリス軍による多発的反攻作戦に忙殺され、12月にはヴェルダン攻勢で奪われた地点を全て奪還したことでヴェルダン攻防戦は終結。
フランス軍は50万人、ドイツ軍は40万人の死傷者を出す凄まじい激戦であり、防衛に成功したフランス軍もこの損害により一時革命騒ぎが発生することになるのであった。
一方でドイツ軍はヴェルダン攻勢失敗により再び参謀総長が交換され、後々大統領となる東部戦線の英雄ヒンデンブルクが参謀総長になるが、参謀次長であるルーデンドルフという将軍がドイツという国家のあらゆる権限を集中し、ドイツ皇帝ですら意見できないルーデンドルフ独裁という国家体制を作り上げる事になるのであった。
ドイツは更に国家体制を強固にし、狂気に満ちた戦争を継続していくことになる。