ゲーム世界転生〜現代ダンジョン世界かつ1900年開始で生き残るには〜 作:星野林(旧ゆっくり霊沙)
「へぇ、江戸を東京って名前にするんか」
「そうみたいですね。はいご飯」
「ありがとうアナスタシア」
軽井沢のリゾート地の中にある屋敷で寛いでいるのは、ロシア皇族ニキと呼ばれる藤原という男とロシア皇族のアナスタシア皇女その人であった。
ロシア皇族の彼女達は父親のニコライ2世が退位し、皇帝の座が空白のまま消滅し、更に革命の余波で共和国化したことで身分としては元皇族という立場になり、更に僻地で軟禁される生活を送っていたが、監視員と転生者達が徐々に入れ替わり、救出に成功し、親密になっていた皇女4人それぞれは、転生者達と日本で生活することに決めて、日本に亡命する選択肢をしていた。
父親であるニコライ2世はイギリスへ亡命し、離れ離れになってしまったが、皇女達は日本人が何故超人であるかというのをダンジョンに自らも潜ることで体感していたのである。
好奇心が強いアナスタシア皇女は旦那である藤原と共にダンジョンに潜りまくり、テイムの能力を身に着けて、絶賛妖精達のモンスターファームに精を出していた。
軽井沢を拠点にしたのも妖精の育成をしやすくて、金持ちの避暑地で集まるので、そんな人達に育った精霊や地母神を譲れば深い繋がりが得れるからという打算まみれの考えであった。
「本当妖精達は最初弱っちいのに、育ち切ると大砲でも殺せない化け物になるからね。そんなモンスターを多頭飼いしている日本人はクレイジーだわ!」
「そんな日本も大戦で稼いだ金の殆どを関東大震災で失ったけどな……」
「でもダンジョン目当てに人が来るんじゃないの? それで十分稼げるんじゃない?」
アナスタシアが言うようにダンジョンの外国人への開放は議論されていた。
幕府の場合は帰化した外国人に限りダンジョンに潜るのを許されていたが、国際社会ではダンジョンを諸外国にも開放するべしと政府に圧力がかけられていた。
特にアメリカ。
極東の島国である日本が力を持つのが許せないのか、それとも大戦で稼げる利益が日本に少なくない額を稼がれたからか……震災の際にも救援物資を持ってきてくれたものの、戦艦20隻も引き連れてパフォーマンスをしており、棍棒外交(武力を持って言うことを聞かせる外交 ペリーの黒船とかもこの外交の一種)ここに極まれり……といったところか。
「日本人はダンジョンの怖さを身に沁みてわかっているのだけど、外国の方は……どうかな。特に日本語がわかってないとヤバいかも」
「そうね。私もムージュ(旦那様のロシア語)が居たから良かったけど、身一つでダンジョンに潜っていたら絶対モンスターの餌食になっていたと思うわ」
アナスタシアの懸念は大当たり。
戦勝国かつ友好国であるイギリス、フランス、イタリア、そしてアメリカに日本語を日常生活で使えることと心身が健常である人物に限り探索者の権利を与えることを許すと発表。
更に転生者達や一部理解ある探索者達は絶対に揉め事になるからと外国人向けの探索者予備校を開校し、外国人の方はそこで教育を受けてからダンジョンに潜るように斡旋していった。
国民性が出るもので、イタリア人は妖精や天使といった女性に近いモンスターと恋愛ができるならと予備校に真っ先に通い、熱心に授業を受ける。
フランス人は外国人部隊ニキの伝説的な活躍や侍の国と日本に観光するのがメインで、ダンジョンに熱心に潜る人はフランスに居づらい理由がある方々や没落した貴族等でお家復興の為の熱量に溢れている為、指示者の言うこともちゃんと聞いた。
イギリス人はダンジョンを新兵器の実験会場か何かと勘違いしているのか、ダンジョンに新兵器を持ち込んで盛大に自爆したりしながらも、ダンジョンの素材開発にも熱心であった。
イギリス本国が不景気だった事もあり、結構な企業が日本の誘致を受けて支社を展開したり、なんなら本社を移転してダンジョン経済に食い込もうと努力していた。
アメリカ人は傲慢な者と真面目な者に二極化し、予備校に通わないで解放されているダンジョンに突入して馬鹿でかい音を鳴らしてモンスターに囲まれてボコボコにされたり、なんなら命を普通に落としたりする者や、解放されてないダンジョンをフロンティアスピリッツだと言って突撃して屍を晒したり……。
真面目な人はどの国の人達よりも日本人と歩調を合わせようとするだけにお国柄が滅茶苦茶出ていた。
「結構他国の企業がダンジョンの資源目当てに進出しているけど大丈夫なの?」
「ダンジョンは国の資源っていう位置づけだから独占することは不可能だし、殆どのダンジョンでどの素材が採掘できるかは判明しきっているから、新規鉱物が見つかるってこともほぼ無いし……企業が進出してくれるなら現地雇用で日本人の働き口が増えるし、他国と競争して成長もするから何とか……上層部も色々考えているよ」
採掘したとしても、法人税や所得税で日本に来ている外国の企業にも日本帝国政府は容赦なく税金を取っているし、税率が低い経済特区の様な場所を作ることで、外国企業が無差別に侵食するのは防いでいた。
なんなら、日本国内だったら売れるだろうと粗悪品作っていた日本企業は国際競争に晒されて、倒産したり合併したりと競争が激化。
だいたい転生者の企業が吸収して更に力を付け、多国籍企業とバチバチにやりあったりもしていた。
アメリカの銃メーカーであるブローニング社の支社ができたお陰で拳銃のライセンス生産の交渉がしやすかった……なんて話も普通に起こっていた。
まあ日本に来てダンジョンで一山当てようとする外国人は毎年数万人程度で日本人の人口爆発の方がヤバい気がするし、なんなら日本人と同化する方が圧倒的に多かった。
「宗教に寛容だし、なんなら混じり合ったりするもんね日本は」
「そうそう、完全に宗教と政治が分離しているからできることだし……一時期は攘夷運動……外国人排斥運動も起こっていたけど、今はそんなことしている時じゃないって国民も分かっているし」
「ロシアの人達も共産主義の考えで豊かになることなんて無いって分からないのかしら」
「難しいんじゃないか。まあ日本は赤化することは無いから安心してくれ」
そんなアナスタシアは腕には赤ん坊を抱き、お腹にも1人赤ん坊を授かっているのであった。