ゲーム世界転生〜現代ダンジョン世界かつ1900年開始で生き残るには〜 作:星野林(旧ゆっくり霊沙)
1929年が始まり、中華内戦が徐々に落ち着きを見せていた。
中華民国が主権を取り戻し、中華軍閥でも頭1つ抜け出し、他に元気なのは共産党勢力で、両者バチバチに戦闘を行っていたが、日本の旧式の武器は大陸に在庫処分を完了したため、以後は民需品のやり取りに注力していた。
産業系だと、自動車産業がアメリカが台湾に大規模な自動車工場を作ったため、アジア地域での自動車輸出競争が激化。
より高性能で安価、そして壊れにくいを売り文句に輸出攻勢をかけ、東南アジアや韓国でシェアの奪い合いが凄まじいことになっていた。
ただ家電製品の輸出は絶好調で、エアコン、冷蔵庫、洗濯機の販売だけでなく、韓国やタイ等の友好国では発電所(通常の火力発電所や水力発電所)の建設の援助を行って、電化の支援をしたりしていた。
お陰でタイと韓国は経済成長が著しく、更に韓国支配下の南満州にて大規模な油田が発見され、それも韓国経済好景気に拍車をかけていた。
政府首脳陣や経済界の大物、世間では天才技術者と呼ばれている者達……輪廻会に所属している転生者達が集まり今日も会合を開いていた。
「まずは政府の所得倍増化計画完遂おめでとうございます」
「うむ、ありがとう」
参加者達が首相ニキと財務大臣ニキ、産業大臣ニキを労う。
1923年の選挙から6年かけて所得倍増を完遂し、平均所得(年収)を200円から680円と実質3.4倍に引き上げつつ、年間インフレ率を3%以下に抑えることに成功し、6年間でインフレ率は15.2%と所得が倍以上に増えた割には抑えられていた。
所得が大幅に増加した要因は探索者の人数が増えたことと、企業所属の探索者増加によって高給取りが増加したことと、各種産業が電化に成功したことで生産効率が増加したこと、パソコンの導入による生産量を調整できたことで無駄が減ったこと、政府が道路整備やダム建設、電波塔の建設等の公共事業に投資して経済を刺激した事など色々な要因で好景気を維持できたことが多かった。
なんだかんだ日本は大震災で一時的に成長が後退したものの、1914年から1929年までの15年間、平均成長率10%以上を14年間続けられたことでオランダとドイツを抜き第3位までGDPが上がっていた。
「さて、ゲーム的にも大きな稼ぎ時であるアメリカの大恐慌イベントが控えているが……」
「輪廻会主導で行うと決めているが、既にロマノフから奪った金や国内で秘匿している金銀の隠し財産、国家予算を復興予算や特別会計等で抽出したものを既にアメリカでマネーゲームをする下地を作っている。コンピューターを使い、最大限の利益を出すつもりだ」
「想定利益は数百億ドルになるかと。日本の国家予算数年分が入ってくる予定になります」
「その金を使って何をするかが大切だ」
今の日本の国家予算が約60億。
史実日本の歳出総額が同年だと13億ちょっと。
当時の米ドルのレートで1ドル2.5円なので、300億ドル稼げたとしたら750億円……国家予算12.5年分である。
これだけだとどれくらいすごい金額かわかりづらいかもしれないが、史実アメリカの核開発計画のマンハッタン計画の予算が20億ドル、この世界で日本が欧州大戦で稼いだ金額が100億円なので規模がどれだけデカいかがわかる。
政府としては日本産業のさらなる重工業化及び化学産業への投資の第一次五カ年計画、それが終われば第二次欧州大戦に向けての軍拡の予算として使うつもりであると発表した。
日本としては欧州はナチスドイツの台頭で大混乱に陥るのは確定しているし、スターリン体制の確立で重工業化に邁進しているソ連の動きも危機感を募らせていた。
ダンジョンを用いた国民全体のレベリング及び他国を圧倒できる軍事力を有していても日本は油断をしていなかった。
「それにアメリカが日本に殴りかかってくる理由がこの恐慌によるものだからな」
アジア大戦になる理由は日本の工業化によるアジア地域で利益が上げられないことによる経済界の圧力及びソ連のシンパがホワイトハウス中枢に存在し、独ソ戦中に日本がソ連に殴りかからない為の戦略としてアメリカが日本に殴りかかるように仕向ける。
他に、ダンジョン資源に魅力を感じてとか、アジア市場独占の為、太平洋の覇権確立の為等で殴りかかる理由は山ほどある。
稼がなくても殴りかかられるのであれば、稼いで殴りかかられた方がマシと言う感じだろうか。
「まったく、ダンジョンが無ければアメリカとの殴り合いなど勘弁願いたい」
「然り然り」
「アルファ博士、核開発も進めているのだろう?」
「ええ、核開発は進めていますが、社会利用を考えると、マナタイトの方が利便性は高いですがね。放射能汚染も無いですし」
この世界の日本では核の基礎研究は結構進んでいた。
ただ核に忌避感を抱く者も多く、安全制御に関しての方が研究が進んでいた。
原子力発電よりも効率が良い発電方法が、原子力動力より効率が良い動力が既にある為、熱意はそこまで無かったが……。
「それよりもマナタイト動力を潜水艦の動力として使えるようになった方が気になる。アルファ博士、小型化は成功したのか?」
「ええ、マナタイト動力での潜水艦用小型高出力エンジンが開発に成功しました。これで滞っていた潜水艦の建造に弾みがつきます」
「「「おお」」」
通常動力型潜水艦の開発も進んでいたが、どうしても目標性能より劣っていた為、本格建造はマナタイト動力型でというのが海軍の共通認識であった。
「潜水艦は巡洋型潜水艦が主力になるのでしょうか」
「そうなるな」
巡洋型潜水艦とは遠方まで進出する大型潜水艦の事で日本からアメリカ西海岸まで往復及び数ヶ月活動しても大丈夫なくらい長期任務に耐えられる潜水艦の建造を求めていた。
これはアメリカや日本が得意な潜水艦で、ドイツは近海で活動する小型潜水艦が得意と分かれていた。
そして潜水艦の主武装である魚雷の開発も順調に進んでいた。
「酸素魚雷……史実では夢の様な魚雷とされていましたが、さらなる進化を我々は知っていますからな」
「ああ、ソ連の酸素魚雷ね。スーパーキャビテーションの」
スーパーキャビテーション……魚雷は推進剤の燃料を燃焼すると泡を後方から排出するのであるが、これを前面から泡状にして排出することで、魚雷と水の抵抗を極限まで減らし、ロケットエンジンを装備することで200ノット(時速370キロ)の超高速で、敵艦に突っ込むのである。
これにマナタイト貫通弾薬を搭載することで、一撃で敵艦を轟沈させる魚雷が既に完成していた。
マナタイト動力で水中でも静寂かつ高速移動ができる潜水艦と組み合わせることで、凶悪な潜水艦戦術を行えるだろうと考えられていた。
ちなみに航空魚雷には向かないので、航空魚雷は別口で進められており、現状では時速550キロかつ800メートル上空から投下されても壊れない磁気信管式魚雷の開発が進められていた。
「特殊攻撃機の流星、新型潜水艦……この2つの超兵器でアメリカ海軍を撃滅したいですね」
「あとは魚雷の命中精度を上げるために電探やレーダー等の電子機器、測距技術の性能向上をしなければ」
「史実日本のように酸素魚雷の有効射程2万メートルなのに、測距技術が低くて通常魚雷とほぼ同じ5000メートル以内でしか命中しないという馬鹿な事はしたくありませんからな」
「これは問題ないでしょう。新型測距儀の開発も進んでいますし」
輪廻会の会合はアメリカとの大戦についてが一番盛り上がるのであった。