ゲーム世界転生〜現代ダンジョン世界かつ1900年開始で生き残るには〜 作:星野林(旧ゆっくり霊沙)
「おいおい、医薬品に革命が起こるわ」
医薬品を研究していた薬品ニキがスライムを使って抗生物質の培養を研究していたところ、ゲームとかでお馴染みの回復薬……体力を回復させたり、欠損した手足を生やしたり、病気への自己免疫獲得に作用したりする……いわば万能薬と言われる物が出来上がってしまった。
「内科の仕事量が一気に減るんじゃなかろうか……」
これが実験室レベルで少量しか作れないなら問題はなかったが、薬品ニキが自家製したレベルの製薬装置で1日で数千人分の治療薬が作れてしまったのである。
「どうする? とりあえず政府に相談しよう」
というわけで掲示板で政府にこんなの大量にできちゃったんだけどーって報告したら、政府高官達も頭を抱えた。
というか薬品ニキの説明によると細胞を自己修復するため、飲み続ければ一定期間は若返り効果もあるし、この時代だと不治の病である癌だったり糖尿病だったりを継続摂取すれば完治できるとなれば劇薬過ぎて頭を抱える。
「日本でしか作れないし、効能を癌の治療薬とか制限しておいて、あと脱法ドラッグみたいに効能あるけど別の薬だよみたいな感じで類似薬を色々作って、効能をバラけさせた方がいいだろう……下手に万能薬って言って売り出せば世界市場が混乱しかねないからな」
というわけで、日本政府は癌の特効薬やインフルエンザ、マラリア等の薬として材料にダンジョン素材が必要かつ、原料を輸出禁止にし、製薬を格安で世界に売ることにした。
今のところ不治の病だったり特定地域で猛威を振るっている病気に効く薬として破格の値段で売ったのでそこまで顰蹙を買うことはなかった。
原料調達のほうがコストが高いと見せることで海外製薬企業の進出を防いだのであるが、これにより今までも低かった乳児死亡率をほぼ0にすることもできたし、母親の死亡率も激減。
難病患者や先天性疾患の患者にも効果があるため、まさに万能薬。
薬品ニキはノーベル賞を受賞して、一躍時の人になったが、日本の転生者達は速攻薬を大量生産できる環境を整えていった。
実質若返りの薬と言われれば、見た目は20代にしか見えないけど、じわじわ内臓系の老化が進行し始めていたり、良いものを食えるので、生活習慣病になり始める人物も出てきたため、毎日摂取したい転生者達は薬の量産に躍起になり、値段をどんどん下げていった。
お陰で全世界にばら撒いても利益が出るというわけのわからない状態になり、新薬の研究もこの万能薬から派生させれば良いので、あとはどれだけ効能を上げられるか……という感じになっていった。
もちろん軍でも話題になり、応急キットにこの万能薬の飲み薬を全員が持つように常備品となり、救護体制の見直しにもつながった。
まず応急キットレベルの万能薬では止血はできても欠損したり、腸が飛び出たりした兵士は救えないので、衛生兵が持つ、より濃度の高い万能薬を投与してもらう。
そして外科手術が必要な兵士は前線救護所もしくは和虎をベース車両に改造した野戦移動病院……簡単なオペができる救急車両で治療を行う。
ここまでを必ず1時間以内で行うとして部隊の衛生兵の割合だったり医者の確保に陸軍は努めた。
海軍の場合医務室で基本完結するが、艦隊行動するときに医療船を同行させたり、オペができる丸ゆ型医療機を開発したりしていた。
で、その後手足が速攻回復すればいいが、体質によっては治癒に時間がかかる場合があるので、そしたら後ろの入院できる病院に移動……という形を整えていった。
参考にしたのは自衛隊及び史実の米軍で、第二次世界大戦中、日本の戦闘以外での将兵死亡率……感染症だったり、即死は免れたが、傷口が膿んで合併症で亡くなったり……そんな死亡率が25%前後であったが、米軍は医薬品の充実、抗生物質のサルファ剤やペニシリンの量産に成功していて、将兵の戦闘以外での死亡率が3%前後と圧倒的に低かったというのも転生者達は理解していた。
なのでレベルを上げて銃が効かなくなるのもあるが、負傷しても戦線に復帰できるというのを凄く重要視した。
一から兵士を鍛えるより、負傷兵を回復させたほうが教育の手間が減るからである。
「というかこれ外科の仕事も減るな……」
とんでもない物を作ってしまった薬品ニキであった。
金持っている転生者達は少年少女の心身の成長を促すとしてスポーツに投資していた。
転生者達の中で、恐らく将来的にはダンジョン配信の様な感じの職業がスポーツ選手と同じ感覚で人気になるだろうなと思っていたが、普通のスポーツも流行らせたほうが国民的に良いだろうとして、各地に運動公園……野球場、サッカー場、テニスコート、室内競技場、プールの整備が進められた。
というのも、ダンジョンで農業が行われるようになったため、土地余りが発生していたのである。
あと子供の数が爆発的に増えているため、子供達が遊べる場所を増やす必要があり、公園や運動場の整備が進められた……という背景があった。
そんな中、1924年より高校野球や大学野球が始まり、1934年の今年はプロ野球チームが発足していた。
元々転生者達が経営していた会社の野球クラブとかが前身だったが、ダンジョンを用いて鍛えられた肉体をスポーツを通じて観客に見せるのは面白いだろうと、娯楽の少ない時代だし、スポーツ中継を通じて、ラジオや最近販売が始まったテレビの普及が進めば……という考えが企業側にもあった。
で、人型であれば魔物も参加して良いということになったので、人外入り乱れる凄いことになってしまった。
が、人間統一の高校、大学野球。
社会人経由でプロ入りする魔物達……そんな奴らが集まる職業プロ野球は凄まじいことに……。
それで回復薬が使われる為、怪我からの復帰も早く、劣化もしにくいため、本当に上位の選手が長く続ける状態となってしまうが、見応えは凄まじかった。
高位探索者……超人達の野球なので投手は時速200キロの豪速球を投げるわ、WやQの字を描く変化球。
空中で一時停止後再度動き出す魔球を投手達は投げるし、打者は打者で、超人的な身体能力と動体視力でこれを普通に打ち返す。
そして忍者のように華麗な守備やレーザービームの様な送球、数メートル飛ぶ大ジャンプでホームランボールをキャッチするという超人野球が巻き起こる。
サッカーはサッカーで手を巨大化させてボールを止めたり、炎を纏ったボールをシュートしたりと、野球もそうだが、異能を使った際に道具が壊れないようにするのに苦労した。
そんな超人の祭典を映像で中継されたらどうなるか……そりゃ熱狂である。
野球とサッカーのプロリーグが組織化され、更にここに相撲も加わった子供憧れるスポーツ選手という感じになるのだった。
ちなみに、プロリーグであるが、陸軍、海軍、空軍も自前の選手を育成し、軍人代表としてプロリーグに殴り込むというわけのわからない現象も起こっていたが、それを通じて、各軍のわだかまりや軋轢が減り、交流につながるのだからわからないものである。
ちなみに日本がそんな超人の祭典をしているため、オリンピックの価値が日本では激減してしまうのであった……というか出れば全部のメダルを掻っ攫うので国単位で出禁くらった。