特異点『無為転変』 作:ろりこんぬ
成人した。
早すぎるって?仕方ないじゃ無いか書くことが無いんだから。
K社の巣だって言ってもシンクレアとは同年代じゃなさそうだし、学校生活で特に面白かったことはない。イジメようとして来たやつを無為転変したくらいだ、あれは良い研究試料になった。
ちなみにだが、身長は少ししか伸びなかった。無為転変を使えば伸ばせるが。
つまり俺は合法ロリってことだ。やったね、クソが。
煙戦争はまだ起こってない、ピリピリしてて戦争間近って感じだがギリギリで始まってない。
今住んでる巣はK社だから煙が空を覆っている。
早めに煙L社には折れて欲しいね、戦争中やその前は暗躍がし辛くなる。
さて、今居る場所を説明しよう。
ここは南部ハナ協会、フィクサーになる為の試験を受けに来た。
やっと成人したからね、翼に加入するよりフィクサーの方が動きやすいのが利点だ。
ちなみにハナ協会とはフィクサーの統括管理を目的とした協会だ。
本部は南部であり、フィクサー免許の発行、事務所とランクの管理、特色の指定や都市災害ランクもここで管理している。殆どフィクサーのトップみたいなものだ。
「試験番号810番、こちらへ」
おっと、呼ばれたようだ。
行くとしようか、気合を入れよう。落ちる事なんて万に一つも無いと思うが。
⬛︎⬛︎⬛︎
「これがフィクサー免許証です、失くした場合、再発行には金銭が必要なのでお気を付けください」
「ありがとう、失くさないように大事にするよ」
ハナ協会のフィクサーから免許証を手渡される、プラスチックのようで金属にも似ている不思議な感触だった。知らない材質が使われているな、軽いけど強度は十分だしよっぽど激しくしないと壊れる心配は無いだろう。
さて、念願の依頼受注だ。
初心者フィクサーはハナ協会から出ている九級フィクサー用の依頼が受けられる。
それで実績を積んだら他の協会からもっといい依頼が入ったりする。
つまり今は下積みの時代ってことだ、根気よくやっていこう。
受けられる依頼はあらぬ噂から都市怪談までだ、できるだけ早くランクを上げたいし都市怪談の中でも難しい依頼を受けることにしよう。きな臭くないのが前提だが。
…これで良いかな。受けた依頼は裏路地の屠畜業者集団『喰い患い』の処理。
報酬は五万
よし、行くぞ。目指すは一級フィクサー!
特色はしがらみが多くなってめんどくさいからね!今後の計画にも影響が出るし。
歩きながら思考する。
相手が人間だってことは研究も出来る、一石二鳥ってやつだ。
喰い患いの行動範囲は裏路地の奥まった場所、ネズミも出てくるだろう。
それも研究に使える、一石三鳥じゃんね☆
裏路地に入った途端、獲物を見るような視線が突き刺さる。
四方八方から向けられていて、ここまでくると流石に楽しくなってくる。
「へへっ嬢ちゃん、こんなところで何してんだい」
「お兄さんと遊ばないか?楽しい所連れてってやるよ」
おお、
こういう時はこの身体は役に立つな、餌にして雑魚をおびき寄せられる。便利だ。
とりあえず四肢かな、無為転変で傷口を塞いでやればすぐに死にはしないはず。長く使える実験材料の完成だ。
この世界の呪術についてだが、俺以外にも使っているやつは居なくもない。
技術として使われていることも時々ある、しかしちゃんと意識して使えるのはそうそう居ないようだ。
あと、反転術式は体系化されていていない。
実際には出来るのかもしれないが、都市ではそういう発想が生まれなかったのか、使える人間は居なかった。
まだ俺が発見してないだけの可能性も大いにあるけどね。
どっちにしろ今の呪力操作の精度じゃ反転術式なんて夢のまた夢だが。
無為転変で直せばいいって?残念ながら真人と違い呪霊じゃないからなのか、脳の操作と人間の形を大きく逸脱する変形は難しい。人間の形を逸脱するのは、出来ないわけではないが難易度が高い。
当たれば基本的に必殺なのは間違い無いが、真人ほどの応用力は無い。
他には、その魂の前世を知ることが出来る。恐らく転生を経験したことが原因だと思われる。
そこら辺は一旦置いておこう、無視を決め込んでいたせいでネズミの沸点がギリギリだ。
「チッ!もういい、無理矢理行くぞ!」
「おうよ!」
「来るかい?」
二匹のネズミが左右に分かれて駆けだしてくる。
拳を振り上げていることから気絶させて持っていくつもりのようだ。
ギリギリまで引き付ける。
そして、飛んでくる拳を素手で受け止めた。
___無為転変
ネズミの四肢が弾け飛ぶ。
口がふさがり、弾け飛んだはずの四肢の切断面はすでに塞がっている。
それは一瞬で、ネズミの表情は余裕なモノのままであった。
数秒遅れてネズミたちが状況を理解する。
顔は無理矢理体の構造を変えられた苦痛に歪み、開けない口からうめき声を出した。
さて、実験だ。
前は多重魂の精製まではやったから、次は撥体の練習だな。
今まで何度か裏路地に出て実験をしていた。しかし、子供の身分では色々と制限されていてしっかりとした時間は取れなかった。
「といっても、今回は依頼もあるから時間をかけすぎてはいけないんだけどね」
前は多重魂までは作れたが、その後の操作が出来なかった。
術式の精度を上げた今なら出来るかもしれない。
原作の真人はある程度指向性を持たせて撥体を放出していた、今回はそれを再現したい。
慎重に魂を重ね合わせる。拒絶反応で一気に反発が強くなり、操作が困難になる。
だがそれを無為転変の出力を上げ無理矢理抑え込んだ。
(標的が無いな…おっと、他人の気配?)
「おいしそうな…肉の匂い……子供かな?でもそれにしては年季が入ってそうだし…」
的があっちからやってきたぞ!ついてるゥ!
しかもあれ依頼対象だ、情報じゃ三人組だって話だったけど…今は一緒に居ないだけかな?
風船に穴をあける様に圧力の隙間を作る。
多重魂
___撥体!!
肉の塊が勢いよく人影に飛ぶ。
先端には口があり、それ以外は人間のパーツが所々に見られるが、明らかな異形だ。
瞬間、撥体が上半身を食いちぎった。
うーん…出力がちょっと低いかな?もっと圧縮すれば良いのか?
要らなくなった撥体を破裂させて処理する。
多重魂じゃなかったら保存用改造人間にして持って行ってもよかったけど、撥体の負荷で魂の質量が急激に低下していて真面に使えない。
死体の方も魂が抜けている、死んでいるのだろう。
楽に終わりそうだな、無為転変と呪術を持ってて楽に終わらない依頼をビギナーが受けられる訳がないけど。
「血の匂い…腹が減る……」
「あとは子供…?子供はいい、肉が美味い」
おお、次から次へと。
この二体で依頼は完了だな、サクッと終わった。
肉体に呪力を巡らせて呪力強化をする。
子供のころからずっと練習していたことだ、呪力操作には結構自信がある。
無為転変で拳を巨大化させ、駆ける。
腕を鞭のように伸ばし、しならせ、速度を最大化させた。
体を捩じり、周りのビルごと薙ぎ払う。
轟音
それと共に残りの二人をひき潰した。
そこには、血に染まった瓦礫だけが残る。
「依頼達成、だな」
さーて、帰るか。
途中でハナ協会に寄って達成の報告と報酬の受け取りを終わらせよう。
初任給だ、なんか美味しいモノでも食べようかな。
通ってきた道をそのまま戻る。俺のことを裏路地の住人が正しく認識したのか、さっきまでの獲物を見るような視線は少なくなっている。
裏路地を抜けだし、ハナ協会の前に着いた。
先程依頼を受けたときに話しかけた女性の受付に近づく。
「依頼、終わらせてきたよ」
「えーと、先程受けたばかりですよね?」
「おや、疑ってるのかい?」
「流石に…疑わざるをえないですね」
順調にやり過ぎたか、少し面倒だな。
「こちらに来てください、真偽を判定できる設備があります」
「さすがハナ協会本部、設備は充実してるな。見た所、所属しているフィクサーはそうでもなさそうだけど」
受付さんの眉間に少し皺が寄った、これで手を出してきてくれたら楽しいんだけどね。
しかし、本当に設備が充実してるな。
どんなとこで売ってるんだろうか。どこかの工房か、それとも折れた翼の特異点なのか。
そんなことを考えている間に例の部屋に着いたようだ。
先に入った受付嬢に追従して部屋に入る。
「うーん…この部屋には何もないように見えるけど?」
喉元に黒い物質で作られた刃が押し付けられる。
「白状するなら今の内ですが」
「なるほど、そういう感じか」
楽しくなってきたじゃん。
口調が安定しない気がする。
ゆるし亭。