暗殺者、高度育成高校へ入学   作:阿院修太郎

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2話

 

 

学校2日目。

授業初日ということもあり、大半の授業は方針等の説明だけだった。

 

……なんだ、これ。本当に進学校かよ。

 

教壇に立つ教師たちは、昨日の茶柱先生を除けば、驚くほどフレンドリーであった。だからか、大抵の生徒が拍子抜けというのが正直な感想だろう。

 

ふと視線を横に向けると、赤髪の須藤が豪快にいびきをかいて寝ている。

その前では女子生徒が机の下でスマホをいじり、後ろでは男子数人が小声で昨日のゲームの話に花を咲かせていた。

 

教師の視線は、確実に彼らを捉えている。だが、注意一つ飛ばない。まるで「どうぞご自由に」とでも言いたげな、冷ややかな放置。

 

ま、オレには関係ないけどさ。

 

オレは女子たちの恋バナが耳に入ってくると、ふと別のことを考えていた。

 

そういえば……ゴンは、デートしたことがあるんだよなぁ。……デートかぁ。アルカは可愛いけど、あれは妹だしな。こういう『普通の学校』だと、そういうのも普通にあるのかな

 

恋愛なんて、暗殺の英才教育を受けてきたオレには最も縁遠いジャンルだ。

少しだけむず痒いような、奇妙な感覚。それを振り払うように、オレは大きく伸びをした。

 

昼休み。オレは一人で適当に済ませようかと思ったが、少し気が変わった。

 

「せっかく学校に来たんだ……」

 

「あ、キルア君。一緒にどうだい?」

 

声をかけてきたのは、クラスのまとめ役である平田洋介だ。

 

彼はオレだけでなく、周囲の浮いている生徒たちにも分け隔てなく声をかけている。オレは「いいよ」と軽く応じ、彼らと共にカフェ「パレット」へ向かった。

 

「みんな、これからの学校生活について何か不安なことはないかな?」

 

平田は食事中も、常に周囲に気を配り、会話の途切れた者に話題を振っている。

その完璧すぎる立ち振る舞いに、オレは内心で舌を巻いた。

 

あいつ、すげーな……。あんなに四方に気を遣って、よく疲れないもんだ。もっと気楽にやればいいのに。

 

「キルア君は、部活とか決めてるの? 運動神経良さそうだけど」

 

平田が爽やかに話を振ってくる。

 

「部活ね……。ま、気が向いたら何か覗いてみるよ。でも、あんまりガチなのは勘弁かな」

 

オレはへらっと笑って答える。

 

「ねえねえ、キルア君! どこ出身なの?」

 

「髪、地毛? すっごい綺麗だよね!」

 

女子たちの質問攻めに、オレは適当に「えー、秘密」「まあね」と受け流す。

 

昼休みが終わり、午後の授業も適当に聞き流したオレは、帰宅路で再び綾小路清隆と合流した。

正確には、校門近くで一人ぼーっと立っていた彼を、オレが捕まえた形だ。

 

「よお、綾小路。お前、今日も反省会?」

 

「……いや。これから部活動の説明会に行こうと思うんだが、一緒にどうだ?」

 

そういえば、昼休みにそんなアナウンスも流れてたなと思い出す。

 

「いいぜ。なんだ、部活動にでも興味があるのか?」

 

「別に。そういうわけでもないが……それを口実に友達を作れればな」

 

「ま、そうを難しく考えるな。もっと気楽にいかないと」

 

「……そうだな。お前の場合は気楽すぎだと思うがな」

 

「綾小路。そんな褒めてもなんもでないぜ」

 

体育館へと向かう道すがら、オレのんびりと歩を進める。周囲には期待に胸を膨らませた新入生たちが溢れ、独特の熱気が漂っていた。

 

「褒めてない」

 

綾小路の平坦なツッコミを適当に受け流しながら、二人は部活動説明会の会場に足を踏み入れる。

 

体育館に入ると上級生らしき生徒から1枚のパンフレットをもらう。

 

「へー、多種多様な部活があるんだな」

 

パンフレットをパラパラとめくりながら、オレは適当に目を滑らせた。野球、サッカー、茶道、軽音……。普通の高校にあるような部活は一通り揃っている。

 

「暗殺部……なんてのは、流石にないか」

 

「……何か言ったか?」

 

「いや、独り言。……ん、なんだあれ」

 

眼鏡をかけた生徒が黙ったまま壇上に立ち尽くす。

 

「がんばってくださ〜い」

「カンペ持ってないんですか?」

「あはははは!」

 

1年生からそんな野次を飛ばす声が投げかけられる。しかし、壇上にいる生徒は微動だにせずただ立ち尽くすだけ。

 

やがて体育館全体が静かな空気に包まれていく。

 

「私は、生徒会長の堀北学と言います」

 

ただの自己紹介だというのにすげー威圧感を放っている。

 

「生徒会もまた、上級生の卒業に伴い、1年生から立候補者を募ることとなっています。特別立候補に資格は必要ありませんが、もしも生徒会への立候補を考えている者が居るのなら、部活への所属は避けて頂くようお願いします。生徒会と部活の掛け持ちは、原則受け付けていません」

 

口調こそ柔らかいが、どこか淡々と説明をする。

 

「それから───私たち生徒会は、甘い考えによる立候補を望まない。そのような人間は当選することはおろか、学校に汚点を残すことになるだろう。我が校の生徒会には、規律を変えるだけの権利と使命が、学校側に認められ、期待されている。そのことを理解できる者のみ、歓迎しよう」

 

説明を終えると、真っ直ぐに舞台を降りて体育館を後にした。

 

「……随分な威圧感だったな」

 

オレは思わず目を細めた。

 

「そうだな。俺には縁のない人間だな」

 

綾小路はそう言葉を残す。

 

「で?どうする?」

 

「帰るか」

 

体育館の出口の方へ向かおうとした時

 

「綾小路、えっと、キルアだっけか。お前らも来てたんだな」

 

須藤から声をかけられる。クラスメイトの池、山内も一緒にいた。

 

「なんだよ。すっかり仲良くなったんだな」

 

「それでお前らも部活に入るのか?」

 

「いや、ただの暇潰しで来ただけだからな。『も』ってことは須藤はどこかに入るのか?」

 

「ああ 俺は小学生の時からバスケ一筋だからな ここでもバスケだ」

 

「後ろのお二人さんは?」

 

「……運命的な出会いがあることを期待してきたって感じ」

 

「何だよ、運命的な出会いって」

 

「あ、そうそう 実は昨日、男子用のグループチャット作ったんだよ」

 

言いながら携帯を取り出す池

 

「折角だしお前らもやらない?結構便利なんだぜ」

 

「え、オレたちもいいのか?」

 

「いいぜ」

 

オレと綾小路は池たちとアドレスの交換が完了し、グループにも無事入ることができた。

その時の綾小路はなんとも嬉しそうな表情を、正確には無表情だが、オレにはそう見えた。

 

よかったな、綾小路。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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