暗殺者、高度育成高校へ入学   作:阿院修太郎

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3話

3話

入学してからおよそ1週間。

 

オレが登校すると既に池と山内が登校していた。かくいうオレも始業5分前にいつも来ているんだけど。2人の場合は遅刻ギリギリか遅刻しているからな。

 

今日は何か特別なことはあったか?

 

「お、キルア! お前もこっち来いよ!」

 

教室に入るなり、池と山内がニヤニヤしながら手招きしてきた。机の上には、クラスの女子の名前が書かれた手書きのメモがある。

 

「なんだよ、朝から騒がしいな」

 

「いいかキルア、今日は待ちに待った水泳の授業があるんだよ!」

 

池が鼻息荒く力説する。

 

「Dクラスで誰が一番巨乳かって賭けてんだけど、もちろん参加するよな」

 

「興味ねーよ、そんなの」

 

「固いこと言うなよー。仲間外れは寂しいぜ?」

 

しつこく食い下がる池たちを見て、オレはため息をつく。

 

「……わかったよ。じゃあ、無難に櫛田にしとく。一番人気だろ?」

 

「おぉー! 王道だな! さすがキルア、分かってるぅ!」

 

適当に名前を挙げておくと、池たちは満足そうに次のターゲット(綾小路)へと向かっていった。オレはそれを見送りながら、自分の席に座る。

 

「下賤ね」

 

堀北がオレと綾小路に向けて話しかける。

 

「うわっ、冷たい視線。……ま、否定はしないけどさ」

 

オレは苦笑いしながら、椅子の背もたれに体を預けた。堀北の瞳には、軽蔑の色が隠しようもなく浮かんでいる。

 

「オレが言ったわけじゃないだろ? 誘われたから、適当に話を合わせただけだよ。……ねえ、綾小路?」

 

話を振られた綾小路は、困ったように視線を泳がせた。

 

「そうだな」

 

「そう。ならいいけれど。……あなたたち、少しは自分の立場を考えたらどうかしら? 」

 

堀北は持っていた本を閉じると、鋭い眼光をクラス全体へ向けた。

 

「あの騒がしい連中も、それを放置しているあなたたちも、何か大きな見落としをしている気がしてならないの」

 

「見落とし、ねぇ……」

 

オレは窓の外を眺めながら、指先で銀髪をいじった。

確かに、この一週間でクラスの空気はどんどん緩んでいる。授業中に堂々とスマホをいじる奴、お菓子を食べる奴、そしてそれを注意しない教師たち。

 

……ま、普通に考えれば『おかしい』んだろうけど。でも、お小遣い付きのバカンスだと思えば、これ以上ない環境だしな

 

「まあまあ。そんなにカリカリすんなって。楽しくやっていこうよ」

 

オレがへらっと笑って言うと、堀北は「……勝手にしなさい」とだけ言い残し、再び本に視線を落とした。

 

午後のプール。

日差しを反射してキラキラ光る水面よりも、池や山内たちの視線は一点に集中していた。

 

「おぉ……櫛田ちゃんの水着姿……拝みたおしてぇ……」

 

池たちは着替え中の女子を想像して鼻の下を伸ばす。

 

「なんでラッシュガードなんて着てるんだ?」

 

綾小路が聴いてくる。他の男子は着用していないからな。

 

「オレ、実は寒がりなんだよね」

 

オレは適当に答える。本当は細かい切り傷やハンターとして活動していた際に負った傷などを隠すためなんだけど。

 

「そ、そうか。室内プールとはいえ、まだ4月だからな」

 

綾小路は納得したように頷いた。こいつの、こういう「深く追求してこない」ところは嫌いじゃない。

 

「それよりもさ、すごい筋肉だね」

 

「そうか?親から恵まれた体をもらっただけじゃないか」

 

「ふーん」

 

綾小路と話していると着替えを終わった女子が出て来る。池や山内が佐倉や長谷部が見学していることに絶望している。そんなところに櫛田が現れて2人は悶絶している。たしかに、驚異的な体ではあるな。

 

「よーしお前ら集合しろ」

 

いかにも体育会系と言われるようなマッチョ体型の教師が集合をかける。

 

「見学者は16人か。ちょっと多いな」

 

たしかに多いな。

 

「早速だが、準備運動をしたら実力の把握のために泳いでもらうぞ」

 

「あの先生、俺あんまり泳げないんですけど」

 

1人の生徒が進言すると、それに続いて数名挙手する。

 

「そうか。だが、安心しろ。今はどれだけ苦手でも克服させる。泳げるようになっておけば必ず役に立つ。そう必ずな」

 

たしかに泳げるようになっておけば役に立つことは間違いないよね。でも、それを断言するほどかね。ま、考えすぎか。それだけ生徒思いだと言うことだよね。

 

それから50m程泳ぐように指示される。室内なのと温度管理がしっかりされているようで、冷たさを感じることなくすぐに順応した。

 

「とりあえずはほとんどの者が泳げるようだな。これから競争をする。男女別。50m自由型だ」

 

「きょ、競争ですか!?」

 

「お前たちがやる気が出るように、1位の者に俺から特別ボーナス、5000ポイントを支給しよう。ただ、最下位の者は、補習を受けてもらうからな」

 

泳ぎに自信がある者からは歓喜が、逆に自信がない者からは悲鳴が上がる。

 

ちぇ、ケチくさ。一日分のお菓子にもならないじゃん。

 

勝負は女子は人数が少ないため、タイムが1番早かった人で決めて、男子はトーナメント形式で行うようだ。

 

まずは女子から行うようで男子たちはプールサイドに座り込み、応援……観察する。

 

「皆、目に焼き付けろよ!今日のおかずを確保するんだッ!」

 

「「おうっ!」」

 

無駄なところで絆を深めているようだ。

 

結局結果は、水泳部の小野寺という女子がぶっちぎりのタイムでゴールした。堀北はその次に続いてゴールしていた。

 

「惜しかったな。2位だってよ。現役水泳部の相手はさすがに厳しかったか」

 

「へー、やるじゃん」

 

「別に。勝ち負けは気にしてないから。それよりもあなたたちは自信あるの?」

 

「当たり前だろ。ビリにはならん」

 

「右に同じく」

 

「……自慢することではないでしょう」

 

綾小路は最初の組に配属されて、オレはというとその次の組である。

 

結果は須藤が圧倒的な速さでゴールする。綾小路はどうかというと、なんともいえない順位だった。

 

「さて、適当に流しますかね」

 

「よろしくね、キルアくん」

 

平田と同じ組のようで、話しかられる。

 

「おう、お手柔らかに頼むよ」

 

合図とともにスタート台から飛び出した。目標はこの組の中間でゴールすることだ。

オレは隣のコースで綺麗なフォームを見せる平田を横目で見た。平田は無駄のない動きで水を捉えている。オレは少しだけフォームを崩し、「頑張って泳いでいる風」を装いながら距離を調整した。

 

「はぁ……。意外と疲れるね、水泳って」

 

オレはプールサイドに上がり、わざとらしく肩で息をしてみせた。

 

「キルア君、すごいじゃないか。いいタイムだったよ」

 

平田が爽やかに声をかけてくる。

 

「いやー、必死だったよ。補習だけは勘弁だからね」

 

オレはへらっと笑ってタオルを頭に被った。

 

オレの次の組はというと、今日1番の速さで高円寺が1位を勝ち取った。そんなことなどどうでもいいが、高円寺の高円寺がデカ過ぎる上に、ブリーフ型の水着型のせいで余計に強調されていた。

 

そして決勝戦は、案の定高円寺が須藤を5メートルほど離しての優勝だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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