三度目の人生はダンジョン配信で   作:雪狐@ただのキツネ好き

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今回はレリスパートナシです。



歌姫と舞姫とイレギュラー

 

 

渋谷地下ダンジョンにて、一番最初にエンカウントしたシルクスパイダー。それを手に持つ剣で瞬殺したわたしは、配信で雑談しながらリズこと莉月の戦う相手を探す。

 

「今日の目標は、初心者層の最後。5層まで行くつもり。ボス戦だけしようかな、って感じ。」

「ふふん、私達に見蕩れてガチ恋しないようにね!」

 

:少なくとも初めてのダンジョンでボス戦に行くもんじゃないと思うんだが??

:↑俺もそう思う。まぁでも、リアちゃんしか見てないけど同じくらいリズちゃんも強いなら行けそうじゃね

:渋谷地下ダンジョンって言ってたよな?ならボスは…マザースパイダーか

:うげ…物量しかけてくるクソ蜘蛛じゃん…

 

「うん。でも、わたしたちとの相性は悪くないから…っと。」

「話してるうちに来たねー!

さーさー、刮目せよ!舞姫(ルディア)の動き、見蕩れていいんだよ?」

 

歩いていると次に出会ったのは、ファンタジーもの御用達のゴブリン。通称初心者殺しだ。

何故初心者殺しなのか?それは、こいつらは()()()からだ。最低四体。多くて八体同時に相手しなければいけないこいつらは、初心者の間では危険な相手として知られている。

 

『ギャギャギャ』

『グギギ、ギャ』

 

そして、何よりも嫌われている理由。

女性を見ると、()()()()のだ。舌なめずりをしてこちらを見る。

 

…似たような視線はアイドルをしていた前世で受けたことはあるけど、うん、気持ち悪いな。

 

今回は六体同時に出現したのだが、その数を相手にリズはなんでもないように剣を抜いて躍り出る。その表情には不安などなく、圧倒的なまでの自信がありありと浮かんでいた。

 

『ギャギャ』

「鬼さんこちら、その程度で女の子を捕まえようなんて、無理だよ〜?」

『ぐぎゃッ!?』

 

まずは一匹。

こちらを舐めているのか一体で飛びかかってきたゴブリン。リズは舞を舞うようにひらりと避けると、すれ違いざまに手に持っている剣で一閃。力が足りず両断とは行かないが、充分なダメージになったようでドロップアイテムを残して消える。

 

「ゴブリンさん達、私と踊りましょう(Shall we dance)?リア姉の歌に合わせて踊るのが一番楽しいけど、あなた達には勿体ない。私の踊りで満足してね。」

 

ひらひらと五体同時に襲ってきているゴブリンの攻撃を当然のように服にすら掠らせることなく避け、一体一体着実に倒していく。

 

「《炎舞》」

『グギャァァッ!?』

 

リズが一言唱えると、突然炎が現れてゴブリンを火達磨にした。

 

火達磨になったゴブリンが最後の一匹だったようで、その後にはドロップアイテムの腰布と魔石だけを残し敵は居なくなった。

 

:…強くね!?

:少なくとも初心者層に居るのはおかしいレベルの強さだな

:なんのユニークだ!?

:ルディアって言ってたし、踊り子?リアちゃんが歌姫だから舞姫か?

 

「お!コメントの人せいかーい。

私は舞姫だよー!自分で姫って名乗るのは恥ずかしいけどね!」

 

:草

:そりゃそうだw

:すごい可愛いから姫でも違和感ないけどなw

:魔法を使えるスキルなんだね!

 

「うん!

私は踊りを踊ることで色んなことができるよ!

リア姉は歌うことで色々できる!」

「ん。わたしもリズも、ファンが居ないと何も出来ない。今最低限戦えたのは、お互いがお互いのファンだから…かな。後は友達とか家族とか。」

 

本当に最低限の力しかないけど。

前世の時は残ってた人達のほとんどがファンになってくれていたからね。レリスと半分半分で力分け合ってたけど。

 

そこまで話したところで、ふとひとつのコメントが目に入る。

 

:二人とも強いのはわかったけど、リアちゃんのスキルも見たいかも

 

「わたしに歌えってことだね。

うん、いいよ。」

 

久しぶりに歌姫(ディーヴァ)としての実戦だ。

うん。やろうか。

 

「でも、丁度よく敵なんて…居るね。しかも…イレギュラーかな。」

「うわぁ、都合がいいね?」

「わたしに言われても、困る」

「リア姉の歌好きだから嬉しいなー♪」

 

少し離れた場所に、この層に居るにはおかしい強さのモンスターを見つける。俗に言う、()()()()()()と呼ばれる現象だ。

 

基本イレギュラーに遭遇したら逃げないといけないけど、感知したところ強さはわたしでもリズでもソロで倒せるレベル。うん。余裕だね。

 

…まぁ、油断はしないし、危険な相手なら逃げるけど。

 

:イレギュラー!?!?

:おい逃げろ!

:6層モンスターのオークだ!!

:中級者層の人間でもタイマンだと苦戦する相手だぞ!

:イレギュラーが都合いいwww

 

「さぁ、ご照覧あれ。

ようこそ歌姫(わたし)舞台(せかい)へ。皆で楽しむ舞台(ステージ)へ。これから始まるは一度限りの公演(ライブ)。決して見逃すことなかれ。歌姫(わたし)紡ぐ物語(ライブ)へご招待。

楽園(アルカディア)》」

 

普段はこんな風に前口上を言ったりしないんだけど、なんでだろうね。今世初の不特定多数へ見せるライブとなると、テンションが上がってるのかもしれない。

 

力の大半と剣を失ったとはいえ、仮にも世界をひとつ救っているのだ。救世の歌姫の力、とくとご覧に入れよう。

 

 

最高の歌姫であれ。

最高の偶像の体現者(アイドル)であれ。

最高の、神剣の担い手(ディーヴァ)であれ。

 

そういう風に作られたわたしは、ことアイドルとしては誰にも負けない。そういう自負がある。

それが、実戦中に魅せる事であれば尚更。

 

ファンタジーにありがちな外見のオーク。

見た目よりは動きは機敏なのだが、それでも遅い。

 

手に持っている棍棒の振り下ろしを歌いながらくるりとターンをして避けると、そのままの流れで手にしている剣を横向きに振るいオークの腹を斬る。

 

だが、流石は中層モンスター。

この程度では死なない。けれど、まぁ問題は無い。

 

 

 

:うっ、わぁ…

:すげぇ…としか言えねぇ…

:歌が上手すぎて、語彙力が無くなる。

:何語かも分からないのに、なんか、引き込まれる…

:あんまり笑顔を見せてくれてる訳じゃないのに、たまに見せる微笑みのせいで余計に引き込まれてる

:中層モンスのオークが完全にリアちゃんの引き立て役になってる…

:攻撃に合わせてターン決めたり、最初から動きが全部わかってんのかよって感じだな…

:うっわ、同接の伸びえっぐ…

:リズちゃんの舞いの時もちょっと伸びてたけど、戦闘時間短かったからな。今回は少し長く戦闘してるから伸びるな

 

 

 

 

「────────。」

『プッ…ギィィ!!!』

「…終い。咲いて《氷華(グレイシア)

これにて、終演。また、次のステージ(ライブ)で。」

 

わたしの一言を起点に、オークの全身に氷の薔薇を咲かせる。そのまま全身が凍り、わたしが一つカーテシーをすると、オークの全身が砕け散り、舞う氷の粒が光を反射してキラキラとしている。

 

「わぁぁ!

さすがリア姉!今度は私が踊るからね!!共同戦線(コラボ)だよ!!」

 

:感涙ッ!!!

:ひたすらによかった。

:これはバズる予感

:登録した

:なんで投げ銭出来ないんですかっ!!!

:こんなライブ、タダで見ていいんですか!?いいや良くない!投げさせろ!

:オラ!収益化はよ!!

:こんな子達が今日初めてのダンジョンってマジ???

:どこのアイドル事務所でもこれ程のアイドルは居ない。アイドルシーカー・プロダクションでもここまでアイドルしてない。

 

「うわ…コメント早すぎて読むの大変…」

「あはは!同接数万超えてるじゃん!

すっごいね〜!初配信でこれは快挙なんじゃないかな!」

 

なるほど。これがバズ。

 

 

 

 

 

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