TS転生者と行くスレイブ   作:TSモノ大好き醜鬼

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思いつき100%です
多分続きません、誰か魔都スレ×TSモノ書いて…


何かおかしい原作開始?

 

「ふぅ…こっちは終わりだな」

 

「床掃除も完了っと、あとゴミ出しだけね」

 

「ったく、毎朝毎朝こき使いやがって…マジで助かるぜ。」

 

始業のチャイムも鳴る前の教室内

1限目の始業もあと数分で始まるというのに教室内にいる生徒の大半が男子生徒だった。

 

「まあ優希と(あおい)のお陰で俺達は楽できてるけどな♪」

 

「お前らなぁ…」

 

「大丈夫よ、私だって好きでやってるんだから」

 

そう言いながら「ゴミ捨て行ってくるー」と埃や塵が入ったゴミ箱を()()()()教室を後にする。

 

「ったく、お前らも少しは働けよ」

 

「悪い悪い、お前らだけに任せた方が早めに終わるからよ。後でジュース奢るわ」

 

「まったく…」

 

「そう言うなって。こっちも楽できて感謝してるぜ?―――お、女子サマの遅い登校だ。」

 

始業のチャイムと共に校門を跨ぐ女子生徒

朝早くから登校していた男子と対照的に悠々と歩くその姿はこの世界の縮図を端的に示していた

 

「仕方ねぇよ、男は桃の恩恵を受けられない。生まれた時点で人生ハードモードだ。」

 

2020年現在、令和の世のこの世界において本来あり得ない光景は今ではごく普通のこととなった。

 

男女平等という言葉は跡形もなく、女尊男卑という新しい正常が社会に普及。

 

その差は顕著に出ており、現各国首脳は軒並み女性。そして、電車等の公共交通機関では男性と女性で車両を分けられるなど歴然とした差が出ていた。

 

「―――んん!?アイツらいつの間に…!」

 

「あー…」

 

そんな優希の見つめる先にはついこの間まで女の気配すら無かった同級生と女子生徒が手を繋いで登校していた。

 

「知らないのか?『大会で優勝できたのは貴女のおかげです交際してください』って頼み込んだらしいぜ」

 

「スポーツ出来る奴はモテるんだな…クッソ、羨ましい…!」

 

こんな世界でも彼らはれっきとした男子高校生である。色恋沙汰の一つや二つ、羨望や嫉妬の感情を抱くこと自体珍しくない。

 

「いや、お前には()()がいるだろ?」

 

「っ!」

 

服部からの指摘に身体を強張らせる

隠す気があるのか無いのか、優希がこの手の話題になると恐ろしいほどに分かりやすくなる事を2人は知っていた。

 

「いや、別に…」

 

「惚けんなよ、先週の日曜に二人でデートしてたろ?」

 

「な!?何で知ってんだよ!?」

 

「俺がリークしましたw」

 

そう言う諏訪の携帯には碧と優希が二人で町中を歩いている瞬間が激写されていた。

 

しかも、優希に至っては顔を赤らめているという分かりやすいデートの瞬間だった。

 

「おま、いつの間に?!」

 

「それで…どうだったんだよ!」

 

「告白は?キスは?どっちだ!?」

 

2人とて悪気があるわけでは無い

男の階段を登ろうとする友人の背をどうにか押してやりたい一心なのだ。

 

―――決して、毎度毎度自分たちの前で男なら羨む構図を見せつけられている腹いせなどではない

 

「…たよ

 

「ん?」

 

「た、楽しかった…」

 

「「…えぇ?」」

 

この一言で2人は察した

―――コイツ、またチキりやがった

 

この手の流れも既に何度もあった伝統芸能(お約束)でしかない。

 

2人がいい感じに優希と碧を引き合わせても、シチュエーションをそれっぽい感じで整えても、その努力を嘲笑うかのように結果は振るわない。

 

「ねえねえ聞きましたかい、諏訪さん!優希さんったら、また恥ずかしがって告白すら出来なかったそうですわよ!」

 

「男の風上にも置けませんねぇ!?」

 

「言いたい放題言いやがって…!」

 

そんな優希を責めるが如く、謎のお嬢様口調で弄り倒す。

 

彼だって好きでやっている訳ではない。いざ己の思いの丈を話そうと緊張のあまりあがってしまい、口がうまく回らなくなるだけなのだ

 

「大体、俺だって碧に―――「私がどうかした?」うぉ!?」

 

告白したい―――その言葉は渦中の人間の登場で途絶える事となる。教室の入り口に目をやると空のゴミ箱を浮かせながら立っていた。

 

「おい優希、今こそ挽回のチャンスだぞ?」

 

「ええ!?」

 

「碧!優希が少し話があるってよ!」

 

「いや心の準備が―――「んじゃ、俺らは飲み物買ってくるわ!碧はリクエストあるか?」

 

「じゃあ午後ティーで」

 

OK!といいながら教室を後にする2人

残された碧と優希はを互いに見つめ合い、登校する女子生徒の話し声だけが教室に薄っすら響いていた。

 

「それで、話って?」

 

「え、あ、その…」

 

「?」

 

「お、俺と…」

 

『付き合って下さい』

あと少しなのに言葉が喉に引っかかるかのように出てこない。あれだけ言おう、話そうと決めていた言葉が出てこない。

 

気まずい空気が流れ始める間となる前に、決意を経て、言葉を絞り出す

 

「―――今日、一緒に帰ってくれないか…?」

 

「いや、何時も一緒に帰ってんじゃん。別にいいけど…」

 

「お、おう。」

 

この期に及んで、彼は小心者だった

 

―――もし、断られ、拒絶されたら

 

―――もし、気持ち悪いと罵倒されたら

 

彼女がそんな事を言う人間ではない事は長い付き合いの中で百も承知だった。

 

それでも断言は出来なかった。

 

「戻ったぜー、碧…優希とどうだった?」

 

「どうって…ただの一緒に帰ろうって誘いだよ?」

 

「「…」」

 

そんな優希を戻ってきた友人2人はまるでチベットスナギツネの様な表情で冷たい視線を送っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いつからだろう、今の自分より前の自分の記憶がある事に気付いたのは。

 

何時からだろうか、ここが作りもの(フィクション)の世界だと気付いたのは

 

魔都精兵のスレイブ

 

主人公たる和倉優希とヒロインの羽前京香による、令和の世では中々に珍しいムフフな展開を混ぜ入れたバトル漫画である。

 

アニメ化までされた当作品は連載は今なお続く、典型的なハーレムものとして完結には至っていない。

 

―――『あ、えっと…わ、わくらゆうきです』

 

そんな幼少の頃、隣に引っ越してきた家族の挨拶とテレビで流れる魔防隊の活躍を取り上げた番組がその世界である事を私に突きつけた。

 

といっても、そこまで悲観はしていなかった

女性として生まれ落ちた事を除けば

 

どうしようもないロストアポカリプスな世界観でもなければ、世界を救ってくれそうな主人公もちゃんといる。

 

『放っておけば何とかなるのでは?』

そう考えたが、万が一もあるし、それに杞憂だったとしても主人公を強くしておいて損はない。

 

そこからはトントン拍子だった

主人公たる彼にまだ見ぬ原作のラスボスを叩き潰して貰わんと鍛えまくった。

 

―――時には一緒に遊び

―――時には鍛錬と称して育ての伯父さんに一緒にボコられたり

―――時には姉を失い、失意の淵に立たされる主人公を励ましたり

―――時には鍛錬と称して伯父さんと一緒に投げ飛ばしたり

 

家事だけでなく、フィジカルや精神も鍛え上げ、原作開始時点の様なもやし体質ではなく、中々の細マッチョへと育て上げた。

 

その結果どうなったかと言うと―――

 

 

「…」

 

「…あのさ」

 

「え?!ど、どうした?」

 

「何でそんなガチガチに緊張してんの?」

 

「い、いやぁ…気の所為だろ」

 

様子のおかしい主人公へとなってしまった

おい栗原、窓とかどうでもいいぞ。どうなってんだこれ?

 

ある時を境に私と話す時だけガチガチになってしまうのだ。しかも頑なに何も無いと振る舞おうとする。

 

クラスの女子と話す時でもここまでではない。

実際、業務上の連絡や普通の会話においても大なり小なり恥ずかしがることはあるがここまで酷いものではない。

 

「お、着いたよ」

 

「え?もう!?ちょちょ」

 

家までの最寄り駅に着いたため、席を立ち、()()()()()()からホームに出る。

 

利便性の良さから『パートナー』制度を利用してみたが、やはり元男としてこの手の女尊男卑システムにはいい思いはしない。

 

「あ、そうだ。今日伯父さん泊まり込みになるっぽいから優希の家に泊まりに行くね。」

 

「え"、聞いてないんスけど…」

 

「今日の朝言われたからね、おばさんには連絡済だから問題なし」

 

「母さん…」

 

私の言葉にどういう訳か頭を抱える優希

なんだよ、別に泊まりに行くなんて何時もやってるだろ。

 

「…そう言えば、碧は卒業後どうするんだ?」

 

「いきなり話振るじゃん。まだ悩んでんの?就職先決まってたじゃん。」

 

「決まってるけどさ…やっぱり、何ていうか…その、もっと活躍出来る場所が欲しくてな…」

 

「あー成程?」

 

優希の特技は『家事』

家庭内では活躍するが、社会の場で役立てる物かと言われればそうでもない。

 

身体能力(フィジカル)は鍛えられているが、肉体労働系はその手の能力者が跋扈している。とても今の優希が参入するにはハードルが高すぎた。

 

「だから、碧はどうすんのかなって気になってさ」

 

「私?私は―――ん?」

 

優希の言葉を答える前に周囲の異変を感じ取る

町中にしては異常な濃さの霧、下手したら数メートル先が見えない環境下となっていた。

 

「優希、周り見て」

 

「え?…何か霧濃くないか?」

 

「濃い何てレベルじゃないね、離れないでよ」

 

前後左右方向すら分からない状況に脚を止め、一度待機する。

 

暫くすると突風が吹き、急速に霧が晴れ始める

そこにあったのは先程までのコンクリートジャングルなどではなく―――

 

「ここってまさか…!?」

 

「うん、魔都って奴だよね、コレ…」

 

この世界が女尊男卑たる最たる理由が込められた異世界が私達を歓迎していた。

 

この世界におけるメインの舞台

現実世界では考えられない様な岩山や構造物が立ち並び、空は赤紫色の雲が覆っている。

 

コレってアレですか?原作開始って奴ですか?

 

「ヤバいぞコレ…いや、確か授業で対応マニュアルがあったはず…」

 

「そっちで見れそう?私の方はバッテリー温存しとく」

 

魔都の中で救助が来るのなんて何時になるか分からない。()()()()()()()()()()()()とはいえ、どう転ぶのかは分からない。備えておくに越したことはないだろう

 

『魔都災害についてお答えします。魔都に通じる―――通称(クナド)は位置が固定されていますが、中には突発的に発生する門もあり、一般人が魔都に迷い込んでしまったり醜鬼が現世に出てしまったりする被害を魔都災害と呼びます』

 

いやさっさとどうすれば良いのか教えて欲しいんだけど。

 

「ちょっ!?碧、コレ俺のスマホだから?!」

 

おっといけない、緊急事態の癖して長ったらしい説明をしてくるもんだからついキレそうになってしまった。

 

優希のスマホがミシミシと音を立てているが辛うじて損傷はないからセーフ

 

『魔都に迷い込んでしまった場合、むやみに動かず魔防隊の救助を待ちましょう』

 

「よし、少し歩こう」

 

「え、いやでも動くなって…」

 

「流石にこんなだだっ広い場所で棒立ちしてたら醜鬼に見つかるよ。せめて何処かの岩陰に移動しないと」

 

今私たちがいるのは遮蔽も何も無い平地

何体かなら対処出来ないことはないが、群れレベルで来られると対処し切れない。

 

移動しようとする―――が、突如として背後の地面が盛り上がる

 

「マジかよ…!?」

 

「優希、下がって!」

 

地面から数体の醜鬼が現れ、こちらを襲おうと突撃してくる。このくらいなら対処は可能。

 

―――振り上げた腕が当たるより前に、醜鬼達の身体が突如として圧し潰され、血のカーペットに変わる。

 

「うぉ凄え…」

 

「ふぅ…何とかなった」

 

「相変わらず凄い能力だな…」

 

この世界では魔都で採れる『桃』を摂取する事で女性のみに限り、特殊な能力を得ることが出来る。

 

私の能力は『一番星の誘惑(アルテミス)

重力を操作する事が出来るというシンプルなもの

尤も、()()()()()()()()()()()()()()

 

「早く行こう。今の音でまた醜鬼が来るかもしれない。」

 

「碧の能力なら何とかなるんじゃ…」

 

「両手で収まる数までは確実に何とか出来る。でも、群れみたいなレベルで来られたら優希の方が無事じゃ済まない」

 

「お、俺の方か…」

 

そう、いくら重力を操作出来るとは言え無造作に振るえば優希を巻き込みリスクを持つ。だからこそ、大群の相手は絶対に避けなければならない。

 

「だから早めに―――

 

ドドドドドドドドド

 

何の音…?」

 

音の方向に視線を向けると醜鬼の大群が此方に向かって来る。どう見ても数十体はいる。

 

「もしかしてヤバい…?!」

 

「もしかしなくてもヤバい、逃げるよ!!」

 

全速力で反対方向に向かって走る

さり気なく優希と自分の体重も能力で軽くしておき、少しでも速度を出す。

 

私も優希も実質YAMA育ちの伯父さんに死ぬ程しごき回された事もあり、優希の身体能力は人間全体でもかなりの上澄み。

 

私に至っては生来のフィジカルがゴリラに近いレベルなのもあり、醜鬼との差は一定の距離で留まっている

 

「優希、まだ走れる?!」

 

「いけるけど…向こうが疲れてる様子は無いぞ!?」

 

だが、いくら鍛え上げても人間の範疇

人知を超えた存在である醜鬼とはスタミナ差でジリジリと距離を詰められるだろう。

 

それでいい、()()()()()()()()

 

「―――碧、前!」  

 

醜鬼から逃れんと走る私たちの進行方向に醜鬼が1体だけ現れる。普通なら絶望ものだろう

 

しかし、その醜鬼は人を背に乗せ、あろう事か私たちの頭上を飛び上がり、醜鬼の群れと私たちの間に割って入る。

 

「もう襲われているとは、運のない奴らだな。私の後ろに隠れていろ」

 

そう言いながら帯刀した刀を抜き、醜鬼達に向かって言い放つ。

 

「屈服の時間だ!」

 

そこからは早かった

洗練された剣技と身のこなしにより醜鬼達をバラバラにしていく。あれだけいた群れもみるみる内に数を減らしていく。

 

しかし、馬の差で乗っている醜鬼の動きが徐々に鈍り始める。遂には醜鬼の攻撃を受け、動きを止める。

 

「チッ、コイツではやはり脆いか」

 

乗っていた彼女に追撃しようと醜鬼が近づくが、瞬く間にバラバラにされる。

 

「魔都災害の遭難者だな?魔防隊七番組組長羽前京香だ。―――安心しろ、助けてやる」

 

「よ、良かったぁ…」

 

「ありがとうございます、助かりました」

 

「悪いが安心するにはまだ早い」 

 

「へ?」

 

ドドドドドドドドド

 

その発言が現実になるかのように、また新しい醜鬼の大群が此方に向かって来る。

 

「…これはマジでヤバい…!」

 

「京香さん、どうしましょうか…」

 

「仕方ない、3人乗りにはやや狭いが乗れ!」

 

そう言うと先程騎乗していた醜鬼同様、手負いの醜鬼に鎖が巻き付けられる。あの、腕とか取れてるけどコレより良いのか無かったのか…?

 

そんな疑問を思いつつも迫る醜鬼の大群から逃げながら、京香さんは切り捨てていく。しかし、元よりボロボロになっていた醜鬼、限界も早かった。

 

「右に避けろ―――クソっ!」

 

「危なっ!?」

 

京香さんの指示に反応出来ず、首を斬られ、骸と化す。私も優希を連れてどうにか回避する。

 

「うおっ!?」

 

「させないっての!」

 

醜鬼を失い、機動力の欠いた優希を襲おうとするが既の所で重力で圧し潰される。

 

この状況を分が悪いと判断したのか、京香さんが懐から取り出した札を刀で突くとバリアの様な物が周囲に展開される。

 

「簡易的な結界を張った、パニックになるなよ」

 

「ただ、あまり長持ちはしなさそうですね…」

 

「っ!もうヒビ入ってますけど!?」

 

恐らく、結界の能力を札に封じ込めてカートリッジ形式にしている。誰でも使えるが、強力なものではないのだろう。

 

「…一応聞くが、お前の能力はどんな物だ?」

 

「重力操作ですけど…周りを巻き込むリスクもあるので」

 

「この窮地を脱するには厳しいか…」

 

いや、出来ないことはない

周りを巻き込むリスクがあるとは言え、ある程度はカバー出来る。しかし、ここでそれをしてしまえば今後の展開は大きく変わってしまう。

 

「―――2人とも、名前は?」

 

「和倉、和倉優希です」

 

三輪(みわ)碧です」

 

「そうか、碧。すまないがお前の彼氏を少し借りるぞ

 

すいません、そう言う関係じゃないです

 

「そ、そうか…優希、ここを出る方法があるがお前にも働いてもらいたい。」

 

「本当ですか?!助かるなら何でもします!」

 

優希がそう言うと何処か覚悟を決めた手を差し出しながらこう告げる。

 

「よく言った。ならば今から、お前を私の奴隷にする」

 

うん、この展開になるのは知っていた

知っていても尚思ってしまう

 

京香さん、いくら優希がタイプだからっていきなり…

 

「違う!そういう意味ではない!」

 

いや、この流れは完全にそれじゃん

女王様的なアレじゃないですか

 

「奴隷とした生命体の力を引き出し使役する、それが私の能力だ。―――お前自身が強化されればこの場を生きて脱出できる」

 

「だからって奴隷は…!」

 

そう言いながら私の方をチラリと見る優希

何だ、気まずいなら別の方向いてるけど

 

「―――一つ聞いていいですか?」

 

「何だ?」

 

「俺が奴隷になれば碧は助かりますか?」

 

「ああ、絶対助かる。」

 

その答えを聞くと優希の表情がビビリ散らかしていた年相応のそれから、覚悟を決めたモノに変わる。

 

「屈服の時間だ」

 

京香さんの指と優希の舌が触れ、眩い輝きが周辺を覆う―――

 

「おお…優希何かカッコ良くなったね」

 

『マジで?!というか俺何かデカくなってる!?』

 

光が収まるとそこには前世の記憶で見たあの奴隷(スレイブ)の姿となった優希がいた。…何か私の知ってる奴より2回りくらいデカい気がするけど

 

そんな考えを他所に、醜鬼達を食い止めていた結界が限界を迎え始める。

 

「碧乗れ!」

 

「は、はい!」

 

京香さんの言葉に従い、優希の背中に乗る

本来一人乗りなせいか、乗り心地はお世辞には良いとは言えない。

 

「さあ優希!自分の力を振るってみせろ!」

 

「え、ちょ―――」

 

『うおおおおお!!』

 

刹那、ジェットコースターでも感じた事のない疾走感に包まれる。振り落とされんとどうにか京香さんの身体に手を回して必死に抱きつく

 

しかし、流石の戦闘力

通り過ぎざまに醜鬼達を血祭りにあげていき、醜鬼の大群がちぎっては投げちぎっては投げを繰り返される。

 

「素晴らしい…ここまで強化されるとは!」

 

「当たり前ですよ、私の幼馴染なんで。というか少しスピード落として、酔いそう

 

すると数が減った醜鬼の群勢はこのままでは勝てないと悟ったのか一塊に合体しだす。

 

「合体…というよりは巨大化ですかね?」

 

「所詮は苦し紛れの悪足掻きだ!突っ込め優希!ありったけの力をブチ込め!

 

『おおおおお!!』 

 

しかし、そんなのは関係ないと言わんばかりに巨大化した醜鬼に連撃を叩き込み、トドメとして渾身の一撃を叩き込む。

 

「うおっと危な!?」

 

その一撃は醜鬼の顔面を打ち砕き、衝撃は騎乗している私達にも伝播していく。

 

慌てて振り落ちないように手を伸ばし、咄嗟に触れた()()を掴む。

 

 

―――ジャラ

 

 

ん?ジャラ?

 

「へ?」

 

「な!?」

 

『え?』

 

咄嗟に掴んだモノに目をやる

自分の手の先には京香さんの掴んでいた筈の鎖―――それをがっちり掴んでいた。

 

それに反応するが如く、また優希の身体が眩い光に包まれる。

 

「え、えっと…これって…」

 

「…しくったな」

 

『な、何か俺また見た目変わってないか!?』

 

先程の奴隷の姿と異なり、全身の皮膚は白から黒混じりの灰色に変わり、赤い紋様は無くなり、その代わり赤いひし形の光マークが刻まれていた。

 

意図せぬ『貸出』によって発動した無窮の鎖(スレイブ)の新形態、その名も―――

 

無窮の鎖(スレイブ)奈落(ならく)

 

「これ…やっちゃった奴ですかね?」

 

「そう言う事だな…っと」

 

「京香さん?!」

 

少しふらつき倒れそうになる京香さん

先程の戦闘にしては疲れが溜まりすぎている、これは―――

 

「大丈夫だ、恐らく暴発した『貸出』の影響だ」

 

「貸出…?」

 

「ああ、鎖に触れた者に一時的に奴隷を貸出ものだ。…すまない、一瞬手を離していたのだが…」

 

「いえ、元は自分の不注意で―――ん?」

 

話の最中、視界の隅で何かが此方に向かって来る

視線を向けた先には先程までのものと同レベルの醜鬼の大群が向かって来ていた。

 

「また来てる…!?ゴキブリじゃん…」

 

「言い得て妙だな、実際この区域は他より醜鬼との接敵率が高い…恐らくそのせいだろう」

 

『おいおい…また来るのか!?』

 

連戦、それも思わぬミスで京香さんは疲労状態

優希の奴隷化があれどあの大群を真っ向から捌くのは中々厳しい。

 

「京香さん、近くの魔防隊の施設は?」

 

「生憎、あの醜鬼の軍勢の向こう側だ」

 

そうなると迂回は現実的ではない

逃げようにも優希の奴隷化がどれだけ続くのかも不透明―――なら、打てる手は一つ

 

「優希、行ける?」

 

『…まさか、やる気か?』

 

「確かに、優希の奴隷化も何時まで続くか分からない以上…だが…」

 

しかし、京香さんは一般人の私を巻き込むことに抵抗がある様で決めきれていない。なら、少し私が人肌脱ぎますか

 

「大丈夫です、今の優希が戦えるなら私も能力を十全に使えます。」

 

「…」

 

私の言葉に少し考え込み、決断を下す

 

「碧、優希の手綱を握れ」

 

「え"…私、騎乗戦とか全くの無知ですけど…」

 

「問題ない、私が補佐する」

 

『心配すんな、碧に傷一つつけさせねえからよ!』

 

一抹の不安もあるが、この頼もしさは計り知れなかった。原作にはないイレギュラー、例えそれでも打ち砕かんとする姿は安心感さえ感じられる

 

「―――よし、行こう!」

 

『おう!』

 

決意を力に、醜鬼へと突っ込んでいく

先程までよりも速く、そして鋭い一撃が前方の醜鬼達に撃ち込まれる。

 

『オラオラオラァ!!』 

 

先程までの攻撃が荒々しい力技なら此方はその力に技を上乗せされたような洗練さがあった。こう見ると伯父との鍛錬も意味があったのだと感じられる

 

「背後は私がやる!」

 

京香さんも疲労を一切感じられない剣捌きで醜鬼を斬り伏せていく。

 

一方で私も能力を構える、イメージするは醜鬼達を引き寄せる強大な引力、全て吸い込むブラックホールの様な引力の塊

 

「―――重力塊(グラズリオ)

 

突如として1点に集中した重力に従い、醜鬼達が岩石諸共引き寄せられぶつかり合う。時間と共に圧力は更に強まり、互いを押し合う引力だけで彼らの身体が砕け始める

 

「更に…こう!」

 

それだけに留まらず、醜鬼を引き寄せる重力の塊を薙ぎ払い、軌道上の醜鬼を地形を削り取り、巻き込みながら肉塊の体積と密度を増やしていく

 

「まだまだ…!」

 

更に、醜鬼達の集中している地点の重力を増幅させ広範囲の醜鬼を圧死させる。

 

「よし、優希大暴れだ!」

 

『ああ、任せておけ!』

 

そう言い醜鬼達に向かい手を翳すと背後から閃光が放たれる。放たれた光線は大地と醜鬼を削り取りながら通過していく。

 

『更にもう一発!!』

 

今度は掌から光が放たれ、先程までのモノより極太の光の柱が醜鬼の大群を消し飛ばしていく。

 

(凄まじいな…優希は元より碧の力がここまでだったとはな…) 

 

碧の能力に京香は圧倒されていた

単純な破壊規模なら自身が知る魔防隊の組員と比較しても上澄み、しかもそれを戦いとは無縁の高校生がやってのけているのだから驚愕するしかない。

 

既にここまでで全体の8割近くが殲滅され、この状況を理解したのか敗色濃厚と悟った醜鬼達が再び合体する。

 

「また巨大化か…」

 

『しかも2体か…何ならさっきのよりも少し大きくないか?』

 

「気を付けろ、片方に注視し過ぎるとやられるぞ」

 

それだけでなく、先程の巨大醜鬼よりも一回り大きく、数も2体と状況が違う。しかし、先程までの様な劣勢さは感じられない。

 

「優希は右の方をお願いね。」

 

『碧はどうする気だ?』

 

「私は左の方をやる、京香さんは優希のをお願いします」

 

「分かった、無理はするなよ」

 

ちょっとした作戦会議を終え、各々が動き出す

能力による反重力により、宙を飛ぶ碧と空いた騎手を補う形で醜鬼へと向かう京香と優希

 

本来、奴隷の潜在能力(ポテンシャル)を引き出すには主が騎乗する人馬一体の形式が求められる。

 

しかし、貸出により一時的に主が碧になっているとは言え、本来の主は京香であり、彼女が乗り手として働く事で100%と言えずとも潜在能力を引き出すことが可能となる。

 

「行け優希!彼女の前でかっこいい所を見せてやれ!」

 

『うおらぁぁぁ!!』

 

「だから彼女じゃないって…」

 

優希は両腕に力を溜め、巨大醜鬼の顔面に張り付く。押し当てた両の掌から先程よりも眩い光が漏れる

 

一方で宙を舞う私はもう片方の醜鬼の眼前で腕に重力を集中させる。溜めこんだ重力を本来ならあり得ない横方向へと、その延長線上にあるものを消し飛ばさんと解き放たれる。

 

「―――引力槍(グラズランス)

 

『―――隷光撃(れいこうげき)

 

優希の両掌から放たれた光の柱と紫色の空間の歪みがそれぞれ巨大醜鬼の上半身を消し飛ばす。

 

『よっしゃぁ!全部倒せ―――ってうおおおぉ!?」

 

「はい、回収っと」

 

最後の一撃で限界を迎えたのか、優希も元の姿へと戻っていく。 

 

流石にこの高さから地面に叩きつけられればひとたまりもないので優希の身体を抱え、能力で落下速度を落として安全に着地する。

 

「ぜ、全身が痛い…」

 

「寧ろ、あれだけ暴れて痛いで済むのなら大したものだ。お前にそこまでの力があるとはな」

 

「ま、まぁ鍛えてるので」

 

「これからも私の奴隷として働き続けるといい。…だがそれには私の能力について―――」

 

京香さんが能力の説明をしようとした時、私の身体が何かに操られるかのように勝手に動き出し―――

 

「ん…」

 

「むぐっ!?!」

 

「そう来たか…変態め」

 

お互いの唇を重ね合う

接吻に留まらず、舌を入れ、お互いの口の中をかき回す。

 

「それが能力の代償だ、主が奴隷の働きに見合った褒美を出さなければならない。」

 

「あの…京香さん、これ体が勝手に動くんですけど…」

 

「この褒美は本人の意思と関係なく、体が勝手に動く…ぐっ…」

 

すると今度は京香さんが優希と唇を重ねる

手持ち無沙汰になった私の身体は今度は優希の首元へと近づき―――

 

「ん…」

 

「ッッ!??!」

 

思いっ切り吸い付き、首筋に赤い斑点―――言わばキスマークをつける。しかしそれだけに飽き足らず、優希の手を掴み、自身の胸に押し付ける

 

「…何か私だけエラく積極的な褒美じゃないですか?!」

 

「ぷはっ…恐らく、貸出の間の働きが私のそれより大きいのもあるのだろう…」

 

成程、そう言う事か

おま、ざけんなよ?こちとらクッソ恥ずかしいんだが!?

 

そして今度は耳元を舐め始める

こそばゆいのか、優希の身体がビクビクと痙攣しだす

 

「あの、これいつまで―――」

 

「私にも分からん!!醜鬼どもが奴隷の時は豚肉をやるだけで済んだのだが…!」

 

もう少し剣技だけじゃなくて能力の研鑽もしてくれよ!?あ、ちょっ、そこだめ―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…えっと、碧?」

 

「変態」

 

「わ、悪いって…」

 

そんな事が5分も続きようやく身体の自由が元通りになる。能力の代償だとは分かっているが、これくらいは許してくれ。

 

キスで留まる京香さんに対して何で俺は一線超える際々まで発展するんだ

 

元男とはいえ、流石に恥ずか死にそうになった。

多分、今の俺の顔は分かりやすいくらい赤くなっている。

 

「…この醜鬼は一匹が現実世界に出現した場合数十人の犠牲者が出る」

 

「魔都災害って奴ですよね、たまにテレビとかで見ますよ」

 

「私の目標は魔防隊の総組長になり、醜鬼どもを速やかに絶滅させることだ。今の総組長は手ぬるい」

 

そう言うと、京香さんは優希と目を合わせる

その瞳は決意に満ち溢れている

 

ついに、物語のスタートとなる分岐点が訪れる

 

「―――私のために働け、優希

 

「お、俺は…その…」

 

おい、何だその煮え切らない回答は

さっさと言え、なぜ私の方を見る!?

 

「何?良かったじゃん、昔からヒーローになりたいって言ってたじゃん」

 

「そうだけど…」

 

「…怖いの?」

 

「そうじゃなくて!俺は、碧が…」

 

…そうか、私の存在が足枷になっているのか

正直、原作に関わるのは此処までにしようと思ったのだが、こうなっては仕方ない。

 

「…京香さん、私から一つお願いがあるんですけど」

 

「何だ?」

 

どの道、卒業後はそっち方面に行こうと思っていたんだ。遅かれ早かれの問題に過ぎない、なら―――

 

私を優希と一緒に魔防隊の7番組に入れて

 

「碧!?」

 

もう一肌脱いで、私が軌道修正するしかない

 

「本気か?魔防隊は遊び半分で来ていい場所じゃないぞ?」

 

「そんなの、さっきまでの戦いで死ぬ程理解した。でも、どうせ卒業後は入るつもりだったし、丁度いいよ」

 

「だからってそんな―――「それに」

 

これは完全な私の自己満足(エゴ)

私が傍にいて、優希が少しでも安心出来るなら、少しでもその受難を軽く出来るのなら―――

 

「怖いんでしょ?なら、私が傍にいてあげる」

 

「でも…俺まだお前に助けられてばっかで―――「だから」

 

私が危ない目にあったら、優希が助けてよ

 

そんな私の言葉にようやく覚悟決めたのか、京香さんと向き直る。

 

やります…俺はここでヒーローになりたいです!

 

「―――決まりだな」

 

前途多難、本来進む筈の物語は形を変えながら

今、始まろうとしていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ところで碧」

 

「何ですか?」

 

「さっきからやけに顔が火照っているが大丈夫か?」

 

あんなクサい台詞言ったせいで恥ずか死にそうなんですよ察して下さい

 

「そ、そうか…」

 





三輪碧 
原作はなんと無く知ってるタイプの転生者
主人公の名前とかは知ってるし、完結もしてないから取り敢えず魔改造するかと鍛えまくった。結果、距離感が怪しくなった

元男なので自認♂と思っているが肉体に精神が引っ張られ始めている。スタイルは中々のモノ、身長は主人公よりもやや低い程度

因みに、前世で色んなバトル漫画を読み漁ったせいか、能力運用における造詣が異常に高く、潜在能力やセンスは天井クラスはある

和倉優希 
自分と対等に関わってくれる女子(主人公)に若干脳焼かれ始めてる。告白はしたいがうまく思いが伝えられず、空振りし続けている。この度、主人公とファーストキス&R-17.9くらいまで行って内心かなり複雑

原作同様の家事スキルに加え、主人公の介入で肉体的な強さもかなり底上げされている

羽前京香
内心、2人が付き合って無いと言われ「絶対嘘だ」と思ってる人。主人公と優希が盛り始めて少し気まずくなったが、主人公の能力とか強さについては手放しで評価している。

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