アズールレーン~紺碧の艦隊と蒼き海原~   作:非常勤務艦隊本部

10 / 18
△:EP3-3 天極作戦発動!

 

 

 

昭和18年4月18日。

 

ブーゲンビル島上空で戦死した聯合艦隊司令長官「山本五十六」は、アズールレーンの要素を含めた後世世界に『高野五十六』として、生まれ変わることとなる。

 

 

高野は、アズールレーンとレッドアクシズとの泥夢魔な戦争を防ぐために、密かに精鋭集団【紺碧会】を結成して、陸軍中将『大高弥三郎』と共に緩衝地帯【北北海道】にてクーデターを決行、新国家『大洋州同盟』を樹立して、第三勢力【大洋州同盟】を創設した。

 

 

だが、戦争へと転がり始めた歴史の流れを止めることはできず、平成11年12月8日。

 

大洋州同盟は、ユニオンの太平洋地域戦略の要であるハワイ諸島パールハーバーを奇襲攻撃し、これを占領した。

 

 

勢いに乗る大洋州同盟軍は、パナマ運河を破壊。

ユニオンの太平洋への軍需物資輸送手段を遮断せしめて、豪州でフレッチャー艦隊とモルガン艦隊を撃破して、太平洋の制海・制空両権をほぼ手中に収めたのである。

 

 

一方欧州にあっては、突然の政変により『ハインリッリ・ヒトラー』が総統の座に就いた【鉄血】が独裁政権と化してその猛威を振るっていた。

 

既にアイリスなどの同盟各国本土は、鉄血の重戦車軍団に尽く蹂躙され、アジアに亡命政権を樹立して欧州から撤退。

雄一の海洋国家【ロイアル】は孤立していた。

 

北方連合は、北よりレニングラード・オデッサを結ぶラインにまで押し込まれており、冬将軍の支援を待つばかりであった。

 

 

こうした事態に危機感を募らせたユニオン大統領「ルーズベルト」は、マンハッタン計画を急がせるも、高野五十六必殺の【弦月作戦】によってロスアラモスの原爆研究所を破壊、悪魔の計画を頓挫させた。

 

報告を受けたルーズベルトは失意のあまり、脳溢血で急死した。

 

 

そのため、時の副大統領『ビル・トルーマン』がユニオン第33代大統領に就任して、大洋州同盟は政威大将軍制度に変わった重桜と講和を結び、太平洋戦線は膠着状態となった…………。

 

 

 

 

 

平成14年 1月1日 日の出前

 

重桜 近畿地方

 

奈良県 熊野大社 玉置山

 

 

 

ここは、熊野大社の奥にある【玉置山】。

 

今、1人の男が斎戒沐浴をし、心を無にして、時を待っている。

 

男の名は、時の総理大臣「大高弥三郎」。

大洋州同盟の首相であったが、重桜と講和した事で大洋州同盟は重桜に帰属した為、そのまま重桜の総理大臣に就任したのだ。

 

今祖国は、未曾有の国難に遭遇していた。

この聖地熊野に登る日輪が、必ずや自分に………いや、祖国に何事かを示してくれる。

 

 

その天の声を聞くために、大高は待っているのだ。

 

 

そして重桜の空に日が上り、平成14年の朝が訪れた。

 

 

そして、大高弥三郎は感じていた。

 

今年……平成14年こそが、戦局の分岐点になる事を…………

 

 

 

この日、高野と前原が新年の挨拶も兼ねて、官邸を訪れていた。

 

 

帝都東京 千代田区

 

首相官邸 応接室

 

 

重桜海軍大臣:高野五十六総長「大晦日から熊野詣をされていたそうで?」

 

 

重桜政府総理大臣兼陸軍大臣:大高弥三郎「はははは、そんな事まで耳に入っていましたか。いや、熊野詣は例年の行事でして。」

 

 

高野五十六「………総理。私が思うに、今年こそが戦局の大きな『転換期』になるのではないか………と思うにならないのですが。」

 

 

大高弥三郎「…………。」

 

 

高野五十六「開戦以来、我々は勝ちを拾ってきましたが、【大局的に見て】本当に勝っているのかを…………私なりに考えています。」

 

 

大高弥三郎「………よく分かります。前世大戦にしても、平成14年初頭頃まで我々は勝利してきました。しかし戦略的次元では、真珠湾攻撃の時から『負けて』いたのです。」

 

 

高野五十六「やはり総理も、そうお考えでしたか。」

 

 

大高弥三郎「勝つことより“上手く負けること”の方が難しいものだと思っています。孫子は『百戦百勝は戒むべき』だと言っております。」

 

 

高野五十六「ユニオンとは開戦すべきではなかったのでは…………」

 

 

大高弥三郎「仰るとおりです。しかし我々は始めてしまった。始めてしまった以上は終わらせなければなりませんが、終わらせることは始める事より難しい…………ユニオンは負けを知らぬ国家です。我々は『一度も挫折を経験していない国家』に戦いを始めてしまった。」

 

 

高野五十六「今日伺ったのも実はその事なのですが、やはり和平交渉はうまく進んでいないのでしょうか?」

 

 

 

大洋州同盟が重桜に帰属した事で一応の計画は達成できたものの、肝心のユニオンとの講和交渉は遅々として進んでいなかった。

 

政威大将軍に就任した煌武院悠陽殿下が直々に交渉を継続しているものの、ユニオンの反応は今ひとつであったが、そこへアイリス教国の代表『リシュリュー』が仲介を申し出て、ロイヤル王室に働きかけているものの、ロイヤル政府首相である「キィストン・チャーチル」の反応は今ひとつであった。

 

 

大高弥三郎「しかし、彼も苦しい立場でもあります。」

 

 

高野五十六「『鉄血』ですな?」

 

 

大高弥三郎「戦況次第では、退陣もあり得ます。そうなればまた、違ってきます。」

 

 

紺碧第1艦隊司令長官:前原一征少将「………総理。なぜ欧州は、あの様な独裁政権の出現を許したのでしょうか?」

 

 

大高弥三郎「……………『平和主義』です。第一次・第二次世界大戦ともに、近代戦争の恐ろしさと悲惨さを身をもって実感したのが欧州です。「戦争はもう嫌だ、もう沢山だ」という考えが、堅固として深層心理に焼き付けられたのだとしても不思議ではないでしょう。その結果が平和主義です。その最中に『セイレーン』という存在が現れたことにより欧州は一時期、壊滅状態に陥りました。そこをうまく突いて、ヒトラーは鉄血を乗っ取って己の力を伸ばしました。前世では、連合国に敗れ去った『ナチス第三帝国』ですが、この後世世界でははるかに強い。」

 

 

高野五十六「兵器の開発も凄まじいものがあります。原爆の開発も進んでいると聞きました。」

 

 

大高弥三郎「そこが問題なのです。我々がユニオンの原爆研究所を破壊した結果、鉄血がユニオンより先に原爆を完成させてしまう可能性が出てきてしまったのです。これはユニオンが保有する事より、はるかに恐ろしい事です。」

 

 

そう言い、大高は話を続ける。

 

 

大高弥三郎「今、世界は『病』に侵されていると言えます。ヒトラーという途方もない『悪性腫瘍』のためにです。この癌を摘出しなければ、世界は死ぬことになります。各欧州諸国は、手術の痛みを恐れたがために、摘出時期を逸してしまいました。私も、平和を守るということは『戦争の原因を見つけて、防ぐ方法を学ばなければ』できないと思っています!しかし病気になったら、痛みが伴おうとも適切な処置をしなければ死をも招き兼ねません!今、我々が戦っている戦争はそれと同じことだと思うのです。一時的に大きな痛みが伴おうとも、それを恐れては世界中が鉤十字の旗に覆い尽くされてしまうでしょう!これからの戦は、世界を救うための『癌摘出手術』だと考えます!」

 

 

 

その話を聞いた前原は、感心しつつも心の内にある気持ちを口にする。

 

 

 

前原一征「いいお話を伺いました。総理の今のお考えを、部下にも話してやろうと思います。…………しかし総理、私は正直言って戦争とは『巨大かつ合法的な組織殺人』だと考えております!病気治癒とは言え、魚雷発射の命令を下せば多くの船と人命を奪ってしまう訳です。そのことを考えますと…………」

 

 

大高弥三郎「…………………申し訳ないと思っております。戦場で戦っている将兵たちに、心の痛みとなる『矛盾する行動』をお願いしている事は承知しております。前原さん、その痛みを感ずる気持ちを、指揮官として忘れないでいただきたい。それを忘れたならば、我々は単なる殺人集団でしかなくなっています。」

 

 

前原一征「はっ。」

 

 

 

高野五十六「戦争とは誠に…………不条理なものです…………。」

 

 

 

両雄の虚しさとは裏腹に、平成14年の正月が過ぎていった。

 

それから数日後…………

 

 

 

平成14年1月中旬

 

重桜茨城県 霞ヶ浦

 

 

ここ重桜海軍の【土浦水上爆撃飛行団基地】に、臼井丈男少佐が『天極作戦』の準備に伴い赴任してきた。

 

 

重桜海軍所属:臼井丈男少佐「ここはのんびりとした良い場所だな。」

 

 

ブレイズウィッチーズ所属:雁淵孝美中尉「臼井司令は土浦は初めてですか?」

 

 

臼井丈男「あぁ。呉に居ったからな。」

 

 

雁淵孝美「自分は、去年の9月頃に先行して赴任しています。」

 

 

臼井丈男「そうか…………あぁ早速だが、あとで全員を集めてくれ。皆の顔を覚えておきたい。」

 

 

雁淵孝美「わかりました!」

 

 

 

臼井丈男「…………''例の実機''も間も無く到着する。忙しくなるぞ?」

 

 

雁淵孝美「はい!」

 

 

 

 

平成14年2月3日

 

泰山航空工業 土浦工場

 

 

この日、高野と前原は天極作戦に投入する実機の視察のため、泰山航空工業の土浦工場の視察へと向かった。

 

車内で東野源一郎直々の出迎えを受けた両雄は、湖畔に位置する大格納庫に到着する。

 

 

大格納庫にて

 

 

そこには、今までの常識を覆すほどの大きさを誇る『飛行艇』が佇んでいた。

 

 

高野・前原「「おぉ…………!!」」

 

 

東野が格納庫内の電気をつけると、その全貌が明らかになる。

 

胴体が3つに分かれた巨体に、独特形状をしたな尾翼、そして既存の発動機とは一線を画す大型なエンジンを6発搭載した機体が目の前にあった。

 

 

前原一征「これは………!!」

 

 

高野五十六「こいつが空を飛ぶのか………!!」

 

 

 

東野源一郎「【超大艇『富士』】です!」

 

 

 

この3胴飛行艇こそ、天極作戦の要として計画・製造された超飛行艇『富士』であった!

 

 

東野源一郎「如何ですか、閣下。」

 

 

高野五十六「なんとも…………図面や模型でわかっていたつもりだがこれ程とは…………。この機体を見たら欧米人も、我々のことを『人まね猿』と言えなくなるでしょう。」

 

 

東野源一郎「この富士は、同盟各国の優秀な頭脳が極めて短期間に達成した『世紀のプロジェクト』です!各種分野の技術者たちが、在らん限りの能力を絞り出した、技術の結晶です!」

 

 

 

富士は、世界最大の超飛行艇であり性能に於いても、ユニオンの超重爆撃機B-32を上回っていた。

 

なりよりの利点は、海か湖があれば長大な滑走路を必要とせずに運用できて、何処からでも作戦行動が可能なほどである。

 

 

航続距離22,000、時速670、この脅威的な性能を可能にしたのは【ESD】と呼ばれる『超ジュラルミン合金』の【波板構造】の外板材で、これが機体重量を大幅に抑え込んだ。

 

この波板構造は、現代においても身近でよく使われる【段ボール】にも使用されている。

 

 

併せて、強力なる【航空機用ワルター発動機】を開発したのである。

 

 

前原一征「あれが一石博士の………『5,000馬力ワルター発動機』ですか……!!」

 

 

東野源一郎「ワルターなくして、富士の完成はあり得ませんでした!」

 

 

高野五十六「あの天才科学者の亡命を受け入れたことが、こういう形で結実している。これも、大高総理の深い読みの一つです!」

 

 

 

一石博士こと「アインシュタイン博士」は、ユダヤ人迫害を逃れるため北方連合を介して旧大洋州同盟に亡命して、重桜にて研究を続けていた。

 

そして…………

 

 

 

都藤一郎「あの科学者のおかげで、ストライカーユニットも新機軸なものを開発できました。」

 

 

前原一征「あなたが、あのストライカーユニットの開発者の!」

 

 

都藤一郎「都藤一郎です。以後、お見知り置きを。」

 

 

高野五十六「今回の作戦には、ウィッチ隊も動員することなのだが…………。」

 

 

都藤一郎「はい。元々は富士に搭載しようとしましたが、機体重量の関係で随伴機として設計しました。こちらになります……」

 

 

 

都藤に案内されて隣の格納庫に赴くと、そこにこれまでのストライカーユニットとは異なる機体があった。

 

 

 

前原一征「これが、新式ストライカーユニットですか……!」

 

 

都藤一郎「超距離直掩戦闘脚……『宝永』です。」

 

 

 

宝永。

 

富士の直掩機として都藤一郎博士が設計したユニットであり、脚長90.2、時速668、この機体にも富士と同様な工夫がなされているが、搭載しているエンジンはまた画期的であった。

 

 

高野五十六「新しい魔導エンジンの開発にも成功したとか……」

 

 

東野源一郎「はい。ここにおります、『ウルスラ・ハルトマン技師』のお陰です。」

 

 

 

ウルスラ・ハルトマン曹長。

 

ストライクウィッチーズに所属している「エーリカ・ハルトマン中尉」とは双子の妹で、幼い頃から本を読んでいたことから、戦闘で活躍する姉に対して、ウルスラは技術面において活躍した。

 

この後世に転移した時、あろうことか泰山航空工業の社長室であった。

 

その頃には他の世界からの転移者のことを聞いていた東野は彼女を保護することを決めて、それ以来、社内にてその頭脳を発揮したことから今回の富士計画に参加。

 

都藤一郎と一石博士と共に、直掩戦闘脚の開発に従事したのだ。

 

 

ウルスラ・ハルトマン技師「このストライカーユニット宝永には、それまでの魔導エンジンとは全く異なる物を搭載しています。それが、『超エーテルエンジン』です。」

 

 

都藤一郎「一石博士の頭脳はまさに優秀でした。お陰で、扱いが難しい『高密度エーテル』を効率よく使うエンジンの開発に成功しました。」

 

 

ウルスラ・ハルトマン「このエンジンは、過酸化水素を混合させた高密度エーテルを積載した燃料タンクを搭載していて、魔法力は始動時しか使わないため、航続距離に重きを置いたエンジンです。燃料消費がそれまでのエーテルエンジンと比べて約90%も抑えられています。」

 

 

前原一征「なんと………!」

 

 

ウルスラ・ハルトマン「更に緊急加速用として【ワルターブースター】を搭載しています。こちらは一時的に魔法力を消費しますが一定時間だけ『時速916.6km/h』を叩き出す事ができます。しかし燃料消費が悪化するため、使い切りとなります。」

 

 

高野五十六「凄まじい性能だな…………して、製造数は?」

 

 

都藤一郎「泰山航空工業のお陰で、3個航空団の分は確保できました。」

 

 

 

こうして新型機の視察を終えた高野と前原は数日後、斑鳩家第28代当主『斑鳩崇継』が一人の老ユダヤ人「ラビ」と、密かに会見を持った。

 

 

平成14年2月某日

 

京都市郊外 斑鳩邸にて

 

 

 

老ユダヤ人:ラビ「我が同胞に、樺太を割譲してくださる…………真ですか?!」

 

 

斑鳩家現当主:斑鳩崇継「はい。戦後を見通しての、大高首相と煌武院殿下の決断です。」

 

 

ラビ「大高首相と煌武院殿下の申し入れ、誠にありがたい事です!我々は長らく安住の地を求めてきました。」

 

 

斑鳩崇継「猊下ラビ。どうかこの重桜の意思を、世界中の同胞にお伝えください。」

 

 

ラビ「無論です!我が民族は鉄血のみならず、欧州全土はもとより至る所から迫害されてきました。……そんな我々に安住の地として樺太を与えてくださるという、重桜政府に深く感謝します!」

 

 

高野五十六「しかしこの話は当分の間はご内密にお願いします。議会などの根回しがまだ済んでおらず、この計画が事前に漏れますと、猊下のみならず大高首相と煌武院悠陽殿下の命も危うくするかもしれません。…………そればかりか、この計画自体が水泡に帰するやもしれません。」

 

 

ラビ「はい。よくわかっております。しかし…………モーゼが、我が民族を救った以来の奇跡です………!」

 

 

前原一征「大高首相は全陸海軍の中核をなす人たちから、全幅の信頼を受けていて、良い意味の権力を握っております。」

 

 

高野五十六「予想される反発をも押し切り、必ずや奇跡を起こしましょう。」

 

 

ラビ「分かりました。大高首相の奇跡を信じます!」

 

 

斑鳩崇継「猊下のお言葉を聞けば、首相も喜ばれるでしょう!」

 

 

 

大高弥三郎と煌武院悠陽は、このユダヤ人保護の計画を急いでいた。

 

もし大洋州同盟が負ける事があったらならこの計画は流れてしまい、樺太はスターリンのものになってしまう恐れがあった。

 

つまり、その前に既成事実化してスターリンの野望を食い止める事も含んでいた。

 

 

 

斑鳩崇継「それと建国の資金ですが戦時下のため、さしたるさしたるお手伝いができませんが…………」

 

 

ラビ「それはご心配には及びません!民族の念願が叶えば、世界史から資金を集められます!ご承知の通り、ユニオンにも数百万の同胞を有し、資金力と発言力には大きなものがあります!」

 

 

前原一征「もう一つお願いがあります。ヒトラーの力をこれ以上強めぬためにも、鉄血の原爆開発は防がねばなりません!」

 

 

ラビ「原爆製造工場、及びそれに関連する情報はネットワークで調査させています。必ずや、良い情報をお届けできるでしょう!」

 

 

前原一征「ありがとうございます。」

 

 

 

ラヴィ「あの男に、終末兵器を持たせてはいけません!これは、全人類の存亡に関わる大問題です!」

 

 

 

その後もこの会談は続き、新しく建国されるユダヤ国家はスイスを模範とする永世中立国を目指して、国名は『東方エルサレム共和国』になろうことなどが話し合われた。

 

 

 

会談後

 

海軍省 執務室

 

 

 

高野五十六「斑鳩氏とラビとの会議は、大成功であります。総理には議会の承認を取り付けるという大任が残されておりますが…………」

 

 

大高弥三郎《成算はあります、お任せください。それで高野さん。前原司令官に影艦隊の件は…………》

 

 

高野五十六「これからであります。はい、では。」

 

 

 

大高との電話を終えた高野は、本題へと移る。

 

 

 

高野五十六「前原くん。実は紺碧全艦隊に、新たに伊900型を3隻加えることにした。」

 

 

前原一征「総長、ありがとうございます!それだけあれば紺碧艦隊、補給の憂いなく七つの海を暴れ回る事ができます!」

 

 

高野五十六「はははwww、あまり暴れ回られては困る。あくまで影の戦力に徹してもらわんと…………これらは天極作戦の支援用だ。」

 

 

前原一征「心得ております。」

 

 

高野五十六「実はな、紺碧全艦隊の戦力強化はもっと大きな規模で考えているのだよ。」

 

 

 

高野がいう紺碧艦隊の戦力強化とは、鉄血と戦うにあたっての大規模なものだと言い、その基地は南樺太の大泊を予定していた。

 

今回の会談も実はそれを含めてのことで、これは大高弥三郎の発案でもあって、『東方エルサレム共和国』が建国されれば、南樺太の「真岡」と「豊原」を結ぶラインに【秘密の国境線】が出来て『租借地』を作ることとなる。

 

流石のユニオンでもユダヤ人が大きな力を持っているため、攻撃がしにくい場所となるのだ。

 

 

つまるところ、【地主】が『東方エルサレム共和国』となって、『重桜』が【借主】という事になるのだ。

 

 

 

 

その頃

 

ロシア 東部戦線

 

 

スターリンが指揮する北方連合東部方面軍は冬を待って攻勢に転じたが、鉄血が投入した新兵器の前に、連戦連敗の様相を呈していて、戦力をただただ消耗している有様であった。

 

そんな中、北方連合の代表KAN-SEN「ソビエツカヤ・ロシア」は、ユダヤ系ロシア人に対して国外脱出を認めて、北方連合所属のKAN-SEN達もヌルマンクス、アルハンゲリスク軍港から撤退して東アジアのウラジオストクへと移動を開始した。

 

しかし、鉄血総統ハインリッリ・フォン・ヒトラーは自身の要請に応じない大洋州同盟とレッドアクシズから脱退した重桜に対して憤りを募らせていて、いずれ完成するであろう原子爆弾を彼らの頭上に落としてやろと画策していた。

 

 

そして、ユニオンでは…………

 

 

 

ユニオン首相 ワシントンD.C.

 

ホワイトハウス 執務室

 

 

大統領補佐官2「大統領閣下。重桜はユダヤ人亡命者を大量に受け入れている事ですが……」

 

 

第33代ユニオン大統領:ビル・トルーマン(31)「それどころではない。彼らの国家を樺太につくろうとしているのだ。」

 

 

大統領補佐官1「らしいですな。しかし……どうも大高という男、日本人の国際感覚ゼロという我々の認識とは、だいぶズレがあるようですな。」

 

 

大統領補佐官2「大した狸野郎だ………!」

 

 

 

すでにユニオンでは、先の弦月作戦で負った被害の立て直しに躍起になっていたが、重桜のユダヤ人亡命者の受け入れと新国家建設という噂は、ユニオン政府の耳に入っていたが、一切ノーコメントを貫いていた。

 

だが、第33代ユニオン大統領ビル・トルーマンは、自身の支持率を懸念していた。

 

 

 

トルーマン「現時点での私の支持率は?」

 

 

大統領補佐官1「38%を………上下しています……………」

 

 

大統領補佐官2「それは''先週まで''だ……………!」

 

 

 

この時のトルーマンの支持率はすでに35%を割り込んでいて、自身の政権で民主党が失脚するかしないかの瀬戸際だった。

 

 

 

トルーマン『戦時下だというのに…………………私は歴代大統領の中でも最低か!!』

 

 

 

この事に、トルーマンは酷く憤りを露わにした。

だが、問題は他にもあった。

 

 

大統領補佐官2「…………閣下。問題はユダヤ人です。彼らは少数民族ですが、自式階級が多くオピニオンリーダーの役目も果たします!我がユニオンであっては、ジャーナリズムの多くも彼らの支配下にあり、その影響力は無視できません!」 

 

 

トルーマン「そんな事は分かっている!!」

 

 

大統領補佐官2「閣下!選挙に勝ちたければ、大洋州同盟の和平交渉を呑むべきです!第一、大西洋と太平洋の両面戦争は、戦略的に適切な体制とは思われません!」

 

 

トルーマン「…………君のいう事は、道理だ。」

 

 

意外にも、トルーマンは大洋州同盟と重桜との和平を多少望んではいたものの、そう簡単に決断できない訳があった。

 

 

 

トルーマン(それではこの戦争を始めた''前提''…………シナリオが全て狂ってしまうのだ。『影の政府』の意向には、大統領と言えでも逆らえないのだよ……………。)

 

 

 

ユニオン政府に巣食う『影の政府』の圧力が、トルーマンの政治的決断に大きな制約をかけていたのだ。

 

 

そして時は過ぎ……………………

 

 

 

平成14年3月

 

国会議事堂 大会議室

 

 

 

重桜初代政威大将軍:煌武院悠陽「大臣各位に申し上げますが、この戦はいよいよこれからであります。これまでの戦いは序盤に過ぎません。ユニオンの戦時経済は未曾有の活況を呈していて、数億の国民が星条旗の下に結集しております。これを侮る事は、愚策というものです!」

 

 

煌武院悠陽と大高弥三郎は、翌週に控えた本国会の『東方エルサレム共和国建国に関する法案』提出の前に、閣僚の意見を統一するため閣議を招集した。

 

 

大高弥三郎「本計画については本職が直接、各閣僚一人一人、個別に会談した通りであります。領土の割譲は必ずや国内の論議を沸騰させますが、是非是非各位の意思統一を図りたいのであります。」

 

 

煌武院悠陽「この煌武院悠陽と大高弥三郎総理自らの首をかけてでも、内閣総辞職すらも辞さない覚悟で必ず法案を通す所存であります!それでも、根強い反対があるならば…………政威大将軍の権限に基づいて、全議院の解散権をも行使いたします!なんとしてでも、この法案は通さなければなりません!そうしなければ、我が同盟の未来は絶望と断言します!」

 

 

 

翌週の議会は政府提出の法案で多少揉めたものの、大高と悠陽殿下の周到な根回しが功を奏して、『東方エルサレム共和国』は無事誕生した!

 

この事は、号外として全国に伝わり、世界を駆け巡って各国に衝撃を与えた!

 

 

アジア各国と東煌、同盟加盟国は東方エルサレム共和国を直ちに承認して国交を樹立した!

 

 

だが…………

 

 

 

鉄血首相 ベルリン

 

総統官邸 執務室

 

 

 

ヒトラー『おのれ重桜め!!我が鉄血に楯突く気か!!』

 

 

 

 

ユニオン首相 ワシントンD.C.

 

ホワイトハウス 執務室

 

 

 

トルーマン『おのれ大高め………………!我がユニオンは、決して承認などせんぞ!!』

 

 

 

だが、重桜を喜ばしたのはインド・豪州・ロイヤルの承認であった。

 

そしてこれが、意外な出来事を呼び寄せた。

 

 

 

平成14年4月4日

 

帝都東京 重桜城(旧江戸城)

 

同 執務室

 

 

 

その日、煌武院悠陽の下に側近である月詠真耶が入ってきた。

 

 

近衛隊長兼側近:月詠真耶中尉「殿下!喜ばし報告です!」

 

 

煌武院悠陽「……何事です?」

 

 

月詠真耶「まだ……水面下の動きではありますが、ロイヤル議会にて『我が同盟への加盟』の動きが起こっているようであります!」

 

 

煌武院悠陽「それは誠ですか!?直ぐに大高総理にお伝えを!」

 

 

月詠真耶「はっ!直ちに!」

 

 

 

こうして東方エルサレム共和国建国は、ロイヤルの同盟加盟の端緒を開いた。

 

報告を聞いた大高は、直ちに「木戸孝允」外務大臣と斑鳩崇継の側近である「真壁介六郎」をロイヤルとの秘密会議のためカルカッタ(現コルカタ)へ飛び立った!

 

 

数日後 深夜

 

 

そして土浦では、ロイヤルの同盟加盟を確固たるものにすべく、天極作戦の準備が着々と進みつつあった!

 

ワルター発動機を搭載した富士の旋回性能は抜群であり、零式観測機並みの機動力を有していた他、新式ストライカーユニット宝永も、それまでのストライカーユニットとは雲泥の性能を轟かせた事でウィッチ達は戦々恐々としていた。

 

 

一方、富士爆撃隊司令官の臼井は、高野との面会の話を反芻していた。

 

 

 

富士受領時 海軍省

 

同 執務室

 

 

 

臼井丈男「我々の攻撃目標は、ユニオン本土じゃないのでありますか?!」

 

 

臼井はそこで、大洋州同盟が新たに鉄血と開戦することを聞かされた

 

 

高野五十六「そうだ。既にベルリン大使館はその懐に、宣戦布告書を叩きつけられるように呑んでいる。」

 

 

臼井丈男「しかし、新たに鉄血を敵に回すのは…………」

 

 

高野五十六「我々も悩んだ末の決断なのだよ。この戦争をあくまでも''義の戦い''にする為、我々は鉄血を潰す必要があるのだ。」

 

 

臼井丈男「総長。自分には高度な外交政策を論ずる知識はありませんが、行けと命じられれば、どこへでも行く腹はできております!」

 

 

高野五十六「しかし臼井くん。この天極作戦はただの''渡洋爆撃''だけという生易しいものでは無いぞ。無着陸で欧州に至り、大西洋上で燃料を補給して戻る…………事実上の【世界一周飛行作戦】なのだ。」

 

 

臼井丈男「望むところであります!」

 

 

高野五十六「今度の天極作戦は目標破壊はもちろんだが、政治的アピールを持つところがはるかに大きい。とにかくこの作戦は、君にしか出来ない作戦だ!頼むぞ!」

 

 

臼井丈男「はっ!」

 

 

 

そして時は、水平に戻る。

 

 

 

超大艇富士 コックピット

 

 

臼井丈男「よし!!次に夜間射撃訓練を開始する!!」

 

 

訓練は夜間のみに限られ、繰り返し行われた。

 

土浦から的を取り付けた水戦が飛来して、その的を目掛けて機銃座とウィッチ隊が射撃を行う!

 

 

坂本美緒『射程距離を掴め!!機械だけじゃなく、勘を鍛えろ!!』

 

 

予想される敵迎撃器の襲来にも万全を期したが、演習が進むにつれて予想外の事態に足を掬われることとなった。

 

作戦の要である、熱探知誘導爆弾【TY弾】の命中精度が極めて悪かったのだ。

 

標的物には全く当たらず遠弾で、悪い時には味方の駆逐艦に命中してしまう有様であった。

 

 

臼井丈男「…………当たらんか………。」

 

 

 

更に、直掩戦闘脚にも問題が発生した!

 

 

 

5月8日 深夜

 

夜間飛行訓練にて

 

 

ミーナ「宮藤さん!遅れているわよ!」

 

 

宮藤芳佳「ま、待ってくださーい!ユニットの調子がおかしくて、速度と高度が上がりませーん!」

 

 

坂本美緒「なに?他はどうだ?」

 

 

ハルトマン「あれぇ?なんかユニットが咳き込み始めたんだけど?」

 

 

バルクホルン「なんだ?!整備不良か?!」

 

 

服部静香「いえ!ここの整備士は腕利ばかりです!これはもしかしたら…………」

 

 

シャーリー「まさか、''設計不備''か!?」

 

 

 

ここにきて、ストライカーユニット宝永に原因不明の不具合が連発して、その日以来から夜間演習が満足に出来ない日々が続いたのだ!

 

 

 

ある昼頃 整備格納庫にて

 

 

臼井丈男「どうだ。直りそうか?」

 

 

シャーリー「だあぁぁぁぁぁ!!わっかんねぇ!!どこが壊れてんだ?!」

 

 

サーシャ「ユニットと誘導爆弾の点検は隅々まで行いましたが、私たちではどこが壊れているのかさっぱり…………」

 

 

ミーナ「参ったわね…………。天極作戦発動まであと3ヶ月なのに…………」

 

 

ラル「ベルリン大使も宣戦布告書を呑んでいるからな……作戦開始の延期は不可能だ。」

 

 

竹井醇子「どうするの?」

 

 

坂本美緒「…………専門家に見てもらうしかなかろう。」

 

 

 

それから数日の後。

 

蝉が鳴り響く初夏の季節。

 

 

ここ土浦水爆飛行団基地に、技術者がやってきた。

 

 

その男の名は「山内太輔」。

泰山航空工業の兵器開発部所属で、富士に搭載されている【TY弾】の開発者であった。

 

東野源一郎に言いつかれて、ここ土浦にやってきたのだ。

 

 

そして臼井立会のもと、早速TY弾の点検を行った。

 

このTY弾の仕組みを、ここで説明しておこう。

 

 

TY弾、正式名称【熱探知誘導爆弾】は、ボロメーターと呼ばれる装置を使って目標の熱源を探知、ジャイロで姿勢を制御しながら後部に付けられた4枚の制動盤で速度を調整して、目標を正確に破壊する、言わば初歩的とも言える『誘導爆弾』であった。

 

 

しかし点検を行ってもどこも異常は見受けられず、山内は一瞬爆撃手の腕を疑ったが、臼井が彼らの腕前を熟知していた為否定された。

 

 

この誘導爆弾は、【半径2.5m】の範囲であれば『高度5,000m』で正確なのだが…………

 

 

 

坂本美緒「5,000だと?!」

 

 

雁淵孝美「司令、これは…………」

 

 

臼井丈男「うん。山内君……これは気密なのだが、爆撃は『高度7,000』で行っている。」

 

 

 

山内太輔「7,000?!そんな?!参ったな~…………高度7,000mは想定していませんでしたよ…………。熱源探知機は地上高度2,000~3,000で作動しますので、その高度に落ちるまでに風などに流されて命中許容範囲が広くなり、外れる事も…………あるかも…………」

 

 

 

バルクホルン「どうりで当たらない訳だ…………。」

 

 

マルチナ・クレスピ曹長「要求のズレって、怖いね………。」

 

 

 

あろうことか、本来の仕様とは全く違う使い方をしていたのだ。

 

秘密作戦ゆえの弊害で、技術者と軍の間で『要求の齟齬』が発生してしまったのだ。

 

 

 

平成14年6月17日

 

 

帝都東京 海軍省

 

執務室

 

 

高野五十六「天極作戦発動まであと2ヶ月だが、富士爆撃隊の様子はどうだね?」

 

 

重桜所属KAN-SEN:加賀「今までは順調だったが、予想外のアクシデントに見舞われたようだ。」

 

 

高野五十六「予想外のアクシデント?」

 

 

重桜所属KAN-SEN:赤城「…………総長。例の誘導爆弾の仕様書、あまり熟知していませんでして?」

 

 

高野五十六「あぁ。秘密作戦だからな。それがどうしたのだ?」

 

 

重桜所属KAN-SEN:蒼龍「はぁ…………仕様書を現場に渡さなかったせいで、技術者との間で''要求のズレ''があったようで…………。」

 

 

高野五十六「なっ…………そいつは悪いことをしたな………、後で東野社長に詫びの電話を入れとかんとな。」

 

 

加賀「おまけに新式ストライカーユニットにも原因不明の不具合が発生してな…………今頃、土浦には技術者たちが泊まりがけで改修に躍起になってる。現場を信じるしかあるまい。」

 

 

 

加賀の言う通り、土浦ではこの問題を聞きつけた技術者たちが一致団結して、ありとあらゆる機材を伴いTY弾とストライカーユニットの改修に心血を注いでいた。

 

夜間に訓練しては昼間に改修しての繰り返しで、6月の下旬頃には、ストライカーユニットの改修に成功した。

 

不具合の原因は、エンジン出力の不足による上昇高度の変化であった。

これを解決するために、都藤一郎博士とウルスラ・ハルトマン主導で、エンジンに魔導過給機を取り付けた事で機体重量が著しく増加した代わりに性能に補強を施した。

 

 

一方TY弾は、命中精度を改善する為に制動盤を3つの種類に分けて、その日の夜に使用して試すこととなった。

 

 

 

平成14年7月9日 深夜

 

超大艇富士 機内

 

 

 

大野飛曹長「1つ目、投下用意………撃て!」

 

 

1つ目のTY弾が投下され、山内がタイマーウォッチで制動盤展開までの時間を測る。

 

山内がタイマーウォッチを止めた時、ほぼ同時にTY弾の制動盤が開き誘導を開始した。

 

徐々に高度を落としていき、熱源探知機が作動する高度まで降下すると、不思議なことに標的物の手前に着弾したのだ!

 

 

大野飛曹長「2つ目、行きます!撃て!」

 

 

そのままの勢いで2つ目を投下すると、今度は1つ目よりやや奥に着弾して、3つ目の投弾はかなり遠目に着弾したのだ!

 

 

確実にTY弾の命中精度が上がっている証拠であった。

 

 

 

臼井丈男「山内君、どうかね。」

 

 

山内太輔「うーん………………2つ目が最至近、3つ目の落下速度は文句なし……とすると………………」

 

 

 

最早、時間的猶予は無くなってきたため、機内でTY弾の改造を即席で行う。

 

優秀な超兵器の活躍の裏には、技術者たちの多大なる努力があったのだ!

 

 

 

山内太輔「臼井司令、大野飛曹長!高度は必ず7,000でお願いします!あまり広い許容範囲は取れませんが………今度は多分!」

 

 

 

山内の要請で高度7,000での爆撃演習を試みる。

 

爆撃手の誘導で標的物の進路上まで自機を誘導して、TY弾が放たれた!

 

 

投下されたTY弾は制動盤で速度を調節しつつジャイロで誘導されていき、熱源探知機が作動して正確に誘導されていき…………

 

 

坂本美緒「命中確認!」

 

 

バルクホルン「やった!」

 

 

遂に命中弾を与えることに成功したが、油断はできない。

 

必中を期すために残りの模擬爆弾を全て使い、全て命中させた。

 

 

この日を境に、山内が改造した【TY弾・改】は目標を外したことがなかった!

 

 

そして、最後に行う【実弾演習】も問題なく大成功に終わり、ここに天極作戦開始に必要な要目は全て解決された!

 

 

これまでの功績に満足した山内は笑みを浮かべて、臼井と握手を交わした。

 

 

 

 

それから3日後の8月5日。

 

大洋州同盟は、鉄血に対して宣戦を布告して、ここに対鉄血戦線は戦端を開いた!

 

 

そして…………

 

 

 

平成14年9月9日 夜明け前

 

土浦水爆飛行団基地

 

 

ここ土浦水爆飛行団基地では、天極作戦が発動されて出撃の準備が行われていた。

 

 

 

真田志郎「機体には問題なしだな…………トチロー、そっちはどうだ?」

 

 

大山敏朗「3機ともエンジンは問題ねぇ!燃料積載も順調だ!」

 

 

南部康雄「各機銃座の最終点検終了!全て異常なし!」

 

 

森雪「物資の積載も順調ね…………それは三番機に積んで!」

 

 

島大介「尾翼も問題なしだな!」

 

 

古代進「誘導爆弾の搭載作業を急げ!遅れてるぞ!」

 

 

徳川彦左衛門「ワルター発動機の点検は済ませておけ?途中で不具合があったら困るからな。」

 

 

都藤一郎「出来うる限りのことはした。後は彼らを信じるしかないな。」

 

 

ウルスラ・ハルトマン「はい。帰ってきたら、またデータを収集して次の開発に活かしたいです。」

 

 

新見薫「これで準備は万端ね。」

 

 

 

全ての準備が整い、発進の時を待った。

 

 

坂本美緒「頭ぁ中!敬礼!!」

 

 

隊員達の前に煌武院悠陽が訓令を携えてくる。

 

 

煌武院悠陽「諸君達の働き次第で、今後の我が国のみならず……我が同盟の命運を左右すると言っても過言ではありません。窮地に立たされているロイヤルが陽動の任を買って出てくれた以上、作戦の失敗は許されません。」

 

 

煌武院悠陽の激励を受ける隊員達とウィッチ隊の面々は、過酷な訓練を経て戦士とも言える顔つきになっていた。

 

 

 

煌武院悠陽『天佑は諸君達の下にあると確信しています!どうかお気をつけて!無事な帰還を祈ります!!』

 

 

坂本美緒「敬礼!」

 

 

悠陽殿下の激が飛び、天極作戦は遂に開始された!

 

 

 

臼井丈男『総員!各機に搭乗!!発進準備に掛かれ!!』

 

 

 

「「はっ!!」」

 

 

 

隊員たちがそれぞれの機に搭乗して、発進準備に掛かった!

 

臼井も司令機に乗り込もうとしたその時、ある人物が呼び止めた。

 

 

 

東野源一郎「臼井司令!」

 

 

臼井丈男「これは………!」

 

 

 

東野源一郎「ご武運を、お祈りします。」

 

 

山内太輔「……………成功を祈ってます!」

 

 

 

臼井丈男「…………………行ってまいります!!」

 

 

 

そして、富士のワルター発動機がジェットエンジンに似た音を立てて動き出した。

 

空は既に朝焼けの時を迎えていた。

 

 

ミーナ《直掩機隊!全部隊、発進用意よし!》

 

 

操縦士「滑水開始!」

 

 

 

操縦士がスロットルレバーを押して、エンジンは完全に動き出して滑水を始めた。

 

 

「帽を振れーー!!」

 

 

作業員たちの見送りの下、富士爆撃隊とウィッチ隊は基地を発進していく。

 

 

徐々に速度を上げていき離水速度を上げていくが機体が重くなかなか上がらず、直掩のウィッチ隊も離陸を始めるも燃料満載で速度が乗らず、海面スレスレを飛行していた。

 

 

臼井丈男『超噴進発動機、点火ぁ!!』

 

 

ミーナ『全機!ロケットブースター点火!!』

 

 

 

機体に取り付けられた『離陸用ロケット』を作動させて、速度を目一杯稼ぐ!

 

 

操縦士「離水速度まで後30!」

 

 

シャーリー「いいぞ!だんだん速度が乗ってきた!!」

 

 

バルクホルン「あまりはしゃぐな!もう作戦は始まってるんだぞ!」

 

 

ハルトマン「まぁまぁトゥルーデ。先はまだ長いんだし、気楽に行こうよ!」

 

 

坂本美緒「おしゃべりはそこまでだ!今は離陸に集中するんだ!」

 

 

 

巨大な水飛沫を上げながら、富士はさらに加速を続ける!

 

今か今かと待ち侘びたその時、離水速度に達した富士一番機が勢いよく水面からその巨体を浮かべて、加速用ロケットを切り離して堂々と離水していき、ストライクウィッチーズもそれに続いてその勇姿を朝焼けの大空に浮かべた!

 

臼井が安堵の表情を浮かべて、二番機と三番機もその巨体を浮かべて、ブレイブウィッチーズとアルダーウィッチーズも大空に羽ばたいた!

 

 

 

平成14年9月9日、日本時間04:00。

 

 

3機の超大艇富士はごく少数の見送りをあとに、その巨体を水面下より浮かべた。

 

 

目指す目標は、【ニュルンベルグ原爆研究所】

 

 

飛行距離12,000キロ、前代未聞の天極作戦の幕は切って落とされた!

 

 

 

作戦の成否は如何に!!

 

 

 

EP3-4へ続く・・・・

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。