アズールレーン~紺碧の艦隊と蒼き海原~ 作:非常勤務艦隊本部
昭和18年4月18日。
ブーゲンビル島上空で戦死した聯合艦隊司令長官「山本五十六」は、アズールレーンの要素を含めた後世世界に『高野五十六』として、生まれ変わることとなる。
高野は、アズールレーンとレッドアクシズとの泥夢魔な戦争を防ぐために、密かに精鋭集団【紺碧会】を結成して、陸軍中将『大高弥三郎』と共に緩衝地帯【北北海道】にてクーデターを決行、新国家『大洋州同盟』を樹立して、第三勢力【大洋州同盟】を創設した。
だが、戦争へと転がり始めた歴史の流れを止めることはできず、平成11年12月8日。
大洋州同盟は、ユニオンの太平洋地域戦略の要であるハワイ諸島パールハーバーを奇襲攻撃し、これを占領した。
勢いに乗る大洋州同盟軍は、パナマ運河を破壊。
ユニオンの太平洋への軍需物資輸送手段を遮断せしめて、豪州でフレッチャー艦隊とモルガン艦隊を撃破して、太平洋の制海・制空両権をほぼ手中に収めたのである。
こうした事態に危機感を募らせたユニオン大統領「ルーズベルト」は、マンハッタン計画を急がせるも、高野五十六必殺の【弦月作戦】によってロスアラモスの原爆研究所を破壊、悪魔の計画を頓挫させた。
報告を受けたルーズベルトは失意のあまり、脳溢血で急死した。
そのため、時の副大統領『ビル・トルーマン』がユニオン第33代大統領に就任したが、皮肉にも彼が恐れたのは、大洋州同盟との戦争継続ではなかった。
それは、突然の政変により独裁政権と化して、欧州でその猛威を振るう【鉄血】に原爆開発で先を越されることであった。
あのヒトラーに終末兵器を持たせてはならない。
それは我が大高首相の思いでもあった。
弦月作戦成功により、重桜と和平を結び帰属した大洋州同盟は大戦終息に向けての大戦略に則って、密かなるロイヤルとの連携により鉄血の原爆研究所爆破に向けて、奇想天外……仰天動地の【天極作戦】が発動された!
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平成14年9月9日 04:00
霞ヶ浦 土浦水爆飛行団基地
けたたましいエンジン音を轟かせて、3機の超大艇富士と3つのウィッチ隊が霞ヶ浦から発進した。
飛行距離12,000キロ。
前代未聞の天極作戦の幕は切って落とされた。
向かう先は、鉄血の内陸奥深く位置する『ニュルンベルグ原子爆弾研究所』。
平均時速を370キロと計算して、約32時間掛かり目標到達は出来るだけ早暁が望まれる。
作戦の共同歩調を取るロイヤル空軍との協議の上、攻撃開始時間は現地時間【05:00】と定められた。
富士一番機 コックピット
富士爆撃隊司令官:臼井丈男少佐「爆撃手!爆弾倉ハッチの開閉を点検しろ!」
同 爆撃手席
大野飛曹長「爆弾倉ハッチ、点検します!」
爆弾倉ハッチを点検するため、ハッチを開閉して正常に動くかどうか確認する。
開閉レバーを押すとハッチが開き、各爆弾の投下装置が正常を示すランプが灯る。
大野飛曹長「爆弾倉ハッチ、異常なし!」
臼井丈男《念のためだ。下へ降りて、確認してくれ。》
大野飛曹長「はっ!」
念のため、爆弾倉まで降りて手動でもハッチが閉まるかどうか確認する。
手動用の油圧ハンドルを回して、正常に動くことを確認した臼井は、続いて機銃座の点検を行う。
全ての銃座が準備を整えると、試射を始めた!
正に空中戦艦とは名付けたり……。
四方八方から撃ち出される対空砲火は、何物も近寄らせまいという迫力を感じさせるものがあった。
全ての点検を終えた富士爆撃隊は、北極上空で再度点検することを伝えて北上を続ける。
彼らの渡洋爆撃は、まだ始まったばかりであった…………。
9月9日 10:00
重桜静岡県 某所
とある邸宅 ベランダ
この日大高は、ある人物の下を訪れていた。
???「なるほど…………これは痛い所に…………」
大高と囲碁を囲んでいたのは、嘗て重桜の重鎮で第二次日本海海戦では旗艦を務めながらも、自然災害で本体の竜骨を損傷して、長門に重鎮の座を譲りKAN-SENから退役した『天城』であった。
退役KAN-SEN:天城「…………紛れを打ちましたね。」
大高の打った紛れの一手は、局面を千変万化させ、宛ら雪崩にも似て極略合い乱れる姿となった。
そして天城が決め手を打ったことで、決着はついた。
天城「こみなし。一目の差でしたね。」
重桜首相兼陸軍大臣:大高弥三郎「参りました。」
天城「いえ、総理の思い通りに進んでいます。…………これで良い、これで良いのです。一目、お負けなさい。」
大高弥三郎「一目…………。」
重桜は初秋を迎えており、たびたび残暑が残る季節となっていた。
そよ風が吹く中、二人の面談は続いた。
大高弥三郎「''対鉄血宣戦布告''。紛れになりますかどうか…………天城さんのご意見を聞きにきました。」
天城「…………重桜……いえ、大洋州同盟が紛れを打ったことで、『二極対立構造』が崩れて、我が同盟とユニオン……そして鉄血の『三極対立構造』となりましたが、総理と悠陽様は''三竦み''を狙っていますね?」
大高弥三郎「はい。」
天城「三竦みと言うのはどの組み合わせにしても、二国が加盟すると、残りは『負け』となります。…………………白人同士となれば、手を組むのは【鉄血・ユニオン】となりますが…………」
大高弥三郎「それはないと思いますが。」
天城「無いと?」
大高は相槌を打ち、ロイヤルの加盟を承認することを天城に伝えた。
大高弥三郎「ユダヤとは、東方エルサレム共和国建国のため樺太割譲により、友好を維持できるでしょう。」
天城「まるで、古代東煌の''三国志''の様ですね。」
大高弥三郎「正に……仰られる通り、状況は酷似しています。」
天城「我が国は差し詰め''蜀の国''で、総理は『諸葛孔明』となりますね。」
大高弥三郎「いやぁ、お褒めに預かり光栄ですが……私は孔明に準える程の器ではありません。」
天城「いえ、中々なものです。」
大高弥三郎「''天城様''もお人が悪い………。」
天城「うふふふ……私はもう重鎮ではありません。もはや闘う力を失くし、この世に未練を残した生き霊の様なものです。………………………総理と悠陽様の思う様にやりなさい。『天道は、貴方たちを導いてくれる』筈です。」
大高弥三郎「はい。」
大高を、三国志は蜀の孔明に準えるならば、魏と呉の英雄は如何に…………
ユニオン首都 ワシントンD.C.
ホワイトハウス 執務室
ユニオン大統領:ビル・トルーマン「なるほど……またしても失敗だと言うのか?………………後から後から後から、同じ報告だ。これでは、オウムでも事足りるな。」
この日トルーマンは、鉄血の原爆研究所に対する爆撃作戦の報告を受けていた。
鉄血に原爆開発を先行される恐怖にトルーマンは連日の如く、鉄血に対して爆撃を司令していたのだ。
しかし、肝心の成果はと言うと………………
鉄血本土に差し掛かった瞬間に、優秀なレーダー網に発見されて、高性能なジェット戦闘機の餌食となって、無惨なものであった。
国防大臣「………作戦の失敗は、優秀なレーダー網にあります!」
トルーマン「ふんっ!それも聞き飽きたな。」
国防大臣「しかし閣下!我が方も奴らの侵入を許してる訳ではありません!大西洋を挟んで、大ユニオン要塞と言えど…………」
トルーマン「気休めにもならんな!」
そう言って、トルーマンは報告書を放り投げた。
トルーマン「あの男に原子爆弾を握られたらどうなるか、分かってるのか?!………………あの独裁者のことだ、必ずやたらめったらに撃ち込んで、この世の終末が来るんだぞ…………!」
大洋州同盟と大高をを『蜀の孔明』と準えるならば、ユニオンとトルーマンは『魏の曹操』であった。
では、残りの呉の英雄は…………
鉄血首都 ベルリン
総統官邸 執務室
自国民に向けての演説を終えた悪魔の独裁者『ハインリッリ・フォン・ヒトラー』は、その絶大な人身掌握をもってして鉄血を乗っ取り、今や世界に破滅をもたらす存在へと変貌しつつあった。
ヒトラー「原子爆弾が完成すれば、全世界を治めるのも不可能では無い。余が全能の神として世界に君臨する時がいよいよ来る。ふふふふふふ…………ははははははは!!!」
正に、鉄血とヒトラーは『呉の孫権』と準えても不思議ではなかった。
だが、その野望を食い止めるべく、大洋州同盟から放たれた一手……富士爆撃隊は、進路を真北に取りひたすら北上を続けていた。
高度4,000mを保って、旧大洋州同盟本土である北海道を通過しつつあった。
富士一番機 コックピット
臼井丈男「通信手。千歳基地を呼び出して、航路上の気象状況を再度確認。」
通信手「はっ!」
臼井は気象状況を加味して、当初予定していた航路より幾分極点に近く変更した。
これで、約1,000キロのフライトを短縮できる。
その分速度を落として、燃料の節約を図った。
臼井丈男「小泉航空士。極点に近づくと、ジャイロは役に立たん。お前のその目が頼りだ。」
小泉航空士「任せてください!この辺りの地形は、故郷の裏山並にばっちり叩き込んであります!」
臼井丈男「うむ!頼むぞ!」
臼井はしばらく仮眠を取るため、富士二番機が変わって先導を取ることとなった。
臼井丈男《俺はしばらく仮眠を取る。直掩機隊も合間を縫って各機に着艦、交代で休憩を取れ。》
ミーナ《了解!》
富士爆撃隊の旅は順調に進んでいた。
そして、地球の反対側、大西洋には…………
平成14年9月9日 大西洋赤道付近
サンペドロ・サンパウロ岩礁沖 海中
紺碧第1艦隊旗艦 伊601潜『富嶽号』
同 発令所
伊601潜艦長:入江九市大佐「サンペドロ・サンパウロ岩礁を確認!司令、到着しました!」
紺碧第1艦隊司令長官:前原一征少将「うん。予定通りだ。先任!海域周辺の状況は?」
先任士官:品川弥治郎中佐「は!電探に敵反応ありません!」
前原一征「よし、警戒を続けろ。」
品川弥治郎「は!」
前原一征「紺碧第2艦隊を浮上させ、臨時着水誘導路の設営を開始せよ。」
入江九市「は!」
ここは、南米アマゾン川河口から2,000キロ東に離れた大西洋上で、僅かな岩礁群が点在する海域である。
紺碧艦隊がこの海域に出現したのは無論、天極作戦に関わってのことである。
富士爆撃隊が無事任務を果たし得たその暁に、祖国までの燃料を補給するための会合地点であった。
紺碧第2艦隊旗艦 伊602潜『黒岳号』
同 セイルにて
伊602潜副長:山中栄治大佐「富士爆撃隊の予定到着時刻まで、後14時間です。」
紺碧第2艦隊司令長官:海江田四郎少将「それまで、敵が来ないことを祈るばかりだ。」
紺碧艦隊が臨時着水誘導路を設営している間にも、富士爆撃隊は欧州に向けて、その飛行を続けていた。
平成14年9月9日 日本時間15:00
北極海上空
富士爆撃隊は、約11時間のフライトを経て、ようやく北極海に差し掛かろうとしていた。
順調にことが進んでいる中、彼らの頭上では【オーロラ】を目の当たりにしていた。
正に幻想的とも言える景色に、ウィッチ達と富士爆撃隊はひとときの鑑賞の時を堪能したのち、乗員は交代で仮眠とりつつ飛行を続けて、遂に目標上空まで5時間と迫っていた!
なお道中、臼井司令がコーヒー茶漬けを食すと言うささやかな事件があった事は、ごく少数しか知らなかった。
平成14年9月9日 日本時間21:12(ドイツ時間00:12)
富士一番機 コックピット
臼井丈男「よし、総員起こし!二番・三番機にも伝え!」
副操縦士「は!二番・三番機に伝え!総員起こし!」
敵地に差し掛かるため、臼井は総員起こしを発令して警戒体制を敷いて飛行を続ける!
ミーナ「501全機、安全装置を解除!戦闘態勢のまま待機!」
「「了解!!」」
ラル「502各機、戦闘態勢につけ!いつでもお出迎えできる様にしておけ!」
「「了解!!」」
竹井醇子「504全機!迎撃準備!いよいよ敵の陣よ、警戒を怠らないで!」
「「了解!!」」
富士爆撃隊は敵機の襲来に備えて、高度を13,000に上げてさらに飛行を続けた。
平成14年9月9日 日本時間22:05(ドイツ時間02:08)
重桜帝都 東京
海軍省 執務室
高野五十六「順調に行っていれば、今頃はバルト海上空か…………。頼むぞ、臼井君!」
同時刻 バルト海上空
軍令部にて無事を祈る高野の推測通り、富士爆撃隊は高度13,000を保ちバルト海上空にさしかかっていた。
502部隊所属:ヴァルトルート・クルピンスキー中尉「にしても、13,000まで上がると途端に寒くなるなぁ~…………。」
502部隊曹長:エディータ・ロスマン曹長「新式の電熱服を着ているとは言え、やはり堪えますね。」
502部隊所属:菅野直枝少尉「へっ!こんな寒さ、ペテルブルクと大差ないぜ!」
502部隊戦闘隊長:アレクサンドラ・I・ポクルイーシキン大尉(以降サーシャと呼称)「そう言って、ユニットを壊さないでくださいよ?」
502部隊所属:雁淵ひかり軍曹「皆さーん!富士一番機から、高度を15,000に上げるそうですー!!」
502部隊所属:下原定子少尉「そうなると、外気温は-50℃にまで下がりますね………。」
502部隊所属:ジョーゼット・ルマール少尉「えぇ!?あんまり寒いのは苦手だよ~………!」
502部隊所属:ニッカ・エドワーディン・カタヤイネン曹長「大丈夫だよ!スオムスでも寒いところだったら-50℃近い場所があるから!」
雁淵孝美「それ…………多分、安心材料になってませんが…………」
ラル「とにかく、高度を15,000に上げるぞ!ゆっくりとだ!」
上昇を続ける富士爆撃隊は高度13,000を超えて、外気温はなんと-58℃にまで迫っていた!
富士一番機 コックピット
操縦士「現在、高度13,500!」
臼井丈男「よし。航空士、進入路の再確認を!」
小泉航空士「はっ!」
飛行コースの再確認のため、天測を行う。
超長距離飛行になるため、航空士の責務は重い。
富士には、速度・包囲・風向き等の諸元を入力して現在位置を割り出す【慣性航法装置】を搭載しているが、誤差は出る。
最後に頼れるのは、『人』である。
小泉航空士「…………まもなく、チェコ国境です!」
その時!
サーニャ《鉄血のレーダー波を探知!》
電探手「電探にも反応!」
ここに来て鉄血のレーダーに捕まるが、臼井は進路を右にややずらしてレーダー網を潜り抜ける!
臼井丈男「通信手、反応はどうだ?」
通信手「遠のいて行きます…………今、消えました!」
臼井は進路を戻して再度飛行を続ける。
504部隊所属:中島錦少尉「天姫!現在時刻は?」
504部隊所属:諏訪天姫少尉「えっと…………もう直ぐ夜明け前です!」
504部隊隊長:フェデリカ・N・ドッリオ少佐「となると1時間前…………ロイヤル空軍も動いている頃か……。」
欧州西部 ドーバー海峡上空
その頃、我が天極作戦に呼応して、ロイヤル空軍爆撃隊がドーバー海峡上空を通過していた。
目指す目標は鉄血有数の工業都市デュッセルドルフで、彼らが果たすべき第一義は、富士爆撃隊の侵入を助けるための『陽動』であった。
その編成は、【アブロ『ランカスター』】と【デ・バビラント『モスキート』】を中心とする爆撃機であったが、既に鉄血の防空レーダー網に捕まっていた。
鉄血領内ドーバー沿岸部 防空レーダー基地
鉄血兵3「敵、大編隊発見!」
鉄血兵2「ドーバー海峡を超えて接近中!大型機、約30!」
鉄血兵1「空軍基地へ緊急連絡!」
警報が鳴り響き、直ちに付近の空軍基地から迎撃機が飛び上がった!
迎撃に上がるは、鉄血空軍が誇るジェット戦闘機【Me262A-1『シュヴァルべ』】で、史実ではジェット戦闘機の礫明期であったため、搭載エンジンの信頼性などで問題があったが、この後世では大洋州同盟と同様に技術の進歩が躍進していたためそれらを解決して、本来の性能を有して量産体制を保っていた。
更にその中に、鉄血の新型ロケット戦闘機【Me163B-0『コメート』】の姿があった!
史実では、世界初のロケットエンジンを搭載した機体であったが、液体ロケット燃料故の飛行時間の短さと機体の撃たれ弱さが仇となり、大した戦果を出せずにいたが、この後世では大洋州同盟と同様に技術躍進を遂げており、飛行時間が大幅に改善されて機体の耐久も強化されたことで、主に重要地帯の防空任務に従事していた!
デュッセルドルフ郊外 上空
ロイヤル空軍兵3《爆撃目標デュッセルドルフまで、あと50!》
ロイヤル空軍兵1《周囲の警戒を怠るな!》
ロイヤル爆撃隊がデュッセルドルフに近づきつつある中、鉄血の迎撃隊も爆撃隊に迫りつつあった!
ロイヤル空軍兵5《爆撃用意!》
ロイヤル空軍兵1《爆撃用意!》
一方で富士爆撃隊は、鉄血領空内に突入しようとしていた!
チェコ国境 上空
ミーナ「デュッセルドルフも動いてる頃ね。」
坂本美緒「陽動とわかっているとは言え、いささか気が引けるが…………」
鉄血工業都市 デュッセルドルフ上空
ロイヤル爆撃隊がデュッセルドルフ上空に差し掛かった時、鉄血のロケット戦闘機が真下から攻撃を仕掛けてきて、先頭のランカスターが撃ち落とされてしまう!
更にそこへシュヴァルべが襲いかかってきて、ランカスター隊は防御機銃で応戦して対応して、護衛のモスキート隊は散会して迎撃隊を爆撃隊から引き離そうと打って出るが、ジェット戦闘機の高速性能には敵わず次々と撃ち落とされていく。
それでもランカスター隊は決死の覚悟で爆撃を敢行!
迎撃隊に邪魔されながらも爆撃は成功して、負け続けのロイヤルにとっては一矢報いた形となったが、主任務である陽動はまだ終わってはおらず、投弾を終えた機はガンシップとなって敵の目を惹きつけ続ける!
ロケット弾でその数を撃ち減らされようとも、最後の一兵になろうとも、彼らは攻撃の手を緩めなかった!
そしてこの報は、鉄血本土領空に突入した富士爆撃隊の知るところとなる!
鉄血本土 上空
富士一番機 コックピット
サーニャ《ロイヤル空軍の交信を傍受!》
臼井丈男「戦況は?」
通信手「デュッセルドルフへの爆撃は始まっている様ですが、ロイヤル軍機の被害はかなりの様です!」
サーシャ《通信内容には、噂のジェットが上がっている様です。》
504部隊所属:フェルナンディア・マチヴェッツィ中尉《ジェット相手じゃ部が悪いわよ………!》
マルチナ《でもこのままじゃあ……………!》
臼井丈男「我々の侵入を助ける為に、命を賭けて敵の目を惹きつけてくれているのだ。…………ジョンブル魂……健在だな。」
デュッセルドルフを爆撃したロイヤル爆撃隊は、鉄血の高性能迎撃機により文字通り全滅したが、彼らの決死の陽動作戦が功を奏したことで、富士爆撃隊は鉄血本土への侵入を果たして、遂に爆撃目標に到達しようとしていた!
鉄血内陸都市 ニュルンベルグ上空
富士一番機 コックピット
坂本美緒《………………よし!爆撃目標を確認!》
臼井丈男「噂の固有魔法というやつか。何処だ!」
雁淵孝美《前方350!》
爆撃目標を確認した富士爆撃隊は、アハトアハトの対空砲火に晒されながらも爆弾そうハッチを開き爆撃準備を整える。
その時、敵迎撃機の接近を告げた!
サーニャ《後方から敵機接近!》
ミーナ《全部隊、迎撃用意!!》
臼井丈男「各機!各個に応戦せよ!電探手、敵の反応はどうだ!」
電探手「それが………動きが変です!何かを追っている模様!」
接近する敵機に警戒しつつ、爆撃隊は目標を捉えつつあった。
そこへ、後方から迎撃機が接近していたが、まるで何かを追っていた様であった!
富士爆撃隊 後方
カールスラント空軍所属ウィッチ:ハイデマリー・W・シュナウファー少佐「くっ…………!飛び上がって10分もしないうちに迎撃機に捕まるなんて!」
カールスラント空軍のナイトウィッチであるハイデマリー少佐が、この後世世界に転移していたのだが、その場所が敵地である鉄血領空に転移してしまったのだ!
しばらく各地の補給基地に侵入しては物資を調達して生き延びていたが、ゲシュタポに見つかる危険性が出てきたため、富士爆撃隊のニュルンベルグ侵入から10分後に飛び上がったが、レーダー網に捕まって鉄血の誇るフォッケウルフの最終型【Ta-152H-1】数機に追われて、ここまで飛んできたのだ!
ハイデマリー「………っ!あそこに爆撃機!………考えてる暇はない!」
意を決したハイデマリーは一か八か、富士爆撃隊の編隊に突入していった!
富士爆撃隊
機銃手15《後方上空、敵機確認!》
機銃手12《相手はタンクだ!しかも3機!》
機銃手14《いや、よく見ろ!あいつらウィッチを追い回しているぞ!!》
機銃手13《タンクを追い払え!!一番機に連絡だ!!》
ここでウィッチの存在を確認した富士爆撃隊は、敵機を追い払いつつウィッチを自陣に引き込むため応戦を始める!
対する敵機は、あまりにも巨大な機体ゆえに尺度感覚を誤り、早撃ちしてしまい、富士の確殺圏内である前方に躍り出てしまい被弾してしまう!
鉄血パイロット3「大洋州の機体が……なぜこんなところにいるんだ…………!うわああ!!」
遠く離れた大洋州同盟の爆撃機が何故ここまで到達し得たのか分からず、鉄血兵は恐怖した。
ミーナ「ハイデマリーさん!大丈夫!?」
ハイデマリー「ミーナ中佐!ここは一体!?」
ミーナ「詳しい話はあとでするわ!今はあの爆撃機を守って!」
ハイデマリー「は、はい!」
ハイデマリーを加えた爆撃隊は、目標を捉えつつ、襲いくる迎撃機をただひたすら撃退する!
ハリネズミの様に取り付けられた機銃から撃ち出される弾幕は、流石のルフトヴァッフェと言えど迂闊に飛び込めるものではない。
さらに増援にタンクと「長鼻のドーラ」の異名を持つ【Fw190D-9『ドーラ』】が4機襲いかかってくる!
機銃手5『この弾幕を潜れるもんなら、潜ってみろぉ!!』
バルクホルン『うおぉりゃぁぁぁ!!!』
だが、さすがの富士の対空弾幕を潜り抜ける事はできず、ドーラを1機撃墜する!
機銃手3《前方敵機!!撃て、撃てぇ!!》
菅野直枝「オラオラオラァ!!スコアを上げてやらぁ!!」
シャーリー「私のスピードについて来れるかな!?」
ルッキーニ「うりゃーー!!」
臼井丈男「落ち着けっ!!爆撃手!爆撃目標は補足しているか!?」
大野飛曹長《はい!大丈夫です!》
臼井丈男「頼むぞ…………TY弾!!」
富士一番機 爆撃手席
大野飛曹長「進路このまま………………ちょい左5!…………ちょい戻せ!ヨーソロー…………よーい…………」
照準器に目標を捉え…………
大野飛曹長『撃て!!』
遂に富士からTY弾が放たれ、原爆研究所に向かって投下された!
間髪入れずに残りの誘導爆弾を投下していき、後続の機も順次TY弾を投下していく!
坂本美緒「よし!弾道正常!!命中コース!!」
臼井が真下を見ると、原爆研究所場所から多数の爆発を観測した。
敵の攻撃が緩んだ隙を突いて、ハイデマリーを富士一番機に空中収容して高度を15,000に上げて、敵の追撃を断つ!
負けじと追撃するタンクとドーラであったが、流石に上昇高度の差でこれ以上追撃できるわけもなく、諦めて撤退してった。
臼井丈男「………流石のタンクとドーラも、この高度では追いつけまい。」
そう安心したその時!
雁淵ひかり《ぜ、前方から戦闘機らしき影が!5機です!》
臼井丈男「なにぃ?!」
富士爆撃隊の前方から姿を現したのは、ジェットエンジンを背負った異様な戦闘機であった!
臼井丈男『''ハインケルの新型''だ!』
富士爆撃隊迎撃のために放たれた刺客は、史実では「国民戦闘機」という異名を持ったジェット戦闘機【He162A-2『フォルクスイェーガー』】であった!
504部隊所属:アルジェラ・サラス・ララサーバル中尉「くっ!!こいつ、速い!!」
504部隊所属:ルチアナ・マッツェイ少尉「これがジェット………狙いづらい!!」
504部隊所属:ジェーン・T・ゴッドフリー大尉「確殺圏内に出たならーー!!」
幾らジェットと言えども、確殺圏内に出てしまったらただの的である。
富士三番機が1機撃墜するが、もう一機が富士二番機の真下に潜り込むも、微上昇して回避して一番機の後部機銃で撃墜される。
更に後ろから迫ってきた2機も濃密な弾幕により撃墜するが、新たに2機追ってくる!
痺れを切らした富士爆撃隊は最後っ屁である【ワルターブースター】を使って強引に追撃を断つ!
直掩のウィッチ隊もワルターブースターを使ってこれに追従する!
対する鉄血パイロットは、高高度だというのに考えられない速度に驚きを隠せなかった。
かくして、ニュルンベルグ原爆研究所への爆撃は成功して、富士爆撃隊は安全圏へと離脱した。
そしてこの報は、ヒトラーの耳に入るところであった!
鉄血首都 ベルリン
総統官邸 執務室
ヒトラー「重桜の奴らが、地球を半周して我が鉄血の裏庭に侵入しただと?…………ゲーリング君、余を愚弄するのか?」
鉄血空軍大臣:ゲーリング「め、滅相もございません!」
ヒトラー「その様なことがあるはずがない。………そうではないか?ゲーリング?」
ゲーリング「は、はい!で、ですが相当閣下。その大洋州同盟の爆撃機を見た者は一人や二人ではないのです………」
ヒトラー『ゲーリング!!お前は空軍大臣でありながら、何をやっているのだ!!』
ゲーリング「も、申し訳ありません!ロイヤル空軍の爆撃に対応するのに、手一杯だったのであります…………!」
ヒトラー「ニュルンベルグの原爆研究所はどうなったのだ!!」
ゲーリング「目下のところ、調査中ではありますが………被害は…………」
ヒトラー「被害は!!」
ゲーリング「被害は決して、''微災ではない''とのことであります!」
ヒトラー「くぅぅ……………!!」
富士から投下されたTY弾は、極めて正確に原爆研究所から出る熱源を探知して命中したのだ。
3機合計45トンの高性能爆弾は、ウラニウム製錬工場を直撃して重水素工場をも破壊し尽くした。
そしてここでも、ロスアラモスと同じ様に【放射線被害】を出していたのであった。
だがこの時点では、攻める方も攻められる方も、放射線被曝の恐ろしさには認識は薄かった。
そこへ敵機の写真が届きヒトラーもその写真を見るが、常識はずれの超巨艇の姿に憤りを募らせて、重桜や大洋州同盟に対して、ありったけ罵詈雑言を浴びせた。
ゲーリング「……………奴らは、ユニオンの原爆研究所を爆撃しています。考えますところ………………我が鉄血の原爆開発を遅らせ………『三極構造』を作り出そうとしているのではないかと…………」
ヒトラー「三極だと!?この世の中心は、三極もいらん!!我が鉄血のみが''世界の中心''になるべきなのだ!!そしてゲルマンの中のゲルマン……余のみが、世界に君臨するに足る『支配者』なのだ!!」
平成14年9月10日 14:07
大西洋南米沖 サンペドロ・サンパウロ岩礁 近海
そしてここ大西洋はサンペドロ・サンパウロ岩礁近海では、臨時着水誘導路を設営した紺碧艦隊が、富士爆撃隊の到着を今か今かと待ちわびていた。
伊601潜 セイルにて
入江九市「……………遅い!予定では、もう到着しても良さそうですが…………何か不測の事態でも……!」
前原一征「ふ、落ち着いたらどうだ?」
入江九市「はぁ……………しかし………」
前原一征「艦長の君がそうだと、乗組員が不安がるぞ?」
予定より富士爆撃隊の到着が遅れていることに少々落ち着きがつかない様子であったが、入江艦長が後ろで品川先任が笑いを堪えているところを見て、顔を赤長も咳払いをして落ち着かせる。
前原一征「なに、臼井君は歴戦の猛者だ。必ず戻ってくる。」
そう言い前原が双眼鏡で周りを見ると、厚い雲層の影から富士爆撃隊が独特なエンジン音を響かせながらその勇姿を現した。
前原一征「来たぞ!」
入江九市「き、来ましたな!」
前原一征「うん!」
サンペドロ・サンパウロ岩礁上空
富士一番機 コックピット
操縦士「司令!着水誘導波を、補足確認!」
臼井丈男「紺碧の艦隊だ!よし、着水用意!!」
燃料を使い果たしたウィッチ隊を空中収容した富士爆撃隊は、予定より少し遅れて会合点へと辿り着くことができた。
爆撃を終えた富士は、ゆっくり…ゆっくりと高度を下げていき…………その巨体を水面へと着かせた。
超巨艇の到着に、紺碧艦隊の隊員全員が歓喜と共に出迎える。
伊602潜 セイルにて
海江田四郎「流石にでかいな、海自のUS-2以上だ!」
山中栄治「頼もしい限りですな!」
一番機に続いて、二番機と三番機も着水して、随時燃料補給とひとときの休息を取る。
補給を終えた一番機では、紺碧艦隊の頼もしい勇姿を目に焼き付けていた。
富士一番機 コックピット
小泉航空士「なんてでかい潜水艦の群れなんだ!」
通信手「まさにモビーディックだ……!」
電探手「富士が小さく見えるぜ……!」
臼井丈男「みんな、よーく見ておけ!これこそが『紺碧の艦隊』だ!開戦以来、各確たる戦果を上げながら、内地の一般国民は彼らのことを何も知らない!彼らこそ、まさに英雄なのだ!」
坂本美緒「だがな…………ここで見たものは、飛び上がったら直ぐに忘れるんだ。」
宮藤芳佳「ど、どうしてですか?」
坂本美緒「彼らは世に知られないことで、真にその力を発揮できるからだ。」
バルクホルン「…………なるほど、つまり私たちの目の前にいるのは、''幽霊艦隊''ということか……。」
この超巨艇富士による天極作戦成功から数日後、平成14年9月15日。
チャーチルの後を受けて首相に就任した「チェンバレン」との間で合意が成立して、ロイヤルは大洋州同盟との講和を果たして、同盟に晴れて加盟したのだ。
サーニャ「味方潜水艦から発光信号!」
『貴官ノ鉄血・原爆研究所爆撃ハ成功セリ!』
作戦成功の報を受け取った富士爆撃隊は、残りのフライトを無事こなすべく、その大馬力のエンジンを始動させる!
《b》臼井丈男『よし!これより、霞ヶ浦へ帰投する!!』《/b]
「「はっ!!」」
補給を終えた富士爆撃隊は巨大な水飛沫と独特なエンジン音を轟かせながら、その巨体を蒼天の大空に浮かべて、紺碧艦隊に別れを告げて重桜本土への帰路についた!
この日から、第三次世界大戦は''新たな局面''へと章を移したのだった!
EP3-5へ続く・・・・