アズールレーン~紺碧の艦隊と蒼き海原~ 作:非常勤務艦隊本部
前編を観ていない方は直ちに回れ右して、前編を観てください。
一方、ト島を出撃した前衛遊撃艦隊は2月初頭にイベリア半島沖へ到達。
鉄血の警戒水域内に接近と離脱をくり返した前衛遊撃艦隊は頻繁に空海軍からの威力偵察を受けるが、艦隊は頻繁にイベリア半島沖に出没を繰り返して、ことさら敵の目を惹きつけ続けた。
航空巡洋戦艦 虎狼
同 戦闘艦橋
亡命鉄血海軍所属:Z1《くっそ~、逃げられちまった。》
中村勘助「それでいい。深追いはするな?」
虎狼「こうあからさまに挑発を受け続けられたら、敵も参るでしょうね。」
中村勘助「それが狙いだ。武田信玄流『啄木鳥作戦』だ。」
亡命鉄血海軍旗艦:ビスマルク「それは、一体どう言う作戦なのかしら?」
中村勘助「川中島の合戦で武田信玄がとった戦法だ。」
虎狼「確かにスケールは違いますけど、その戦法は確か失敗したはずでは?」
中村勘助「地中海にいる鉄血艦隊がスエズへ行けば、紅海に待ち構えている紺碧艦隊がパクりとやるが…………さて、どう出てくるか?」
虎狼通信手「司令。ロイヤル情報局より、暗号信が来ました。」
中村勘助「おぅ!」
虎狼通信手「『鉄血地中海艦隊、インド洋に向け出撃す・空軍戦力も護衛のため、全力出撃中。』」
中村勘助「よぉうし、やっと虫が出ていくぞ?虎狼!翌6日未明、ジブラルタルへ突入する!各艦に伝達、合戦用意にかかれ!」
虎狼『はっ!』
鉄血のジブラルタル司令部は、空軍の偵察写真から『八咫烏』を『日本武尊』と誤認してしまったが為に、【旭日艦隊本隊が接近しつつある】と深刻な危機感に囚われていた。
新人司令官「カール・トルッペ」は空軍大臣の「エアハルト・ゲーリング」に空軍による航空攻撃を要請するも、ゲーリングは相当閣下の命令に祖抜くわけにいかないと言う理由で地中海艦隊の直掩のためジブラルタルに回す戦力がないと返答して、自力で対処するよう伝えたのだ。
その夜、反対側のインド洋では、紺碧艦隊によるシンドバット作戦が本格的に始動。
坂本艦隊から派遣された【秋月型対空駆逐艦】がソコトラ島沖に集結して、紺碧艦隊の艦載機隊発艦作業を援護。
伊601・602から1機ずつの【水上攻撃機『雷洋』】が、伊501・504から各3機の【水上噴式戦爆両用機『墳式春嵐』】が発進し終えると、紺碧艦隊は直ちに潜航。
一路、鉄血のジブチ軍港に向かい、そこで紺碧艦隊全艦から【62式海底子持ち魚雷】が多数放たれ、その中に数本の【G7魚雷】も混ぜられ軍港海底に敷設された。
その数分後、紺碧艦隊から発進した艦載機隊が「オボック」・「ジブチ」各要塞に夜間攻撃を敢行!
春蘭隊が敵の眼を眩ました直後に雷洋が【親子型爆弾】を投弾して一次攻撃を開始して、そこへ坂本艦隊から発進した【新鋭艦上爆撃機『銀星』】と【艦上攻撃機『蒼山』】からなる攻撃隊がオボック要塞、紅玉艦隊から発進した【艦上特殊爆撃機『爆龍』】からなる攻撃隊がジブチ要塞に二次攻撃を敢行して、要塞は大混乱に陥った。
銀星は、前世で言うところの【艦上爆撃機『彗星』】の生まれ変わりであり、その性能は【彗星一二甲型】に相当する!
ともあれ、要塞が混乱状態に陥っているその隙をついて、紺碧艦隊は全艦紅海へ突入を開始!
鉄血の防潜網を、深度130の水深を最大水中速度で潜り抜けて、紅海の【バブ・エル・マンデブ海峡】出入り口付近で偽装聴音ブイを射出して、鉄血艦隊の襲来を待った。
ほぼ同時刻、大西洋はジブラルタルでは……………
ジブラルタル要塞 近海上空
重桜海軍パイロット:龍波響中尉《もう直ぐ目標上空に差し掛かる!ウォードッグ隊全機、翼端灯消灯!続け!》
前衛遊撃艦隊から発艦した【噴式艦上急降下爆撃機『光武』】が夜陰に紛れてジブラルタル要塞に向けて接近していた。
ジブラルタル海峡を目視で確認するや、一気に急降下して鉄血の電探基地に攻撃を敢行!
同時に、【噴式零戦『嶺花』】の艦攻型とグラーフ・ツェッペリンから発艦したフツーカ爆撃機も攻撃を開始、鉄血の眼と耳を奪っていった。
ジブラルタル要塞司令部
鉄血兵3「ヒルメルベッグ・システム、破壊されました!!」
鉄血兵2「
鉄血兵1「飛行場に甚大な損害を受けました!」
カール・トルッペ『くそぉぉぉ!!航空機で先制攻撃が出来たなら!!』
ジブラルタル海峡沖
前衛遊撃艦隊旗艦 航空巡洋戦艦虎狼
同 戦闘艦橋
虎狼「攻撃隊より入電!攻撃成功!」
虎狼通信手「逆探より報告!鉄血の電波発信、止まりました!」
中村勘助「よぉうし!我々も突っ込んでひと暴れするか!」
木製戦艦八咫烏 偽装艦橋
八咫烏通信手「大佐、虎狼より入電!『ワレラコレヨリ、ヨウサイヘトツニュウス!ズイハンハ、キカンノイシニユダネル』、以上!」
海野十蔵「中村中将は、今だにこの八咫烏をベニヤ板の戦艦だと見くびっておられるのかな?」
八咫烏艦長:藤堂早紀大佐「自分は、八咫烏の真価を敵味方に披露したく思います!」
海野十蔵「うん、だったらいい案があるぞ…………虎狼へ発光信号!」
ジブラルタル海峡要塞 司令部
鉄血兵5「対空、対水上レーダー共に大破!復旧の見込みなし!!」
鉄血兵4「見張り所より入電!敵艦接近中!」
鉄血兵1「''砲台''の損害は僅かです!まだやれます!」
カール・トルッペ「やるしかない…………ヘラクレス砲台司令官へ連絡!直ちに戦闘配置!」
ジブラルタル…………この要所の地には、未だ切り札が残されていた。
【グルッフ社製63センチ列車砲】5基を設置した『ヘラクレス砲台』であった。
木製戦艦八咫烏 司令艦橋
海野十蔵『乗員諸君!これより我が艦は囮艦となって海峡へ突入する!鐘楼に不動明王の旗を掲げよ!超戦艦の名に恥じぬ戦をしようではないか!』
海野の合図と共に、鐘楼に不動明王旗が掲げられて、八咫烏は木製戦艦として戦闘に突入する!
同時刻、砲台へ接近する『日本武尊』を確認した砲台司令官「エーリヒ・ユルゲンス大佐」は戦闘配置を発令、列車砲を射撃位置へと移動させる。
装填を終え車格を調整している間にも、日本武尊は接近し続ける。
全ての準備を終えて、射撃体制が整ったヘラクレス砲台は一斉に射撃!
砲弾の雨が日本武尊に飛来するも、虚しく後方に着弾するだけだった。
エーリヒ・ユルゲンス「くそぅ!すべて遠弾だとぉ?!」
八咫烏 司令艦橋
海野十蔵「''初弾で当ててくる''とは、敵もいい腕をしているな?」
藤堂早紀「転舵おもかーじ!第1戦速!」
八咫烏副長:神崎恵大尉「敵砲台、第二射を発射!!命中コース………来ます!!」
ヘラクレス砲台から、今度は散布界を広げて第二撃目が放たれるも、これも全て外れてしまう。
その報告を受けた砲台司令官は信じられずにいた。
攻撃は全て八咫烏に命中していたのだ。
しかし、その全てが木製のハリボテに直撃して、砲弾の貫徹力が強く信管が作動せず、後方に空しく着弾していたのだ。
海野十蔵「煙幕展開!」
八咫烏戦闘班長:
海野十蔵「面舵40!」
八咫烏操舵手:市瀬美奈少尉「面舵40、ヨーソロー!」
八咫烏はここで煙幕を展開、面舵を取り後方の景色を遮断する。
それすら気づかずにただひたすら日本武尊…………もとい八咫烏に凄まじい攻撃を加えるものの、敵前回頭を許して、艦首のハリボテ砲塔群を剥ぎ取られ、司令艦橋にも直撃するが、流石の列車砲の砲弾といえども厚さ1,000ミリの装甲を破壊することは叶わず、弾かれてそのまま爆発するがその振動は司令艦橋にも伝わり非常灯がつく。
海野十蔵「大丈夫だ。この程度の攻撃では、八咫烏は沈まん!」
その後も攻撃は続いてその都度ハリボテの構造物は剥ぎ取られていくが、決して沈むことはなくその異常な耐久力を以てして砲台司令官を震撼させた。
海野十蔵「よし!煙幕やめ!」
日下部うらら「発煙機停止!」
海野十蔵「そろそろいいだろう。後に譲ろう。」
藤堂早紀「転舵!面舵一杯!」
市瀬美奈「ヨーソロー!面舵一杯!」
やることを終えて砲台の射程内から離脱した八咫烏の後方から、真の主役が接近しつつあった!
ヘラクレス砲台陣地 司令塔
鉄血兵「…………なっ?!し、しまったぁ!!」
虎狼以下3隻は武蔵・ビスマルク・ティルピッツを率いて、煙幕に隠れてヘラクレス砲台の死角まで接近していた!
航空巡洋戦艦虎狼 戦闘艦橋
海虎《かなり近いぞ!直接射撃!!》
海狼《射角計算!急げ!!》
中村勘助「全艦砲撃開始!至近距離だ、一撃で仕留めろ!」
ティルピッツ《距離1,200!砲身仰角40!》
ビスマルク《対地攻撃用''五式多弾''の近接信管、作動距離を50に!》
武蔵《50ヨーソロー!発砲同調よし!!》
中村勘助『撃てぇーー!!』
中村中将の号令の下、全艦一斉射撃を敢行!
打ち出された砲弾は砲台の手前で近接信管が作動し、多数の子爆弾が散布されて岸壁に直撃!
うち数発が砲台内部に直撃して激しい爆発が連続して起こり、破壊された63センチ列車砲は黒煙を上げながら海上へ落下。
かくして、ジブラルタル要塞の切り札は、脆くも打ち破られたのだった。
木製戦艦八咫烏 司令艦橋
八咫烏通信手「虎狼より入電!『コレヨリシュウヘンシセツヲセイアツス・追伸、ミゴトナリヤタガラス』、以上!」
海野十蔵「この勝利は、ただ敵要塞を落としただけではない。ヒトラーに、日本武尊の''不沈神話''を思い知らせることが出来たわけだ!」
藤堂早紀「はっ!」
こうして、心臓作戦序盤において、前衛遊撃艦隊は大戦果を収めた!
そして、紺碧艦隊主導の【シンドバット作戦】も、ついに佳境を迎えるのだった!
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平成16年2月6日 紅海
紅海に朝日が登り、凪いだ海原を掻き分けるように鉄血の大艦隊が通過したのだ。
その大艦隊こそ、インド洋を抑えるべく出撃してきた【鉄血地中海艦隊】であった!
前原は敵艦隊に気づかれないように追尾を開始する。
鉄血地中海艦隊旗艦
旗艦級強装甲型高速戦艦『サラミス』
同 戦闘艦橋
鉄血参謀「ここまでは無事来れましたが…………問題はここを抜けた後ですな。」
鉄血地中海艦隊司令官:ウィルヘルム・ヨードル大将(29)「参謀。一体、何が心配なのだ?」
鉄血参謀「はっ。太平洋にてユニオン海軍を震撼させたという''X艦隊''の存在です。」
ヨードル「X艦隊………モビーディックの事か。フハハハハ!そんな怪物が存在するか!そんなもん、ユニオンの幻想に過ぎん!(そう、幻想に………!)」
地中海艦隊がバブ・エル・マンデブ海峡を通過したのち、タジェラ湾の鉄血軍港から護衛のため駆潜艇が発進したが、タジェラ湾に差し掛かった瞬間に紺碧艦隊が前日の深夜に仕掛けた【子持ち魚雷】が発動!
駆潜艇が次々と子持ち魚雷の餌食となり、同時にG7魚雷も欺瞞を開始して艦隊の前面に気泡を放つ。
敵潜の危険性が高まったため、ヨードル大将は現在位置で艦隊を停止させて警戒を強める。
だか、時すでに遅く……………紺碧艦隊は真下に迫っていた!
紺碧艦隊旗艦 伊601潜
発令所
先任士官:品川弥治郎中佐「狙い通りであります。」
入江九市「噴進弾の発射には、絶好の位置どりです!」
前原一征「そうだな………………よし!やれる時は徹底して叩く、艦長!」
入江九市「はっ!噴進弾発射深度まで無音浮上!タンクブロー、ゆっくり!」
噴進弾による攻撃を行うため、発射可能深度まで浮上を開始する!
垂直発射筒に装填されているのは、現在大洋州同盟軍が厳重に管理している【原子力潜水艦''やまと''】の武装の一部を解析・研究して開発された【八九式対艦噴進弾】である。
紺碧艦隊第二戦隊旗艦 伊602潜
発令所
海江田四郎「対艦噴進弾発射と同時に急速潜航、一気に距離を詰めて雷撃を加える。」
山中栄治「新戦術''F''ですな?」
海江田四郎「その変形というところだ。」
山中栄治『水雷長!1番から8番管まで、62式を装填!』
602水雷長《了解!》
602聴音手:溝口拓男「伊601から音通あり!''攻撃のタイミングは貴官の意思に委ねる''とのことです!」
山中栄治「信頼されてますな?」
海江田四郎「あるいはテストかもしれないな…………よし、攻撃準備を急がせろ!」
全艦が浮上し終えると、【全天監視鏡】を上げて敵機の脅威を確認する。
上空に敵機の存在がないことを確認すると発射筒扉を開放、攻撃準備を整えると…………
海江田四郎『対艦噴進弾、発射始め!!』
山中栄治「発射始め!!」
海江田の号令と共に対艦噴進弾が射出され、空高く舞い上がる!
噴進弾を発射し終えた紺碧艦隊は魚雷攻撃に備えて急速潜航をかける!
旗艦級戦艦サラミス 戦闘艦橋
艦橋見張り員「後方海中から…………あ、あれはっ!!」
ヨードル「………っ!?ロケットだとぉ!?」
まさか寄せ集め集団の大洋州同盟が、水中発射型のロケットを開発していたなんてことを思っても見なかったことで、ヨードルは驚きのあまり手に持っていた煙草を床に落とした。
紺碧艦隊から放たれた八九式対艦噴進弾は固形燃料ブースターを切り離して、内蔵されたジェットエンジンが点火。
熱源探知機による誘導により、地中海艦隊へと迫る!
鉄血兵9『回避!回避ぃーー!!』
鉄血兵17『機関全速!!後進一杯!!』
鉄血兵25『対空砲撃てぇ!!』
地中海艦隊は瞬時に混乱状態に陥って、各艦が慌てふためき半ばやけっぱちになって対空砲を撃ちまくるが、それすらも掻い潜っていき艦隊の懐に入り込む!
鉄血兵14「機関全速!面舵!!」
鉄血兵34「右舷から3発!!」
鉄血兵26「後方から2発接近!!」
各艦からは悲鳴とも言える報告が上がりまくり、対空迎撃も虚しく各艦艇が次々と被弾!
地中海艦隊はその数を減らしていく中、海中から二の矢が放たれようとしていた!
海中
伊602潜 発令所
海江田四郎『全艦雷撃戦用意!発射は指示あるまで待て!』
山中栄治「全発射管注水完了!601以下全艦、発射管扉開きました!!」
それから時間が少し経ち、頭上で噴進弾の爆発音が発生している中、海江田は腕時計を見て攻撃のタイミングを図る。
そして…………
海江田四郎『先ず第一斉射、発射!!発射後直ちに次発装填!』
海江田の号令と共に、紺碧艦隊全艦が雷撃を敢行する!
即座に第二斉射目の魚雷を装填して、号令を待つ。
それから数分時間が経ち…………
海江田四郎『続いて第二斉射、発射!!』
間髪入れずに第二斉射目の魚雷が放たれる!
海江田四郎「最初の爆発と同時に機関始動!敵艦隊が混乱している間に真下を全速を通過する!!」
海江田の卓越した勘と潜水艦乗りとしての実力を以てして、戦闘海域からの離脱を敢行する!
一方、地中海艦隊は紺碧艦隊から放たれた雷撃に晒されていき、各艦艇が瞬く間に被弾!
旗艦級戦艦サラミスも次々と魚雷を喰らい、主砲塔から火の手が上がる!
ヨードル『海の………………魔物…………!!』
ウィルヘルム・ヨードル大将は、自身の艦隊に何が起きたのすら分からず、旗艦級強装甲型戦艦『サラミス』と共に、紅海の藻屑と消えた………
その後も次々と各艦艇が雷撃を受けて撃沈されていき、その真下を紺碧艦隊は全速で通過していく。
バブ・エル・マンデブ海峡の海底が…………鉄血海軍地中海艦隊の終焉の地となった……
伊602潜 発令所
溝口拓男「…………海上にスクリュー音なし。追尾する艦艇……ありません。」
山中栄治「…………艦長、作戦成功ですな。」
海江田四郎「そうだな。」
伊601潜 発令所
前原一征「さて、ソコトラ島にいる艦載機隊を迎えにいくか!」
入江九市「はっ!海上で待ちくたびれているでしょう!」
品川弥治郎「機関第一戦速!ソコトラ島沖へ!」
万里の波浪を超えて、紺碧艦隊は往く!
彼らの次なる戦場は南の海か……はたまた……北の海か……………。
その頃、大石司令長官が率いる【旭日艦隊本隊】は、何処にいるのだろうか…………
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超戦艦『日本武尊』は遥か北の海………北緯60度の寒風吹き荒ぶ、ロイヤル領シェトランド諸島沖にいた。
???
大石は、名の知らぬ砂浜を歩いていた。
大石蔵良〔何処だ?ここは…………〕
周りを見渡し、そして顔を見上げるとそこには………………一風変わった巨大戦艦が静かに鎮座していた。
大石蔵良〔おぉ………………''大和''…………!〕
その戦艦こそ、前世大戦にて【世界最大の戦艦】と讃えられた…………戦艦『大和』であった。
大和を見上げていた大石は、その戦闘艦橋にいる1人の士官の姿を見つける。
大石蔵良〔………………っ!!〕
その姿を見た大石は静かに涙を流し、そして全てを理解した。
何故なら、その地こそ………………戦艦大和が最期の刻を迎えた、【坊ノ岬沖の海底】であったからだ…………。
〔大石さん…………大石さん!〕
超戦艦日本武尊 戦闘艦橋
宮藤の呼びかけに大石は目を覚ます。
どうやら今のは夢だったようだ。
大石蔵良「…………居眠りをしてしまったな……。」
宮藤芳佳「すみません、疲れているのに。」
大石蔵良「いや………………夢を見ていたよ。坊ノ岬沖の海底で、久しぶりに大和に会えた。あぁ…………前世の俺もいたな。」
宮藤芳佳「生前の…………ですか?」
そして大石は、ふと疑問に思っていたことを宮藤達に問いかけた。
大石蔵良「なぁ。大和は…………''本当に''【無用の長物】だったのだろうか…………。」
宮藤芳佳「そ、それは…………」
大石蔵良「結局大した戦果を出せずに、あの艦は沈んだ。だがあれ程の巨艦を建造し得た''技術は残る''。例え、食い破られようともだ。」
ペリーヌ「…………えぇ。それこそが''国の富''である事だと思いますわ。」
大石蔵良「技術は''知識であり経験''だ。それは形の無い物であり、形の無い物は奪われることはない。だが形ある物は…………故に食い破れたら奪われる。…………【覇権主義のぶつかり合い】……【領土拡張】……………………そんなものが何になる。……………それが前世大戦が残した教訓だと、俺は思うよ。」
その大石の言葉に、バルクホルンたちは元の世界での記憶を反芻していた。
謎の敵【ネウロイ】の現出により、欧州大陸は蹂躙されていき、領土……民……そして思い出すらも奪われてしまった。
だが、その国の技術と伝統は残った。
それは何故か?
それこそが形のない物であり、奪われることのない''国の富''であったからだ。
そして宮藤は、自分が思っていたことを口にする。
宮藤芳佳「でも………………その戦艦大和も、形のない物を残していったんじゃないんですか?」
大石蔵良「?」
宮藤芳佳「戦艦大和が沈んでも…………大和の生まれ故郷はみんなの記憶に残るし………それに、子どもたちに『夢』と『浪漫』を残していったんじゃないかと…………私は思います。」
大石蔵良「夢と……浪漫か………」
それを聞いた大石は、少し誇らしげに思ったのだった。
大石蔵良「…………ところで、何か報告があったのではないか?」
宮藤芳佳「あっ!そうでした!」
サーニャ「先ほど暗号通信が届いて、ジブラルタル奇襲とシンドバット作戦が成功したとの事でした。」
大石蔵良「出だしは上々だな。艦長、ロイヤル艦隊は?」
冨山正因「現在、本艦の南300キロを南下中。1時間ほど前に、鉄血潜水艦隊と接敵との事です。」
大石蔵良「遊撃艦隊は?」
日本武尊「荒天下、英仏海峡の西方200キロに進出しているぞ。」
大石蔵良「天運我にあり……!マイクを全艦に。」
マイクを手に取り、訓令を始める。
大石蔵良『総員に告ぐ!心臓作戦の第一段階は成功を収めた!これは、旭日艦隊編成当初より予定されていたものだ。だが鉄血による逆襲があるやもしれん。各員、練成を重ねた技量を発揮してもらいたい。』
大石は一呼吸おき……………
大石蔵良『これより我が艦隊は、敵中深く突入!鉄血の中枢……その心臓部を叩く!!』
心臓作戦は最初の掟に書を移したばかりであった。
果たして、この大作戦は成功するのだろうか?
北の海に、戦いの予感高まる!!
EP4-3へ続く・・・・