アズールレーン~紺碧の艦隊と蒼き海原~ 作:非常勤務艦隊本部
平成16年2月
鉄血首都 ベルリン 深夜
総統官邸 寝室
官邸が寝静まった深夜、ヒトラーの寝室の電話が鳴る。
鉄血総統:ハインリッリ・フォン・ヒトラー「……うむ…私だ。何故余の睡眠を妨げるのだ…………」
電話の主はゲーリングからであり、その会話の内容はヒトラーから眠気を払い除けるものであった。
ヒトラー『なにぃ?!?!そんな、馬鹿な!!』
その直後に外から空襲警報が鳴り響き、ヒトラーは受話器を放り投げて窓を開ける。
そして目にしたのは、夜空にサーチライトが照らされて地上から無数の対空砲火が繰り出される光景であった。
ヒトラー「ベルリンが……爆撃されている…………余は夢を見ているのか……?」
ヒトラーは目の前の光景を信じられずにいたが、ベルリンの各所で爆発が起こり夢でない事を認識した。
執事が慌てて寝室にやってきてヒトラーに地下室へ避難するよう促すが、ヒトラーは逃げ回らなくてはならぬのかと問う。
しかし、直後に総統官邸も爆撃に晒されヒトラーはここに至りことの重大さを認識して、執事を連れて地下防空壕へと避難するのだった。
ヒトラー(おのれ……ロイヤルめ、おのれ……大洋州同盟め…………余に刃向かった報い、思い知らせてやるわ……!!)
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昭和18年4月18日。
ブーゲンビル島上空で戦死した聯合艦隊司令長官「山本五十六」は、アズールレーンの要素を含めた後世世界に『高野五十六』として、生まれ変わることとなる。
高野は、アズールレーンとレッドアクシズとの泥沼な戦争を防ぐために、密かに精鋭集団【紺碧会】を結成して、陸軍中将『大高弥三郎』と共に緩衝地帯【北北海道】にてクーデターを決行、新国家『大洋州同盟』を樹立して、第三勢力【大洋州同盟】を創設した。
だが、戦争へと転がり始めた歴史の流れを止めることはできず、平成11年12月8日。
大洋州同盟は、ユニオンの太平洋地域戦略の要であるハワイ諸島パールハーバーを奇襲攻撃し、これを占領した。
勢いに乗る大洋州同盟軍は、パナマ運河を破壊。
ユニオンの太平洋への軍需物資輸送手段を遮断せしめて、それからの主要な戦いに勝利を収めていき、太平洋の制海・制空両権をほぼ手中に収めたのである。
一方、鉄血総統に就任した【ハインリッリ・フォン・ヒトラー】は、世界制覇を目論み、着実に実行に移しつつあった。
重桜はこれに対して亡命ユダヤ人を受け入れて、平成14年………南樺太に【東方エルサレム共和国】を建国。
同年8月、大洋州同盟は鉄血に対し宣戦を布告した。
時を置かず、大洋州同盟は奇想天外『天極作戦』を発動。
重桜の誇る超大艇富士を以て鉄血の原爆研究所を爆撃、悪魔の計画を頓挫させた!
この成功をきっかけに、ロイヤルの同盟加盟が締結されて、鉄血によるインド太平洋地域進出を阻止すべく、共同歩調を取ることとなった。
そして……翌、平成15年8月16日。
超戦艦日本武尊を旗艦とする【旭日艦隊】が、ロイヤル本土援護のため重桜を出撃。
そして同年10月。
大洋州同盟軍による、鉄血のインド太平洋進出の拠点『マダガスカル島』奪回に向けて大作戦を展開。
マ島各鉄血基地を強襲、敵前上陸を成功させた!
そして大西洋では、名将「大石蔵良」率いる旭日艦隊が、鉄血のアフリカ侵攻を停滞させるべく作戦を展開。
夜陰に乗じて鉄血本土の要所【ジブラルタル海峡】を急襲、空軍飛行場を壊滅、量産型装甲空母グラーフ・ツェッペリンを撃沈せしめて、セウタ港から鉄血海軍が誇る旗艦級量産型高速戦艦『ビスマルクⅡ世』を大西洋へと引き摺り出して、打ち勝つ事に成功した!
だが、鉄血空軍の超重爆『ヨルムンガンド』が重桜本土を奇襲、帝都東京を目指していた!
これに対し高野は、本土防空の切り札として配備された【噴式局戦『桜花』】と、更に【特大型要撃機『嵐龍』】を迎撃に向かわせて、本土空襲の野望を打ち砕いたのだった!
そして、平成16年2月。
鉄血によるロイヤル本土上陸を阻止すべく、旭日艦隊は『心臓作戦』を発動。
前衛遊撃艦隊に別行動を取らせてジブラルタル要塞を再度奇襲、これを壊滅せしめて…………
心臓作戦に連動するかのように、紺碧艦隊も鉄血地中海艦隊を殲滅するべく『シンドバット作戦』を発動。
紅海にて鉄血地中海艦隊に雷撃を仕掛けて、これを殲滅せしめた。
そして、大石率いる旭日艦隊本隊は、寒風吹き荒ぶ北海に突入して鉄血本土沿岸まで進出。
ロイヤル空軍との合同による爆撃隊が遂にヒトラーの喉元に迫り、今…ベルリンの市街地は業火に包まれていた。
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総統官邸 01:29
総統官邸が爆撃に晒された後、市内の消防車が急行してきて消火活動を始める。
しかし、その最中に1人の男が官邸内に侵入したことに誰も気が付かなかった。
そして、消火活動に急行中の消防車に乗る双子の女性が、ふと上を向くとうっすらと戦闘機らしき影を見た。
総統官邸 上空
特殊艦上攻撃機『閃燕』 コックピット
篁唯依「
総統官邸の上空を通過した閃燕2機が、2発の爆弾を投弾する。
その爆弾は空中でパラシュートを開き燃料が散布されて、直後に凄まじい爆発を引き起こした!
その威力は凄まじく、瞬く間に総統官邸とその周辺を紅蓮の炎で焼き尽くした!
ユウヤ・ブリッジス「なんて威力だ…………あれで気化爆弾だってのかよ…………」
閃燕隊が投下した新型爆弾『炉号弾』。
指定高度にて燃料を散布して、空気との混合率が最適になった段階で点火、巨大な火球と衝撃波で辺りを破壊し尽くす。
ホルス16との戦闘で日本武尊が主砲に装填したのも、この炉号弾である。
ヒトラーは地下防空壕に避難して難を逃れたものの、地上はまさに地獄と化していた。
???「そ…………そんな…………」
???「なんて事を…………………」
官邸は2階部分が激しく燃え盛り、辺り一面は鉄屑やら屋根の瓦礫やらで、地獄絵図そのものだった。
再び夜空にエンジン音が響き渡り、消防士の1人がその音がさっきの光景がフラッシュバックとしてよぎった事で、取り乱してしまい官邸内に逃げ込んでしまう。
???『ぁ………………いやぁぁぁぁぁ!!!』
???「あぁ、待って!!落ち着いて!!」
総統官邸 執務室
一方、混乱に乗じて官邸内に侵入した1人の男は執務室にてヒトラー直筆の書類の写真を撮影していたが、直後に誰かが走ってくる音が聞こえて道具を急いでしまって物陰に隠れる。
フラッシュバックで取り乱して官邸内に逃げ込んだ消防士の1人は、執務室に逃げ込んで総統の椅子に腰掛ける。
彼女が落ち着いき周りをよく見ると、そこが一般の人は立ち入ることはできない総統の部屋であると気づき、ふと机に置いてあった書類を見つけて内容を読んでしまう。
物陰に隠れていた男は懐から拳銃を取り出して撃とうとするが、直後に消防士の異変に気づくこととなる。
???「…………」
その書類を見た消防士は、途端に顔を青ざめて震え始める。
???「ちょっと…………こんなところに居たの。早く消火活動に行かないと…………って、どうしたのよ?そんなに震えて…………」
彼女の後を追って執務室に入ってきた消防士が、直ぐに引き戻そうとするも様子がおかしいことに気づいた。
???「こ……殺される…………。こんなのを見たことがバレたら………………ゲシュタポに殺される…………!」
???「ちょ…………いきなり何いってんの?あんた一体何を見たのよ…………」
物陰に隠れていた男も、その消防士の異変に気づいて撃つのをやめて思考を巡らす。
そして応援の消防隊が官邸内に突入してきた事で、その2人はとうとう追い詰められたと錯覚してしまうが…………
重桜情報省所属特級諜報員:鎧衣左近「協力してくれるなら、逃してあげましょうか?」
???「………あ、あなたは一体!」
親衛隊が官邸内に突入して侵入者の捜索に入ったが、執務室に突入した瞬間に鎧衣が事前に仕掛けた爆薬が作動して爆発。
自身が怪我人と装ってその消防士2人に担いでもらい、なんとか総統官邸から逃げ出すことに成功する。
ベルリン市内
消防車 車内にて
鎧衣左近「お名前を、伺っておりませんでしたね?」
ドイツ消防団所属:エーリッヒ・ノイマン(28)「ノイマン……エーリッヒ・ノイマン。」
ドイツ消防団所属:エーリッヒ・ベルンハルト(28)「私はエーリッヒ・ベルンハルト。ノイマンは双子の妹よ。」
鎧衣左近「なるほど双子でしたか。もしあの時、あなた方が『
ノイマン「………あんな物を見た以上………………私は…………!」
鎧衣左近「君たちの身柄は私が預かろう。心配しなくても大丈夫だ。さて……市外まで飛ばしますよ!」
後に【闇の殺し屋】と恐れられることとなる閃燕に狙われたのは、ベルリン総統官邸だけではなかった。
大石は敵の最高指揮系統の無力化を狙い、ベルリンとほぼ同時刻に各地を襲撃させていたのだ。
北海 鉄血本土沿岸沖
超戦艦『日本武尊』 戦闘艦橋
参謀総長:原元芳中将「ロイヤル空軍から入電。『貴艦隊の第二次攻撃は成功・鉄血司令中枢は沈黙せり』との事です。」
旭日艦隊司令長官:大石蔵良元帥「これで奴らも枕を高くしては眠れなくなるはずだ。」
大石の狙いは、『鉄血首脳部への''警告''』であった!
大石蔵良「鉄血はジュネーブ条約を破り、東部戦線で各種毒ガスを使用したのだ。」
宮藤芳佳「そ、そんな……!」
ペリーヌ「条約で禁止されている化学兵器を使うなんて……!」
大石蔵良「それも全ては、鉄血特権階級が豪華な邸宅の中で『栄誉・栄華』を欲しいままにして、戦場の残酷さを知らないからだ。」
バルクホルン「条約を反故にしておきながら、『自分たちだけは安全だ』などは妄言だと言うのを思い知らせる必要があったわけだ。」
シャーリー「確かに、どんな独裁者も自分たちの懐を燃やされれば、嫌でも気がつくだろうさ。」
大石蔵良「後は、ベルハウゼン博士の脱出計画だが…………」
日本武尊「大丈夫だろう。閃燕の攻撃で、さしものゲシュタポも混乱しているはずだ。」
大石蔵良(頼むぞ、鎧衣左近…………)
一方、ベルリン市外へと逃れた鎧衣一行はロイヤルの連絡機と合流。
ベルハウゼン博士とその孫娘を乗せた連絡機に乗り込み、闇夜の空へ飛び立ち鉄血本土から脱出に成功したのだ。
これにより心臓作戦は、いよいよ最終局面に移ろうとしていた!
総統官邸 地下防空壕
世界の政治家の中で、最も【芸術的感性に優れている】人物は、間違いなくヒトラーと言えるだろう。
だが…………それは同時に、【危険で危うい資質】とも言えた……芸術的感性の裏に潜むもの、危うく邪悪なインスピレーション。
ヒトラー『ドーバーだ……ドーバーにいる。』
同時刻 鉄血空軍司令部
地下作戦司令室
鉄血空軍大臣:エアハルト・ゲーリング元帥「総統閣下から直々の指令が下った!直ちに、全爆撃機をドーバー海峡に向かわせろ!ガーランドも、ルーデルもだ!」
鉄血兵4「そ、それでは…………本土の防空が手薄になってしまいますが……」
ゲーリング「構わん!!超戦艦を沈められればよい!!」
ゲーリングの下に敵の妨害電波の発信地を特定したとの報告が入る。
その場所こそ、『ドーバー』であった!
これにより、ゲーリングの命令が各地の空軍基地に飛び、爆撃機隊が全力出撃するのだった。
ヒトラーの感は、今回も決して間違ってはいなかった。
ドーバー海峡に、重桜の『超巨大戦艦は確かに存在していた』のだが、それは『日本武尊ではななかった』。
ドーバー海峡 旧アイリス本土沿岸
木製戦艦『八咫烏』 司令艦橋
八咫烏艦長:藤堂早紀大佐「海野大佐!全ての準備が整いました!」
囮艦隊司令官:海野十三大佐「ご苦労、艦長。…………さて、我々が発している妨害電波も、そろそろ逆探で知られる頃だろう。鉄血空軍が本艦の位置を知られるのも時間の問題というわけだ。」
ジブラルタル奇襲の後、木製戦艦八咫烏は日本武尊本隊の北海突入を支援するべくドーバー海峡へと進出。
第二次攻撃隊発艦と同時に、前衛遊撃艦隊から離れて単艦で旧アイリス本土沿岸まで接近して、妨害電波を行っていたのだ。
海野十三『いよいよ心臓作戦も最終局面を迎えることとなった。特務艦八咫烏もこれが最後の務めとなるだろう!』
八咫烏電探手《こちら電探室!未確認機多数接近を確認!》
海野十三「……………来たか。日本武尊へ暗号打電!急げ!!」
「「はっ!!」」
藤堂早紀「総員離艦開始!訓練通りにかかれ!」
八咫烏からの通信は、日本武尊へともたらされる!
ドーバー海峡 鉄血本土沿岸
超戦艦『日本武尊』 戦闘艦橋
サーニャ「八咫烏からの通信で、鉄血空軍の攻撃が開始されたとの事です。」
大石蔵良「そうか…………」
リーネ「いよいよ…………ですね。」
ハルトマン「こっからは時間との勝負だね……」
エイラ「戦車の正位置………………勝利は揺るぎないものになるか……」
大石蔵良(ここが正念場だ。頼むぞ八咫烏…………海野大佐!)
八咫烏の艦尾のハッチが開き、総員離艦が始まる。
艦内の巨大な空間には【特殊な液体】が注がれていき、全乗員の待避が完了したのを確認した海野は操艦を自動操縦に切り替えて内火艇へと向かい、八咫烏から退去する。
自動操縦に切り替えられた八咫烏は、艦尾のハッチが自動で閉まり前進を続ける。
海野が敬礼で八咫烏を見送り、遂に鉄血空軍の攻撃が始まる!
急降下爆撃機【フツーカⅡ】の大編隊が八咫烏を視認するが、やはり日本武尊と誤認してしまい攻撃を開始!
八咫烏の【自動対空砲】が敵機を捕捉して射撃を開始!
爆撃機が次々と爆弾を投下して八咫烏に命中させるものの爆発はせず、次から次へと爆撃を開始するもののその全てが尽く不発で防がれてしまう!
鉄血攻撃機隊は知らなかった。
木製戦艦八咫烏の艦内は、その大部分が空洞であり、海野らは離艦の際にその巨大な空間に多量の【特殊発泡剤】を注入して行ったのだ。
これにより、投下された爆弾の殆どが無効化されてしまうのである。
やがて………健闘を続けた自動対空砲と言えど、遂に弾薬が尽き沈黙した。
鉄血攻撃機隊が無数のロケット弾を放って八咫烏に直撃弾を与えるものの、甲板上に備え付けられていた【自動消火装置】が作動して、被害を最小限に抑えて何事も無かったかのように前進を続ける。
鉄血空軍司令部 地下作戦司令室
ゲーリング『そんな馬鹿な!!日本武尊は本当に不沈戦艦だとぉ!?』
あれだけの波状攻撃を受けてもなお仕留めるどころか有効打すら与えられない事態に、流石のゲーリングも信じられずにいた。
部下の1人が「海上艦からの攻撃ならば」と呟くが、ゲーリングは意地とプライドでそれを拒否しようとするが…………
総統官邸 地下防空壕
ヒトラー「…………ほう、空軍が海軍に頭を下げるのか?」
ゲーリングはヒトラーに連絡をとり、すでに事態が国家的一大事として己のプライドを折り空海軍による共同作戦を取ることを伝える。
ヒトラーはゲーリングの賢明な判断と心境を理解しつつ、自らに任せよと伝えた。
ゲーリングは方法があるのか問うと、ヒトラーは不気味な笑みを浮かべて「無論だ」と答えた。
ゲーリング《もしや!''アレ''を…………?!》
ヒトラー「うむ。たかが重桜の戦艦だ。大人気ないかも知れんがね…………」
鉄血本土ドーバー海峡沿岸地区 (旧アイリス本土)
カレー郊外 南25キロ地点
アルトワ丘陵 北端部
カレーの南25キロに位置するアルトワ丘陵の北端部に建設された、鉄血の切り札である【ゲルマン砲要塞】があった!
この要塞は、10箇所に分散された砲台陣地とそれぞれが全長10キロに及ぶ地下トンネルで構成されていて、中央指揮所から結ばれていた。
この建設にあたっては、【数十万の捕虜を過酷な労働で死亡させた】のである。
この数ヶ月、昼夜を問わず砲撃がこの陣地から繰り返されて、ロイヤル本土の沿岸都市はその6割が壊滅状態に追いやられている。
現在、ヒトラーお気に入りのグルッフ重工業では、【ロイヤル本土上陸作戦】に備えて揚陸用船艇と特殊水陸両用戦車の量産を、急ピッチで進めていた。
ヒトラーが敵超戦艦への攻撃を思いついたのも、幼児が自慢のおもちゃを見せびらかすにも似た心理の発露にも言えよう。
ゲルマン砲と【100センチ大型列車砲『ヒトラー砲』】が発射位置に前進すると、砲弾と炸薬を装填して照準を合わせていく。
ほぼ同時に、八咫烏へ攻撃を行っていた空軍部隊も作戦を中止して安全圏まで退避を退避していく。
ロイヤル本土 ドーバー海峡沿岸
日下部うらら「敵攻撃機、退避行動していきます!」
藤堂早紀「大佐…」
海野十三「うん、いよいよ始まるぞ………!」
列車砲の砲撃準備が整い、兵たちが待避壕へ待避していき中央指揮所の防護扉が閉鎖される。
司令官が攻撃を指示するや、列車砲が雷鳴の如く轟いて、無数の砲弾がドーバー海峡を進む八咫烏の周辺に雨霰のように着弾していき、水柱が八咫烏を覆い尽くした!
ドーバー海峡 鉄血本土沿岸沖
超戦艦『日本武尊』 戦闘艦橋
シャーリー「八咫烏乗組員からの連絡きたぞ!!」
ルッキーニ「撃ったよ!撃ったよ!ちょび髭が盛大に撃ちまくったよ!!」
日本武尊「司令官!!」
大石蔵良『よし!!艦首噴進弾、発射用意!!』
古代進《ジャイロ起動!!諸元入力急げ!!》
南部康雄《発射口天蓋扉を開放!総員、噴進弾発射態勢へ!!》
日本武尊の艦首に装備された【噴進弾垂直発射器】の天蓋扉が開き、秘密兵器が姿を現す!
一方、列車砲陣地は第二射の準備が整い砲撃開始が間近であった!
南部康雄《全弾、発射準備完了!!》
大石蔵良『目標!ヒトラー砲台各陣地、発射ぁ!!』
日本武尊『撃ちぃ方ぁ始めぇー!!」
凄まじい発射煙が立ち上り、数十発もの噴進弾が日本武尊から撃ち放たれた。
日本武尊最大の秘密兵器が、この【二式誘導噴進弾】である。
固形燃料ブースターにより亜音速まで加速ののち、ダーボージェット推進に切り替えられる。
目標までは内蔵されたジャイロコンパスが誘導して、最終段階ではゲルマン砲及びヒトラー砲の発射時に発生する熱源を捉える【赤外線探知機】を採用している。
無論、弾頭は【炉呉弾】である。
ドーバー海峡 ロイヤル本土沿岸
日下部うらら「第二斉射…………来ますっ!!」
アルトワ丘陵から放たれた第二斉射は、またしても八咫烏を襲う!
この時点で八咫烏は所々で損傷していて速力も低下していたが、そこへ列車砲からの第二撃が襲い掛かり、複数発が八咫烏の船体に直撃していき、ついにその一発が偽装艦橋に直撃して一部が欠損、艦そのものが後ろへと傾くがかろうじて持ち堪える!
その光景を見た海野ら一瞬、八咫烏が撃破されたと思ったが………………
市瀬美奈「や、八咫烏が!!」
神崎恵「あれだけの攻撃では……いくら八咫烏と言えども…………」
日下部うらら「…………っん?!」
水飛沫が収まり視界が晴れると、そこには信じ難い光景が広がっていた!
日下部うらら『………や、八咫烏!健在!!』
特殊な加工を施した木材としての浮力性と不燃性が功を奏して、八咫烏は大破しながらも今だに海原にその巨体を力強く鎮座していたのだ!
日下部うらら「まだ浮いています!奇跡です!!」
市瀬美奈「す、凄い!!」
神崎恵「あの直撃でも耐え抜いたなんて…………!!」
八咫烏乗組員が歓喜の声を上げる中、海野は八咫烏に耐えるように願う。
海野十三(八咫烏…………あと少し、あと少しだけ力を貸してくれ。……頼んだぞ。)
八咫烏の奮闘に応えるかのように、日本武尊から放たれた噴進弾はアルトワ丘陵へと直走っていた!
一方でアルトワ丘陵の砲台陣地では、八咫烏にトドメを刺すべく第三斉射を行うべく準備を始めるが、運悪く………二式誘導噴進弾が列車砲から発生した熱源を探知して直進を始めていた!
これに気づいた各対空砲陣地が蜂の巣を突いたかのように射撃を始めるが、亜音速まで加速した噴進弾を追尾できるわけもなく侵入を許してしまう!
急いで列車砲を格納庫へ退避するよう指令を出すが時すでに遅く、数十発の噴進弾が砲台陣地の頭上で起爆!
兵たちが逃げるまもなく、列車砲陣地は瞬く間に凄まじい爆発に飲まれていき列車砲陣地は文字通り壊滅して、その爆発爆発が凄まじくアルトワ丘陵は頂上から中腹部分までが余波で崩壊して、巨大な土煙が立ち上った!
タリサ《あ〜…………列車砲陣地の破壊を確認…………っと言うか、山が半分ほど付近飛んだぞ?》
こうして、鉄血中枢部に一撃を与える『心臓作戦』は大成功を収めた。
だが、大石は知っていた。
「これで鉄血のロイヤル本土攻撃の勢いが止まる訳がない事」を…………
そして、囮艦としての役目を果たした八咫烏はと言うと…………
木製戦艦『八咫烏』 司令艦橋
市瀬美奈「電源類……電探…逆探……推進軸……舵……操舵輪…………い、異常なし!?」
日下部うらら「全自動対空砲、戦闘不能。しかし………機関の損傷は比較的軽微……第三戦速まで発揮可能との事です…………。」
神崎恵「浸水もなし……船体上部は穴だらけなのに、喫水線より下は損傷なしなんて…………」
藤堂早紀「それに、本艦に直撃した砲弾と爆弾が全て船外へ流れ出たなんて…………大佐、これも奇跡なのですか……」
海野十三「いや、奇跡なんかじゃない。重桜の守り神が、この八咫烏を守ってくれたんだ………………よし、本隊と合流する。」
藤堂早紀「機関始動!旭日艦隊に合流する!」
百発超の攻撃を受けてもなお浮いており、海野らが八咫烏に戻り被害を確認すると信じられない事に、航行に必要な箇所の損傷はなく、特殊発泡剤で無効化された爆弾や砲弾類も艦が傾斜した際にその殆どが海へ流れ出たため誘爆の危険がなく、更に喫水線より下への被害もなく航行に支障なしであった。
本当の意味で奇跡が起きた事で、八咫烏は沈むことなく旭日艦隊との合流を果たしたのだった。
それから夜が明けて…………日本武尊の上空に1機のロイヤルの連絡機が飛来してきて通信筒を投下していった。
日本武尊 時間食堂
大石蔵良「ほう、これは凄い!」
原元芳「どうしました?司令官。」
大石蔵良「ロイヤル王室のマーガレット女王陛下からの直接のメッセージだ。陛下は私に、ヴィクトリアクロスを授与してくださるそうだ。」
宮藤芳佳「ほ、本当なんですか!?」
バルクホルン「王室から直接招きを受けるなんてな!」
ハルトマン「旭日艦隊も、これで世界的に有名になったね!」
対鉄血戦の終結は未だ遠く、そして険しい…………
だが大石は、これまでの戦いが報われたかのように、胸を熱く染めていた。
大洋州同盟の戦いは……まだ、続く…………
EP4-5へ続く・・・・