アズールレーン~紺碧の艦隊と蒼き海原~ 作:非常勤務艦隊本部
昭和18年4月18日。
ブーゲンビル島上空で戦死した聯合艦隊司令長官「山本五十六」は、アズールレーンの要素を含めた後世世界に『高野五十六』として、生まれ変わることとなる。
高野は、アズールレーンとレッドアクシズとの泥沼な戦争を防ぐために、密かに精鋭集団【紺碧会】を結成して、陸軍中将『大高弥三郎』と共に緩衝地帯【北北海道】にてクーデターを決行、新国家『大洋州同盟』を樹立して、第三勢力【大洋州同盟】を創設した。
だが、戦争へと転がり始めた歴史の流れを止めることはできず、平成11年12月8日。
大洋州同盟は、ユニオンの太平洋地域戦略の要であるハワイ諸島パールハーバーを奇襲攻撃し、これを占領した。
勢いに乗る大洋州同盟軍は、パナマ運河を破壊。
ユニオンの太平洋への軍需物資輸送手段を遮断せしめて、それからの主要な戦いに勝利を収めていき、太平洋の制海・制空両権をほぼ手中に収めたのである。
一方、鉄血総統に就任した【ハインリッリ・フォン・ヒトラー】は、世界制覇を目論み、着実に実行に移しつつあった。
重桜はこれに対して亡命ユダヤ人を受け入れて、平成14年………南樺太に【東方エルサレム共和国】を建国。
同年8月、大洋州同盟は鉄血に対し宣戦を布告した。
時を置かず、大洋州同盟は奇想天外『天極作戦』を発動。
重桜の誇る超大艇富士を以て鉄血の原爆研究所を爆撃、悪魔の計画を頓挫させた!
この成功をきっかけに、ロイヤルの同盟加盟が締結されて、鉄血によるインド太平洋地域進出を阻止すべく、共同歩調を取ることとなった。
そして……翌、平成15年8月16日。
超戦艦日本武尊を旗艦とする【旭日艦隊】が、ロイヤル本土援護のため重桜を出撃。
そして同年10月。
大洋州同盟軍による、鉄血のインド太平洋進出の拠点『マダガスカル島』奪回に向けて大作戦を展開。
マ島各鉄血基地を強襲、敵前上陸を成功させた!
そして大西洋では、名将「大石蔵良」率いる旭日艦隊が、鉄血のアフリカ侵攻を停滞させるべく作戦を展開。
夜陰に乗じて鉄血本土の要所【ジブラルタル海峡】を急襲、空軍飛行場を壊滅、量産型装甲空母グラーフ・ツェッペリンを撃沈せしめて、セウタ港から鉄血海軍が誇る旗艦級量産型高速戦艦『ビスマルクⅡ世』を大西洋へと引き摺り出して、打ち勝つ事に成功した!
だが、鉄血空軍の超重爆『ヨルムンガンド』が重桜本土を奇襲、帝都東京を目指していた!
これに対し高野は、本土防空の切り札として配備された【噴式局戦『桜花』】と、更に【特大型要撃機『嵐龍』】を迎撃に向かわせて、本土空襲の野望を打ち砕いたのだった!
そして、平成16年2月。
鉄血によるロイヤル本土上陸を阻止すべく、旭日艦隊は『心臓作戦』を発動。
前衛遊撃艦隊に別行動を取らせてジブラルタル要塞を再度奇襲、これを壊滅せしめて…………
心臓作戦に連動するかのように、紺碧艦隊も鉄血地中海艦隊を殲滅するべく『シンドバット作戦』を発動。
紅海にて鉄血地中海艦隊に雷撃を仕掛けて、これを殲滅せしめた。
そして、大石率いる旭日艦隊本隊は、寒風吹き荒ぶ北海に突入して鉄血本土沿岸まで進出。
ロイヤル空軍との合同で鉄血の首都ベルリンを爆撃、中枢部に一撃を与えて、アルトワ丘陵に築かれた列車砲陣地を破壊せしめて、困難を極めた大作戦を見事成功に導いたのだった……
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平成16年6月 太平洋 ハワイ南東海域
朝焼け前の太平洋の空を、ユニオンの哨戒機が飛行する。
この時点でユニオンは、序盤戦で受けた損害をほぼ立て直していて、その強大な工業力を以てして戦力の拡充を急いでいた。
その哨戒機が、海霧の中で''島らしき影''を確認するが、燃料に余裕がなくその頭上を通過して帰還の途につく。
しかし、その島らしき影が突如として消えていったのだ。
哨戒機の搭乗員は一瞬自分たちの眼を疑ったが、間違いなく見ていたのをお互い確認するが、精神異常で機体から降ろされる危険があったため、報告はせずにそのまま帰還していった。
平成16年6月某日。
ハワイより東南東に4000キロ、ユニオン本土ロサンゼルスより南に3000キロの太平洋の只中に、我が紺碧艦隊の姿があった。
紺碧艦隊第一戦隊旗艦 伊601潜『富嶽号』
セイルにて
紺碧艦隊総司令官:前原一征少将「上空直掩機、射出急げ!」
伊601潜艦長:入江九市大佐「電探には敵艦影と機影、共に見当たりません。」
伊601潜先任士官:品川弥治郎中佐「噴式春嵐を2機出します!1機は射出待機!」
だが、紺碧艦隊には今回、客人を2名乗せていた。
高杉艦隊所属:ホーネット「やっと出れた〜!空気が美味しい!」
前原一征「潜水艦は不慣れだったか?」
高杉艦隊所属:エンタープライズ「あぁ。だが、偶には乗ってみるのも悪くないな。それよりすまないな、作戦中なのに着いてきてしまって。」
前原一征「気にすることはない。潜水艦に乗れる事は滅多にない事だ。我々の任務を知ってもらい、次の作戦に生かしてくれるとありがたい。」
紺碧艦隊第二戦隊旗艦 伊602潜『黒岳号』
セイルにて
伊602潜艦長:山中栄治大佐「1330、そろそろ来る頃かと…………」
紺碧艦隊副司令官:海江田四郎少将「大洋州同盟は、今度は何を実践配備したのか、気になるところだな。」
山中栄治「はい。楽しみです。」
伊503潜から直掩機が発艦し終えると、本命の新鋭潜水艦が紺碧艦隊の前に姿を現した!
その潜水艦は船体が三角形状の『楔型』で、格納筒を有した司令塔を構えていた!
重桜新KAN-SEN:鳴門01《こちら、鳴門01!浮上しました!》
山中栄治「新KAN-SEN……の様ですな……!」
海江田四郎「船体が独特な形状だな。」
一番艦に続く形で次々と同じ艦たちが海中からその姿を現してくる!
重桜新KAN-SEN:鳴門10《鳴門10、参上〜!》
重桜新KAN-SEN:鳴門06《鳴門06、只今推参!》
重桜新KAN-SEN:鳴門02《鳴門02、浮上…………ってやば、近かった。後退後退ー!》
重桜新KAN-SEN:鳴門04《鳴門04、浮上完了!》
重桜新KAN-SEN:鳴門05《鳴門05、只今到着〜!》
伊601潜 セイル
入江九市「壮観な眺めですな!」
前原一征「鳴門の凄いところはこれからだ!」
前原がそう言うと、浮上した鳴門たちが集合し始めて、謎の行動をとり始める。
鳴門01《全艦、波・風及び注意して接舷を開始して!》
鳴門02《はーい!鳴門02、いっきまーす!》
一番艦を基準にして二番艦が接近、巨大なフック状の固定装置を展開して接舷。
位置を微調整して固定装置を起動させて、船体同士を頑丈に固定する!
二番艦に続く様にして一二番艦、三番艦と、次々と結合を始めていき…………
最後の艦が接合を完了して、鳴門の真の姿が完成した!
鳴門姉妹《海中要塞鳴門!完成!》
正に、海に浮かぶ一大要塞!
この鳴門は、現在ミクロネシアに展開している20隻の【特呂形無艦橋潜水艦】の補給・休養基地となっている。
ホーネット「す、凄すぎる…………ハワイをここまで引っ張ってきたって感じ…………」
前原一征「鳴門は、戦国時代の出城を模している。ユニオンはこの後、ライン諸島かツアモツ諸島を前進基地を置いて、ハワイ奪回に向かうだろう。仮にロサンゼルスかサンディエゴを攻撃拠点に置くとしたら、この鳴門は北上して背後をつける!」
エンタープライズ「なるほど、あれ自体が動く軍事基地というわけか!」
前原一征「軍令部は、この作戦を『竜宮作戦』と呼んでいる。」
入江九市「なるほど…………鳴門を竜宮城と見立てるとは、軍令部にも中々のロマンティストが揃っている様ですな。」
前原一征「そ、そうだな…………」
前原は、竜宮作戦が自分の命名だとは言えず、ただ笑った。
さて『鳴門』もとい……【乙型浮き桟橋円盤型海中要塞『鳴門』】は、直径205mの円盤を丁度12分割した各艦により形成される。
一艦は、全長99m、全幅54.5mの楔状の船型を持ち、艦体尾部に【特呂型潜専用ドック】を一基備えている。
単座水上機の搭載艦は4隻、3隻から12隻が有機的に結合・分離を繰り返し如何なる戦況にも対応できるのだった。
無論、推進器は360度自由に回転する大型スクリューを装備しているため、状況次第では結合状態でも潜水航行が可能である。
この推進器は、現代でいうところの【アジマスラスター】であり、地球深部掘削船『ちきゅう』がこの推進器を採用している。
鳴門12《方位116から艦影接近、特呂型潜と識別。》
鳴門01《入渠準備!ドッグ作業員は指定の配置へ!》
海中から特呂型潜が1隻浮上してきて、海中要塞鳴門に収容される。
この日から3日間、ミクロネシアに展開中の20隻の特呂型無艦橋潜水艦の補給と休養は始まり、我が紺碧艦隊はその護衛に就いた。
3日後
海中要塞鳴門 会議室
前原一征「特呂型潜が補給を済ませ出動した後は、我々も作戦に加わる。本作戦は可能な限り、''秘匿性を保つ''事を責務としてもらいたい。」
伊504潜艦長「では、攻撃はなし…………っという事ですか?」
海江田四郎「そうだ。竜姫作戦の大元は【情報収集】にある。よって本作戦に従事中は緊急時以外の武器の使用は禁止する。」
作戦行動中は攻撃は禁止する。
この命令に、紺碧艦隊の幕僚たちは不満の声を吐露する。
それを見た前原は今一度、今大戦の真意を伝える。
前原一征「諸君、よく聞いてもらいたい!戦争は''前線部隊だけが''するものではない。''全体が重要''なのだ。『戦術』の上には『戦略』があり、更に『戦略』の上には『大戦略』があるのだ。この戦いは【如何に負けるか】が重要なのだ。」
皆が静粛に話を聞いている中、エンタープライズだけが己の胸中に渦巻く疑問を投げかけた。
エンタープライズ「…………しかし、わからないものだ。今日まで君達はユニオンに勝ち続けてきたのに、何故『負ける事にこだわる』のだ……何故、そこまでして大洋州同盟は負けねばならないのだ?」
エンタープライズの疑問は最もであった。
ここで、今大戦の意義を説明しておこう。
まずは大枠からだ。
『重桜』・『ロイヤル』・『ユニオン』・『アイリス』・『ヴィシア』・『サディア』・『大洋州同盟』は【海洋国家】であり、強力な海軍を有するシーパワー国家である一方で、『鉄血』・『北方連合』などは【大陸国家】であり、強力な陸軍と広大な土地を有するランドパワー国家である。
平成16年現在の大洋州同盟はユニオンに対して、海戦や島嶼群の取り合いでは連戦連勝の如く圧勝しており、パナマ運河を2度も攻撃してロスアラモス爆撃にも成功している。
ここまでくれば一見、【ユニオン本土上陸】という夢の様な作戦が浮かぶと思われるだろう。
しかしながら、我が大洋州同盟はユニオン本土に上陸しなかった。
この判断こそ、大高弥三郎の【負けるが勝ち】における最大の理由である。
現世において帝国時代の日本は、中国との間で泥沼な戦争を行なっていた。
中国側は【広大な土地を巧みに利用して敵を引き込んで】いき、日本側は【大きな目標に目を奪われてしまい、敵の主要都市を落としていった】。
だが、中国側は一向に降伏せずに大陸の奥深くへと引いていった事で日本側の目算は破綻してしまい、大軍を送り込んで戦線を拡大させた結果、細く伸びてしまった補給戦をゲリラに襲われて後へ引くこともままならずに敗戦を迎えてしまった。
さて、ユニオン本土は東煌同様に非常に広大である。
例えこの広大な土地に進撃したとしてもそれ自体が『天然と要塞』である以上、海洋国家を阻む障害であり勝ち目はない。
結論から先に述べてしまうと、大洋州同盟を以てしても【ユニオンに勝つ事は出来ない】のだ。
ユニオンは【海洋国家】でありながら、ハートランドという【大陸国家】の持つ、海洋国家が侵すことができない[b:“聖域”]を以ている国家なのだ。
だからこそ、勝つことができないのならば【如何にうまく負けるのか】を考えなくてはならない。
例えば完勝を狙わずに勝利を目指すのならば、ユニオンを屈服させるために【終末兵器の応酬】が始まり、【未曾有の死者】・【地球環境そのものの破壊】・そして【未来すら失い】、かの石原莞爾が唱えた【世界最終戦争】の幕開けを呼んでしまう。
だからこそ、良識ある大洋州同盟が敢えて折れることで【地球の保全】・【全人類を守る】事を考えたのだ。
だが、負ける相手は一部人種の根絶を掲げる『鉄血』ではなく、国民が力を持ち陰の政府を打倒した後のユニオンであり…………
これこそが、負けるが勝ちに則った大高弥三郎の大戦略であり、“如何にうまく負けるか”にあるのだ!
前原一征「竜姫作戦は、この大戦略を基に鳴門を要とした諜報活動なのである!一見容易な様でいて、将来の我が同盟の国運にも決しかねない作戦である事を、肝に銘じてほしい。」
補給と休養を済ませた特呂型潜は順次鳴門を離脱、諜報・哨戒を目的にユニオン大陸に向かって発進した。
そして、我が紺碧艦隊も出動。
ここに竜姫作戦は、本格的に始動した。
前原は紺碧艦隊を二手に分けて諜報活動を展開。
伊601潜以下第一戦隊はユニオン本土東岸沖へ向かい、伊602潜以下第二戦隊はパナマ沖で戦隊を分離させて個別で諜報活動を行なっていたが…………
平成16年7月某日
パナマ沖海中 深夜
伊602潜『黒岳号』 発令所
この日深夜、海上から謎の爆発音が鳴り響いたのだった。
山中栄治「…………っん?なんでしょう、今の音は?」
突如として鳴り響いた爆発音は、その後も連続して発生した事で何か起こったのではと思い聴音に確認を取る。
山中栄治「溝口、今の音は?」
伊602潜聴音手:溝口拓男《パナマ方向から、連続した爆発音を捉えました。》
海江田四郎「警戒配置へ。深度50まで浮上。」
海江田は直ちに音源を確かめるため艦を浮上させる。
伊602潜航海長:内海「深度50に達しました。」
海江田四郎「溝口。音源の確認はどうだ?」
溝口拓男《いえ、距離は反響音からして約1万。しかし……これは雷撃でも爆雷でもありません。恐らく、砲撃音かと…………》
山中栄治「砲撃音?近くに洋上艦がいるのでしょうか?」
海江田四郎「溝口。近くにスクリュー音はあるか?」
溝口拓男《ありません。》
海江田四郎「魚雷室へ連絡。偵察魚雷の発射用意だ。」
山中栄治「了解!海遊の発射準備、急げ!」
【海遊】とは、音通魚雷を改良した有線誘導による『偵察魚雷』である。
伊602潜から射出された海遊は、謎の音源を探る為目標海域に向かって直走る。
溝口拓男《聴音より発令室へ!海上に展開していたユニオン艦艇の動きが激しくなりました!爆雷音が連続しています!》
山中栄治「となると、最初の爆発音は潜水艦からの攻撃では?」
海江田四郎「その答えは、海遊からの報告待ちだな。」
内海「海遊、設定距離に到達しました。」
海江田四郎「よし。推進器を切って浮上、偵察を開始させろ。」
内海「了解。」
設定距離に到達した海遊は推進器を停止して浮上。
海上に出るやオートフォーカス式のカメラと無線傍受用のアンテナを展開して情報収集を始めた。
傍受した無線情報によると、「商船が“潜水艦からの[b:攻撃]”を受けて、ユニオンの量産型駆逐艦が爆雷投下を行っている」との事だった。
だが、潜水艦からの攻撃なら爆雷攻撃は辻褄は合うものの、ことの始まりが【砲撃音】であるならばどうしても辻褄が合わないのだ。
海江田は海遊を即時回収して、偵察写真の確認に入った。
伊602潜 司令官室
海遊から回収した偵察写真を封筒から出してみるが、敵艦らしき姿は一切なく、ユニオンの艦艇ばかり映っていたが…………
内海「映っているのは、ユニオンの量産艦艇ばかりです。」
海江田四郎「だが、この駆逐艦の破孔はどう説明する?」
内海「……写真で見る限り雷撃のものではなく、砲撃によるものでしょう。それも15サンチ砲の複数門かと…………」
海江田四郎「状況判断からしてそうだろう。」
山中栄治「しかし、潜水艦がそんな砲を搭載しているなんて……」
海江田四郎「俺もそう思ったさ。だが、現にアイリスのフルスク級が就役している。とすればだ…………」
内海「アイリスの砲撃潜水艦を……鉄血がコピーしたと?」
山中栄治「アイリス本土が陥落した時に、設計データを鉄血が押収したと見るべきだろう。」
海江田四郎「問題は、何故フルスク級をコピーしてまでそれ程の潜水艦を建造したかだ。………………理由は、必ずある筈だ。」
海江田たちの予想は的を射抜いていた。
鉄血海軍は、アイリス本土から押収したフルスク級砲撃潜水艦の設計図及び諸元データを使って、鉄血初の砲撃潜水艦【UX-99】をある任務のため、太平洋に送り込んでいたのだ!
全長200メートル以上、水中排水量1万数千トン、ホフマン型ワルター機関に特殊なスクリューを搭載して、速力は水上で最大29節で水中最大で19節を発揮する。
艦長である「フリードリヒ・フォン・ゴットシャルク大佐」は今回の戦果に上機嫌であり、声を高らかに上げて乾杯を上げるのだった。
だがUX-99の音紋は、伊602潜に捕捉されていたのだ。
伊602潜 聴音室
溝口拓男「敵潜水艦、離れていきます。速力10ノット。微弱な音ですが、昨夜のものとほぼ同じです。スクリュー音からして、スキュードスクリューを2基搭載しているかと…………」
海江田四郎「山中。現在の距離を保って、追跡開始だ。」
海江田は謎の鉄血潜水艦の行き先を突き止めるべく、付かず離れずの距離を保ちつつ追跡を開始した。
発令室
山中栄治「やはり、攻撃は………」
海江田四郎「先ずは敵艦の性能を確かめる。判断はその後だ。事の次第では、戦況に大きく影響するやもしれん。」
追跡を続けること数日、鉄血潜水艦の行き先が朧に見えてくる。
伊602潜 発令室
海江田四郎『総員に告げる。これより本艦は謎の鉄血潜水艦を追跡するべく、ユニオン聖域カルフォルニア湾へ突入する。全艦戦闘配備、以降は昼夜問わず無音航行に徹する様通達する。』
湾内に侵入した鉄血潜水艦はユニオンの警戒網に捕まるのを警戒して、速度を絞りに絞り深度100を保ちつつ、湾最深部に向かって北上を続けていた。
だが、流石は海江田の部下たちである。
困難を極めるであろう湾内潜航を聴音と連携して潜航深度を保ちつつ、完璧な無音航行をこなしつつ追跡を続けていた。
伊602潜 司令官室
山中栄治「湾内潜航2日目です。奴は一体どこまで北上する気でしょうか?」
海江田四郎「湾内に獲物は付従しないだろうが、湾の出口を塞がれて追い回されたら撃沈は時間の問題だ。それを敢えて行うからして、何か重大な目標があると見ていいだろう。」
海江田の予想は当たっていた。
太平洋に現れたUX-99は、ヒトラーからの密命を帯びてカルフォルニア湾奥深くへと侵入していたのだ。
その密命とは、カルフォルニア湾奥深くに点在する『アルヘル・デ・ラ・グアルダ島』にあった。
周囲に敵がいないことを確認したUX-99は直ちに浮上、砲撃準備にかかる!
UX-99が装備している特殊兵装こそ、グルッフ重工業が開発した【[[rb:BLITZ・KANONE >ブリッツ・カノーネ]]】と呼ばれる『15センチ特殊連装速射砲』を2基搭載している。
砲塔に自動装填機構と砲身に特殊な強制冷却装置を搭載、砲身にはチタン系合金をを使用しているため、発射速度は【毎秒1斉射】を誇る。
浮上したUX-99は砲塔を展開して島内の施設に向けて試射、弾道を確認したのち怒涛の連続射撃を敢行!
繰り返し撃ち放たれる15サンチ砲弾は島内の施設を叩きに叩いて、目標を粉砕したのだった。
そう、このUX-99が帯びていた密命こそアンヘル・デ・ラ・グアルダ島に秘匿された【プルトニウム製造工場】の破壊であったからだ!
プルトニウム製造工場を破壊したUX-99は、血眼になって追撃するユニオンの想像を絶する性能を以てしてカルフォルニア湾を脱出、太平洋に一路南下を続けていた。
まさかの追跡者がいるとは知らずに……
伊602潜 司令官室
内海「ユニオンのラジオ放送では何も伝えていませんが、増大した軍の無線情報を加味すれば、奴が襲ったのは【原爆研究の関連施設】と思われます。」
海江田四郎「どうやらユニオンはロスアラモスの一件では事足りずに、メキシコ政府と裏取引してその島で研究を続けていたのだろう。」
山中栄治「なるほど…………それならば危険を犯す価値はあります。我々も実践済みですから。」
溝口拓男「しかし、巡洋艦クラスの砲を速射砲みたいに撃ちまくっていましたが、凄まじい威力の様です。」
海江田四郎「やはり大砲の技術では、鉄血の方がはるかに進んでいると見ていいだろう。だが…………」
内海「ここまで巨大な敵艦となると、原潜を相手取る様なものです。」
山中栄治「撃沈は容易ではないか…………」
海江田四郎「どうだろう。ここはいっそ、捕獲してみるのも一つの手だ。」
海江田のまさかの発言に、一同は驚きの声をあげた。
だが、海江田にも捕獲する方法を考えていた。
海江田四郎「捕獲できれば、得るものは大きいだろう。」
溝口拓男「し、しかし…………」
海江田四郎「山中。“金魚すくい”をやったことはあるか?」
山中栄治「は、はい。子供の頃よく…………っ!そうか、鳴門を使って!」
海江田四郎「そうだ。作戦の要は【砲撃潜水艦】という特性だ。奴らの絶対の自信を逆手に取る。」
作戦は、新装備の【連絡気球】で鳴門と各地に展開する特呂型潜に伝えられた。
その後も伊602潜の追尾は続き、2日後の深夜…………
紺碧第二戦隊は全艦集結して、鉄血潜水艦の捕獲を目的とする【金魚すくい作戦】が発動。
各艦から艦載機が発進して、UX-99の追跡に入った。
一方、UX-99は…………
艦内の換気と空気の補充のため浮上航行していたが、伊505潜から発進した噴式春嵐が目標を発見!
迎撃を何なく潜り抜けて真上を取り、UX-99が慌てて潜航する瞬間を狙って親子型爆弾を投下!
近接信管が作動して起爆したのち無数の小型ブイが散布されて、そのうちの一つがUX-99に吸着して発信機が射出された。
親子型爆弾に積まれせていたのは【超長波発信機付吸着弾】であった。
伊602潜にUX-99に発信機を付けた旨の電文が届くと作戦は第二段階、各地に展開している特呂型潜たちが威嚇雷撃をかけて、UX-99の針路を強制させて捕獲地点まで誘導していく。
UX-99は幾度も針路変更を余儀なくされていき、艦内の空気は次第に澱んでいく中、X艦隊の副司令官が更新を求めてきた。
交信の内容は【降伏勧告】であった。
ゴットシャルクはこれを了承した上でUX-99をここまで追い詰めた貴艦の姿を見たいとして本艦と同時に浮上する様要求する。
海江田はこれを了承して交信を切るが、対するUX-99は砲撃潜水艦の特性を最大限活用して逆に敵艦を仕留めようと画策していた!
浮上したUX-99は、砲撃準備を整えており敵艦の浮上を待ち構えていた。
そして遂に姿を現した伊602潜を補足して誤差修正を進める中、海江田はさらに接近する様指示を出して作戦の成否を待つ。
UX-99の攻撃が行われようとしたその瞬間!
その真下から海中要塞鳴門が浮上して、UX-99は真下から突き上げられるかの様に掬い上げられて、船体が横倒しになり行動不能となった。
伊602潜 セイル
山中栄治「作戦成功ですな……!」
海江田四郎「そうだな。」
かくして、鉄血海軍の奇想新鋭潜水艦『UX-99』は捕獲された。
この後当艦は重桜に回航されて、徹底調査の上重桜造艦技術に大いに貢献することとなる。
配置直後の輝かしい戦果を誇るでもなく、鳴門は今もユニオン太平洋沖の只中にあり、龍宮作戦を遂行中である。
そして我が紺碧艦隊も、今日もその勇姿を懐中深く沈め、戦い続けていた。
インド洋に戦いの予兆が近づく………!!
EP4-6へ続く・・・・
次回は、あの【日本海海戦最大の英雄】が登場しますよ?