アズールレーン~紺碧の艦隊と蒼き海原~   作:非常勤務艦隊本部

3 / 18
△:EP1-2 琵琶湖・パナマ運河同時爆撃

 

 

 

昭和18年4月18日。

 

ブーゲンビル島上空で戦死した聯合艦隊司令長官「山本五十六」は、時の流れを21年を伝った『昭和39年』の後世世界に、「高野五十六」として転生した。

 

 

だが、高野が転生した後世世界は特殊な世界観を有していた。

 

 

セイレーンの出現により主要海域を奪われた人類は、第二次世界大戦の艦船の性能と記憶を受け継ぐ少女たちの台頭によりセイレーンの大攻勢を退け、軍事組織[アズールレーン]を結成した後世世界であった。

 

しかし、時が過ぎていくうちに国家間のイデオロギーの対立は、遂に重桜と鉄血のアズールレーン脱退と新陣営[レッドアクシズ]の結成を招き、両者の武力衝突の危機は深刻さを増していた。

 

そんな中、重桜とユニオンの北方緩衝地帯に建国された【北北海道】が突如蜂起、瞬く間に樺太・千島・北方四島・北海道本土を制圧して、同じく前世から転生した「陸軍中将大高弥三郎」を首班として、平成11年11月28日に『大洋州同盟』を建国、同年11月29日にはスイスのミュンヘンにて、第3勢力である【大洋州同盟】が創設された。

 

 

そして1208、運命の開戦が遂に行われ、大洋州同盟は積極的自衛権を行使。世界史に理想の道を歩ませ、泥沼の戦いになり行くアズールレーンとレッドアクシズとの戦いに干渉すべく、行動を開始した。

 

開戦初戦にて、ユニオンの太平洋進出の要である【ハワイ】を攻撃。

 

 

ロイヤルの東洋方面第2艦隊を退かせて、エンタープライズ率いるユニオン太平洋艦隊を壊滅せしめた。

 

 

 

 

 

平成12年(2000年)1月1日 日の出前

 

大洋州同盟首都 札幌市

 

 

アズールレーンとレッドアクシズとの戦争が始まったのにも関わらず、平成12年の正月を迎えていた。

 

 

重桜臨時宿舎 高雄の舎室

 

 

重桜から亡命してきた高雄は、北海道で迎える新年に合わせて、書初めをしていた。

 

 

高雄(四方の海…照らす曙…敷島の…………醜の御盾か……瑠璃のわか舟……………………。)

 

 

しかし、大洋州同盟が戦争介入を乗り出すが如く、今次大戦もまた異なる道へと歩むこととなる。

 

 

 

 

夜明け頃 東太平洋クリッパートン島沖

 

とある潜水艦 発令所

 

 

 

紺碧第1艦隊司令長官:前原一征少将(23)「…………美しい…………東太平洋で見る初日の出も、また格別だな。」

 

 

潜望鏡から初日の出を見ていたこの者こそ、この戦いを大きく変える立役者の一人「前原一征」である。

 

 

前原一征「ありがとう、艦長。」

 

 

伊601潜艦長:入江九市大佐(25)「は!……………………あれは、クリッパートン島に間違いありませんな!」

 

 

前原一征「うん、予定通りの航海だ。」

 

 

現在位置を確認し終えると、潜望鏡から目を離す。

 

 

入江九市「…………攻撃目標まで、約1600浬であります。」

 

 

前原一征「うん、いよいよ敵の陣か…………。これからは昼夜問わず、潜水航行で行かねばならんな。」

 

 

入江九市「は!潜望鏡降ろせ!」

 

 

伊601潜先任士官:品川弥治郎中佐(18)「潜望鏡、降ろします!」

 

 

入江九市「深さ50を保ち、速力7節!以後昼間は、水中稼電装置の使用を禁ずる。」

 

 

品川弥治郎「了解!深度50!速力7!」

 

 

伊601操舵手「宜候!」

 

 

入江九市「深度は指示あるまでそのまま!」

 

 

品川弥治郎「深度そのまま!パナマまで、深度を維持せよ!!」

 

 

伊601操舵手「宜候!」

 

 

 

潜望鏡を降ろし、再び海中にその身を没する艦隊がいた。

 

直ぐる、ハワイ沖海戦大勝利の影の功労は、この海中の艦隊にこそあった。

時の流れを遡ること、56年。

第二次世界大戦末期、完成を見ながら、その遅すぎる誕生に恨みを残す巨大潜水空母と謳われた【伊号400型】を発展させた『伊500型』・『伊600型』・『伊700型』からなる………

 

その名も紺碧の艦隊であった。

 

 

 

伊601潜 発令所

 

 

前原は、発令所の壁にしめ縄をかけているのを見る。

 

 

前原一征「おぉ!これはいい!」

 

 

品川弥治郎「は!せめて、松の内でもと思いまして。」

 

 

前原一征「うむ。」

 

 

そう言うと、帽子を取り礼拝をする。今次大戦を、より良い負けへと導くため。

 

 

品川弥三郎「閣下、お叱りを承知の上でこのようなものを用意したのでありますが…………」

 

 

前原一征「うん?」

 

 

品川が合図を出すと、炊事員の一人が屠蘇を持ってくる。

 

 

前原一征「おぉ!用意がいいな!」

 

 

そう言うと前原は盃を取る。

 

 

前原一征「だが、俺の分だけでは…………」

 

 

隊員たち「「ご心配なく!」」

 

 

部下思いの前原は、自分だけ盃をあげてもいいのかと心配したが、それは無用であった。

いつの間にか隊員たちは、湯呑みやコップに茶碗、そして日本酒を持ってきていたのだ。

 

 

前原一征「!っはっはっはっは!これは一本参った!」

 

 

隊員5「これ!こぼすなよ?」

 

 

隊員1「?少ないぞ?もっとつめよ!」

 

 

隊員5「でも、班長の器がでかすぎて…………」

 

 

隊員1「ケチるな!今日は正月だぞ?」

 

 

隊員3「班長殿は毎日では?」

 

 

「「はははははは!!」」

 

 

前原一征「では諸君!!新年、おめでとう!」

 

 

隊員たち「「おめでとうございます!!」」

 

 

炊事員「通してくれ!熱いぞ?さぁどいてどいて!」

 

 

前原達が新年の盃をあげると、奥から鍋を持った炊事員がやってくる。

 

 

炊事員「閣下!雑煮であります!!」

 

 

前原一征「おぉ!!これはいい!!」

 

 

 

緊張の中でも余裕を見せる紺碧艦隊は、東太平洋の波浪の下を往く。

そしてここ、日本海対馬沖でも、海中を往く潜水艦隊の姿があった。

 

 

 

潜水艦伊602潜 発令所

 

 

伊602航海長:内海中佐「現在位置、対馬島の東1600浬!琵琶湖運河沖合まで後2日!」

 

 

伊602副長:山中栄治大佐「ようやく中間地点を通過しました。後少しの距離です。」

 

 

伊601艦長兼紺碧第2艦隊司令官:海江田四郎少将「いや、これからが難関だ。本艦がステルス性に優れていても、ここは既に重桜の警戒水域内だ。」

 

山中栄治「わかりました。全艦に、常時潜水航行に徹するように通達します。」

 

 

海江田四郎「頼む。」

 

 

 

海江田四郎。彼もまた、この後世大戦の立役者の一人である。

 

前世では、海上自衛隊のディーゼル潜水艦「やまなみ」の艦長であり、自衛隊内で親友である「深町洋」と同じ優秀な潜水艦乗りである。

 

前世でその実績を買われ、アメリカと日本が極秘裏に建造していた【新鋭原子力潜水艦『やまと』】の艦長に選抜され、やまなみの全乗組員もその優秀な実績を買われて選抜された。

 

最終的には、試作の練習潜水艦の試験航海中にロシア軍駆逐艦が誤って攻撃してしまい撃沈させられたが、目が覚めると嘗ての乗艦であった原子力潜水艦の艦内で、乗組員たちと共に後世へと転生した。

 

 

大洋州同盟発足直後、高野の下へ訪れ自分もこの戦いに協力させてほしいと願い出て、自身の乗艦である原子力潜水艦を高野五十六に預けると言う条件で大洋州同盟軍に入隊。

 

開戦前まで潜水艦伊168の艦長をしていて、伊168潜の専任士官の言うには「配属されて5日も経たずに、伊168潜の癖を知り尽くして、完璧な指揮統率が取れていた。」と太鼓判を推すほどであった。

 

 

 

平成12年。

 

札幌の正月は、例年と変わらぬたたずまいを見せていた。

前世においては、真珠湾奇襲攻撃に沸きに沸いた正月だった。

 

 

札幌市郊外 とある料亭

 

 

高野五十六「穏やかな正月でありますな。」

 

 

大高弥三郎「誠に結構です。」

 

 

高野五十六「ハワイでの戦果を控えめに発表したせいか、世間に浮ついた様子は見受けられませんな。」

 

 

大高弥三郎「大いに結構です。国民に勝った勝ったの気分がみなぎり、その上の慢心が何より危険です。」

 

 

高野五十六「国民はさておき、将兵までもが振り回されてしまう…………前世大戦の大本営発表の誇張たるや、酷いものでしたな…。」

 

 

前世大戦時、国民に継戦気分をみなぎらせるために、各地の戦いの戦果を大々的に発表していたが、それが仇となってしまい、ミッドウェーでの戦いで大敗を期してしまい、敗戦の一因にもなった。

 

 

大高弥三郎「海軍と陸軍が手柄を競い合う期間さえありました。高野さん!これからの戦、軍部と軍人そのものを変えませんと、セイレーンはおろかこの戦いを終わらすことは出来ません。」

 

 

高野五十六「全く同感です大高さん。我が紺碧艦隊は、その思想そのものでもあるのです。前世大戦では、潜水艦の使い方を誤りました!」

 

 

潜水艦の主たる任務は【通商破壊】であるが、前世大戦での帝国海軍は潜水艦の使い方を根本的に誤ってしまい、優秀な潜水艦乗りを無益な出兵により失い、通商破壊を出来ずに敗戦を迎えてしまった。

 

 

大高弥三郎「駆逐艦より巡洋艦、巡洋艦より戦艦・空母と、派手な獲物を狙いたがるのです。」

 

 

高野五十六「しかし潜水艦の効果的な作戦は''通商破壊''にあります。」

 

 

大高弥三郎「だからこそ、紺碧艦隊は己を秘匿して…………''パナマ運河を討つ''!」

 

 

高野五十六「……………パナマ運河こそ、巨大ユニオンのアキレス腱なのです!」

 

 

 

ユニオンの工業力は、すべて五大湖周辺に集中している。

 

そこから生産される軍需物資と艦船や船舶は、パナマ運河を通って太平洋へと移送される。

無論、鉄道もあるが大量輸送となると船舶の比ではない。

 

もしこのパナマ運河を破壊されてしまえば、ユニオンの太平洋戦略は、根本的に見直されなければならない。

 

 

しかし、大洋州同盟には、パナマ運河と同時にもう一つの運河を破壊しなければならなかった。

 

 

 

大高弥三郎「それにこの世界には、パナマ運河程ではありませんが、日本海と太平洋を結ぶ琵琶湖運河もあります。」

 

 

 

琵琶湖運河。

 

重桜の東南アジアへの補給物資等を効率よく太平洋へ移送する為に作られた、日本海は敦賀・太平洋は大阪と結ぶ大規模な運河である。

 

現在は中立国籍の輸送船の受け入れと、重桜艦隊の根拠地への水路として運用されているが、この琵琶湖運河の双方どちらかを破壊されてしまうと、重桜艦隊は琵琶湖軍港から最低2年は太平洋へ進出できなくなる上、太平洋への補給物資の輸送が滞ってしまうリスクを孕んでいた。

 

 

大高弥三郎「この2つの運河を潰すことが出来れば…………」

 

 

高野五十六「彼らならやってくれます…………紺碧艦隊なら…!」

 

 

 

 

 

その頃、両雄期待の紺碧艦隊は、ユニオン・重桜の厳重なる警戒網を潜水航行で突破。

一路、航空隊の発艦地点へ向かっていた。

 

 

紺碧艦隊の陣容を、遅まきながらここで紹介しよう。

 

 

紺碧艦隊は、潜水空母「伊-600型」を旗艦とする「伊-500型」と「伊-700型」からなる潜水艦隊である。

 

 

 

マーシャル諸島のラタック列島の某所に位置する秘密基地「紺碧島」を拠点として行動する「前原一征少将」率いる【紺碧第1艦隊】と、大洋州同盟海軍の「襟裳岬地中基地」を拠点として行動する「海江田四郎少将(前世では海将補)」率いる【紺碧第2艦隊】の2つに分かれて行動している。

 

 

紺碧第1艦隊。

 

旗艦「伊601潜『富嶽(ふがく)号』」、随伴艦「伊501潜『水神(すいじん)号』」・「伊502潜『快流(かいりゅう)号』」・「伊503潜『爽海(そうかい)号』」、支援艦として「伊701潜補『乙姫(おとひめ)号』」も随伴しており、海江田らと共に後世世界へ転生した「潜水艦救難艦ちよだ」も補助艦艇として活動している。

 

 

紺碧第2艦隊。

 

旗艦「伊602潜『黒岳(くろだけ)号』」、随伴艦「伊504潜『氷神(ひょうじん)号』」・「伊505潜『清流(せいりゅう)号』」・「伊506潜『蒼海(そうかい)号』」、支援艦「伊702潜補『水光姫(みひかりひめ)号』」で、海江田らと共に後世世界へ転生した「潜水艦救難艦ちはや」が、紺碧第2艦隊の補助艦艇として活動している。

 

 

紺碧艦隊の水雷兵器はすべて艦首部に集められており、1隻あたり魚雷発射管を8門を搭載。

 

使用する魚雷は「62式酸素魚雷」で、弾頭は磁気探知で作動する信管で、敵艦のスクリュー音に反応して追尾する音響誘導方式となっているが、この誘導方式は初歩的である為、味方が近くにいると誤って味方艦の方に誘導されてしまう欠点を持ち合わせていた。

 

又、発射管にスリーブを入れることにより、口径の小さい[53式酸素魚雷]も併用可能とした。

 

先のハワイ沖海戦で戦艦ネルソン・アリゾナ・オクラホマ、空母レキシントンを航行不能に追い込んだのも、この六二式である。

 

 

機関もまた新機軸のものを搭載している。

 

 

その名も【ワルター機関】である。

 

前世では主にドイツ軍が開発していた機関で、過酸化水素などの化学薬品のコスト高や、取り扱うには繊細な注意が必要になった為、第二次大戦後に使われなくなったが、この後世世界では前世から転生した技術陣が長い月日をかけて実用化に成功したのだ。

 

その為、水中騒音が激しい従来の「スクリュー軸推進」ではなく、水中騒音が少なく、燃料消費に雲泥の差がある「ポンプ式噴射水流(ウォータージェット)推進」を採用している。

 

船体には水流抵抗の少ない「軟性護謨被膜」を採用している為、敵の各種電波を吸収する為、隠密性が高くなっている。

 

 

更に、操艦方法は従来の舵輪ではなく【動力電荷装置】で、前世では主に自動車などに採用されている「パワーステアリング」を搭載している為、操舵手の負担を減らしている。

 

 

しかし、紺碧艦隊の艦隊たる所以は、これだけではなかった。

 

 

伊602潜 格納庫

 

 

海江田四郎と山中栄治は、作戦の最終確認のため、投入兵器の確認をしていた。

 

 

山中栄治「遂にこの機体が役に立つのですな。」

 

 

海江田四郎「あぁ、少ない航空戦力ではあるが、運河の閘門を破壊するには十分だ。」

 

 

海江田の前には、水上攻撃機が2機佇んでいた。

 

 

 

伊600型搭載機、水上戦闘攻撃機『雷洋』。

 

 

800キロ爆弾もしくは四五式航空魚雷を搭載できるのだ。

 

その特徴はまず、夜間攻撃能力を持ち航続距離と速度性能に優れており、富嶽号と黒岳号には2機ずつ配備されている。

 

 

 

伊500型には各3機の春嵐を搭載している。

 

 

水上戦爆両用機『春嵐』。

 

戦爆両用機であり急降下爆撃を行う、投弾後はその持ち前の機動力を生かした高速小旋回戦を行う機体である。また、伊700型には2機の''星電改''が搭載されている。

 

 

''星電改''は、先のハワイ沖海戦にて大活躍をした、電子偵察機『星電』の水上機仕様である。

 

 

紺碧艦隊は少なからずではあるが、明らかに航空戦力を有していたのだ。

 

 

紺碧艦隊が、パナマ運河および琵琶湖運河に近づいていることすら気づかない重桜とユニオンは、先の戦いにて損耗した戦力の立て直しに躍起になっていた。

 

 

 

ユニオン東岸都市 ロサンゼルス

 

海軍作戦本部

 

 

ユニオン海軍太平洋戦域司令官:ベイ大将「なにぃ?!太平洋艦隊が?!」

 

 

空母レキシントン「はい…………大洋州同盟に降伏して、ハワイも制圧されてしまい…………。」

 

 

ユニオンは、ハワイを大洋州同盟に取られた上、太平洋艦隊が全艦投降したことにより、太平洋を守るユニオン艦隊の戦力が半減。更に450万バレルの石油もいっぺんに取られてしまった為、艦隊行動に制限をかけられる始末となった。

 

 

ベイ大将「ペンタゴンの国防省はどうするつもりだ!!新鋭空母を主力とする北太平洋艦隊が編成中の今、奴等に東海岸の工業都市を攻撃されたら、全てが終わるというのに!!」

 

 

レキシントン「…………国防総省からは、依然として音沙汰なし。恐らく指揮官を捨て駒にする算段をとっている節があります。」

 

 

ベイ大将(…………くっ!!ペンタゴンの連中、優秀な指揮官を生贄にする気か?!)

 

 

 

重桜帝都 東京 海軍省

 

統合作戦室

 

 

重桜海軍参謀長「ハワイ奇襲は失敗したが、南方方面の侵攻作戦は着実に整いつつある。」

 

 

重桜海軍作戦参謀「はい。琵琶湖運河を利用した物資輸送作戦により、今月末には準備が整う予定です。」

 

 

第一機動部隊を投入したハワイ奇襲は、大洋州同盟の潜水艦隊により阻まれたが、失敗は計算のうちと言わんばかりのように、南方方面への侵攻作戦が着実に整いつつあったのだ。

 

 

重桜陸軍参謀長「だが、もし南方侵攻作戦が失敗したら、その責任は誰に支払わせるのだ?」

 

 

重桜海軍参謀長「その時は、重鎮である長門様に、詰め腹を切らせる。簡単な話だ。」

 

 

重桜海軍総長「本来重桜を納めるのは、KAN-SENではない、大元帥陛下がこの国を治めるべきなのだ。」

 

 

 

各国がそれぞれの思惑を画策している間にも、紺碧艦隊はその牙を磨きつつあった。

 

 

 

 

 

それから3日後、紺碧第1艦隊はパナマ沖300浬の位置にまで到達していた。

第1艦隊旗艦伊601では、白熱した作戦会議が行われていた。

 

 

 

伊601潜 作戦会議室

 

 

入江九市「本艦の位置から攻撃目標であるガツン閘門まで約600。往復1200kmは、攻撃機の航続距離ギリギリだ。」

 

 

伊601航海長「しかし、これ以上北上させると海上のうねりがきつく、機の発着が困難になります。」

 

 

品川弥三郎「どうだろう。爆装を小さくして、増槽をつけるという手もあるが…………。」

 

 

大竹馬太郎飛行長「いいえ!爆装を減らしたくありません!その代わり艦長!回収地点をできるだけ近くしていたたげませんか!」

 

 

入江九市「それは危険だ。艦隊が敵に発見される恐れが、それだけ大になる。」

 

 

大竹馬太郎「それでは!危険と思われた時点で引き上げていただいて結構です!!」

 

 

入江九市「馬鹿者!!海に落ちて死ぬと言うのか!!」

 

 

大竹馬太郎「辞さぬということです!!」

 

 

入江九市「大竹大尉!わたしが言うのはな…………」

 

 

前原一征「入江艦長!大竹くんの言う通りにしてやろうじゃないか。」

 

 

入江九市「しかし閣下…………」

 

 

大竹馬太郎「ありがとうございます!」

 

 

前原一征「僚艦に伝え!!明2000を以て出撃とす!!各員準備にかかれ!!」

 

 

「「は!」」

 

 

20:00。

 

パナマ現地時間1月13日午前6時出撃。

 

 

ここに、紺碧艦隊の乾坤一擲の大作戦は切って落とされたのだ。

 

 

 

そして、運命の1月13日…………

 

 

 

重桜 敦賀沖30浬海中

 

 

紺碧第2艦隊旗艦 伊602潜

 

同 発令所

 

 

 

伊602聴音手:溝口拓男「海上及び海中に、敵艦の反応無し。」

 

 

山中栄治「操舵手!艦首を風上に!」

 

 

伊602操舵手「宜候!」

 

 

海江田四郎「潜望鏡を降ろせ!」

 

 

「潜望鏡降ろします!」

 

 

海江田は腕時計を見て、予定時刻であることを確認する。

 

 

海江田四郎「メインタンクブロー!全艦浮上!!」

 

 

山中栄治「タンクブロー!浮上!!」

 

 

1月の日本海海中から、巨大な潜水空母が轟音と波浪を轟かせながらその姿を現した。

 

 

山中栄治「全艦、浮上完了!!」

 

 

海江田四郎「各艦、速やかに攻撃隊を発艦。発艦終了次第、直ちに潜航して回収地点へ向かう。」

 

 

山中栄治「了解!」

 

 

海江田の迅速な指揮のもと、伊-702潜から「電子水上偵察機『星電改』」が発進し、時置かずして伊504・505・506潜から各3機の「水上戦闘攻撃機『春嵐』」が直ちに発進。

 

そして、第2艦隊旗艦伊602潜から2機の「水上戦闘攻撃機『雷洋』」が発進して、攻撃目標である琵琶湖運河の太平洋側の出入り口【枚方閘門】へ向かう。

 

 

そして、攻撃隊を発艦させた紺碧第2艦隊は、回収地点へ向かう為、その巨体を海中へと没した。

 

 

一方、前原一征少将率いる紺碧第1艦隊は既に攻撃隊を発進させており、一路攻撃目標であるパナマ運河【ガツン閘門】へ向かっていた。

 

 

大竹馬太郎率いる攻撃隊は、敵機の発見を恐れてパナマ市内を避けて、山間部を低空で侵入した。

 

更にほぼ同時刻、海江田四郎率いる紺碧第2艦隊から発進した攻撃隊も、三重県上空を高度8000で飛行していたが、燃料消費を抑える為、高見山地で一気に高度を落として、紀伊山地にそって低空にて紀伊水道へと向かっていた。

 

 

両攻撃隊が攻撃目標付近へ突入した頃、先に攻撃を仕掛けたのは大竹大尉率いる攻撃隊であった。

 

 

大竹大尉率いる攻撃隊がガツン閘門を視認するや、春嵐隊が急降下爆撃を敢行。

 

瞬く間に、港湾施設・燃料基地・貯蔵庫に停泊していた駆逐艦に被害を与えて敵に混乱を与えた。

 

敵が混乱している隙に、大竹大尉率いる雷洋2機がガツン閘門を破壊すべく落差の大きい湖側から雷撃を敢行。

 

途中、運河内で停泊していた駆逐艦フートに阻まれるも、駆逐艦と運河の間を巧妙に縫って突破。

 

 

絶好の距離を見定めて魚雷を投下。

 

あわや衝突ギリギリで高度を上げて僚機も魚雷を投下し大竹大尉の後に続く。

 

 

程なくして魚雷は爆裂!

 

 

数秒何も起こらなかったが、瞬く間に閘門は崩壊。

 

水位を保てなくなった運河は瞬く間に崩壊して、溢れ出た海水は津波と化し、周りの施設・船舶・艦船を巻き込み、ここにパナマ運河は実質的にその機能を失うことになった。

 

 

 

そして、紀伊水道へ突入した紺碧第2艦隊の攻撃隊は、淡路島の諭鶴羽山地に沿って大阪湾へ突入。

 

攻撃目標である枚方閘門を確認するや、春嵐隊は大阪軍港を集中的に攻撃。

 

 

重桜海軍の天保山監視所が、琵琶湖運河に侵入した雷洋2機を発見した時には既に時遅く、数分後に雷洋隊は枚方閘門に魚雷を放ち、閘門を破壊。

 

 

閘門から溢れ出た海水は津波と化して小艦艇を転覆させて、琵琶湖へ入港しようとしていた重桜空母「赤城」と「加賀」は、津波と化した海水に押し流されしまい、太平洋側の出入り口【大阪閘門】をその巨体で押し倒してしまう2次被害を引き起こしてしまった。

 

 

攻撃を終了した紺碧第2艦隊の攻撃隊は、重桜からの反撃を受けずに艦隊との合流地点である珠洲岬沖へと向かう。

 

 

そして、大竹大尉率いるパナマ攻撃隊は、離脱する際にユニオン陸軍のP39エアラコブラ数十機の攻撃を受けるも、春嵐の優れた小旋回と強力な機銃により瞬く間に迎撃に上がったP39の大半を撃ち落とす大戦果をあげて、持ち前の高速性能と上昇性能を以てパナマを悠々に離脱した。

 

 

 

そして、会合点へと到達した大竹大尉ら攻撃隊であったが、予想外の出来事が起こった。

 

 

 

雷洋 機内

 

 

宮城兵長「…!機長見えました!!標識層です!」

 

 

大竹馬太郎「おぉ!!…………っ?!いかん!!」

 

 

あろうことか、南太平洋から北上してきたセイレーンの駆逐艦級4隻がやたらめったらに、爆雷攻撃を行っていた。

 

 

宮城兵長「機長!あれは!!」

 

 

大竹馬太郎「セイレーンに勘付かれたのか?!」

 

 

魚雷と爆弾を打ち尽くした攻撃隊は争うことができずに、前原一征がなんとかしてくれることを信じて、燃料切れギリギリまで持ち堪えることにした。

 

 

伊601潜 発令所

 

 

一方、紺碧第1艦隊は、セイレーンの爆雷攻撃をひたすら耐えているところであった。

 

 

伊601聴音手「また来ます!!左舷上方2!!」

 

 

またしても、爆雷が2発炸裂し、艦が揺れる。

 

 

品川弥三郎「爆雷が近くなっています!」

 

 

前原一征「なぁに。敵はこちらの位置を掴んだわけではない。標識層の周りを掻き回しているだけだ。」

 

 

品川弥三郎「しかし!いつ敵のラッキーパンチが当たらんとも限りません…………あぅ!!」

 

 

入江九市「司令。本職としましては、攻撃隊の燃料の方が気になります。」

 

 

前原一征「…………よし、あれを試すか!」

 

 

入江九市「は!戦術『G-7』ですな!」

 

 

前原一征「僚艦に伝え!戦術G-7を以て、各個に敵駆逐艦を迎撃せよ!!」

 

 

 

潜水艦の天敵は駆逐艦であった。

 

 

こいつに狙われると、ただひたすら海中に身を潜め任務が遂行できなくなるのだ。

 

だが、紺碧艦隊は、新兵器と新戦術を以てこれを解決した。

 

 

その新兵器の名は、「囮魚雷『G-7』」であった。

 

 

この囮魚雷には圧搾空気が搭載されており、信管が作動すると圧搾空気を放出して海面に気泡を発生させる水雷兵器であった。

 

その水雷兵器を使用して、敵艦を誘い込み、酸素魚雷を以て一撃必殺の攻撃を加えるのが、戦術G-7の大まかな内容である。

 

 

この戦術G-7の成功の可否は、敵速・距離・海流・海水密度・水温などの密なる計算が求められることとなる。

 

 

ともかく、紺碧第1艦隊から一斉に発射された囮魚雷は、セイレーンの駆逐艦級4隻を惹きつけることに成功して、53式酸素魚雷により全艦撃沈させることに成功した。

 

 

 

伊601潜 発令所

 

 

水測士「魚雷命中!スクリュー音が消えました!」

 

 

品川弥三郎「やりましたね!閣下!」

 

 

前原一征「あぁ!」

 

 

入江九市「よぉし!浮上する!!」

 

 

伊601操舵手「宜候!!」

 

 

雷撃を終えた紺碧第1艦隊は全艦浮上し、直ちに艦載機の収容にかかった。

収容中何事もなく作業を終え、無事任務を終了して、紺碧島への帰路につくが…………

 

 

重桜石川県 珠洲岬沖合

 

紺碧第2艦隊

 

伊602潜 セイル

 

 

海江田四郎「山中。艦載機の収容はどうだ?」

 

 

山中栄治「は!現在、雷洋2番機が収容完了。たった今雷洋1番機の収容に入りました!」

 

 

すると、星電改から敵爆撃機接近の報が入る。

 

 

伊602電探手《星電改より至急電!敵爆撃機多数接近とのこと!!》

 

 

海江田四郎「数は?」

 

 

伊602電探手《18機!いずれも九九式艦爆です!》

 

 

山中栄治「収容間に合いません!!」

 

 

海江田四郎「対空戦闘用意!機銃で迎撃しつつ、艦載機収容の時間を稼ぐ!」

 

 

山中栄治「了解!対空戦闘用意!!急げ!!」

 

 

艦載機の収容中に敵爆撃機の接近はまさに絶望的であるが、海江田は対空迎撃をしつつ時間を稼ぐことにしたのだ。

 

敵爆撃機が急降下を開始したの同時に、紺碧第2艦隊各艦も対空射撃を開始する。

 

 

山中栄治「迎撃始め!各艦、艦載機の収容完了次第直ちに潜航せよ!」

 

 

伊-602とその僚艦は果敢に立ち向かい、99艦爆を8機撃墜するが、その後も敵の数が増え続け、遂に28機にまで増えた。

 

 

山中栄治「艦長!!敵の数が多すぎます!!とても捌き切れません!!」

 

 

海江田四郎「雷洋の収容状況は?」

 

 

伊602航空要員《たった今、台座に載せました!これより格納庫に収容します!》

 

 

海江田四郎「電探手!敵の数は!」

 

 

電探手《4機撃墜を確認…………!今、6機増えました!総数30!》

 

 

山中栄治「伊-702潜、潜航しました!残るは本艦のみです!」

 

 

海江田四郎「微速前進!攻撃をかわしながら収容する!」

 

 

海江田の冷静で慎重な判断で、攻撃をかわそうとする。

 

そんな中、伊-602の対空電探が新潟沖から接近する小型戦闘機群を捉えた。

 

 

 

新潟県沖合 上空

 

 

新潟県糸魚市沖合上空に、13人のウィッチ達が伊602潜の下へ向かっていた。

 

 

第501統合戦闘航空団『ストライクウィッチーズ』隊長:ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ中佐「見えたわ!」

 

 

『ストライクウィッチーズ』戦闘隊長:ゲルトルート・バルクホルン少佐「何処だ!」

 

 

エーリカ・ハルトマン中尉「前方600キロ!」

 

 

宮藤芳佳曹長「静夏ちゃん!この先って…………」

 

 

服部静夏少尉「はい!石川県の珠洲岬沖合で間違いありません!」

 

 

エイラ・イルマタル・ユーティライネン中尉「じゃああたしら、扶桑に来ちまったのか?!」

 

 

サーニャ・V・リトヴャク中尉「詮索は後回しよ、エイラ!今はあの潜水艦の撤退を援護しないと!」

 

 

バルクホルン「ミーナ!」

 

 

ミーナ「えぇ!ストライクウィッチーズ、全機戦闘態勢をとれ!!目標、敵爆撃機!!」

 

 

「「了解!!」」

 

 

 

隊長のミーナ中佐の号令の下、ストライクウィッチーズ隊が戦闘態勢に入る。

 

 

 

ミーナ「美緒!敵の総数は?」

 

 

そう聞くと、固有魔法[魔眼]で敵を偵察していた坂本美緒が報告する。

 

 

坂本美緒少佐「敵機種は、99式艦上爆撃機!数は30機だ!」

 

 

バルクホルン「乱戦に持ち込まれたら厄介だな…………ミーナ、ここは2人1組で行こう!」

 

 

バルクホルンの指示を聞いて、ミーナが最適な攻撃フォーメーションを打ち立てる。

 

 

ミーナ「各機に通達!編隊は2人1組!一方がアタック、もう一方がフォワードで攻撃!宮藤さん!貴方は潜水艦の離脱の援護をお願い!」

 

 

宮藤芳佳「了解!」

 

 

バルクホルン「全機ブレイク!!戦闘開始!!」

 

 

「「了解!!」」

 

 

伊602潜の離脱を援護すべく、ストライクウィッチーズが戦闘空域に突入する。

 

 

 

伊602潜 セイル

 

 

電探手《所属不明部隊、当空域に突入!!小型機、機数13!》

 

 

山中が双眼鏡で小型機を確認すると、少女が現在各国が運用している戦闘機を足に履いて飛んでいたのだ。

 

 

山中栄治「艦長!!人です!!人が飛んでいます!!」

 

 

海江田四郎「人が飛ぶ。正に現代に蘇った魔女というわけか。」

 

 

そんな中、宮藤からの通信が入る。

 

 

宮藤芳佳《こちら、ストライクウィッチーズの宮藤芳佳です!私達が敵の攻撃を引きつけますので、その隙にこの海域から離脱して下さい!!》

 

 

山中栄治「艦長!」

 

 

海江田四郎「よし、今のうちに艦載機の収容を終わらせて潜航する!」

 

 

山中栄治「了解!格納庫!艦載機の収容どうか!」

 

 

航空員《全機収容完了!たった今、格納筒ハッチを閉めました!潜航可能です!!》

 

 

山中栄治「艦載機収容完了!!いつでも潜航出来ます!!」

 

 

海江田四郎「潜航用意!上空戦闘中のウィッチ隊に打電!''支援感謝する。本艦潜航後、直ちに戦闘空域を離脱し、函館へ向かわれたし。''だ。」

 

 

 

そう言うと、海江田達は艦内に入り、程なくして伊602潜は海中にその姿を没した。

 

 

そして伊-602の離脱を確認したストライクウィッチーズ隊も現状把握の為、伊702潜所属の星電改の誘導の下、大洋州同盟港町「函館」へ向かう。

 

 

 

 

 

 

ユニオン首都 ワシントンD.C.

 

ホワイトハウス 執務室

 

 

その日の夕方。

 

ルーズベルトの下に、パナマ運河が攻撃された報告が入る。

 

 

ルーズベルト大統領「なんだ?…なんだと?………………パナマ運河が?!!」

 

 

思いもよらない報告を聞いたルーズベルトは、驚きの声を上げる。

 

 

ルーズベルト大統領「なぜなんだ!!ハワイからでも8000キロも離れているパナマ運河を、何故!何故、航空攻撃ができるんだ!!」

 

 

あまりにも非常識すぎる報告にルーズベルトは声を荒げるが、その後の沿岸警備についていたユニオンの潜水艦「アーチャーフィッシュ」の偵察報告により、状況は一変する。

 

 

ルーズベルト大統領「潜水艦だと?!しかし航空……………………潜水空母…………まさか、大洋州同盟軍が、そんなものを持っているはずが……………………あぁもういい。」

 

 

ありもしない現実にルーズベルトは考えたが、程なくして電話を切る。

 

 

大統領補佐官「大統領閣下。」

 

 

ルーズベルト大統領「至急、閣僚を集めたまえ。対策会議を開かねばならん。」

 

 

そう補佐官に指示をして、ルーズベルトは今後の戦略について考えていた。

 

 

ルーズベルト大統領(まだだ、まだ終わったわけではない。XB-30さえ完成すれば、あるいは北太平洋艦隊さえ整えば、挽回のチャンスはある…………!)

 

 

そう自分に言い聞かせて、精神を落ち着かせていた。

 

 

 

こうして、パナマ運河と琵琶湖運河を同時に攻撃する作戦は見事に成功。

 

同時に、この後世世界に、ウィッチと呼ばれた者たちが姿を表した。

 

 

彼らの戦いは続くとともに、この後世世界にも、新たな来訪者を迎え入れることとなる…………

 

 

 

EP2-1へ続く・・・・

 

 

 




次回、シーズン2へ・・・
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。