アズールレーン~紺碧の艦隊と蒼き海原~   作:非常勤務艦隊本部

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シーズン3、開幕!

太平洋でチートが炸裂しますよ?


シーズン2:激闘!太平洋戦線
△:EP2-1 重桜初空襲阻止作戦


 

 

 

昭和18年4月18日。

ブーゲンビル島上空で戦死した連合艦隊司令長官「山本五十六」は、時の流れを伝った21年後の後世世界に、「高野五十六」として転生した。

 

アズールレーンの要素を含めた後世に違和感を抱くが、重桜とユニオンの緩衝地帯に建国された【北北海道】でクーデターを決行して、青風会のトップである陸軍中将「大高弥三郎」を首班とする【大洋州同盟】を建国。その後、アイリスなどのアズールレーンの凖加盟国と会談を行い、第3勢力である【大洋州同盟】を成立した。

 

 

だが、戦争への流れを止めることはできず、1999年12月8日。

大洋州同盟は、この戦いをより良い負けに導くために第3次世界大戦に参戦した。

 

 

初戦で大洋州同盟は、アズールレーンの共同基地があるハワイ諸島を奇襲。

ロイヤルの東洋方面第2艦隊を行動不能にさせて、エンタープライズ率いるユニオン太平洋艦隊を壊滅せしめて、ハワイ諸島を占領。

 

勢いに乗る大洋州同盟はパナマ・琵琶湖両運河を攻撃、ユニオン・重桜の軍需物資輸送手段を遮断せしめた。

 

 

だが、緒戦のこの輝かしい戦果の裏に前原・海江田両少将に率いられた【紺碧の艦隊】と呼ばれる秘匿潜水艦隊が存在したが、それを知る者はごく僅かであった。

 

 

 

 

 

太平洋 マーシャル諸島某所 紺碧島

 

 

ここマーシャル諸島の某所に点在する無人島【紺碧島】には、紺碧第1艦隊の秘密基地があり、出航準備に入っていた。

 

 

紺碧島秘密基地

 

 

整備兵5「出航準備、ヨーソロ!」

 

 

入江九市「舫綱を解け!」

 

 

整備兵9「舫綱、解きます!」

 

 

整備兵4「連絡電話線切り離しまーす!」

 

 

立坑のシャッターが開き、紺碧艦隊が出航する。

 

 

入江九市「両舷、微速前進!」

 

 

前原がふと夜空を見上げると、南十字星が光り輝いていた。

 

 

前原一征「…………南十字星か……………、戦争中だということを忘れてしまいそうだ。」

 

 

 

紺碧第1艦隊 出航後

 

 

前原の緊急帰蝶命令を受けて紺碧第1艦隊は一路、トラック泊地へ向かっていた。

 

 

伊-601 司令官室

 

 

入江九市「入江です。」

 

 

前原一征「おぉ!入ってくれ!」

 

 

艦長の入江が司令官室に入ってくる。

 

 

前原一征「まぁ、かけたまえ。」

 

 

入江九市「は!閣下。全乗組員、士気は極めて大であります!」

 

 

前原一征「うむ、そうか。」

 

 

入江が座ったところで、さっそく本題に入る。

 

 

入江九市「今のところ、我が哨戒海域は静かなようですが、反抗があるとすれば、やはりフィジー方面かと…………」

 

 

前原一征「うむ。哨戒線は、今以上に強化せねばなるまいと思う。ハワイ諸島が我が軍の手中にある以上、敵が豪州を結ぶ地点はフィジー諸島が最有力だ。」

 

 

 

当初、ユニオンは重桜がハワイを奇襲するのを見越して、逆に重桜が目指すであろう南方方面に戦力を集中すべく、それを見越した戦略を立てていたが、大洋州同盟がハワイ諸島を完全奇襲を行った上に、南方輸送阻害作戦の要であったエンタープライズ率いるユニオン太平洋艦隊も壊滅して大洋州同盟に降伏してハワイ諸島を失った事により、当初予定されていた南方での作戦を中止せざるを得なくなった。

 

 

更に追い打ちをかけるが如く行われた【パナマ運河攻撃】により、太平洋への軍需物資輸送を断ち切られた事によって、ユニオンは限られた戦力で豪州を結ぶ雄一の拠点である【フィジー方面】を死守しなければならなくなった。

 

 

 

前原一征「アラスカからアリューシャン列島を伝い、千島列島から本国へと向かうことも考えられるが、とにかく太平洋は広い…。」

 

 

入江九市「はい。完璧な哨戒ラインを敷くことは不可能です!」

 

 

 

大洋州同盟は、この広大な太平洋をカバーすべく潜水艦隊の増強を進めているが、少数精鋭であり尚且つ広大な面積を持つ太平洋全域をカバーするとなれば、話は別になってくる。

 

 

 

前原一征「だが、それをやらねばならんのだ。」

 

 

入江九市「可能でありましょうか…。」

 

 

前原一征「……水偵を搭載できて長期間行動可能な海大型潜水艦を、200kmにつき1隻配備する。これなら、北海道を中心とする半径10,000kmの海域に75隻で済む。交代補給を考えても、その倍もあればこの計画は間に合う事になる。」

 

 

入江九市「しかし、我が国の造船技術では…………」

 

 

前原一征「いや、まもなく実戦配備の予定だ。」

 

 

入江九市「本当ですか!」

 

 

前原一征「長官の鋭い予想の賜物だよ。」

 

 

入江九市「で、では!」

 

 

前原一征「それもこれも、アイリスなどの同盟国の協力あってのことだ。」

 

 

 

大洋州同盟は、アイリス・ヴィシア・サディア・北方連合の協力もあり、急務である潜水艦の建造を進めていた。

 

そして前世の反省も生かして、海軍最大の金食い虫であるところの【大和型戦艦】の建造中止を提言、これにより大洋州同盟軍は総力を上げて、潜水艦隊の増強に力を入れていた。

 

 

前原一征「とにかく今回の緊急帰蝶命令も、その為もある。」

 

 

潜水航行を続けること2時間。

トラック泊地に到着した伊-601潜は浮上、前原は迎えの内火艇に乗り移り乗艦を後にする。

 

 

 

その後前原は本土へ戻る電子偵察機星電に便乗して、機上の人となる。

 

 

前原一征(今のところ、太平洋において敵の目立った動きはない。だがこの戦、先に仕掛けてきたのはユニオンだ。何を企んでるのかわからんが、はめられんようにしないと…………)

 

 

 

北海道浦河町

 

JR浦河駅 ホーム

 

 

山中栄治「まもなく時間ですが、司令。本当に随行員無しで行かれるのですか?」

 

 

紺碧第2艦隊司令官:海江田四郎少将「今回の緊急帰蝶命令は、主に今後の作戦についてだ。長期間艦を離れるわけではないからな。それよりも山中、私が不在の間は副長のお前が最高指揮官だ。頼むぞ。」

 

 

山中栄治「は!」

 

 

海江田もまた、ストライクウィッチーズの隊長と戦闘隊長を連れて、首都である札幌市へと向かう。

 

 

 

その頃、ユニオンでは…………

 

 

ホワイトハウス 中庭

 

 

この日ルーズベルトは中庭でゴルフをしていたが、そこに吉報がもたらされる。

 

 

ルーズベルト大統領「…………何?XB-30が完成したと?」

 

 

海軍高官1「はい。これで、兼ねてからの作戦が実行可能です。」

 

 

ルーズベルト大統領「ふふふ…………そうか、これで奴らの頭を直接燃やしつけることができるな…ふふふふふ…………はははは!!」

 

 

海軍高官4「それともう一つ吉報が。」

 

 

ルーズベルト大統領「?」

 

 

海軍高官4「兼ねてから建造中でありました、60,000t級の最新鋭超大型空母を旗艦とする北太平洋艦隊が、作戦行動に入ったとの事です。」

 

 

海軍高官1「大統領閣下。我が''星条旗作戦''は、着々と整いつつあります。」

 

 

政治高官6「開戦以来、奴等に足を掬われ続けていましたが、いよいよ反撃開始です!」

 

 

海軍高官1「国民も戦意高揚して、マスコミも我々を支持するでしょう!」

 

 

ルーズベルト大統領「………………ぜひ、そうあって欲しいものだ……いや、ならなければいかん。ふふふ…………はははははは!!」

 

 

 

アラスカ州 ウナラスカ島 ダッハーバー軍港

 

 

新鋭超空母 飛行甲板

 

 

北太平洋艦隊司令官:ドナルド・D・リーガン少将「さて…………我々の最初の任務はかなりの難題だぞ?」

 

???「どんな任務であろうとも、私たちはそれを遂行するだけ。」

 

 

 

 

ユニオンが何かを企んでいる中、前原を乗せた星電は4,053kmを飛行して、札幌近郊の大洋州同盟海軍の千歳基地へ到着。前原はその足で函館発〜札幌行の夜行特急列車[はまなす]を千歳駅から乗車して札幌へと向かう。

 

 

また、ストライクウィッチーズの隊長と副長他一名を引き連れた海江田も、浦河駅から普通列車にて沼ノ端駅に着き、そうから深夜高速バスにて札幌駅へ向かう。

 

 

 

平成12年(2000年) 4月6日

 

 

札幌市 すすきの

 

とあるホテルの一室

 

 

前原一征「富嶽です。はい、昨夜…いえ今朝早く着きました。では、大通り公園という事で…………それでは後ほど。…………さて、少々早いが出かけるとするか!」

 

 

そう言うと前原は、従軍記者【富嶽太郎】の身分になって待ち合わせ場所へと向かう。

 

途中、中央バス札幌ターミナルに立ち寄り、海江田達を出迎える。

そして、待ち合わせ場所の大通り公園へ向かう。

 

 

 

大通り公園 西3丁目噴水広場

 

 

政治評論家:松平仁志(海江田四郎)「それにしても、市内の再開発も順調に進んでいるな。」

 

 

従軍記者:富嶽太郎(前原一征)「あぁ。これも大高総理の指導力の賜物だな。」

 

 

501部隊隊長:ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ中佐「戦時中なのに、凄くのどかな場所ね……。」

 

 

501部隊所属:坂本美緒少佐「あぁ、とても戦争中とは思えない雰囲気だ。」

 

 

 

前原達とは裏腹に、戦時中にも関わらずとてものどかな雰囲気に、驚きを隠せない2人であった。

その後、迎えの車が来て両者は首相官邸へと赴く。

 

 

 

札幌市中央区 首相官邸

 

 

大洋州同盟首相:大高弥三郎「紺碧艦隊を率いる貴官の働きには、深く感謝しています。」

 

 

前原一征「恐れ入ります。」

 

 

大高弥三郎「その功績に昇進を以て報いることが出来ず、残念に思います。」

 

 

海江田四郎「いえ、そのお言葉だけで自分らには十分であります。」

 

 

大高弥三郎「ま、どうぞおかけなさい。」

 

 

 

両雄が席に着き、今後の戦略について話し合われた。

 

 

 

大高弥三郎「貴官らが指揮された【パナマ・琵琶湖運河封鎖作戦】は、予想以上の効果を発揮しております。」

 

 

高野五十六「ユニオン・重桜の太平洋への戦略物資輸送が大幅に遅れている。重桜に至っては、これまで国内で台頭していた主戦派の勢いが劣ろれ始めている状態だ。運河復旧までには後数ヶ月………琵琶湖運河に関しては2年を要する。我々はこの期間を、最大限に活かす手段を講じなければなりません。」

 

 

大高弥三郎「はい。陸軍では、【豪州侵攻】を思案しておりますが……」

 

 

 

大高が提案した豪州侵攻に対して、前原はそれに伴う懸念点を挙げる。

 

 

 

前原一征「僭越ではありますが………こう広大な豪州の侵攻は容易ではありません。下手をすると、中華戦線の二の舞になります。」

 

 

大高弥三郎「うーむ…………」

 

 

 

大高が唸りを上げる中、ミーナと坂本には今の話の内容をよく理解していなかったが、海江田が分かりやすいように説明する。

 

 

 

坂本美緒「中華戦線の二の舞………?どう言う意味だ?」

 

 

海江田四郎「前世日本帝国は、大戦前から中華民国・中国共産党と呼ばれる大陸国家と戦争状態にあったが、第二次大戦に参戦した頃には既に戦線は停滞していてな。これにより、前世陸軍は貴重な兵力と膨大な戦費を消耗していったんだ。」

 

 

ミーナ「そんな事が…………」

 

 

 

そこへ、前原がある策を講じる。

 

 

 

前原一征「私見ではありますが………潜水艦による海上封鎖が得策ではないでしょうか?」

 

 

大高弥三郎「なるほど!だが、豪州を牽制する意味でもパプア・ニューギニアは是が非でも占領しておきたい。この島には巨大なジャングルがあり、その中に無数の飛行場が基地化されている。このままにはしておけない!」

 

 

高野五十六「それにつきましては、海上より艦砲射撃を行い陸上部隊を海岸から各方面へと上陸させてはと考えております。」

 

 

大高弥三郎「で、準備は?」

 

 

高野五十六「海軍はいつでも。」

 

 

大高弥三郎「そうか…………いや、問題は補給です。前世のニューギニア戦線は繰り返したくないのでね。」

 

 

 

前世大戦において、東部ニューギニアはソロモン諸島と並んで太平洋戦域の戦局の要であったが、高温多湿の悪条件の上、補給が途絶えた日本軍将兵は飢えと病魔を前にしてジャングルの中で倒れていった。

 

前世でも更に悲惨だったのは、ソロモン諸島戦線であった。

 

日本軍はソロモン諸島の【ガダルカナル島】を占領して飛行場を建設、FS作戦の重要拠点になるはずだったが、ミッドウェーでの敗退によってこの作戦は中止されたため、基地航空隊の拠点として使用されるはずであったが、夜明けとともに米海兵隊による強襲上陸が行われた。

 

突然の強襲にガダルカナル島に駐屯していた設営隊と海軍陸戦隊は混乱状態に陥り島内に散り散りになり、連合軍との間で激戦が繰り広げられた。

 

 

前世帝国軍はこの島を死守すべく再三にわたり部隊を派遣したが、物量に勝る連合軍の前に敗北を重ねていき、駆逐艦を使用した輸送でも孤立した友軍に満足のいく補給も行き渡らず、悲惨な運命を迎えることとなった。

 

 

補給が途絶えた部隊がどのような運命を辿るのか。

海江田からそれを聞かされたミーナと坂本は戦慄するのであった。

 

 

 

高野五十六「前世大戦の反省に基づいて、護衛艦艇の強化を図るべく準備を進めています。」

 

 

大高弥三郎「陸軍は東煌戦線を縮小したので余力がある。彼らを、パプア・ニューギニアの攻略に向けましょう。」

 

 

海江田四郎「ですが総理。中国大陸からの撤退は、東煌基地化の危険が増します。場合によっては、現政権が転覆する恐れがありますが…………」

 

 

大高弥三郎「大いにあります。それに前世では…………」

 

 

 

前世大戦時、中国重慶政府に対する援蒋ルートを遮断すべく、ビルマ攻略を主軸とする【インパール作戦】の開始に踏み切った日本軍であったが、中英両軍の猛烈な反撃に見舞われて、悲惨な敗退を喫したのであった。

 

 

 

大高弥三郎「あの失敗を繰り返すつもりはない!……高野さん!」

 

 

高野五十六「我々は陸上からではなく、海上からインドとビルマを封鎖する。今、坂本中将の本国艦隊がその任に就いているが…………いったん事があると遠すぎる。そこで、ハワイで鹵獲したユニオン太平洋艦隊が役立つ訳だ。」

 

 

 

ハワイ作戦時、カウアイ海峡海戦で全艦降伏したユニオン太平洋艦隊は、大高と高野の面会で今次大戦の意義を聞かされこれを了承、協力を取り付けた事で大洋州同盟はその戦力拡充に力を入れていた。

 

護衛艦艇と空母は全て修理の上、新型機関と新兵器の搭載が進められる一方で、主力艦艇群は根室・釧路・苫小牧・室蘭・函館の海軍工廠に運ばれて、艦全体の大規模改装が行われていた。

 

 

現在は新型機関を搭載して速力を上げるための作業が行われていて、6月頃に第1次改装が終わる予定である。

 

 

その艦隊司令には、紺碧会のメンバーである「川崎弘」に内定しており、艦隊名も【紅玉艦隊】と命名されたのである。

 

 

 

 

大高弥三郎「そう言えば話は変わりますが、実は最近''ある出来事''が起こっているのです。」

 

 

前原一征「ある出来事?」

 

 

高野五十六「実は、同盟各国で見覚えのない人物たちの転移が確認されているのだ。」

 

 

前原一征「見覚えのない人物たちの転移…………ですか!?」

 

 

大高弥三郎「はい。ここに同席していますミーナ中佐と坂本少佐殿が、その証拠です。」

 

 

 

先のパナマ・琵琶湖両運河封鎖作戦の後、アイリス・ヴィシア・サディア・北方連合で【異世界からの転移者】が相次ぎで報告されている。

 

彼らウィッチーズの転移も偶然ではなく、そのほかの統合戦闘航空団、更には【戦車道】という武道を志している女子学生たちの転移も報告されていることから、大高と高野もこのことを事実と認識していた。

 

 

 

大高弥三郎「ここは後世世界、何が起きてもおかしくはありません。我々はこの事実を受け止めて、対応していかなくてはいけません。」

 

 

高野五十六「ついては、君たちの部隊に【本土と重桜の防空任務】を任せたいのだが…………」

 

 

ミーナ「それは構いませんが、なぜ重桜の防空任務まで使いなさるのですか?敵対国のはずでは…………」

 

 

大高弥三郎「''今は''敵対しております。しかしそれは、一時的なものです。最終的に我が国は重桜に帰属する方針でいます。」

 

 

坂本美緒「重桜に帰属なさるのですか?!しかし、それでは…………」

 

 

大高弥三郎「しかし今はその時ではないのです。私が言う重桜とは、[軍部の圧力を打倒して、健全な''文民政府''を取り戻した]時の重桜なのです。」

 

 

高野五十六「その為には重桜の人々に、我々が敵にしているのは重桜''国民''はなく重桜政府………言い換えればそれを支配している''軍部''である事を知ってもらう必要がある。これは対ユニオン戦にも共通しているのだよ。」

 

 

大高弥三郎「あなた方の力はただ国を守る為のものではなく、【人々を勇気づけられる力】を有しているのです。」

 

 

坂本美緒「…………では、我々はその''先兵''になれ…………と言うのですか?」

 

 

大高弥三郎「薄情で申し訳ないと思っています。しかし、これは貴方方にしか務まらない事と思っています。」

 

 

高野五十六「無論、嫌ならこの世界で生きていく為に支援はするし……今次大戦が終われば、無条件で君達を自由にするつもりでいる。その時が来るまで、どうか力を貸してはくれないだろうか?」

 

 

 

ミーナと坂本はしばし考えて、この事を了承した。

 

 

 

ミーナ「…………分かりました。そこまでの覚悟があるのであれば、ご尽力を尽くさせていただきます。」

 

 

大高弥三郎「御英断に感謝します……!!」

 

 

坂本美緒「しかし、部下を死なせる作戦には反対していただきますが。」

 

 

高野五十六「その心配はいらない。私も、前世での過ちを繰り返すつもりはないからな。」

 

 

 

ここに両者との協力が結ばれ、第501統合戦闘航空団【ストライクウィッチーズ】は大洋州同盟の函館湾の人工島に築かれた【新函館海軍航空基地】を拠点にして、重桜に近づく敵航空機に睨みを効かせることとなる。

 

 

 

その夜、前原の姿は高野邸にあった。

 

 

札幌市厚別区 高野邸にて

 

 

前原一征「こうして閣下と盤を囲むのも久しぶりです。」

 

 

高野五十六「そうだな。」

 

 

二人は囲碁を指しながら、現在の世界情勢を重桜の目線で観察していた。

 

 

高野五十六「しかし、八目も置くと真っ黒だな。白がまるで重桜のようだ。」

 

 

前原一征「確かに、閣下の白は重桜の如く列強に囲まれていますな。」

 

 

高野五十六「八目は………ユニオン、ロイヤル、アイリス……ヴィシア、サディア、東煌に北方連合そして、我が大洋州同盟というわけか。となると白は、広い真ん中に出るしかないか。」

 

 

前原一征「すなわち太平洋ですな?」

 

 

高野五十六「そういうことだ。」

 

 

前原一征「確かに無数の島々が点在する太平洋は、碁盤のようであります。」

 

 

高野五十六「しかも背中には強かな北方連合、土手っ腹には腹の深い東煌ときて、頭上には戦争と外交をシームレスに行う我が国ときた。オランダは潰したが、ユニオンとロイヤルは未だ健在だ。」

 

 

前原一征「なっ!?閣下…」

 

 

高野五十六「さぁどうする?待ったはなしだぞ。シンガポールの東洋艦隊が孤立したぞ?」

 

 

前原一征「…………参りましたな。この一石は重桜によるアラビア海の封鎖ですな。」

 

 

高野五十六「ははははは!…………しかし、飛び石作戦とはよく言ったものだ。前世敵は豪州を基地として、確実に石を伸ばしてきたからな。」

 

 

前原一征「は、我々は前世ミッドウェー海戦で大敗を喫しましたからな。」

 

 

 

両雄の脳裏に、ミッドウェー海戦が鮮明に蘇ってくる。

この戦いで日本軍は、豪州制圧の前段階であるFS作戦を中止せざるを得なくなり、戦略を根本的に見直す結果となった。

 

 

前原一征「もし、あの戦さに負けていなければ敵も容易には!」

 

 

高野五十六「あの海戦の失敗は、俺の痛恨の極みだよ………」

 

 

そして高野には、ミッドウェーの大敗の原因にもなった【ドゥーリットル空襲】を思い返していた。

 

 

高野五十六「帝都を爆撃され、世論に負けて…………焦って墓穴を掘ってしまった。まだ十分な研究をせずに、敵を侮って出かけたが故の結果だよ。」

 

 

前原一征「4月18日でした。この世界においても、帝都空襲はあるのでしょうか?」

 

 

高野五十六「さぁな。あるかも知れないし…………又はないかも知れない。」

 

 

 

高野と前原はその現実の立場を離れて、師弟とも言えてまた同志とも言える。

久方ぶりの再会も歴史知識と戦争論、未来予測と止まるところを知らなかった。

 

 

 

前原一征「我が紺碧会でも、海軍の【マハン理論】と陸軍の【ハウスホーファー理論】との対立は、よく議論されていましたが…………」

 

 

高野五十六「そうだな。前世ではその考え方の相違が、陸海軍の対立の原因だったな。」

 

 

前原一征「それによると、『マハン理論では、強大な海軍国家と陸軍国家は並立しない』とされていますが…………」

 

 

高野五十六「重桜は東に大海、西は大陸と接する島国だ。結果2つの考え方が対立して命取りとなってしまった。」

 

 

前原一征「総理も、そのことを強調されておられました。」

 

 

高野五十六「だから総理は、陸軍を抑えることに腐心しておられる。」

 

 

前原一征「総理は陸軍出身ですからな…………軍閥からは、さぞ恨まれてることでしょうな。」

 

 

高野五十六「まぁな…………命すら狙われている。」

 

 

前原一征「それは閣下とて同じことです。くれぐれもお気をつけ下さいませんと。」

 

 

高野五十六「…………そうだな。」

 

 

 

 

両雄との会談は、桜吹雪を舞い散らしながら静かに終わりを告げた。

 

そして、翌日。

 

 

ススキノ とあるホテルの一室

 

 

あの会談の後、酒に酔い潰れたのかそままの服装で眠る前原であったが、ドアをノックする音で目を覚ます。

 

 

前原一征「んん……?誰だ?」

 

 

日向「私です。日向です。」

 

 

前原一征「あぁ…………入れ。」

 

 

ドアが開き、日向が入ってくる。

 

 

日向「おはようございます。」

 

 

前原一征「あぁ、おはよう。」

 

 

日向「総長に言いつかりまして、閣下をあるところにご案内せよと。」

 

 

前原一征「あるところ?そうか………まだ食事をしていないのだが、何か食う時間はあるか?」

 

 

日向「どうぞ。」

 

 

 

食事を済ませた前原は、日向の案内の下ある場所へと向かう。

 

そこには、海江田の姿もあった。

 

 

 

移動中の車内

 

 

 

前原一征「何処へ連れて行ってくれるのかな?」

 

 

日向「着いてからのお楽しみです。」

 

 

 

前原を乗せた車は、大洋州同盟の商業都市【千歳市】郊外にある航空機製造工場【泰山航空工業】へと誘った。

 

その敷地内にある格納庫の前に、一人の社長が前原らを出迎える。

 

 

 

前原一征「………!東野社長!」

 

 

泰山航空工業社長:東野源一郎(40)「お待ちしていました、閣下。」

 

 

前原一征「では、''例の新型機''を!」

 

 

東野源一郎「はい、ご覧になって下さい。」

 

 

 

泰山航空工業社長である東野源一郎は紺碧会のメンバーであり、前原とは実根の間柄であった。

 

前原たちは格納庫内に案内されて、新型機をこの目で確かめる。

 

 

 

前原一征「こ、これは……!」

 

 

東野源一郎「局地戦闘機蒼莱(そうらい)です!」

 

 

 

前原の眼前には、従来の戦闘機とは一線を画す形状をした機体が鎮座していた。

 

 

前原一征「これが…………蒼莱……!」

 

 

 

東野源一郎「前世での我が軍の戦闘機は、高度10,000mに達するのに熟練パイロットでも数十分から1時間はかかりましたが、この蒼莱だと【15分足らずで''成層圏''に到達する】事が出来ます!」

 

 

前原一征「なんと!」

 

 

東野源一郎「航続距離が短い代わりに、上昇力と高高度での運動性を重視した機体です!」

 

 

海江田四郎「まるで、幻の戦闘機【震電】が生まれ変わった性能だな………!」

 

 

東野源一郎「まさしくその通りです!エンジンは排気タービン過給機付き東式梅型発動機に二重反転式八枚プロペラ、機首にはレーダーと迫撃砲並みの57ミリ機関砲を2門!こいつの一撃が、大型機をも容易く粉砕します!……………前世では、投弾して高高度を悠々と引き上げていく、空の要塞【B-29】を完全に阻止できる日本機はなかった。あの悔しさは、未だに忘れられません………!」

 

 

 

そして函館の海軍航空基地にも、ウィッチたちの新しい''魔法のホウキ''が到着していた。

 

 

 

函館人工島 函館海軍航空基地

 

格納庫にて

 

 

ペリーヌ「これが、私たちの新型………ですの?」

 

 

宮藤芳佳「まるで、震電みたい…………」

 

 

 

彼女たちの前には、今まで宮藤が使用していたストライカーユニット【震電】の形をした新型ユニットが12機鎮座していた。

 

 

エイラ「これが新型なのか?」

 

 

サーニャ「芳佳ちゃんの震電に似てるけど…………」

 

 

坂本美緒「ミーナ、これが…………」

 

 

ミーナ「間違いないわ、【汎用迎撃戦闘脚''蒼莱''】ね………!」

 

 

服部静香「迎撃戦闘脚、蒼莱?」

 

 

 

この汎用迎撃戦闘脚蒼莱は、泰山航空工業を親会社としている【宮菱重工】が設計・制作した、後世世界初となるストライカーユニットである。

 

前世…………すなわち、ウィッチたちの世界にてストライカーユニットを開発した技師「宮藤一郎」が、「都藤一郎」としてこの後世に転生した事で実現した機体だ。

 

 

ミーナ「宮藤さんが使っていた震電が基となって開発されたユニットね。脚長111.1cmに、後世世界の技術で進化を遂げた【マ43-42エンジン】の生まれ変わりの【魔導過給機付きマ式零型魔導エンジン】を動力にしているわね。」

 

 

坂本美緒「仕様書には、そのエンジンから生み出される2,150Mpの大出力を活かすために、二重反転式の八枚呪力ペラ生成器を搭載しているらしい。最大速度は高度8,700で760km/hで、実用上昇高度は最高で15,000mの様だな。」

 

 

シャーリー「最大速度が760?!凄いじゃないか!!」

 

 

ルッキーニ「シャーリーのユニットよりも速〜い!」

 

 

リーネ「あの、武装の方は?」

 

 

 

坂本美緒「こいつには専用の機銃がある様だな?」

 

 

ミーナ「えぇ、【ト式射撃管制機】が付いた【八式57mm機関砲】が1丁の様ね。」

 

 

 

ハルトマン「57ミリの機関砲?!」

 

 

バルクホルン「迫撃砲並みの機関砲に、正確な攻撃ができる射撃管制機…………まるで空を飛ぶ軽戦車だな…………!!」

 

 

 

正に震電を、どんなウィッチでも扱える様に改良を加えた性能を誇るストライカーユニットであったが、同時に、もし自分たちの世界でもこれと同等の性能を持ったユニットがもっと早く完成していればと、後悔の念がよぎるのだった。

 

 

 

 

そして数日後、前原は民間人の身分のまま新千歳空港発の旅客機に乗り、本土を後にする。

 

同時に海江田も札幌駅から旭川・オホーツク経由で襟裳岬地中基地への帰路に着くが、紋別市にて紺碧第2艦隊が【敵艦隊発見の報を受けて、山中副長の指揮の下で艦隊は出撃した】と紋別の通信基地で聞き、伊702潜から発進した迎えの星電改にて、そのまま艦隊へと直行する。

 

 

そして前原も、途中サイパンで給油を行った後、目的地であるトラック島に到着。

 

そこで迎えの雷洋に乗り前原を無事、紺碧第1艦隊へと誘った。

 

 

 

伊601潜 艦内にて

 

 

乗艦に戻った前原であったが、艦内が何やら慌ただしくなっていることに気づく。

 

 

前原一征「…………少々慌ただしいな。何があったんだ?」

 

 

入江九市「はっ。実は、真珠湾北東600マイルの位置を西進中の敵空母群を、無線情報で捉えたとのことです。」

 

 

前原一征「何?!」

 

 

品川弥治郎「現在、高杉艦隊が追尾中です。」

 

 

 

敵艦隊の位置を地図上で確認した前原であったが、敵の動きに違和感を覚える。

 

 

 

前原一征「ふむ、臭いな………。」

 

 

入江九市「?」

 

 

前原一征「今日は確か…………」

 

 

品川弥治郎「4月11日ですが、何か?」

 

 

その時、前原の脳裏に不吉な感がよぎった。その時、通信士からの報告が入る。

 

 

通信手「艦長、ホノルルからの無電であります。」

 

 

入江九市「なんだ?」

 

 

通信手「はっ。高杉艦隊から[追尾中の敵を完全に見失った]との事です。」

 

 

入江九市「当初目標のホノルルに向かいますか?」

 

 

 

確かに敵の動きを読めば、ハワイを攻撃しようとするのは目に見えていたが…………

 

 

 

前原一征「艦長、これより我が艦隊は進路を''北''へ取る!」

 

 

入江九市「北へ?!」

 

 

品川弥治郎「しかし閣下、敵の攻撃目標はハワイではないのですか?」

 

 

前原一征「まぁ、常識的に考えればそうだが…………」

 

 

入江九市「…………やはり、重桜帝都だと?」

 

 

品川弥治郎「えぇ!?」

 

 

 

前原一征「開戦以来、負け続けのユニオンは国内世論を沸騰させる必要がある。重桜空襲は絶好の話題作りになる。」

 

 

 

北太平洋 千島列島沖

 

紺碧第2艦隊旗艦 伊602潜

 

同 艦内にて

 

 

 

伊602潜航海長:内海「しかし、いくら超大国ユニオンでも、重桜帝都の爆撃は無茶なのでは?」

 

 

海江田四郎「無茶だからこそだ。前世でもユニオンこと米軍は、空母に無理やり陸上機を載せて来たのだ。前世と同じではなくとも、別の方法で重桜空襲を画策しているやもしれん。」

 

 

山中栄治「確かに、ヨーロッパ戦線ではともかく、太平洋戦線では厭戦気分がみなぎり始めていると聞きます。」

 

 

海江田四郎「大高首相の駆使する対ユニオン心理戦が徐々にではあるが、効果を上げ始めている証拠だ。敵には焦りがある。ハワイを攻撃すると見せかけて、重桜帝都を狙っているのだろう。」

 

 

 

 

奇しくも、両雄の考えは一致しており、紺碧第1・第2艦隊は千島列島沖で合流。 

 

前原の指揮で艦隊は進路を北に取り、北緯45度・東経165度を中心に徹底した索敵活動を展開した。

 

 

 

伊601潜 発令所

 

 

艦橋要員2「伊501潜、発進完了!」

 

 

艦橋要員3「伊502、503!同じく完了!」

 

 

艦橋要員4「大竹大尉率いる雷洋隊、上空待機!」

 

 

艦橋要員5「伊701潜、全機発進完了!」

 

 

品川弥治郎「紺碧第2艦隊も艦載機を発進させて、索敵活動を開始しました!」

 

 

入江九市「電探から目を離すなよ!」

 

 

 

全艦から艦載機が飛び立ち、索敵活動が始まった。

 

だが、それから5日。

何事もなく時が過ぎてゆくことに、前原にも焦りの色が見え始めていた。

 

 

 

前原一征(万が一、重桜空襲を許したら…………大高総理は苦境に立たされる事になる!それに、これまでの重桜融和策も全て水泡に帰してしまう!なんとしても防がねば!)

 

 

その時、敵機発見の報が入る!

 

 

艦橋要員4「艦長!伊701潜より入電!」

 

 

前原一征「見つけたか?!」

 

 

艦橋要員4「いえ、敵哨戒機の様です。位置は北緯43度・東経170度。」

 

 

 

品川先任が敵偵察機の位置を記録した地図を持って来た。

 

しかし、その場所はアリューシャン列島からは距離が離れていたが、追跡を行っていた星電改から敵機の機種を特定した。

 

 

 

北太平洋 北緯43度・東経170度の海域 上空

 

 

星電改パイロット《機種判明!ユニオン艦載機、ダグラスSBDドーントレス!》

 

 

 

伊601潜 発令所

 

 

艦橋要員4「海軍機です!現在、星電改が遁走する敵機を追撃中です!」

 

 

前原一征「方向は?」

 

 

艦橋要員4「南であります!」

 

 

前原一征「南?」

 

 

 

だが、その哨戒機は燃料を切らしたのか海上へ墜落してパイロットは脱出。

 

その後、ユニオンの潜水艦がそのパイロットを回収するために浮上するという行動が見られた為、敵艦隊が紺碧艦隊の南をすり抜ける策だと思われたが、次なる哨戒機発見の報でそれは疑問に変わる。

 

 

 

艦橋要員4「伊501潜の春嵐、敵機と遭遇!」

 

 

入江九市「機種は!」

 

 

艦橋要員4「P-38!」

 

 

前原一征「陸軍機か。」

 

 

艦橋要員4「敵機は、''北東''に遁走!」

 

 

前原一征「北東?」

 

 

 

前原の疑問に追い打ちをかけるが如く、他の艦載機から別々の報告が入った。

 

 

艦橋要員7「伊504潜の氷神2番、P-38と遭遇!尚、同機は''北西''に遁走中!」

 

 

艦橋要員3「伊503潜の春嵐!P-38と接触後、"北北西"に遁走!」

 

 

艦橋要員5「伊602潜の黒岳1番!B-17と接触後、"北北東''に遁走!」

 

 

艦橋要員6「伊702潜の星電改!ウラナスカ島沖合にてB-17と遭遇!尚、同機は"北"に遁走!」

 

 

 

各機からの報告は位置がバラバラであったが、前原はこの時点で敵の位置を大方の目星をつけていた。

 

同時に、海江田もまた同じ考えに至っていた。

 

 

 

伊602潜 発令所

 

 

内海「敵哨戒機の位置は、かなりバラけています。」

 

 

山中栄治「だが、墜落したドーントレスと除けば全て陸上機だ。となると…………敵はアリューシャン列島のどこかにいる事になりますが…………」

 

 

海江田四郎「…………当たりだ、副長。」

 

 

山中栄治「では、やはり敵は…………"ダッチハーバー''に?」

 

 

海江田四郎「その可能性がある。」

 

 

内海「確かに濃厚です。P-38の基地はキスカ島にあるとすれば、重爆であるB-17の基地はウラナスカ島付近が妥当です。」

 

 

山中栄治「では、墜落したドーントレスは囮ですか。」

 

 

海江田四郎「敵艦隊を南にいると思わせる為にだろう。」

 

 

 

伊601潜 発令所

 

 

前原一征「艦長。敵将がどんな男かは知らんが、相当な狐の様だぞ…………フフフフ、敵がその気なら…………こっちも裏を掻いてやるまでだ。音通魚雷にて、全艦に伝え!」

 

 

入江九市「は!」

 

 

 

 

前原は、音通八号にて全艦に指令を出した。

 

 

音通八号とは、紺碧艦隊独自による音波通信システムである。

長距離通信には向かないが、敵に傍受される心配は少なく通信を終えると、音通魚雷は自動的に自沈する仕組みである。

 

 

前原は紺碧艦隊を一度集結させて、第1艦隊全艦で千島列島を目指し、海江田率いる第2艦隊は別途任務を携えて太平洋を南へと南下した。

 

 

 

平成12年4月17日 捨子古丹(しゃすこたん)島沖 東377海里

 

 

 

未だ冬の季節である千島列島中部沖に、紺碧第1艦隊は海中からその姿を現した。

 

 

伊601潜 セイル

 

 

前原一征(この北の海のどこかに、敵艦隊はいるはずだ…………逃さんぞ!)

 

 

そこへ、友軍の潜水艦から報告が入って来た。

 

 

品川弥治郎「閣下の読み通りでした!敵の聖域ベーリング海に潜入したアイリス所属の新鋭潜水艦ブレストが、ユニオン軍港ダッチハーバーへ春嵐を飛ばして、敵艦隊を確認しました!」

 

 

 

その内容は、6万トン級の大型空母2隻と新鋭戦艦2隻を主力とする空母艦隊であり、壊滅した太平洋艦隊に代わる新機動部隊であった。

 

 

この敵艦隊を確認した【潜水艦ブレスト】はアイリス教国が大洋州同盟の技術供与を受けて建造した潜水空母で、全長122メートル・全幅12メートル・水中排水量4,502トンの巨体に、水上機春嵐を2機搭載している。

 

無論、その艦も例に漏れずワルター機関であり、現在太平洋ではこのブレストと他に2番艦メアリーが、大洋州同盟の潜水艦隊の一員として活動している。

 

 

 

そして、その新機動部隊が根拠地としている【ダッチハーバー】は、アリューシャン列島の付け根に近いウラナスカ島に位置するユニオンの一大軍港であった。

 

もしこの艦隊が真南に進出すればハワイ奪回の可能性があり、南西に進出すれば大洋州同盟および重桜本土への直接攻撃の可能性も秘めていた。

 

 

 

前原一征「まぁ幸か不幸か、本土空襲という俺の読みは外れたわけだが、これで仕切り直しというわけだ。」

 

 

だが前原は、この後世の歴史の意外性に気づきようがなかった。

 

 

 

 

 

 

 

4月18日 札幌市

 

海軍省 会議室

 

 

 

この日高野は、ダッチハーバーにて発見されたユニオン新機動部隊の対応策を協議すべく、紺碧会の幕僚を招集させた。

 

 

 

紺碧会幕僚1「なんと言っても、ハワイを抑えている事は聞いているのでしょう。確認された新機動部隊は、東西からの挟み撃ちを警戒して、我が本土への接近を躊躇っているのでしょう。」

 

 

紺碧会幕僚2「''罠''という事も考えられる。こちらを誘い出そうとしているのではないか?」

 

 

紺碧会幕僚4「うむ、大いに考えられる。」

 

 

紺碧会幕僚3「だとすると、相当の狐だぞ?」

 

 

 

高野五十六「我が情報部によると、敵の新機動部隊の司令官は「ドナルド・D・リーガン少将」だとのことだ。」

 

 

 

紺碧会幕僚6「一体何者です?!」

 

 

高野五十六「どういう人物かまだわからないが、かなりの戦略家だと聞く。用心してかからなければ、前世のミッドウェーと同じ目に遭わされる危険があるぞ?」

 

 

 

紺碧会幕僚2「やはり、先に仕掛けるのは考えものです!敵地に近づけば、陸軍機の攻撃に晒されます!」

 

 

紺碧会幕僚4「それを考えた上で、リーガンも安全圏に納まりかえっているのでしょう!」

 

 

 

だが、そこへ急報が入る!

 

 

 

高雄「総長!!」

 

 

紺碧会幕僚9「何事だ!!」

 

 

高雄「…………敵機が、重桜に迫っているとの報告が!!」

 

 

高野五十六「何?!」

 

 

紺碧会幕僚9「空母からか?!」

 

 

高雄「いや、発進場所は麗水(リーショイ)の様だ!!」

 

 

 

高野五十六(麗水!?前世では、ドゥーリットル爆撃隊が降りた場所だ!!逆コースで来たか……!!)

 

 

 

高雄「現在、東シナ海九州近海を飛行中!!あと20分で、重桜本土に入られてしまう!!」

 

 

 

ユニオンが反撃の一手として放ったのは、前世大戦にて高高度から投弾して日本本土に深い傷を遺した超空の要塞ことB-29の生まれ変わりである、重爆撃機【B-30】であった!

 

 

 

高雄「…………!総長!敵機は、新型の大型爆撃機の様だ!迎撃機が近づくと、高度を13,000に上げて寄せ付けないとの事だ!」

 

 

高野五十六「(まさかB-29……!)迎撃に飛び上がったのは?!」

 

 

高雄「重桜の零式戦だ!」

 

 

高野五十六(兵器の進歩は我が国のみならず、ユニオンでも2〜3年早まっているのか…………!)

 

 

 

高野は会議を中断して、急ぎ大高に電話を入れる。

 

 

 

札幌市中央区 首相官邸 執務室

 

 

 

大高弥三郎「何?!重桜に迫っているのは噂の新型機という事ですか?!」

 

 

高野五十六《その可能性、極めて大であります!》

 

 

大高弥三郎「では、重桜帝都への爆撃も?!」

 

 

高野五十六《はい!あり得ます!》

 

 

 

大高弥三郎「なんとしても阻止されたい!万が一重桜空襲を許せば…………いや、もし重桜帝都にも落ちたら、重桜融和政策が水泡に帰してしまいます!!」

 

 

 

海軍省 執務室

 

 

 

高野五十六「お任せください…………【我ニ蒼莱アリ】です!!」

 

 

 

この時点で本土防空の要とされていた蒼莱は、まだ大量生産ラインに乗っておらず、千歳と旭川、函館の三ヶ所であり、重桜本土防空も視野に入れた航空隊は、ストライクウィッチーズのみであった。

 

 

 

函館人工島 函館海軍航空基地

 

 

 

坂本美緒「ミーナ!軍令部から緊急出動が来たぞ!!」

 

 

ミーナ「全員、直ちに配置について!!」

 

 

 

基地全体に警報が鳴り響き、ウィッチたちが発進準備に取り掛かる!

 

魔法力を注ぎ込み、ストライカーユニット蒼莱が唸りを上げて動き出す!

 

 

機関砲を持ち、発進台から打ち出されたウィッチたちは素早く離陸し、遥か高空を目指して重桜帝都へと急ぐ!

 

 

 

一方、麗水から発進したユニオン爆撃隊は、福岡・広島・大阪・神戸と爆撃を敢行。

 

半数は引き返したが、名古屋を爆撃したのち残りの13機が列島に沿って北上し、重桜帝都へと目指す算段であった!

 

 

 

重桜帝都 東京 港区

 

司令部 ベランダ

 

 

重桜の帝都東京に、空襲警報が鳴り響き本土防空の零式戦が帝都上空に飛来する!

 

 

 

赤城「来たわね…………!!」

 

 

その場にいた重桜KAN-SENが空を見上げると、雲の切れ目からユニオンの重爆の飛行機雲が帝都上空へと迫っていた!

 

 

蒼龍「例の海軍十八試の開発が間に合っていれば………!!」

 

 

加賀「無いものを言っても仕方なかろう。打てる手は全て打った。」

 

 

重桜重鎮:長門「あとは、帝都城に被害が出ないことを祈るのみだ。」

 

 

 

この時長門は、自らの地位の失墜を覚悟していた。

 

だが…………

 

 

瑞鶴「…………?翔鶴姉、対岸から飛行機雲が…………」

 

 

その方角を見ると、複数の飛行機雲が遥か高空を目指して帝都上空へと飛行を続ける何かがあった。

 

 

翔鶴「あの方角…………まさか、大洋州同盟の?」

 

 

 

その飛行機雲の正体こそ、大洋州同盟の函館海軍航空基地から緊急発進した、第501統合戦闘航空団【ストライクウィッチーズ】であった!

 

 

 

帝都東京 上空

 

 

ミーナ「現在、高度8000…………9000…………」

 

 

 

この高度は、従来のストライカーユニットでは限界高度ギリギリで失速寸前であったが、後世の技術で作られたこのユニットは違い、驚異的な上昇速度を見せていた!

 

 

 

ミーナ「10,000…………11,000…………12,000…………」

 

 

バルクホルン「なんて性能だ…………従来のユニットだと限界高度をとっくに超えているのに………!」

 

 

ハルトマン「さすが震電の生まれ変わりだね…………魔法力の消費も全然感じない…………!」

 

 

 

ミーナ「高度13,000!全機、姿勢を水平に!」

 

 

 

ものの数分で高度13,000メートルに達して、水平飛行に入る!

 

 

 

坂本美緒「全機!機関砲の試射を行え!」

 

 

バルクホルン「了解!」

 

 

 

機関砲のセーフティを解除して、試射を行う。

 

まさに迫撃砲並みの威力と言ったところか、反動が凄まじい分ト式射撃管制機が正確な射撃を補っているのをその身で実感した。

 

 

エイラ「凄い反動だナ…………銃を落としそうダ。」

 

 

サーニャ「ミーナ中佐!爆撃隊を見つけました!11時下方!」

 

 

 

サーニャの持つ固有魔法【全方位広域探査】によってユニオン爆撃隊を発見するストライクウィッチーズ。

 

彼らのはるか下方に、白銀の巨体が悠々と飛行を続けていた。

 

 

 

シャーリー「でっけぇな…………まるで鯨だな………。」

 

 

宮藤芳佳「じゃあ、こっちはイワシですか?」

 

 

 

坂本美緒「情けないことを言うな!むこうがシロナガスなら、こっちは鯱だと思え!」

 

 

宮藤芳佳「は、はい!」

 

 

ミーナ「いい?奴らを重桜帝都に入られる前に迎撃するわよ!全機、突入!!」

 

 

 

「「了解!!」」

 

 

 

ミーナの号令の下、ストライクウィッチーズはユニオン爆撃隊に覆い被さる様に突入を開始した!

 

 

 

一方、ユニオン爆撃隊はというと…………

 

 

 

ユニオンパイロット3「機長!後方上空に敵機!」

 

 

ユニオンパイロット1「寝ぼけるな!俺たちは高度10,000を飛んでるんだぞ!」

 

 

ユニオンパイロット3「しかし、機長!」

 

 

ユニオンパイロット1「しかしもヘチマもあるか!俺たちより高く飛べる重桜機なんてあるはずがない!」

 

 

 

全くもって油断し切っていた。

 

彼らの認識は確かに当たっていたが、その敵機が''重桜機ではない''ことを、数秒後に思い知ることとなる。

 

 

 

ユニオンパイロット4「NOーーーー!!大洋州同盟の新型機だ!!」

 

 

ユニオンパイロット1「そんな、馬鹿な……!うわっ!?!?」

 

 

 

ユニオン無線3《助けてくれ!!死にたくねえぇぇ!!!》

 

 

 

無情にもB-30が1機落とされたことで、ユニオン爆撃隊は敵機の襲来を認識すると同時に混乱に陥ってしまった。

 

 

 

ユニオン無線5《おい?!?!3番機がやられたぞ!?》

 

 

ユニオン無線4《恐ろしく速い奴だぁーー!!》

 

 

ユニオン無線8《NOーー!!右翼上空から2機撃ち下ろしてくるぞ!!》

 

 

 

続け様にシャーリーとルッキーニがB-30を真上から57ミリ機関砲を撃ち下ろして、瞬く間に1機、また1機と火だるまにされては落とされていく。

 

 

 

ユニオン無線8《こちらは持たない……!!》

 

 

ユニオン無線2《落ち着けぇ!!各機、弾幕を張るんだぁ!!》

 

 

ユニオン無線4《ポートラルビィ!そっちに2機……いや、2人行ったぞ!!》

 

 

ユニオン無線1《全機に告ぐ!編隊を密にせよ!繰り返す!編隊を密にせよ!!》

 

 

 

ユニオン爆撃隊は混乱しつつも編隊を密集させて、防御態勢を整えていくが…………

 

 

 

ユニオン無線7《叩き落とせぇ!!》

 

 

ユニオン無線10《駄目だ!!思った以上にすばしっこい!!》

 

 

 

対空弾幕を張り続けるが、シールドで防御または持ち前の動体視力で弾幕を潜り抜けて攻撃を加えるウィッチーズにとっては、重爆撃機の相手は赤子を捻る様なものであった。

 

 

 

ユニオン無線13《うがっ!!消化器だ!!》

 

 

ユニオン無線12《駄目だ!!キャノピーごと吹っ飛んでる!!脱出しろーー!!》

 

 

ユニオン無線11《うわぁ!!!》

 

 

 

大洋州同盟の新鋭局戦蒼莱の襲撃は、ユニオン爆撃隊の編隊をズタズタに引き裂いていく。

 

あるものは機体を57ミリの巨弾で引き裂かれ、あるものは機体を火だるまにされて、あるものは搭載爆弾に引火して空中で粉々に爆散していき、重桜帝都に侵入を図ったB-30は、13機すべてを文字通り叩き落としたのだ。

 

 

 

重桜司令部 ベランダ

 

 

 

加賀「あれが…………大洋州同盟の新型機なのか……?」

 

 

飛龍「なんて凄まじい…………」

 

 

赤城「敵である私たちを助けるなんて…………彼らは、''本当に''敵なの……?」

 

 

長門「どうやら…………大洋州同盟はただの敵ではない様だな。」

 

 

 

その光景を見た重桜のKAN-SENたちは、大洋州同盟が本当に敵なのか、疑問を抱き始めると同時に、重桜政府を乗っ取っていた軍部の威信を失墜させる要因にもなった。

 

 

そして、ユニオン爆撃隊全機撃墜の報は即座に、大高の下へと知らされた。

 

 

 

大洋州同盟首都 札幌市中央区

 

首相官邸 執務室

 

 

 

大高弥三郎「新型のB-30?…………なるほど。………いや、ご苦労でした!」

 

 

その報を聞いた大高は、今までの政策が無駄にならずに済んだことを安堵した。

 

 

そして…………

 

 

 

千島列島沖

 

伊601潜 セイル

 

 

 

入江九市「閣下、軍令部より連絡です。」

 

 

前原一征「うむ。」

 

 

入江九市「重桜帝都への侵入機は、我が海軍の新型機がやってくれたそうです!」

 

 

前原一征「…….艦長、次はいよいよ……俺たちの番だぞ!」

 

 

入江九市「はっ!」

 

 

前原一征「…………あの蒼莱が!」

 

 

 

敵新型重爆B-30をもってしてでのユニオンの野望は、蒼莱とウィッチーズによって破られた!

 

だが、新たな脅威……ユニオン新太平洋機動部隊は、名将リーガン提督に率いられて、アリューシャン列島奥深くにてその牙を研いでいた。

 

対する紺碧艦隊に、秘策はありや?

 

 

 

前原一征「紺碧艦隊!全艦潜航!」

 

 

 

北の海に、対決の時迫る!!

 

 

 

EP2-2に続く・・・

 

 

 

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