アズールレーン~紺碧の艦隊と蒼き海原~   作:非常勤務艦隊本部

5 / 18
連続投稿期間、はーじまーるよー!


△:EP2-2 天弦作戦発動

 

 

 

昭和18年4月18日。

 

ブーゲンビル島上空で戦死した山本五十六は、時の流れを伝った昭和46年の後世に【高野五十六】として転生した。

 

前世と全く異なる後世に転生した高野は、もう一つの記憶も受け継いでおり、それはアズールレーンと呼ばれるアニメの記憶であったが、この後世にも不思議な力を持った少女たち【KAN-SEN】を中核とした軍事同盟【アズールレーン】が異界の存在【セイレーン】との間で、闘争を繰り広げていた。

 

しかし、その裏で世界は戦争への歩みを進めていた。

 

それを未然に防ごうと高野は各方面で尽力を尽くすが、重桜と鉄血がアズールレーンを脱退して新たな組織【レッドアクシズ】を結成した事で、ユニオンとの緩衝地帯に建国された従属国【北北海道】にてクーデターを実行。

 

 

重桜から独立して、陸軍中将【大高弥三郎】を首相とする【大洋州同盟】を建国。

 

更にミュンヘンにて行われたアイリス・サディア・ヴィシア・北方連合との会談で、第3勢力【大洋州同盟】が創設した。

 

 

だが、戦争への歩みを止めることはできず、平成11年12月8日、大洋州同盟はアズールレーンとレッドアクシズに宣戦を布告。

 

初戦でアズールレーンとユニオンの太平洋地域への進出の要【ハワイ諸島】を攻撃、これを占領して、更にアズールレーンの主力であるロイヤル東洋方面第2艦隊を退かせて、エンタープライズ率いるユニオン太平洋艦隊と交戦し、これを降伏せしめた。

 

勢いに乗る大洋州同盟は、ユニオンと重桜の戦略物資輸送路を遮断すべく、パナマ・琵琶湖両運河を航空攻撃を敢行して、これを破壊せしめた。

 

相次ぐ凶報に頭を悩ますユニオン大統領ルーズベルトは国内の厭戦気分を払拭させるため、重桜に対して新鋭重爆【B-30】を用いてでの本土空襲を画策するが、これを察知した大洋州同盟の新型局地戦闘機【蒼莱】と異世界からの転生者【ウィッチーズ】の活躍により、これを頓挫させた。

 

 

だが、緒戦のこの輝かしい戦果の裏には、【紺碧の艦隊】と呼ばれる潜水艦隊が存在したが、それを知る者は大高や高野、そして大洋州同盟の上層部のみであった…………

 

 

 

 

 

 

平成12年6月の札幌。

 

 

この日大高は、今後の太平洋戦域における戦略を練るため、議会に出席していた。

 

 

札幌市中央区 首相官邸

 

 

大高弥三郎「我が国は他国の領土を必要とはしていません。必要なのは、同盟国から輸入させる資源の購入でありまして、その資源を安全に本土へ運ぶには領土ではなく、東南シナ海と日本海の海上輸送路の確保であります。従って中国大陸に関してましては、アイリス教国を仲介してでの東煌との秘密協定に則って、沿岸部のみを確保すれば十分であります。便宜上『東煌街道』と呼称しますがここの防空には、先の重桜初空襲を阻止しました局戦蒼莱を量産配備して、更には新式の電探連動の対空火器を………」

 

 

 

クーデター政権ではあるものの、国政を預かる者として、連日の如く激務に追われていた。

 

そんな大高の胸中には、拭っても拭いきれない不安があった。

 

 

 

大高弥三郎(重桜を襲ったB-30には、原子爆弾は搭載されていなかった……だが…………………)

 

 

 

【ユニオンによる原子爆弾の開発】

これは、大高と高野などごく一部の者にしか知らない重要機密事項であった。

 

大洋州同盟が如何に秘策を持って戦いを有利に進めようとも、ユニオンが原子爆弾の開発に成功すれば、この戦争は今世紀最大の悲劇として終わるはずだ。

 

 

大高はこの日、ある人物との面会のためKAN-SENたちの講堂に赴いていた。

 

 

 

札幌市手稲区 とある講堂前

 

 

大高弥三郎「一雨来るか…………」

 

 

 

会議室に入るとそこには、先のハワイ海戦時に降伏したユニオン太平洋艦隊の主要メンバーがいた。

 

 

 

大高弥三郎「遅くなり、申し訳ない。」

 

 

元ユニオン太平洋艦隊旗艦:エンタープライズ「はじめまして、プレジデント大高。元ユニオン所属のエンタープライズだ。」

 

 

大高弥三郎「他の皆さんも、お元気そうで何よりです。本日はアイリスに新秩序を作りたいと思いましてな。あなた方の意見もお伺いしたのです。」

 

 

エンタープライズ「アイリスに新秩序…………ですか?」

 

 

 

大高が話したのは、アイリスとヴィシアの再統一であった。

 

それを聞かされたエンタープライズたちは、少し難儀の表情を浮かべた。

 

 

 

 

エンタープライズ「アイリスとヴィシアを和睦させる………か。」

 

 

大高弥三郎「はい。是非とも、あなた方のお知恵をお借りしたいのです。」

 

 

ホーネット「流石に無理じゃないかな?アイリスの分裂って、元はと言えばリシュリューとジャンバールとの姉妹喧嘩だし…………」

 

 

大高弥三郎「無論難しいのは分かっております。しかし…………」

 

 

ペンシルバニア「確かに不可能に近いな。あの2人が仲直りをしてくれなければ、こちらとしても手が出せない。」

 

 

メリーランド「いくらアイリスとヴィシアを和睦させるにしても、東は鉄血に西はユニオン・ロイヤル、なかなかのプレッシャーがかかるんじゃないかな?」

 

 

アリゾナ「それに…………''あの裏の組織''が見逃すはずはないと思うけど…………」

 

 

 

大高弥三郎「難しいのは分かっています。しかし、やってみる価値はあるのではないでしょうか?あの2国は元々同じイデオロギーで、不本意な形で袂をわかっています。その蟠りを我々が取り持ち、両者の関係を緩和させてあげれば、無用な戦をせずとも内乱を収める手助けができれば、来たるべき戦いに備えることが出来るかと……」

 

 

 

ウェストバージニア「ヨーロッパの繁栄には、統一されたアイリスが欠かせない存在だと…………?」

 

 

大高弥三郎「ヴィシア代表もアイリス代表も、同じ艦種の姉妹艦です!ひょっとすればひょっとするかもしれません!」

 

 

テネシー「確かに考えてみる価値があるよ!」

 

 

オクラホマ「あの時は感情的になって分裂したけど、上手くいけば元の関係に戻せるんじゃない?」

 

 

エンタープライズ「…………うん。確かに不可能な話ではない。こちらの面子でも検討してみよう。」

 

 

 

大高弥三郎「ご賛同を得て心強い!実行のための方策は後日改めてと言うことに……………実はもう一つお耳に入れておかなければならない事がありまして。」

 

 

ネバダ「あまり、よろしくない話かい?」

 

 

大高弥三郎「はい。実は…………」

 

 

外では光と共に雷鳴が轟き、雨が土砂降りの如く降り始めた。

 

 

 

元太平洋艦隊主要メンバー「「?!?!?!」」

 

 

ホーネット「げ、原子爆弾…………?!」

 

 

大高弥三郎「この新型爆弾は1発で都市を一つ消し去る威力を持っています。そしてその後には、生物の生存を許さない放射能と言う有害物質が辺りに残る…………言わば究極の戦略兵器です!」

 

 

 

エンタープライズ「ま、待ってくれ!!原子爆弾は確かセイレーンには無力だと判断されて、開発が頓挫したはずだぞ!!」

 

 

大高弥三郎「信じ難い事でしょうが…………その新型爆弾を製造している施設が稼働状態にあると、北方連合から連絡を受けまして…………」

 

 

メリーランド「ルーズベルトの眼鏡ジジイめ……!あたしらには内緒で再開させてたんだ……!」

 

 

大高弥三郎「開発を急いでいるのはユニオンだけではありません。鉄血も研究中とのことです。」

 

 

ホーネット「鉄血までも?!あのビスマルクがそんな事をするはずが…………!」

 

 

メリーランド「でも、そんな危ねぇ代物が出来上がっちまったら!!」

 

 

エンタープライズ「世界は黙示録と同じようになるぞ…………!!」

 

 

大高弥三郎「その通りです。ですが仮にユニオンが原子爆弾を完成させたとしても、使わせないようにすればいいのです!」

 

 

ウェストバージニア「そ、そんな事が出来るのか?!」

 

 

大高弥三郎「はい、開発競争で我々が先を越せがよいのです!」

 

 

ペンシルバニア「つ、作れるというのか?!この国でも?!」

 

 

大高弥三郎「意外かもしれませんが、ウラニウムと言う元素さえあれば可能です。」

 

 

ホーネット「でも、北海道にあるのは炭鉱や金鉱山だけの筈…………」

 

 

大高弥三郎「これは同盟国間の超機密事項ですのでご内密にお願いしたいのですが………ハカイマップ・見市両河川の流域で、まとまった埋蔵量とまではいきませんが純度の高いウラニウムが産出されてまして、現在精錬と産出が順調に行われています。原子爆弾は無秩序に使えば敵も味方も関係なく、地球の環境そのものも死滅させられる恐ろしい兵器なのです!しかし、我々が持っていればユニオンとて使用を躊躇うでしょう。」

 

 

エンタープライズ「そんな事が…………」

 

 

 

この事は、大洋州同盟加盟国にも行き渡って、北方連合のコミンテルンを通じて、ユニオンのホワイトハウスへと達した。

 

 

 

 

ユニオン首都 ワシントンD.C.

 

ホワイトハウス 同執務室

 

 

 

ユニオン大統領:ルーズベルト「信じられん!あり得ぬ話だ!我々と同じ白人種のドイツ人ならともかく、小国である大洋州同盟などに作れるはずがない!」

 

 

語気を荒げて、大洋州同盟の原爆開発を否定するが、太平洋戦域司令官であるベイ大将は冷静に答える。

 

 

太平洋戦域司令官:ベイ大将「閣下、彼ら大洋州同盟は恐るべき海中艦隊を以てして我々に挑戦してきています。先の重桜空襲に関しましても、敵対国にもあるはずの大洋州同盟が新兵器を用いて、新鋭機B-30が全機撃退された事も記憶に新しいものです。彼らを侮るべきではありません。」

 

 

ルーズベルト「その情報は確度の高いものなのか?」

 

 

ベイ大将「モスクワに潜入している大物スパイが、大高首相が同盟加盟国に流した極秘情報を掴んだものです。」

 

 

ルーズベルト「大高か…………あの男はとんでもない狐だぞ。確実な証拠を掴め!それも急いでだ!」

 

 

ベイ大将「全力を尽くしましょう。」

 

 

ルーズベルト「奴らの原子爆弾を頭上に浴びることなど……考えたくもない!」

 

 

ベイ大将「それは私も同感です。」

 

 

ルーズベルト「ほぉ…………本心とは思えんが?」

 

 

ベイ大将「どう言う意味です?」

 

 

ルーズベルト「君はこのワシントンが原爆で攻撃される可能性があると思うかね?!」

 

 

 

凶報続きのルーズベルトは、その不機嫌さから来るストレスが災いして、語気を荒げてユニオンが原爆攻撃を受ける可能性をベイ大将に問いただした。

 

 

 

ベイ大将「その質問は、ペンタゴン(国防総省)にお聞きください。ただ彼らは未だその正体を掴めていない''海中艦隊''を使って、厳重な警戒を施していたパナマ運河を易々と攻撃したのです。しかも水量の減る乾季の初め頃を狙って。OSS(戦略情報局)の情報によると、地球を一周できる航続距離を有している巨大潜水艦隊だと聞きます。もしこの艦隊が南米のマゼラン海峡を渡ってワシントンを通過され、東海岸に来られるとここホワイトハウスは勿論、ニューヨークの東工業地帯が壊滅する事は……素人が考えてもわかる事です!」

 

 

ルーズベルトの問いに、淡々と答えるベイ大将の言動に、ルーズベルトは怒りと同時に不快感を露わにした。

 

 

ルーズベルト「もう黙りたまえ!!私は非常に不愉快だ!!」

 

 

 

ベイ大将「不愉快ですと?!」

 

 

 

ついに我慢の限界を迎えたベイ大将は、語気を荒げてルーズベルトに対して批判を口にした。

 

 

 

ベイ大将「では!!クビを覚悟で言わせてもらいます!!大洋州同盟と重桜を挑発して戦争へと引き摺り込んだのは、大統領!あなたご自身だ!!外交交渉を通じて譲歩に譲歩を重ねてきたにの関わらず、あなたはそれを引き延ばしはぐらかし続けた!!そして開戦の目処がついたら態度を豹変させて、理不尽ともとれるハルノートを突きつけた!口では正義と民主を唱えながらも裏では画策していた!!あなたは二重人格者だ!!史上最悪のユニオン大統領として、後世にその名を連ねる事でしょうな!!」

 

 

ルーズベルト「黙れ!!もういい!!行きたまえ!!出ていくんだ!!」

 

 

ベイ大将「失礼します。」

 

 

 

執務室を出ていくベイ大将を、ルーズベルトは不適な笑みを浮かべながら呼び止める。

 

 

ルーズベルト「あぁ待て、近く君は解任されるだろう。どうも疲れているようだからな。」

 

 

 

それに対してベイ大将は驚きもせず冷静に…………

 

 

 

ベイ大将「どうぞご自由に。しかし私には慕われているユニオンのKAN-SENたちとジャーナリストの友人たちが多くいる事をお忘れなく。それが幸か不幸かどうなるか、よく考える事ですな。…………それに、私もあなたの下で働くのはもう御免ですがね!」

 

 

 

そう言い残してホワイトハウスを後にしたベイ大将に、ルーズベルトは邪魔者のような目で見送る。

 

 

 

ルーズベルト「あの野郎…………!!」

 

 

エネルギー省長官「大統領閣下。」

 

 

ルーズベルト「……あぁ君か、まだ居たのか。」

 

 

 

エネルギー省長官「率直に考えて、大洋州同盟の原爆開発は大いにあり得ると思います。」

 

 

ルーズベルト「なに!?」

 

 

 

エネルギー省長官から語られた結論に、またもルーズベルトに重圧がのしかかるが、その後の言葉にルーズベルトは驚愕を露わにする。

 

 

 

エネルギー省長官「原子爆弾はウラニウムという元素さえあれば、マサチューセッツ工科大学を卒業していない普通の学生でも、''簡単に''作れます。」

 

 

ルーズベルト「なんだと?!今、''簡単に''と言ったか!?」

 

 

エネルギー省長官「はい。」

 

 

 

それを聞いたルーズベルトは狼狽するが、落ち着いてその理由を問うだった。

 

 

 

ルーズベルト「……………それでは聞くが、それほど簡単なものを作るのに何故、膨大な費用と時間が掛かるのかな!?」

 

 

エネルギー省長官「コントロールが難しいのです。それが出来なければ、この未知のエネルギーを人類の役に立てる事はできんのです。」

 

 

 

それを聞いたルーズベルトは、胸中に渦巻いていた疑問を投げかけた。

 

 

 

ルーズベルト「君たちは爆弾を作っているのではないのかね?!この戦争の中に、原子力を使って温室でも作るつもりなのかね?!」

 

 

エネルギー省長官「もちろん爆弾を作っておりますとも!」

 

 

ルーズベルト「ならば何故!?…………」

 

 

 

その問いに対して、エネルギー省長官は原子力の本来の使い道を語るのだった。

 

 

 

エネルギー省長官「閣下、本来原子力というのは兵器としてでは無く、''人類の未来のために''平和利用すべきです!これは''科学者の良心''です!」

 

 

ルーズベルト「!……………もういい、下がりたまえ。」

 

 

エネルギー省長官「失礼します。」

 

 

 

この日、ルーズベルトは国内にも…………いや、己の足元にも敵がいる事を知らされた。

 

そして、太平洋戦域司令官であるベイ大将が、ハワイ海戦とパナマ運河攻撃を許した責任を負う形で引責辞任を言い渡されたのは、この日から3日後の事であった。

 

 

 

 

札幌市厚別区 高野邸

 

 

この日、高野五十六は高雄とともにある人物と碁盤を囲んでいた。

 

 

高野五十六「大高首相は同盟国に潜んでいるスパイを泳がせて、偽りの情報を流した。これを称して【半間の計】という。」

 

 

前原一征「ははは、大高首相も食えないお人ですな。」

 

 

その人物は、紺碧第1艦隊司令官の前原であった。

 

 

高野五十六「ところで、敵の聖域ダッチハーバーにいるという敵の新機動部隊だが…………これをどう見る?」

 

 

前原一征「ベーリング海は碁で例えると、''堅固に固まった隅地''です。閣下なら、この隅地を潰すのに如何なる手を打つつもりですか?」

 

 

高野五十六「そうだな…………」

 

 

高雄「ハワイ作戦と同じ手法を取るのも一つの手だが…………それだと夜間に仕掛ける必要がある上に、アッツかキスカからの陸上機による襲撃もあり得るからな…………」

 

 

前原一征「燦々にして打ち込むか、それとも打ち込みは二分の一とか色々ありますが…………」

 

 

 

高野五十六「君は…………ベーリング海に潜入するつもりなのか?!」

 

 

 

高野がそのことに気づき、前原が答える。

 

 

 

前原一征「燦々に打ち込んで獲物を狼狽させて、中央に出てくるのを待ち構えて、太らせた体積を一網打尽にする!」

 

 

高雄「…………なるほど!という事は、天元の一石はハワイということか!面白い!総長、早速研究しては!」

 

 

高野五十六「うむ!そうしよう!」

 

 

前原一征「使えますか?」

 

 

高野五十六「多分な!太平洋を碁盤に例えるとは面白い発想だ!うむ、この作戦を【天弦作戦】と名付けよう!」

 

 

前原一征「結構ですな!」

 

 

 

その夜、両雄は天弦作戦の構想を細部に渡って意詰めていった。

 

 

翌日、前原は天弦作戦の完成を待つため、網走から迎えの星電改で紺碧第1艦隊の待つシムシル島へと戻った。

 

同時に、室蘭・苫小牧港から新兵器の搭載と各部の改装を終えた元ユニオン所属の空母エンタープライズとホーネットは、数隻の護衛艦艇を引き連れて一路、ハワイの真珠湾海軍基地へと向かった。

 

その目的は、高杉艦隊の戦力強化のためである。

 

 

その頃、札幌の海軍省では、天弦作戦の計画書を【信玄型高速電算機】によって、あらゆる角度から詳細に検討された。

 

信玄型高速電算機とは戦国時代の名将の1人である【武田信玄】が狼煙や篝火などの通信ネットワークを活用していた故事に習って命名された新鋭電算機である。

 

 

その電算機の性能は前世第二次大戦後、アメリカが開発した''世界初のコンピュータ''こと【ENIAC(エニアック)】に匹敵するものであった。

 

 

何はともあれ、その驚異的とも言える電算機のお陰で、天弦作戦計画は10日も経たずして完成を見た。

 

 

 

海軍省 執務室

 

 

高雄「総長!完成したぞ!」

 

 

高野五十六「もうか?!研究を開始してまだ10日も経っていないのに!」

 

 

高雄「信玄型電算機の威力の賜物だ!一度覗いてみたが、前世でああでもないこうでもないと、言い合っていた作戦会議が嘘みたいだったぞ!」

 

 

 

信玄型高速電算機の威力に感心した高雄は、作戦計画書を高野に手渡した。

 

 

 

高雄「だが、この作戦をもっと効果を上げるにはやはり謀略が必要だ。謀略は計算ではできない、優れた策略家の意表を突く発想があってこそ、この作戦の成否を決める!」

 

 

高野五十六「仕上げにはやはり、人間の知恵が必要か。…………君たちの仕事を見ていると、俺なんか予備役入りかと内心ヒヤヒヤしていたがwww」

 

 

高雄「冗談を!裏の裏をかくには老練な経験が必要だ!正確な計算による見積もりと行動計画が作戦の確立しかない。」

 

 

高野五十六「いや、君の言うとおりだ。早速だが、シムシルにいる幽霊に会ってきてもらえないか?」

 

 

高雄「承知した。」

 

 

 

時を置かずして高雄は作戦計画書を携えて、伊701潜差し向けの星電改に乗り、石狩基地からシムシル島へと向かった。

 

 

 

 

千島列島 新知島(又の名をシムシル島)

 

 

紺碧第1艦隊旗艦 伊601潜 艦内

 

 

 

前原一征「これは大したものだな!」

 

 

高雄「総長からもお褒めの言葉をいただいた。」

 

 

前原一征「それもそうだろう。」

 

 

高雄「その一言で疲れが飛ぶ。」

 

 

 

前原一征「だが、この計画書にもある通りにダッチハーバーを直接攻撃するのはリスクが高い。アリューシャンから飛んでくる敵の陸上機に襲われる危険がある。」

 

 

高雄「なんとかして、ユニオンの新機動部隊を誘き出せないかと思っていたのだが…………妙案が浮かばなくてな…………」

 

 

前原一征「心配はいらない。海江田が指揮する紺碧第2艦隊がユニオンに流している欺瞞情報を使うわけだ。」

 

 

 

海江田四郎が指揮する紺碧第2艦隊の任務は当初、敵機動部隊による重桜空襲を予想しての欺瞞行動であったが、空母からでは無く東煌のリーショイからであったため別意図の欺瞞工作に切り替えていたのだ。

 

 

 

前原一征「今紺碧第2艦隊は、散会してシアトル沖で盛んに偽情報を発信している。」

 

 

高雄「シアトルを攻撃すると思わせて、真の狙いはサンフランシスコ!っと言うことか。果たして、ユニオンが引っかかってくれるかどうかだが…………」

 

 

 

高雄の懸念はもっともであった。

 

ダッチハーバーは、ユニオンのアラスカ州に位置しており、その絶頂な位置は敵にしろ味方にしろ容易に侵攻できる場所ではない。

 

だが前原は、ユニオンが''引っかかりやすい暗号''を使って、新機動部隊を誘き出そうと欺瞞情報を展開していたのだ。

 

 

 

前原一征「''あの暗号''を使っているのさ。」

 

 

高雄「…………まさか、前世で帝国海軍が使っていた、【レッドシステム】を!?」

 

 

前原一征「あぁ。」

 

 

高雄「つまり閣下は、前世ミッドウェー海戦での最大の敗因にもなった海軍D暗号を偽情報にしたのか!」

 

 

前原一征「その通りだ。」

 

 

 

前世大戦において、ユニオンことアメリカは急増する日本側の暗号無線から、近い内に日本側が大作戦を展開する事を予想していたが、肝心の[AF]が示す攻撃地点をアメリカ側は解らずにいた。

 

そこでアメリカ側は一計を案じて、ミッドウェー島から平文で『島内の蒸留水工場が故障した』という【偽情報】を流して、日本側の反応を待った。

 

日本側はこの敵の平文が偽情報とも知らずに真に受けて、『AFで水が不足するだろう』とコードで打電してしまったがために、[AF]の暗号が『ミッドウェー島』であるとアメリカ側に解読されてしまい、戦局を左右する大海戦に敗退する原因にもなった。

 

 

 

何はともあれ、高雄はその日のうちに軍令部へと戻った。

 

そして前原率いる紺碧第1艦隊も、天弦作戦の必勝を祈願しつつ海中にその勇姿を没して作戦行動を開始した。

 

 

時を同じくして、ハワイに根拠地を置く高杉艦隊もまた、ユニオンの新機動部隊を迎撃すべく全艦出撃。

作戦行動を開始していた。

 

 

 

高杉艦隊(第1航空機動艦隊)旗艦 高速戦艦【比叡】

 

同 戦闘艦橋

 

 

第1航空機動艦隊司令長官:高杉英作中将(天弦作戦…………この高杉が盤上の中天とは……甚だ愉快、痛快極まる。)

 

 

 

そして…………

 

 

 

エンタープライズ「アドミラル高杉。今回の作戦、上手くいくだろうか?」

 

 

ホーネット「大丈夫だよ!エンター姉!上手くいくって!」

 

 

 

室蘭・苫小牧港から発進してハワイに到着したエンタープライズたちは高杉艦隊と合流。

その後、自らの艦隊に組み入れて、今回初めての大洋州同盟での作戦参加となった。

 

 

 

高杉英作「ところで、今回は俺の艦隊と行動をとるとのことだが、何か要件はないか?」

 

 

エンタープライズ「……………それなら、今回はあなたの陽動部隊と共に行こうと思うのだが……構わないか?」

 

 

高杉英作「無論構わないが、危険は大きいぞ?」

 

 

ホーネット「大丈夫だよ!これでも第一線で戦ってきたんだし、それに敵を混乱させるのにもちょうどいいじゃない!」

 

 

高杉英作「なるほど…………期待しているよ?」

 

 

 

エンタープライズたち元太平洋艦隊の一部を加えた高杉艦隊は真珠湾を出撃。

 

ユニオンの太平洋沿岸部を攻撃すると見せかける為、一路太平洋を北上する。

 

 

 

 

 

 

一方その頃、ダッチハーバーに根拠地を置く新機動部隊こと【北太平洋艦隊】は…………

 

 

北太平洋 アリューシャン列島

 

 

ウラナスカ島 ダッチハーバーユニオン海軍基地

 

同 執務室

 

 

 

ユニオン超空母:スペリオル「指揮官。高杉艦隊がハワイを出撃したようだ。」

 

 

北太平洋艦隊司令長官:ドナルド・D・リーガン少将(26)「そうか!…………正直に言えば、この戦争はするべきではなかったのだ。私利私欲を欲する豚どもの為だけに、セイレーン作戦に振り分けるリソースとユニオンの若者たちの命を、ドブに投げ込む戦争なんて…………」

 

 

 

ドナルド・D・リーガン少将は、若くして海軍士官学校を卒業した成績優秀者で当たったが、ルーズベルト大統領とは犬猿の仲であり、彼はユニオンの中でも生粋の対重桜・大洋州同盟の融和派でもあった。

 

その為、開戦当初は前線勤務をことごとく蹴ってきたが、太平洋への戦略拠点を奪われたのみならずパナマ運河を乾季の始め頃に攻撃された為、渋々前線勤務を承諾。

 

新鋭超空母スペリオルをはじめとする新造艦隊の指揮を任されて、極寒の北太平洋の拠点であるダッチハーバーにいた。

 

 

 

スペリオル「なに?!それは本当ですか!?」

 

 

リーガン「どうした!」

 

 

スペリオル「指揮官…………国防総省からの出撃命令が……」

 

 

リーガン「なに?…………代わりました、リーガンです。」

 

 

 

国防総省からの電話を変わるリーガンに伝えられたのは、出撃命令であった。

 

 

 

リーガン「…………!?承知しました!私は軍人です。命令には従いますが、万が一の責任が起こったときは、そちらで取っていただきますぞ!」

 

 

電話無線《それはどういう意味だ?》

 

 

リーガン「例のX艦隊の所在がわからない以上、我が艦隊を動かすのは危険極まりないと言うことです!」

 

 

電話無線《その心配はいらない。敵の[SB]の暗号が解読できた。シアトルは囮だ、敵の真の目標は【サンフランシスコ】に間違いない!よってX艦隊も、サンフランシスコ沖に集結しているはずだ!》

 

 

リーガン「それは確実ですか!?」

 

 

電話無線《確実だ!大洋州同盟は愚かにも、こちらが暗号を解読したことに気づいておらん!》

 

 

リーガン「わかりました。では後ほど、正規の命令書を…………」

 

 

 

正式な命令を受けたリーガンは、艦隊に出撃命令を下すのだった。

 

 

 

 

ベーリング海海中

 

紺碧第1艦隊旗艦 伊601潜 発令所

 

 

 

ベーリング海に進出して、敵艦隊が動くのをまだかまだかと、待ち構える紺碧第1艦隊。

 

そこへ、本土の情報部から連絡が入る。

 

 

 

伊601通信士「閣下、情報部からです!敵が遂に[SB]を突き止めたそうです!」

 

 

前原一征「引っかかってくれたか!」

 

 

入江九市「動きますかな?敵は……」

 

 

 

前原一征「動く!必ずな!」

 

 

 

平成12年……2000年の5月16日。

 

〔大洋州同盟艦隊を東太平洋で待ち受けて、航空戦力を持ってこれを殲滅〕を目的とした【星条旗作戦】が発令された。

 

 

ユニオンの北太平洋艦隊の陣容は、空母・戦艦・重巡・駆逐艦すべてが30ノットを誇る高速機動艦隊である。

 

リーガン少将が座乗する【スペリオル級超航空母艦】は排水量6万トンを誇る新型空母で、1番艦スペリオルは2番艦ヒューロンと共に艦隊の最後尾につけて、4万トン級の【改テネシー級高速戦艦】のアパラチアとロッキーが艦隊の前衛に就いて、その周りを重巡以下の護衛艦艇が取り巻く、ユニオンお得意の輪形陣だ。

 

 

 

北太平洋艦隊旗艦 超空母スペリオル

 

同 戦闘艦橋

 

 

自身が指揮する艦隊の初陣を前にして、リーガンは今回の敵の動きに疑問を抱いていた。

 

 

リーガン(敵には指示役のアドミラル高野がいると聞く。果たして高杉艦隊の狙いは、''本当に''サンフランシスコなのか………?)

 

 

彼はその優秀な頭脳を駆使して、敵の不可解な行動を読み解いていく。

 

 

リーガン(直線距離でも、ハワイ〜サンフランシスコ間は4,000キロもある。ユニオン本土に近づけば、本土からの哨戒が厳しくなるだろうに………。もし俺が高野の立場なら、そこまで危険を冒してまでやろうとは思わない…………。)

 

 

考えを巡らしていくうちに、リーガンは大洋州同盟側の''本当の狙い''を導き出した。

 

 

リーガン(寧ろ彼らが狙っているのは、この俺の艦隊とダッチハーバーじゃないのか!?防備を固めたダッチハーバーから誘き出している間に……………………いや、もう賽は投げられたんだ。)

 

 

大洋州同盟の本当の狙いに気づいたリーガンであったが、今更引き返すわけにもいかないと覚悟を決めて、一路サンフランシスコ沖へと向かった。

 

 

だが、その付近を我が紺碧第1艦隊が潜んでいた。

 

 

 

伊601潜 発令所

 

 

伊601聴音手「…………敵艦隊が離れました!」

 

 

前原一征「よし!音通魚雷にて、高杉艦隊へ知らせ!」

 

 

 

北太平洋艦隊が遠ざかるのを確認した伊601潜から音通魚雷が放たれ、太平洋を北上中の高杉艦隊へと状況が伝わる。

 

 

 

北太平洋 ハワイ諸島沖

 

高杉艦隊旗艦 高速戦艦比叡

 

同 戦闘艦橋

 

 

 

通信参謀「ユニオン機動艦隊はダッチハーバーを出撃。予測した進路を航行中とのことです!」

 

 

ホーネット「本当に引っかかってくれた………!」

 

 

高杉英作「よし、グリーンヒル大尉!奇襲部隊へ発信!」

 

 

フレデリカ・グリーンヒル大尉「はい!」

 

 

 

旗艦比叡から各艦に発光信号が送られて、高速戦艦霧島をはじめとする主力の大半が比叡以下の戦隊と離れて、別行動を取る。

 

 

 

高杉英作「頼むぞ!成功を祈る!」

 

 

 

ここで、天弦作戦の要目と敵味方の動きを説明しよう。

 

 

ダッチハーバーに引き篭もる北太平洋艦隊は大洋州同盟から見て、将棋でいうところの自陣に座った角とも言うべき邪魔で気になる存在だ。

この機動艦隊を誘い出して叩き、同時に鬼の居ぬ間のダッチハーバーをも叩く。

 

これが、天弦作戦である。

 

 

そして、目的に沿って餌は撒かれ、その餌に釣られて北太平洋艦隊はまさに、太平洋へと引っ張り出されたのだ。

 

 

太平洋の夜空に朝焼けがさす頃、北太平洋艦隊から偵察機が発艦していた。

 

 

 

超空母スペリオル 同 戦闘艦橋

 

 

リーガン「今日こそ、我がユニオンにとってのラッキーデーにしたいものだな。」

 

 

スペリオル「指揮官。昨夜遅くに、敵の暗号通信と思われる不明電波を傍受したのだが、解読不能だった。」

 

 

リーガン「なに?レッド暗号ではなかったのか?」

 

 

スペリオル「どうやら、こちらにとっても未知の暗号かもしれない……………どうする?」

 

 

リーガン「潜水艦かもしれないな。………スペリオル!護衛艦艇たちに、対潜警戒を厳重にするように伝えるんだ!」

 

 

スペリオル「わかった。」

 

 

 

戦場に日が上り索敵活動が始まる。

 

先に見つけたのは、ユニオンの偵察機であった。

 

 

 

09:50 超空母スペリオル

 

同 戦闘艦橋

 

 

 

スペリオル「……………………指揮官、こっちの偵察機が敵艦隊を見つけた!」

 

 

リーガン「いたか!位置は?!」

 

 

スペリオル「チャートNo.2-3-0!編成は…………っ!!」

 

 

 

高杉艦隊の位置を知らせていたスペリオルだったが、突然顔を顰める。

 

 

 

リーガン「どうした?!」

 

 

スペリオル「偵察機が敵に落とされた…………迂闊だった。」

 

 

リーガン「いや、寧ろこちらから仕掛けられるチャンスを得た!艦載機隊の発艦準備を頼む!」

 

 

スペリオル「わかった!ヒューロン!」

 

 

 

その頃、高杉艦隊は…………

 

 

09:52 東太平洋沖

 

高杉艦隊 旗艦比叡 同 戦闘艦橋

 

 

 

エンタープライズ《上空の護衛機が敵の哨戒機を発見して、撃墜したそうだ!》

 

 

グリーンヒル大尉「長官。お聞きの通りですが…………」

 

 

高杉英作「どうやら、敵は罠にかかったようだな!敵空母からは、慌てて攻撃機が発艦している頃だろうよ!」

 

 

ホーネット《こっちのセイデンが、もう直ぐ敵を見つけるかも!》

 

 

 

 

09:55 東太平洋沖

 

北太平洋艦隊

 

 

その頃、高杉が睨んだ通り北太平洋艦隊から、満を持して攻撃機の群が発進していた。

 

 

超空母スペリオル 同 戦闘艦橋

 

 

リーガン(よし!先手を取れたぞ!)

 

 

 

しかし、リーガンの下には高杉艦隊の中に空母エンタープライズとホーネットが含まれているという報告が入らなかった。

 

だが時を同じくして、空母ホーネットから発進した偵察機星電が、ユニオン艦隊を発見していた。

 

これに反応した超空母ヒューロンの艦載護衛機が迎撃に入るが、命中打を与えられずに、その快速を活かされて逃げられてしまう。

 

 

 

ヒューロン《ごめん!敵の偵察機を逃しちゃった!》

 

 

リーガン「構わない!既にこっちが先手を打っているんだからな!」

 

 

 

そう言い聞かせて、胸中に潜む不安を捻じふせた。

 

 

 

09:58

 

高杉艦隊旗艦 比叡

 

同 戦闘艦橋

 

 

 

ホーネット《敵の護衛機に絡まれたけど、機動艦隊を見つけたよ!それも攻撃機隊が発艦した後だって!》

 

 

高杉英作「そうか。航空参謀、護衛戦闘機隊の発艦準備を頼む!」

 

 

航空参謀「はっ!」

 

 

高杉英作「グリーンヒル大尉、奇襲部隊は今どの辺りだ?」

 

 

グリーンヒル大尉「艦隊の北進速度を考慮すると…………この辺りかと。」

 

 

 

海図で奇襲部隊の現在位置を指差した。

 

高杉艦隊から分かれたダッチハーバー奇襲部隊は、高速戦艦霧島を旗艦とする空母[加賀]・[蒼龍]・[瑞鶴]・[翔鶴]からなる攻撃隊であり、寧ろ本体の可能性が大であったが、高杉が指揮する囮艦隊にも空母[赤城]・[飛龍]の他に、ユニオン空母[エンタープライズ]・[ホーネット]の2隻が加わっていることが災いして、敵から見ればどちらが本体なのか分からずじまいであった。

 

そして高杉は、大胆不敵にも自らが指揮する艦隊で囮を買って出たのだ。

 

 

 

高杉英作「…………そろそろかな?」

 

 

 

手元の腕時計では、既に奇襲部隊が攻撃体を発進させている時間だろうと高杉は予測した。

 

 

 

航空参謀「護衛戦闘機隊を発進させます!」

 

 

高杉英作「頼む!」

 

 

 

10:00。

 

旗艦比叡の鐘楼に戦闘旗が上がり、赤城・飛龍・エンタープライズ・ホーネットの飛行甲板が慌ただしくなる。

 

 

 

空母エンタープライズ デッキ

 

 

整備員3《総飛行機発動!発艦準備を成せ!》

 

 

エンタープライズの眼下には、見た目は前世の紫電改に近いが、風防は全天式で蒼莱と同じ二重反転方式の6枚式の推進ペラを搭載した戦闘機が並んでいた。

 

 

エンタープライズ「新鋭機''電征''…………大洋州同盟の航空企業が開発した艦上戦闘機。どれほどの性能か、見せてもらおう………!」

 

 

先頭の電征2機がカタパルトに接続されるのを確認したエンタープライズは、発艦を指示する。

 

 

エンタープライズ「ホーネット、準備はいいか!」

 

 

ホーネット《OKだよ!姉ちゃん!》

 

 

エンタープライズ「よし!では行くぞ!!」

 

 

整備員3《発艦始め!発艦始め!》

 

 

 

カタパルトから次々と打ち出されていく電征隊は高度8,000まで上昇して編隊を組む!

 

赤城・飛龍から発艦した電征隊61機は、敵第一次攻撃隊の迎撃に飛び立ち、エンタープライズ・ホーネットから発艦した電征隊60機は、来るであろう敵第二次攻撃隊の襲来に備えて、艦隊の直掩に入る。

 

 

編隊長《両目を見開いて敵機を探せ!見逃すんじゃないぞ!》

 

 

赤城と飛龍から発艦した電征隊は高度8,000で編隊を組んだ後に索敵に入った。

 

そのうちの1機が、高杉艦隊目掛けて飛行中の敵編隊を発見する。

 

 

パイロット3《敵編隊発見!10時方向下方!》

 

 

敵はまだ電征隊に気づかず、飛行を続けていた。

 

 

編隊長《これより攻撃に移る!かかれぇ!》

 

 

編隊を解いた電征隊は、敵編隊に覆い被さるように斬り込んでいく!

 

時を同じくして、戦闘機隊の交戦は比叡にももたらされる!

 

 

 

10:05

 

高速戦艦比叡 同 戦闘艦橋

 

 

航空参謀「赤城・飛龍の電征隊が敵と交戦に入りました!」

 

 

高杉英作「いよいよ大詰めだ!気を引き締めていくぞ!」

 

 

比叡艦長:村田拓哉中将『対空射撃用意!!』

 

 

 

各艦艇の対空砲座が稼働し始めて、迎撃体制を整えていく!

その中には、全く異なる新兵器の姿もあった。

 

 

 

電征による突然の奇襲によって第一次攻撃隊は編隊が乱れてしまい、回避機動も取れる間も無く次々と落とされていく。

 

 

電征が装備している機銃は従来の12.7ミリとは別に、翼内に【30ミリ機関砲】を片翼2基の計4門を装備している。

これをまともに受ければ、機体は千切れ飛ぶ。

 

何より、電征が持つエンジン馬力もレシプロ機の中では絶大であり、それは航空戦が格闘戦から、【絶対出力と強力な武装の時代】へと入っていたのだ。

 

ましてや、ユニオンの雷撃機や爆撃機が電征の相手になる訳もなく、尽く空中で爆散していき、北太平洋艦隊が放った第一次攻撃隊は全て殲滅された。

 

 

 

 

10:20 東太平洋沖

 

超空母スペリオル 同 戦闘艦橋

 

 

リーガン「なにぃ?!第一次攻撃隊が、全滅だと?!」

 

 

整備員14「敵の戦闘機は、ZEEK(零戦)ではないとの事です………。」

 

 

整備員12「大洋州同盟は、新兵器を投入してきたのでは………」

 

 

リーガン「ばかもん!!分かりきってることを言っている暇があったら、トイレ掃除でもしてろ!!」

 

 

スペリオル「指揮官。まもなく第二次攻撃隊が敵と接触する!例の新鋭機F7Fがついているから、これで奴らの実力がわかるはずだ。」

 

 

リーガン「こっちが勝っていたらの話だがな。」

 

 

 

リーガンを不安にさせていたのは、大洋州同盟の新型機だけではなかった。

 

報告中に、高杉艦隊の空母が4隻もいるという内容があったからだ。

 

 

 

リーガン(高杉艦隊の空母は6隻の筈だ…………報告にあった2隻の空母は何処から湧いて出てきたのだ!これでは、どちらが敵の主力かわからんではないか!)

 

 

 

先頭の興奮が、リーガンから平常心を奪っていた。

 

他の4隻がその頃、戦艦霧島に率いられてダッチハーバーを目指していることは、流石のリーガンも予想だにしていなかった。

 

 

 

 

10:29

 

高杉艦隊旗艦 戦艦比叡

 

同 戦闘艦橋

 

 

 

北太平洋艦隊から発進し第二次攻撃隊の接近を、比叡の索敵電探が捉えた。

 

 

艦内無線《敵、第二波接近!距離35,000!》

 

 

高杉英作「来たか………!」

 

 

グリーンヒル大尉「長官!」

 

 

高杉英作「航空参謀!護衛戦闘機隊にも伝え!」

 

 

航空参謀「はっ!」

 

 

 

 

高杉の勘は冴えていた。

 

第二次攻撃隊は厚い雲海を利用して、護衛戦闘機隊の目を欺こうとしていたのだ。

 

 

比叡からの連絡を受けた電征隊は直ちに急行して、第二次攻撃隊の真上から覆い被さる様に迎撃に入り、対するユニオン攻撃隊も編隊を解いて、ユニオンの新鋭艦上戦闘機【F7F『エンジェルキャット』】が電征隊に喰らい付いて空中戦が繰り広げられる!

 

 

両者共に背後を取り合うが、それでも絶対出力において電征が勝っていたため、F7Fはたちまち電征の攻撃で落とされてしまう。

 

 

 

護衛戦闘機隊が派手に空中戦を繰り広げている中、高杉艦隊にも攻撃隊が襲い掛かろうとしていた。

 

 

 

10:35

 

戦艦比叡 戦闘艦橋

 

 

高杉英作「敵も中々やるもんだな!」

 

 

航空参謀「その様ですな。」

 

 

見張り員《正面、雷撃機!》

 

 

村田艦長「電探連動砲、用意!!」

 

 

砲術長「電探連動砲、用意!」

 

 

 

電征隊の迎撃を掻い潜り、高杉艦隊に雷撃を見舞おうと低空から高速でアヴェンジャー雷撃機が殺到していた。

 

 

 

対空要員3《電探連動砲、3番用意よし!》

 

 

対空要員4《6番、9番よし!》

 

 

対空要員5《8番用意よし!》

 

 

対空要員6《1番、2番よし!》

 

 

 

『電探連動砲』。

 

これは、天弦作戦のために開発された画期的な対空砲であり、砲の上部に装備された専用の電探と連動することで、正確無比の対空射撃を行うことができる。

 

更に砲の装填機構と操作も自動化されて高初速弾を見舞える、言わば【初期型のCIWS】であった。

 

 

 

この電探連動砲の正確無比の射撃によって、アヴェンジャー雷撃機はたちまち被弾し墜落。

 

それでも果敢にも雷撃を加えようと側面から魚雷を放つが、比叡の高速性能が上回り敵の魚雷を易々と避けて、自動追尾してくる電探連動砲によって逃げるまもなく火だるまにされて撃墜されて、第二次攻撃隊はその数を減らしていった。

 

 

襲い来る雷撃機を撃退して、大立ち回りをしていた高杉艦隊であったが…………

 

 

 

ダウンズ《艦隊上空にドーントレスが!!》

 

 

高杉英作「なにぃ?!」

 

 

 

その足を掬われるかの様に、厚い雲海を盾にしてドーントレス爆撃機が数機、高杉艦隊の空母を目掛けて攻撃を加えようと急降下を仕掛けてきたのだ!

 

 

 

エンタープライズ「回避行動しつつ対空射撃だ!!護衛艦艇は各空母を護れ!!」

 

 

アトランタ《ホーネットにドーントレスが3機!フレッチャー、ハムマン!迎撃!!》

 

 

フレッチャー《了解〜!》

 

 

ハムマン《さっさと落ちろ!爆撃なんかさせない!》

 

 

グリットレイ《ヒリュウにも来てる!!ラフィー!》

 

 

ラフィー《…………んっ、大丈夫。もう落としてる。》

 

 

ホーネット「よし!なんとか撃退できた!」

 

 

クリーブランド《数的に後1機いるはずだけど…………》

 

 

コロンビア《姉貴!!アカギ上空に最後の1機が!!》

 

 

 

飛龍・エンタープライズ・ホーネットは護衛艦艇と連携してなんとか撃退するが、赤城の方は雲層を盾にして近づかれていたので発見が遅れ、回避運動が間に合っていなかった。

 

 

 

エンタープライズ「アカギだ!!全力でアカギを護るんだ!!」

 

 

ウィチタ《オラオラぁ!!全力射撃だぁ!!》

 

 

ソルトレイクシティ《アガキを護って!!撃ち続けるのよ!!》

 

 

 

艦隊はすでに四面楚歌になっていた。

 

危機が迫る赤城を死守すべく、周りにいる護衛の艦艇が次々と電探連動砲と高角砲を撃ちまくるが、砲身仰角が一杯で正確な射撃ができずにいた。

 

 

 

メンフィス《だめ!弾幕がバラけてる!!》

 

 

モントピリア《砲の角度も限界だ!!高角砲の信管作動が遅れている!!》

 

 

ベンソン《電征隊を呼び戻して!!》

 

 

ホーネット「もう間に合わない!!」

 

 

 

そして、ドーントレスから爆弾が3発が切り離されて、赤城の飛行甲板へと吸い込まれていく…………

 

 

 

高杉英作「なっ…………!!」

 

 

元重桜駆逐艦:陽炎「っ!!」

 

 

デンバー「しまった!!」

 

 

 

奮戦虚しく、赤城が急降下爆撃を受けて被弾!

 

飛行甲板から爆炎が上がる!

 

 

そして高杉もこのショックが元となり、自身が前世大戦時、空母赤城の乗組員であったことを思い出した。

 

 

 

高杉英作「あぁ………赤城が!」

 

 

 

爆撃で損傷した赤城から数度に渡り爆発が起こり、後部飛行甲板が見事なまでに大穴が開き捲り上がっていた。

 

 

 

陽炎《そ、そんな…………赤城が……!!》

 

 

ウィチタ《アガキが被弾!!被弾した!!》

 

 

アトランタ《損傷は?!被害はどうなっているの?!》

 

 

 

エンタープライズ「みんな落ち着け!!敵はまだ来るぞ!!空母を集中的に護るんだ!!」

 

 

高杉英作「火災は、甲板だけの様だが…………グリーンヒル大尉!確認を取れ!」

 

 

グリーンヒル大尉「はい!」

 

 

 

ジュノー《2時の方角から、敵第三波接近!!距離17,000!!総数、約56!!》

 

 

 

艦隊が混乱している最中に、敵の第三次攻撃隊が高杉艦隊に迫っていた!

 

 

 

高杉英作「第三波か…………!艦長、飛龍が狙われるぞ!!」

 

 

村田艦長「はっ!!おもかーじ!!両舷全速、飛龍の前方に出よ!!」

 

 

 

エンタープライズ「全艦!飛龍を中心に輪形陣を敷くんだ!!残りの空母だけでも、なんとしてでも護るんだ!!」

 

 

 

迫り来る第三次攻撃隊に対して高杉は、旗艦比叡を駆り空母飛龍の前方に躍り出て、残りの艦艇も輪形陣を敷いて防御態勢に移る。

 

 

 

高杉英作「来たな……!」

 

 

村田艦長「主砲射撃用意!!」

 

 

 

ここで高杉は対空射撃用意ではなく、主砲射撃の用意を指示する。

 

比叡の前部砲塔が攻撃隊を向き、電探と連動させて主砲発射を自動に切り替えて立ち向かう!

 

 

攻撃隊との距離が縮まっていき…………満を持して主砲が火を吹いた!

 

 

主砲から放たれた青白い光が第三次攻撃隊を覆い尽くし、チェレンコフ光にも似た光を放ち、アヴェンジャー雷撃機は瞬く間に閃光の中へと消えていった。

 

 

 

エンタープライズ「な…………なんだ?今のは…………」

 

 

その光景を見たエンタープライズはもとより、ユ元ユニオンの太平洋艦隊のメンバー全員が言葉を失っていた。

 

エンタープライズは一瞬、核爆発だと思ったが…………

 

 

 

航空参謀「消えてしまった…………これが、"新型三八弾"の威力なのか……!」

 

 

グリーンヒル大尉「これが…………燃料気化弾の威力…………!!」

 

 

 

【新型三八弾】は、今で言う"気化弾"である。

 

砲弾から散布されたエアゾールが周りの酸素を奪って燃やし尽くし、先ずは強烈な爆風に襲われ、航空機は木葉のように揉まれ、次いで強烈な熱波が搭載燃料を爆発させる。

 

まさに、恐るべき兵器であった。

 

 

 

 

 

 

 

10:58 北太平洋艦隊

 

超空母スペリオル 戦闘艦橋

 

 

 

この第三次攻撃隊の全滅はリーガンの下に届き、ひどく狼狽するのだった。

 

 

 

リーガン「ご、56機ものアヴェンジャーが…………一瞬でだと?!?!そ、そんなこと…………信じろというのか?!?!」

 

 

整備員2「は、はぁ…………残念ながら…………」

 

 

リーガン「……………………なんてこった……!!!」

 

 

 

相次ぐ凶報を前にして、リーガンは己の固定概念が崩れゆく感覚に見舞われていき、自らの価値観すらも崩れ去っていった。

 

 

 

リーガン(何故だ、何故奴らの科学力の方が勝っているんだ………神は、この世を指導するものとして我らを作りたもうたのではなかったのか!!)

 

 

その時……

 

 

 

整備員3「帰還機!!」

 

 

リーガン「…………!何機だ!」

 

 

スペリオル「そ、それが…………」

 

 

 

彼らの元に帰ってきたのはF7Fとアヴェンジャー、ドーントレスが数機のみ、それも全て大洋州同盟の新鋭機電征の猛攻を受けて酷く損傷していた。

 

それぞれの空母に艦載機が着艦するも、その全てが着艦後すぐに力尽きて飛行甲板から滑り落ちるか、無事に着艦するも修理不能で使い物にならない機体ばかりであり、ここに北太平洋艦隊は、その航空戦力を''全て失う"結果となった。

 

 

その惨状を見たリーガンはひどく憤慨する。

 

 

リーガン「なんてことだ……!!!」

 

 

そこへ新たな凶報が届く。

 

 

 

ヒューロン《指揮官!!ダッチハーバーが、敵航空機の反復攻撃を受けてるって連絡が!!》

 

 

リーガン「な、なんだと!!」

 

 

 

ここにリーガンは、高杉艦隊の主力はどちらかというのを理解し、そして敗北を認めた。

 

 

 

リーガン「航空戦力を使い果たした我々は、もはや丸裸も同然だ!サンフランシスコへ撤退しよう!」

 

 

スペリオル「了解……」

 

 

整備員5「敵機来襲!!」

 

 

 

サンフランシスコへ撤退しようとする北太平洋艦隊の上空に、高杉艦隊の電征隊が飛来してきたのだ。

 

 

この時リーガンは自らの死を覚悟して、せめてもの足掻きとして対空射撃を命じるが、対する電征は着陸脚を降ろしただけでなくバンクを振って攻撃の意思はないことを伝えたのだ。

 

 

リーガン「なんだ?攻撃の意思がないようだ…………射撃をやめさせろ!」

 

 

対空砲火が止むと、電征はスペリオルに対して通信筒を落としていった。

 

その内容は、【貴艦への着艦を許されたし】であった。

 

 

他の乗員はその内容を不審がっていたが、リーガンはこの前代未聞の提案を了承。

 

ユニオンの空母スペリオルに、大洋州同盟の新鋭機電征が着艦するという奇妙な光景がここに誕生した。

 

 

そしてスペリオルに電征と共に降り立ったのは、第1航空機動艦隊司令長官である高杉英作その人であった。

 

 

 

 

11:20

 

空母スペリオル 応接室

 

 

リーガン「それにしても、提督自らとは驚きですな。」

 

 

高杉英作「リーガン提督にお会いして直接お話をしたく、不躾ながら参上しました。」

 

 

リーガン「…それで、要件とは?」

 

 

 

リーガンの問いに高杉は降伏を勧告してきたのだ。

 

その答えには、誰もが驚きを隠せなかったが…………

 

 

 

リーガン「ば、馬鹿なことを仰らないでいただきたい…………出来ることではない!我々は祖国の誇りにかけて、最後まで戦い抜きます!」

 

 

高杉英作「失礼ながら、戦況はあなた方にとって最悪なのです。」

 

 

リーガン「それは解せませんなぁ。我が艦隊は航空戦力こそ使い果たしましたが、戦艦・巡洋艦などの艦艇は無傷です!戦闘能力は、まだ微塵も失われておりませんぞ!」

 

 

そう言って、降伏の意思はないことを伝えたリーガンであったが、高杉は席を立ち証拠を見せると言って、デッキに上がる許可を取る。

 

 

 

11:28

 

超空母スペリオル デッキ

 

 

空母スペリオルの横を、改テネシー級高速戦艦のアパラチアが通過しようとしていた。

 

高杉はホルスターから信号拳銃を取り出した。

 

 

リーガン「アパラチアを………!?」

 

 

高杉はそれをアパラチアにではなく、上空に向けて放った。

 

それは、''海中の幽霊艦隊''への合図でもあった。

 

 

 

北太平洋艦隊 付近海中

 

伊602潜 発令所

 

 

 

内海「…………電征からの合図を確認!」

 

 

山中栄治「司令!」

 

 

海江田四郎「機関停止!1番2番演習魚雷、発射!」

 

 

 

伊602から、模擬弾に付け替えた62式酸素魚雷が放たれた。

 

 

 

11:30

 

 

 

幽霊艦隊から放たれた特殊魚雷は、スペリオルを通過しようとした高速戦艦アパラチアの右舷艦首に命中し、水柱が上がる!

 

 

リーガン「な、なんてことを…………!」

 

 

高杉英作「ご安心ください。訓練用の弾頭ですので、沈みはしません。」

 

 

アパラチア艦上では一瞬慌ただしくなったが、被弾した魚雷が訓練用であることが分かると冷静さを取り戻して、ダメージコントロールを的確に行なって戦列に復帰する。

 

 

 

リーガン「X艦隊か!?」

 

 

高杉英作「機密につき、申し上げれません。」

 

 

リーガン「これは脅迫か!?」

 

 

 

高杉英作「警告、いえ…………''取り引き"ですかな?」

 

 

リーガン「取り引き?!…………して、条件は?」

 

 

 

高杉英作「我々の艦載機を、この空母でホノルルまで送っていただきたいのです。」

 

 

 

まさかの取引に、さしものリーガンも驚きを隠せなかった。

 

 

リーガン「な、なんですと?!」

 

 

高杉英作「我が艦隊の空母赤城が、あなた方の急降下爆撃にやられ、目下着艦不能なのです。」

 

 

リーガン「…………で、ホノルルに着いた後は?」

 

 

高杉英作「提督のお気に召すままの船旅を。」

 

 

 

リーガン「…………ふはははははwwwよろしい!我々だけで、一時休戦といきますか!」

 

 

高杉英作「提督の御英断に感謝します!」

 

 

 

リーガンは手を差し出し、高杉はその手を硬く握った。

 

 

 

リーガン「ははははwww提督、あなたには参りました!おい、コーヒを…………いやウイスキーだ!俺のバーボンをボトルごと持ってこい!スペリオル!彼らの艦載機の着艦を誘導してくれ!」

 

 

スペリオル「了解した!」

 

 

 

12:00。

 

この両雄との間で交わされた休戦協定は艦内放送を通じて、リーガン自ら全将兵へと伝えられた。

ここに、【太平洋の奇跡】と後世の歴史に記される逸話が誕生して、天弦作戦は無事終了を迎えた。

 

 

 

リーガン(彼らは俺の艦隊を全滅させることも出来たのに…………ふ、こういう男達と我々は戦っているのか。)

 

 

 

一旦合流した日米艦隊は名残を惜しみつつ二手に分かれた。

 

米艦隊はサンフランシスコを目指して、超空母スペリオルとヒューロンを加えた高杉艦隊はハワイ・ホノルルへと…………

 

わずか数日ではあったが、実に奇妙な航海であった。

 

 

 

道中

 

超空母スペリオル 戦闘艦橋

 

 

 

スペリオル「指揮官…………国防総省からだ。」

 

 

リーガン「うむ。」

 

 

 

ことの顛末を知った国防総省から、凄まじい剣幕の電話が入った。

 

 

 

リーガン「私だ………」

 

 

無線電話《リーガン!!貴様、気でも狂ったのか!!》

 

 

リーガン「…………俺は正気だが?」

 

 

無線電話《ならば、そこにいるアドミラル高杉を直ちに捕虜にするんだ!!》

 

 

 

リーガン『このスカンク野郎が!!捕虜になってるのは俺の方だ!!』

 

 

 

戦場でのフラストレーションが爆発したリーガンはそう怒号と共にたんかを切って、通信をぶっきらぼうに切った。

 

 

 

 

夕刻 北太平洋上

 

紺碧第1艦隊旗艦 伊601潜 セイル

 

 

 

入江九市「天弦作戦…………上手くいきましたな、司令!」

 

 

前原一征「あぁ!」

 

 

入江九市「しかし……壊滅出来たはずの敵艦隊を、高杉長官はなぜ見逃したのでしょう?とても自軍の艦載機を助けるためとは思えませんが………」

 

 

 

前原一征「無論だ。前世大戦において日本海軍の戦力思想は【艦隊決戦】だったが…………それを一気にひっくり返したのが【真珠湾攻撃】だ。これは「艦隊は航空機に弱い」と教えてやったようなもので、後に物量作戦となる航空決戦に誘導してやったようなものだ。そこで後世では、敵に【艦隊決戦に帰ってもらう】必要があったんだ。」

 

 

入江九市「なるほど…………わかりましたよ、天弦作戦の真の意味が!高杉艦隊は殺到する航空戦力を阻止してみせましたからね!」

 

 

 

 

千島列島 島沖 

 

紺碧第2艦隊旗艦 伊602潜 セイル

 

 

内海「これで、ユニオンが元の【艦隊決戦思想】に戻ってくれるといいのですが…………」

 

 

山中栄治「そうだな。【潜水艦決戦思想】という我々独自の戦法においても、その方が都合がいいからな。」

 

 

 

海江田四郎「我ら紺碧艦隊は強力な抑止力となり得るが、基本的には航空機には弱いからな。だが、いずれ重桜に帰属するにしても、資源の乏しい我が国がいかに戦争継続できるかは…………この方法しかないということだ。」

 

 

 

天弦作戦の隠された真の意味が成功して、ユニオン海軍が元の艦隊決戦思想に回帰するのは、半年後のことであった。

 

 

そして、大洋州同盟の次なる作戦が………………南太平洋にて始まろうとしていた!!

 

 

 

 

EP2-3に続く・・・

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。