アズールレーン~紺碧の艦隊と蒼き海原~ 作:非常勤務艦隊本部
ブーゲンビル島上空で戦死した山本五十六は、前世とは全く異なる後世に【高野五十六】として転生。
アズールレーンの要素を含めた後世の歴史に違和感を抱くも、重桜とユニオンの緩衝地帯である従属国【北北海道】にてクーデターを決行して、青風会のトップで陸軍中将の「大高弥三郎」を首班とする【大洋州同盟】を建国、同時にアイリスなどのアズールレーン準加盟国と会談を行い、新陣営【大洋州同盟】を成立させた。
だが、戦争への流れを止めることは出来ずに、平成11年12月8日、大洋州同盟は第三次世界大戦へと参戦する……。
【ハワイ海戦】で、ユニオンの太平洋に対する戦略拠点を占領して、ロイヤルの東洋方面第2艦隊を撤退させて、ユニオン太平洋艦隊と交戦して、これを降伏させた
勢いに乗る大洋州同盟は、太平洋への戦略物資輸送を阻害する為、翌年の平成12年1月13日にユニオンのアキレス腱である【パナマ運河】を破壊せしめた。
初戦の連敗に頭を悩ませたユニオン大統領ルーズベルトは、国内の厭戦気分を払拭させるため新鋭重爆撃機[B-30]を用いてでの【重桜空襲】を敢行するが、これを察知した大洋州同盟が迎撃のため出撃させた局地戦闘機[蒼莱]と異世界から後世世界に転移してきた【ウィッチーズ】によって、頓挫させた。
だが、恐るべき巨大ユニオンの工業力である。
真珠湾攻撃で壊滅したはずの太平洋艦隊が、北太平洋のダッチハーバーにて蘇っていたのだ。
大洋州同盟はこの艦隊を、新鋭の高速電算機を駆使して完成した【天弦作戦】を発動させて、新太平洋艦隊を誘き出して再度、敗れ去ったのである。
だが、この緒戦の輝かしい戦果の裏に、前原・海江田両少将に率いられた【紺碧の艦隊】と呼ばれる秘匿潜水艦隊が存在したが、それを知るものはごく僅かであった…………
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2000年(平成12年)7月 マーシャル諸島 ヤルート島
この日前原と海江田は、色丹島からここヤルート島に移動してきた【海軍特殊部隊】との共同作戦を練るべく、視察も兼ねて訪れていた。
彼らの眼下では、その海軍特殊部隊による強襲上陸訓練が行われていたが…………
師団長「援護射撃と連動せずに、飛び出す馬鹿があるか!!これが鉄砲なら、貴様らはとっくに全滅しとるぞ!!これじゃあ、命がいくつあっても足りん!やり直せ!!」
色丹島とは勝手が違うのか訓練が上手くいかず、やり直しの連続であった。
紺碧第1艦隊司令長官:前原一征少将「中々精が出るじゃないか。」
海軍特殊部隊司令官:九鬼鷹常中将(24)「高野総長の特命で我が海軍初となる海兵師団だ。嫌でも気合が入るさ。」
海軍特殊部隊とは、前世で言うところの【米海兵隊】を参考にして創られた部隊である。
前世大戦において、鉄壁と思い込んでいた絶対国防圏を、独自の支援部隊と航空援護を有した海兵隊の強襲上陸でことごとく破られていった苦い経験のもとに編成された。
部隊を指揮するのは紺碧会のメンバーの一人「九鬼鷹常中将」で、前原とは兵学校の同期でもある。
海軍特殊部隊は本土の色丹島での訓練を終えてここヤルート島へと移動して駐屯地を仮設営。
ここへの赴任は、まさに総仕上げでもあった。
ヤルート島仮設本部にて
九鬼鷹常「前世での失敗を基にこの部隊は創られたんだ。俺もこの部隊を、ユニオン海兵隊に匹敵する部隊に育て上げるつもりだ。」
紺碧第2艦隊司令長官:海江田四郎少将「島嶼戦においては、強襲上陸が物を言うからな。そのためにも、今回の支作戦は是が非でも成功させなければならない。」
九鬼鷹常「肝心なのは沿岸抵抗線の徹底破壊だが、本作戦では海上からの艦砲射撃も航空支援もない。総長からは「奇襲で落とせ」と言われる。」
前原一征「彼女たちは使えないのか?」
九鬼鷹常「例のウィッチーズの事か?」
後世世界に転移してきたのは、ストライクウィッチーズだけではなかった。
既に同盟各国でも、様々な異世界からの転移者が現れたという報告が相次いでいて、大洋州同盟各国は緊急の首脳会談を行い、【セイレーンによる何かしらの仕業】であるとした上で、【今時大戦への協力要請と援助の確約】を決めており、既に異世界の技術を取り込んで、急速な技術躍進を進めている。
九鬼鷹常「うちで保護したストームウィッチーズもこっちに協力してくれるが、【島嶼戦での航空支援は初めてだから、上手く連動できるかが不安】と言っていた。」
前原一征「だが、少なくとも航空支援は期待できるんだ。それに主要作戦はパプアニューギニア攻略であり、我々が行うサモア攻略は陽動作戦だ。…………だが九鬼、この俺の艦隊がついている。」
海江田四郎「今回は第1・第2紺碧艦隊全艦での作戦だ。勝算は十分にある。」
九鬼鷹常「うむ、大いに期待してるぞ!」
前原一征「あぁ!でかいぞ?うちの艦は!」
そして前原は、サモア攻略の前段階としてある提案をする。
前原一征「サモアの敵状は、海上からの偵察と無線傍受でおおよそは把握している。だが詳細となると、直接目で確かめないといかん。…………そこで貴様に相談だが、”例の部隊”は使えないか?」
九鬼鷹常「特潜隊の事か?」
特潜隊とは、紺碧会の討議に加え、前世で【自衛隊】と呼ばれる戦後日本の国防を預かっていた転生者が常々口にしていた特戦群こと【特殊作戦群】及び【自衛隊レンジャー部隊】を参考にして生み出されたもので、正式名称は【特別潜入偵察隊】である。
海上から敵地奥深くに潜入して、偵察・特殊工作等を主な任務としている部隊である。
前原一征「取り敢えず1分隊あればいい。島内の地理を熟知させて、作戦開始となったら破壊・陽動・攪乱の任に就かせたらいいと思う。」
九鬼鷹常「うん、それがいい。」
特潜隊の動員が決まったことで、前原が持参してきたサモア周辺の地図を広げて、作戦の確認に入る。
前原一征「ユニオン領サモアには海軍基地があったな?」
九鬼鷹常「ツツイラ島のパンゴパンゴ港だ。」
前原一征「サモアは太平洋でも屈指の良港だ。南太平洋の制海権を確保するためにも、この海域での潜水艦隊の行動は不可欠だ。そのためにも、このパンゴパンゴ港は確保しておきたい。」
九鬼鷹常「だが作戦が成功したとしても、占領維持が難しくないか?」
サモアは、ユニオン領の島嶼群でフィジー・タヒチに並ぶ南太平洋の戦略拠点の一つである。
もしここを抑えられたら、フィジーを攻撃される可能性が出てくるだけでなく、潜水艦による豪州への補給線を脅かされて、ユニオン・ロイヤルの戦略軍事物資の輸送ルートを遮断することができる。
だがこの作戦には、”ある狙い”があった
海江田四郎「サモアは確かに敵中にある。だが…………ここを占領”されたら”、どうなると思う?」
九鬼鷹常「獅子身中の虫……と言うことになるな。」
海江田四郎「ユニオンからすれば、当然奪回しに来る。」
九鬼鷹常「そうか!そこが狙いか!」
前原一征「出てきたところを、我々が海中から”叩く”!」
平成12年9月。
第1・第2紺碧艦隊と九鬼海兵師団の合同による【サモア攻略作戦】は、特潜隊の先発で開始された。
特潜隊総数11名が乗るこのロ型潜は、基準排水量700トンで航続距離9250キロの二等潜水艦であり、特潜隊の任務はサモアに先行上陸して、海兵師団の上陸の手引きと破壊・攪乱を帯びていた。
更に、海兵師団を搭乗される【伊900型揚陸潜水艦】は、紺碧艦隊に配備されている【伊700型潜補】の巨大潜水艦建造技術を応用して造られた潜水艦であり、水中排水量9330トンの巨体に完全武装した海兵を1隻につき500名と上陸用船艇24隻を搭載できる性能を有していた。
9月5日の深夜。
一同に会した紺碧艦隊は、海兵師団5000名を載せた伊900型10隻を率いてヤルート島を出撃。
深度80を維持しつつ、艦隊速度11ノットで南下しながらサモアを目指す。
目的地まで約3000キロ。
途中通過のギルバート諸島タラワ島は、前世大戦における激戦地であったが、この後世では水上機と零戦の基地が築かれていた。
サモア攻略艦隊の動きに合わせて、タラワ島に配備されていた【大艇仙空】は、高野五十六からの特命を受けて、対潜哨戒に余念がなかった。
この大艇仙空こと【二式大艇改『仙空』】は、巡航速度296、最高速度444キロで航続距離は最大7400キロを誇る大型水上機であり、前世大戦において最大級とされた【二式大艇】に匹敵する性能を持っている。
しかし、仙空には【対潜哨戒】という性質上、航空機用磁気探知機である【KMX】を機尾に搭載していて、専用の航空爆雷を多数搭載している。
なにはともあれ、大艇仙空はこの日も、ユニオンの量産型潜水艦ガトー級を探知しこれを撃破した。
このような支援もあり、サモア攻略艦隊は9月12日深夜にサモア沖に到着。
翌13日に、海兵師団1000名が先行して上陸し、3時半には主力の2000名が上陸し、無防備の西サモアにも2000名が上陸した。
サモアのユニオン守備隊は1000名足らずであり、まさか遠く離れたこの地を、大洋州同盟軍が完全奇襲を仕掛けてくるなんて''思っていなかった''。
上陸した海兵師団による迫撃砲での攻撃により戦闘は始まり、九鬼師団が各地で一斉に突撃を開始した!
ツツイラ島 タフナ基地
ユニオン守備兵5「敵襲だ!!」
ユニオン守備兵1「港から船を出せ!!避難させろ!!」
ユニオン守備隊は完全に不意を突かれた。
タフナ基地に駐機していたF4Uコルセアは飛び立たぬうちに、新型ストライカーユニット【電征二一型】を装着した、「加東圭子少佐」指揮する第31統合戦闘航空団【ストームウィッチーズ】の機銃掃射によって大多数が地上で撃破された。
そして、パンゴパンゴ港から退避しようとする輸送船団に、二の矢が湾口に潜んでいた!
ツツイラ島 湾口海中
紺碧艦隊旗艦 伊601潜 発令所
伊601聴音手「敵輸送船団が湾内から出てきます!」
前原一征「敵は炙り出されてきたぞ!」
入江九市「は!雷撃用意!」
伊601水雷長《いつでもどうぞ!》
入江九市「撃て!!」
湾口海中に潜んでいた、紺碧艦隊の【艦隊殲滅雷撃】の餌食となった。
戦闘開始から数時間後。
九鬼鷹常中将は制圧したパンゴパンゴに司令部を設置して、翌日から山中に逃亡した守備隊の掃討を開始。
なお、サモアの主島サヴァイ島は無血占領して、パプアニューギニア攻略戦の支作戦である【サモア攻略作戦】は成功を収めた。
この一連の戦闘における両軍の戦死傷者数は、ユニオン側が500名、大洋州同盟側が100名足らずであった。
この戦いで大洋州同盟は、ユニオンの戦闘機3機と潜水艦2隻を鹵獲。
現地住民への手厚い戦後保証を約束したのは言うまでもない。
捕虜にしたユニオン守備隊は、パンゴパンゴ港にて無傷で鹵獲した輸送船で近くのフィジー島へ送還している。
9月15日には、新型特殊戦闘機【木零戦】がタラワ基地からここサモアへ転戦し、ストームウィッチーズもタフナ基地に司令部を設置して九鬼師団と連携して島の防備に就いた。
更に伊900型を駆使したピストン輸送により、本土から武器弾薬・電探連動砲などがパンゴパンゴ港へと荷揚げされた。
敵は再三に渡り、フィジー及びタヒチから偵察機を飛ばしたが、その全てをタフナ基地所属の木零戦とストームウィッチーズによって撃墜された。
平成12年10月初旬
豪州 ブリスベーンユニオン基地
雨が降りきしる豪州、そのブリスベーンに''その男"はいた。
???「サモアは落ちたか…………。」
その男こそ、前世では【碧い眼の大君】の異名で呼ばれていた、太平洋方面総司令官「ルイス・マッカーサー」その人であった。
この後世でもフィリピンにて指揮を取っていたが、想定していた敵が重桜ではなく、大洋州同盟であったがために意表をつかれてしまう。
当初はフィリピンのパターン半島に立て籠もり徹底古銭を続けていたが、同年1月に大洋州同盟軍によってパナマ運河を爆撃され、太平洋への戦略軍事物資の輸送路を遮断されてしまったため、「アイシャルリターン」のセリフを残して、3月12日にオーストラリアへ脱出。
以来、この地で反撃のチャンスを窺っていた。
ユニオン太平洋方面総司令官:ルイス・マッカーサー(34)(大洋州同盟がこのオーストラリアに侵攻してくるのも時間の問題だ………………フィリピン奪回を急がねば、だが…………)
マッカーサーはフィリピン奪回を行うべく、ブリスベーンに駐留するユニオン海軍第七艦隊の司令長官「モルガン提督」の元に訪れては、再三に渡り協力を要請していたが…………
対するモルガン提督は、【中部太平洋を西に直進して、一気に重桜と大洋州同盟の宗主国を攻撃する】という海軍の戦略構想を持っており、陸海軍での確執が原因でマッカーサーの思う通りにはいかなかった。
それどころかモルガンはマッカーサーに対して、「豪州は海軍に任せて、マッカーサーは東煌に行きそこから攻め上がればいい」と言う始末であった。
その後、ブリスベーン上空をタラワ基地から偵察として飛来した仙空が、帰りがけの駄賃と言わんばかりに試作段階の無線誘導兵器【ワ式噴進弾】を用いて、B-17を撃墜したのは言うまでもない。
10月14日 札幌市
海軍省 地下作戦室
この日高野は、緊急の会議を開いていた。
それもそのはず。
大戦序盤にて破壊したパナマ運河を完全とまではいかないが復旧させたユニオンが、戦時量産体制へと移り、ハワイ奪回に動き出す可能性が出てきたのである。
対する重桜も琵琶湖運河を復旧させたものの、春頃に襲来したユニオン爆撃隊の一件で、軍事政権が揺らぎに揺らいで、水面下ではあるが【大洋州同盟との融和政策】が取られつつあったのだ。
高野五十六「敵は当然、ハワイ奪回を狙ってくる…………当面、パナマ沿岸の偵察を強化しつつ迎撃の作戦計画を練るべきだな。」
高雄「ハワイ諸島はまさに後世、呉清源が打った天弦の一石。戦局が推移するとともに、この石の利き方は増しくるはずだ。」
高野五十六「…………しかしだな、碁は高段者ほど石を巧みに捨てるものなんだ。」
元重桜重巡:雲仙「はい。ホノルルは無防備都市宣言を出していて、いつでも撤退できるように準備しています。」
高野五十六「諸君らはこれまでの研究で、敵超重爆撃機B-30によるハワイ空襲はないと判断したが?」
雲仙「は。ダッチハーバー・ホノルル間の距離は直線で3,776km、サンフランシスコからですと3,894km。如何にB-30が優れていても、航続距離は6,500km。片道攻撃ならともかく、ハワイには届きませんが…………」
しかし、ここでミーナがあることに気づく。
ミーナ「………!でも、ホノルルの真南に''島''があるわよ?」
雲仙「…………!''
ミーナ「ホノルルとの直線距離は?」
雲仙「約2,500kmですが…………」
坂本美緒「B-30なら十分すぎるな…………。途中途中で給油しながらでも、クリスマス島を中継すれば余裕で往復できる。」
ミーナ「先月制圧したサモアとの間も大体同じ距離ね………………地図に3,250kmの円を書いてもらえるかしら。」
元ユニオン軽空母:ラングレー「お待ちを…………」
ラングレーがクリスマス島を中心に、半径3,250kmの円を描く。
すると…………
ミーナ「やっぱり…………ラタック・ギルバート・エリスの3つの諸島が、B-30の行動圏内に入るわ。」
雲仙「わかりました!直ちに仙空及び潜水艦を派遣して、ライン諸島を偵察させます!」
高野五十六「諸君!ユニオンを侮るのは禁物だ!引き続き、敵機動部隊を殲滅すべく研究を行うように!」
高野はそう激を飛ばし、地下作戦室を後にする。
その場に残った者たちは、ある考えを巡らせていた。
ミーナ「……………そうなってくると、敵は戦略兵器の使い道に苦悩するでしょうね。」
坂本美緒「あぁ。陸上攻撃機なら使い勝手は効くが、超重爆撃機の類となると使い所にもよるが、使い勝手が効かない。…………ここからどう動くかだが………」
ミーナ「…………あなたは、どう見ているかしら?」
第502統合戦闘航空団【ブレイブウィッチーズ】隊長:グンドュラ・ラル少佐「そうだな………………クリスマス島は今や、北と南で我々に挟まれている状態だ。敵からすれば嫌な現実だが、こちらからして見れば………絶好のチャンスとも言える。」
雲仙「どういう意味でしょうか?私にはさっぱり…………」
ラル「クリスマス島を我々が頂いて、国防圏をさらに東へ押し上げる!」
「「!!」」
この考えが、後に【塔作戦】の発案に繋がることとなる。
大洋州同盟首都 札幌市すすきの とある料亭
その後高野は、泰山航空工業社長「東野源一郎」と従軍画家「富嶽太郎」こと「前原一征」が密かに会合していた。
東野源一郎「…………爆撃機、ですか?」
高野五十六「あぁ、ユニオンの空の要塞に匹敵する機は造れないだろうか?」
東野源一郎「前世大戦末期に、太平洋を横断できる爆撃機[富嶽]が計画されていましたが…………それを?」
高野五十六「そうだ。」
東野源一郎「しかし閣下!あれは"特攻機"でした!」
高野五十六「だが、今はハワイをとっている。」
東野源一郎「確かにハワイがあれば、容易に帰って来れるでしょう。しかし、富嶽を前世同様の性能で作ろうとしても資源が少ない、我が国は所詮''中小国家''です!………"大量生産''を容易くできるユニオンとは違って我が国は一つ一つが''手作り''………例え数十機を揃えたとしても、戦略的意味合いは薄いでしょう…………」
東野の指定は最もであったが、流石の高野も敵に足元を掬われる妙な挑戦をしようとはしていなく、何やら''とある計画'の要''として戦略重爆を欲していたのだ。
それも【奇襲】を目的として…………
それを聞いた東野源一郎は快くそれを了承するが…………
東野源一郎「ところで…………閣下がお望みなのは'陸上攻撃機ですか?」
高野五十六「それは一体…………?」
東野源一郎「あぁ………実は、閣下からこう言う相談があるのではないかと思い、参考にと持ってきたのですが……………………このようなものを。」
前原・高野「「……………!!」」
そう言い東野が持参してきた青紙には、6発のエンジンを搭載した【三胴飛行艇】の設計図であった。
東野が言うには、大洋州同盟は重桜同様に大艇などの水上機類の技術は、同盟国と超大国ユニオンを差し置いて一歩も二歩も抜きん出ている特性を最大限利用して、世界中のいかなる海からでも発進できる機体を作ると言うのだ。
高野五十六「…………だが、飛行艇は足が遅いという欠点がある。」
東野源一郎「その通りです。」
高野五十六「解決できるのですか?!」
東野源一郎「足が遅いと迎撃されやすい…………ならば''迎撃されにくい工夫''をすれば良いのです!」
高野五十六「工夫……!」
東野源一郎「つまり、敵機が到達しにくい高度から侵入すればいいもので…………」
高野五十六「なるほど!」
前原一征「…………爆撃機ではなく、''空中戦艦''とは!」
東野源一郎「我々は、開発名を【富士】と呼んでおります!」
高野五十六「富士………」
東野の語るところには、富士のエンジンはワルター機関を採用。
航続距離は18,000km、高度20,000mを超え、速度は800キロは出せると言う!
高野はこの空中戦艦の製造を決め、計画名も【富士】と命名された。
東野が辞し、高野と前原が残った。
その席で明かされたのは、ユニオンの原子爆弾の完成が間近に迫っていて、来年末にも使用される恐れが出てきたと言うものであった。
これをいち早く阻止すべく、高野は前原にある命令を下した。
高野五十六「そこで''例の作戦''なのだが…………」
前原一征「作戦名『乱』ですな?」
高野五十六「そうだ。政府の承認を得た。紺碧艦隊発案の作戦として、思う存分やってくれ!」
前原一征「は!ありがとうございます!」
2000年(平成12年)11月 マーシャル諸島某所 紺碧島
平成12年11月後半、紺碧艦隊独自の作戦【乱】が発動。
紺碧第1艦隊は紺碧島を出撃し、珊瑚海へと針路を取る。
これに呼応するかのように、南太平洋に展開していた伊号潜水艦が行動を開始。珊瑚峡に向けて集結を始める。
同時にタラワ及びサモアの大艇仙空が警戒活動を開始した。
敵の偵察機を見つけ次第、タフナ及びヤルートの防空隊が追い散らす!
海軍特殊部隊も行動を開始して、前世悲劇の地【ガダルカナル島】に上陸してこれを制圧した。
海軍航空隊もニューカレドニアのラバウルに集結して、パプアニューギニア方面への大規模反攻作戦の兆しを見せる。
一方マッカーサーは、パナマ運河復旧に呼応するかのように司令部を豪州ブリスベーンからパプアニューギニアのポートモレスビーに移動。
大洋州同盟の反攻作戦に対抗するために、豪州ヨーク半島に後方支援基地を設置して、爆撃機用の飛行場を1カ所と戦闘機用を2カ所建設、そしてポートモレスビー近郊にも重軽爆撃機用を1カ所ずつ、戦闘機用の飛行場を2カ所設置して、ラバウルから飛来するであろう敵航空隊を警戒しつつ、ラバウルへ報復をす行うべく準備を進める。
その傍らで大洋州同盟が制圧したガダルカナル島に強襲上陸を仕掛けるも、不思議なことに島内はもぬけの殻でマッカーサー軍は損害皆無で奪回に成功してしまうが、飛行場を一から作る羽目になった。
だが…………ガダルカナル島に上陸した後姿を消した海軍特殊部隊の内300名は密命を帯びて、島内に潜伏していたとは、誰も予想だにしていなかった。
この報告を聞いたマッカーサーは驚きを隠せなかったが、それとは別に対岸のブナにも大洋州同盟軍がいつの間にか上陸・橋頭堡を築いており、オーエンスタンレー山脈に向かって進撃路が形成されつつあった。
マッカーサーはブナに上陸した大洋州同盟軍の狙いがここポートモレスビーであると見抜き、マッカーサー軍主力でオーエンスタンレー山脈を超えて大洋州同盟軍の前面へ進出した後、ガダルカナル・ツラギ・フロリダの各島々に派遣した別働隊が船舶を使ってブナに逆上陸を仕掛けて包囲殲滅する作戦を立てた!
だが……………………
マッカーサーの”この一連の判断そのもの”が、大洋州同盟首相「大高弥三郎」が仕掛けた”罠”であった…………。
ブナに派遣された大洋州同盟軍の目的は、マッカーサー軍がオーエンスタンレー山脈を超えてくるのを見越した……いわば、おびき出すためであり、真の目的は、ガダルカナル・フロリダ・ツラギ各島々に派遣された別働隊であった。
平成12年11月27日。
元重桜所属の駆逐艦だけで編成された【第23水雷戦隊】はカビエン泊地を出撃、未だ例に見ない往復2000kmの長距離艦隊夜襲が開始されようとしていた。
この第23水雷戦隊の編成は、旗艦「綾波」を先頭に、「吹雪」・「暁」・「高波」・「夕立」・「照月」の6隻の駆逐艦のみで編成されていて、全艦が新型のガスタービンエンジンに換装している上、各種装備も新型のものに置き換えられている。
日没寸前
ソロモン諸島 サボ島・ガダルカナル島間水道前
第23水雷戦隊旗艦:高速駆逐艦[綾波]
艦橋
暁《綾波!偵察便の仙空から報告が来たでござる!》
綾波「読み上げるです!」
暁《ツラギ港における敵は、重巡6又は7、軽巡4、駆逐艦10以上、輸送船多数でござる!》
綾波「全員、夜戦に備えるです!!」
照月《騒音ブイを投下します!》
22:00、戦闘配備発令。
騒音ブイが投下され、30分後に単縦陣で水道をすり抜けて、突入を開始した!
綾波『全艦、速力30に増速!全速突破!』
水道を突破直後、敵艦隊発見の報が入る!
吹雪《前方から敵艦隊!距離10,000!》
綾波「…………敵艦種は重巡3隻!」
暁《…………………でも、敵も度肝を抜かれて慌てているようでござる!》
綾波「先制攻撃を仕掛けます!全艦、面舵0.5!」
吹雪《右、魚雷戦用意!!》
発見は味方艦が秒差で早く、戦隊は面舵をとって反航戦に持ち込む!
暁《魚雷、発射用意よし!》
綾波「撃て!!」
先頭を征く「綾波」の他、「吹雪」と「暁」が【九九式62式誘導酸素魚雷】を放ち、続く「高波」・「夕立」・「照月」が【夜戦用レーダー照準器付き5インチ連装砲】で敵重巡2隻に対して肉薄攻撃!
ユニオンの重巡戦隊は意表を突かれた形で夜襲を受けたため、なす術もなく全艦撃沈されるのだった。
高波《敵戦隊を撃破!》
夕立《開始早々で初戦果だぜ!》
綾波「撃ち方やめ!最大全速で離脱、ツラギに向かうです!」
ユニオンの重巡戦隊を撃破した水雷戦隊は全速でツラギへ向かう。
同時刻、ガダルカナル島ルンガ岬のユニオン補給基地でも、上陸・占領後密林に潜んでいた海軍特殊師団300名による夜襲が行われ、ルンガ岬から火の手が上がった!
照月《ルンガ岬から火の手!》
夕立《特潜隊だ!派手におっ始めたな!》
綾波「全艦魚雷戦用意!」
暁《敵輸送船を確認!数は9!》
高波《装填完了!用意よし!》
綾波「魚雷発射!!」
水雷戦隊から魚雷が放たれ…………
綾波「全艦砲撃!!」
高波《撃てー!!》
駆逐艦の砲弾が、雨霰の如くルンガ岬のユニオン補給基地に停泊していた輸送船群に降り注ぎ、魚雷が到達して、9隻全てが撃沈されて…………
綾波「対岸のツラギ攻撃へ!!」
吹雪《全艦回頭!!》
次の攻撃目標へと移る!
高波《左、魚雷戦用意!!》
夕立《再装填終わったぜ!!》
綾波『発射!!』
ツラギに向かって62式誘導酸素魚雷が放たれ、獲物に向かって突き進む!
水雷戦隊による夜襲を迎撃すべくツラギから出撃した軽巡旗艦の戦隊も…………
綾波「砲撃開始!!」
夜戦用レーダー照準器付き5インチ連装砲の精密射撃によって海の藻屑と化し、ツラギへ達した誘導酸素魚雷も輸送船に全弾命中、敵は移動手段を失った。
第23水雷戦隊は、やる事をやり終えると敵艦隊の接近を告げても構わず離脱に徹した。
何故なら…………
あとは任せろと言わんばかりに、伊602潜が率いる紺碧第2艦隊が騒音ブイに紛れて、当海域に進出していた。
アイアンボトムサウンド 海中
伊602潜 発令所
山中栄治「水雷戦隊、安全圏に出ました!」
内海「敵艦隊はこちらに気づいていません!」
海江田四郎「全艦機関停止!魚雷全門発射!」
紺碧第2艦隊全艦の一斉雷撃により、敵艦隊は全て撃沈されて、夜明けと共にラバウルから発進した陸上攻撃機部隊の強襲とロ型潜の待ち伏せ攻撃により、マッカーサーが放った別働隊はソロモン諸島に封じ込められる事態となった。
そして時は、第23水雷戦隊がカビエン泊地から出撃する前にまで遡る。
作戦乱に基づいて、スラバヤ泊地に待機していたサディア所属の重巡「トレント」を旗艦として、姉妹艦の「ボルツァーノ」、北方連合所属「タリン」、ヴィシア所属軽巡「ラ・ガリソニエール」、「マルセイユ」、アイリス所属駆逐艦「フォルバン」、「ルピエール」からなる大洋州同盟海軍【第8混成艦隊】が陽動のため、スンバワ島とフロレス島間の水道を通ってサブ海を通過してティモール島へ到達。
そのままティモール島東端に差し掛かり豪州の都市【ダーウィン】を攻撃する兆しを見せたが、これは作戦乱による陽動であった。
この陽動にまんまと引っかかったのが、アーノルド・フレッチャー中将指揮する第二艦隊(以降フレッチャー艦隊と呼称)であった!
ユニオン総司令部は、アーノルド・フレッチャーに第8混成艦隊の迎撃を命じた。
フレッチャー艦隊はサンクリストバル島(現・マキラ島)を出撃、トレス海峡を抜けてアラフラ海に出ようとしていた。
艦隊司令のフレッチャーはユニオン艦隊司令官の中でも最年少であり、老練の指揮官たちが大西洋戦線に出突っ張りのため、ベイ大将の後釜に添えられた「カッター大将」の推薦もあり、南太平洋戦線に配属となった。
だが、艦隊がトレス海峡を通過した直後!
旗艦サラトガの前衛を航行していた重巡ユタが、突然魚雷攻撃を受けるのだった。
フレッチャー艦隊旗艦:旗艦級量産型正規空母【サラトガ】
同 戦闘艦橋
艦隊司令長官:アーノルド・A・フレッチャー中将(19)「なに?!」
サラトガ艦長「ユタが…………」
62式誘導酸素魚雷の直撃に耐えられるわけもなく、重巡ユタは大破し炎上の後、爆沈した。
専務参謀「ま、待ち伏せだ……!」
サラトガ艦長「臨戦体制を取れ!海上警戒を厳にせよ!」
フレッチャー(ま、まさか…………X艦隊……!)
この雷撃の正体は、海峡で口に潜んでいた【伊168潜】によるものだったが、この時フレッチャーは判断に迷った。
【X艦隊】……彼らがこう呼んでいる未知の艦隊は、その全容がわからず、彼の判断は単に怯懦とはそしれない。
ここで空母を1隻でも沈められれば、戦局全体に与える影響は計り知れないため、フレッチャーには作戦を中止して【引き返す】という選択肢もあったが…………
サラトガ艦長「提督!ダーウィンを見殺しにするのですか!」
専務参謀「ここで我々ユニオン海軍が引き返したとあれば、オーストラリア国民の怨嗟の的になりかねません!下手をしたら、国際問題に発展します!!」
サラトガ艦長「いや、オーストラリアのみならず………ユニオン国民も、挙って我々に石を投げつけるでしょう!!」
幕僚たちの意見も最もであった。
大洋州同盟による豪州封鎖が災いして、オーストラリア政府が日に日に【対大洋州同盟との講和】へと傾きつつあったが、今もユニオンから多大な援助を受けているため、なんとか繋ぎ止めている状態であった。
もしここでフレッチャー艦隊が引き返したとなったら、ユニオンに対するオーストラリアからの信頼が地に落ちるだけでなく、戦後の国際社会における信用問題にまで発展しかねない。
ここに来てフレッチャーは、軍事的ではなく、政治的にも板挟みに遭っていたのだ。
サラトガ通信手「ダーウィンより入電!救援要請です!状況は切迫しているらしく、平文で交信されています!」
航空参謀「提督!少なくとも、攻撃機を飛ばしましょう!」
フレッチャー「よし、それで行こう!対潜哨戒機を増やせ!同時に敵機の襲来に備えろ!」
フレッチャーはラバウルからの空襲に警戒すると同時に、ポートモレスビーからも制空戦闘機の出動を要請した。
旗艦サラトガ以下、空母ワプス・エセックスからF4Uコルセアが発進、一路ダーウィンへと向かうが、そこに待ち受けていた木零戦隊とブレイブウィッチーズの強襲に見舞われてしまう。
フレッチャー「な、待ち伏せだと?!」
専務参謀「嵌められました……」
航空参謀「ダーウィンからの要請は、偽物でした!」
ここに来てフレッチャーは、罠にかかった事を知った。
ダーウィンからの救援要請は、ガダルカナルに潜んでいた【木霊無線部隊】によるものであった。
フレッチャーは、艦載機隊にオーストラリアの飛行場に降りるよう命じて艦隊を安全圏へと退避させる。
艦隊が進路を変更した先に待っていたのは、天下の難所【トレス海峡】であった。
トレス海峡。
オーストラリア本土とパプアニューギニア間にある幅150kmほどの海峡で、元々は陸地が存在していた場所だったが、アラフラ海と珊瑚海の海面が徐々に増していき、陸地のほとんどは海没して点在した島々と珊瑚礁の海峡が形成された。
雨が降り頻る中、艦隊がトレス海峡に入った時、フレッチャーは海中にきやな予感を感じていた。
フレッチャー「…………見張りを増やせ。」
専務参謀「このスコールの中では、航空機の襲来はないでしょう。」
フレッチャー「空中ではない。海上いや…………''海中''だ。」
専務参謀「ま、まさか!」
フレッチャー「いる…………必ずいる!」
フレッチャーの勘はまさに冴えていた。
彼らがいうX艦隊こと【紺碧艦隊】は、フレッチャー艦隊の後を追ってトレス海峡に身を潜めていたのだ!
トレス海峡 海中
紺碧第1艦隊旗艦 伊601潜
同 発令所
601聴音手「敵艦隊、トレス海峡に入りました!」
入江九市「敵は罠にかかりましたな!」
前原一征「うむ。今のところ、順調に進んでいるな。」
品川弥治郎「閣下!…………まだでありますか?魚雷室の連中が「早く撃たせろ」と……うるさくて敵いません。」
前原一征「慌てるな!我々の任務は、ただ敵を沈めることではないのだぞ?」
品川弥治郎「はぁ…………それは、わかりますが……」
前原一征「敵空母を水葬にしてやるにしても、効果的にやらねばならんのだ。でなければ、【トレス海峡封鎖】という高野総長の''秘中の秘計''は果たされんぞ?」
入江九市「先任!慌てなくても、敵はうじゃうじゃいると言ってやれ!」
品川弥治郎「わかりました!」
前原一征「よし!潜望鏡深度まで浮上!」
作戦乱は、太平洋戦域における戦線の膠着状態に風穴を開けるという目的に沿っていたが、【敵艦船を撃沈。これを以てトレス海峡を封鎖する】という真の目的が隠されていたのだ。
艦隊は潜望鏡深度まで浮上してフレッチャー艦隊を探るが、あいにくのスコールで視界不良であった。
そこで前原は、新戦法である【電探射撃】を行う事を決意。
偶然にも近づいてきたユニオンの量産型駆逐艦を音響探知魚雷を以て撃沈すると、電探マストを上げて魚雷を一斉発射!
501・502・503潜が続け様に魚雷を放ち、フレッチャー艦隊に迫る!
旗艦級量産型正規空母サラトガ
同 戦闘艦橋
トレス海峡を航行中であったフレッチャー艦隊であったが、突如として前衛の量産型戦艦メキシコが雷撃を受けた!
フレッチャー「な、なんだ?!」
戦艦メキシコは、実に3発の雷撃を受けて爆沈した。
航空参謀「メ、メキシコが…………!!」
その場にいた全員が驚愕する暇もなく、今度はサラトガの前方を航行していた量産型正規空母エセックスが4発の雷撃を受けて爆発轟沈して、間髪入れず今度は、サラトガの右舷を航行していた量産型正規空母ワプスが雷撃を受けて船体が2つに折れて轟沈したのだ!
専務参謀「……ワプスが…………!」
フレッチャー「こ、これがリーガンたちが言っていたX艦隊の雷撃なのか……!!」
戦々恐々とはまさにこのとこである。
突然の雷撃によりフレッチャー艦隊は、一瞬にして旗艦を除く主力のほとんどを、航跡を見せない魚雷攻撃によって沈められたのだから。
だが…………
サラトガ艦長「提督!擱座した艦が邪魔をして、艦隊行動が取れません!!」
フレッチャー「な、なに?!」
彼らの目の前では炎をあげて擱座した味方艦船の残骸が邪魔をして、艦隊行動が取れなくなりつつあったのだ。
そしてフレッチャーは確信した。
X艦隊の真の目的が、ここトレス海峡を封鎖して豪州北東の都市ダーウィンを孤立させることにあるという事を。
そして、フレッチャーの下に前原一征からの無線電話が入る。
フレッチャー「ユニオン第二艦隊司令官の、アーノルド・フレッチャーである!」
前原一征《我々は"X艦隊"です。これより我が艦隊は一斉魚雷攻撃を行いますので、総員退艦を命じてください。》
フレッチャー「何を言うか!我々は最後まで戦う!逃げたりはしない!」
伊601潜 発令所
前原一征「貴官の軍人精神には敬服しますが、人命は何物にも変え難い。曲げて退艦をお願いします。」
フレッチャー《断る!》
前原一征「………っ?!再考を願いませんか!」
旗艦級量産型正規空母サラトガ 戦闘艦橋
フレッチャー「その余地は無い!!」
前原一征《…分かりました。残念ながら、交渉の余地がなければ、我々も決断します。》
フレッチャー「臨むところだ!!」
前原一征《が、フレッチャー提督。我々は乗員救出のため、貴軍の駆逐艦2隻を目標から外すことにします!》
フレッチャー「な、何?!」
前原一征《good luck!》
前原との通信は切れた。
だが、その勧告に内心怒りを覚えたフレッチャーは残存艦艇に対潜攻撃を指示した!
生き残った軽巡と駆逐艦艦隊は、通信電波が発せられた地点に爆雷攻撃を集中させたが、一連の無線通話は騒音ブイを中継してのものだった。
爆雷攻撃が止んだ瞬間、紺碧艦隊からの雷撃が残存艦艇群を襲い、瞬く間に軽巡洋艦と駆逐艦3隻が沈められて、フレッチャーの手元に残ったのは、旗艦サラトガと前原の宣言通り駆逐艦2隻のみとなってしまった。
時ここに至ってユニオン艦隊司令官の中で最年少フレッチャーは、目の前の現実を受け止められずに、とうとう脳の処理能力を超えて立ち尽くしてしまうが、幕僚の声掛けでなんとか踏みとどまるも…………
専務参謀「提督、提督!!やられました…………。残ったのは、本艦と駆逐艦2隻のみです!」
その報告を聞いたフレッチャーは、怒るとこも驚くこともせず、掠れる声で事実を確認する。
フレッチャー「これは……………夢、なのか………?」
専務参謀「…………残念ながら……………………。」
フレッチャー「嘘だ………………これは悪い夢だ……………………」
幕僚の気まずそうな受け答えにフレッチャーは、目の前の現実を夢だと呟き逃避する…………
専務参謀「敵の勧告に従い、総員退艦を………………」
だが、現実か逃避し始めたフレッチャーには決断などできる余力はなく、最終的に専務参謀の判断により旗艦級量産型正規空母サラトガを自沈させて、トレス海峡における戦いは幕を閉じた。
この謎の艦隊出現のニュースは驚愕とともに豪州全土に広まったが、ユニオン政府はフレッチャー艦隊の''全滅を含めて''、その事実をひた隠しにした…………
ユニオン首都 ワシントンD.C.
ホワイトハウス 執務室
このトレス海峡における惨敗の報告に接したルーズベルトは、マーシャル参謀総長を呼び出し、語気を荒げて問いただす。
ルーズベルト「どう言うことなんだ!!参謀総長!!」
マーシャル参謀総長「申し訳ありません、大統領閣下。入手しました大洋州同盟の新聞、および傍受したラジオ放送にも、このX艦隊の事は何も知らされていませんでした。」
ルーズベルト「何故だ。何故奴らはこれほどの戦果を自国民に知らせんのだ!」
マーシャル参謀総長「敵の真意は、全く以て不可解です…………。」
これらの戦果を自国民には知らせない大洋州同盟のやり方に、ルーズベルトも彼らの真意を読めずにいた。
マーシャル参謀総長は大統領に自身を解任するよう要求した。
相手の心理をが理解できない以上、作戦の立てようが無いからだ。
マーシャルは自身の後任に元北太平洋艦隊司令官のリーガン少将を推薦したいと申し出たが、ルーズベルトはこれを断固拒否した。
何故なら、リーガンは【講和論者】であったからだ。
そして何より、ルーズベルトは迫り来る【大統領選挙】のプレッシャーものしかかっており、「大洋州同盟に負けるくらいなら、鉄血と講和した方がまだマシだ」と言い放つ。
そしてルーズベルトを……そしてユニオンに身限りをつけたマーシャル参謀総長はルーズベルトの下を去り、官職に回されたベイ大将と共に大洋州同盟へと亡命するのだった…………。
だが、それでもルーズベルトは己の信念を曲げなかった。
全ては【世界新秩序の構築の為】そして…………悪魔の計画【マンハッタン計画】という一呂の望みを賭けて……………………
EP2-4に続く・・・・
Q.第23水雷戦隊の編成が何故あの6隻なのか?
A.わかった人がいたら感想欄にて教えてクダシア!