【ネタバレ注意】
リニュアが出てきたので、やっと書きたかったものが書けそうです。
原作未登場キャラの話は基本は出さないつもりです。
一瞬の描写くらいは許して…。
——また、この光景だ。
赤く染まる空。
崩れる世界。
教主様の悲しい顔。
何度見ても、慣れない。
【もう諦めろ】
——またあなたか。 私の頭の中に住み着いた、冷たい声。
いつからいるのかも、なぜ聞こえるのかも、わからない。
でも、いつもこの声は正しい。
そして——私はいつも、この声を無視する。
【何度繰り返しても、お前は世界を救えない】
——うるさい。 今度こそ、違う。 今度こそ、教主様を守る。
私は残された魔力を振り絞り、もう一度立ち上がった。
エーリアスではほとんど見られない血がこの時は幾多も流れ、あたりを汚している。
傷ついた肩を押さえて、やつを見据えるが、視界がかすむ。身体がいうことをきかない。
でもーーー止まれない。止まるわけにはいかない。
目の前には、山のような白い鱗。エーリアスを、エデンをすべてを飲み込もうとする「それ」。
背後には、教主様。
あなたを、守らなきゃ。何があっても。
これが、私の使命だからーーー。
私の名前はリニュア。
この世界エーリアスを滅亡から守るために、5000年後の未来からやってきたタイムトラベラー。
132の次元を旅してきた。 そして、132回——世界の終わりを見てきた。
【もう、繰り返したくない】
【次こそは、救いたい】
幾多の滅亡した世界を繰り返し、ようやくたどり着いた。
**次元番号 R-54——エデン。**
人間の指導者である教主様と共にある、最も可能性のある世界。
—— その日は、いつもと変わらないはずだった。
滅亡のシナリオの一つである。世界樹の崩壊で生じる幹に開いた大穴。
教主とその使徒たちによって異次元へ遠征し、すでに滅亡した次元からその穴を防ぐ物資の簒奪計画【エーリアス・フロンティア】---。
そのエーリアス・フロンティアによって、穴の修復も問題なく進んでいたはずだった。
しかし、再び一夜にして世界樹に開いた大きな穴。
その影響は瞬く間にエーリアス全土へと広がった。
獣人の村では住民が次々と石化する謎の病。
魔女の王国では内乱に次ぐ魔物たちの襲撃。
エルフたちの街モナティアムでは世界樹の根が突然隆起し、街を破壊していた。
そして妖精王国では、突如発生した次元の裂け目から現れた、対処不可能なほど巨大な大蛇ーーー。
「リニュア、もうやめて!」
教主様の声によって現実に引き戻される。
でも、振り返らない。振り返ってしまったら、きっと貴方を守れない。
マヨさんが横で戦っている。額から血を流し、珍しく無理をした表情で、短くつぶやく。
「お前、無理してる…。」
「それはっ!お互いっ様ですよ!」
大蛇の攻撃を紙一重でなんとかかわしながら答える。
エレナ様が叫ぶ。
「戻れ、リニュア!戻れ!どうして戻らないんだ!」
「今度こそ、あなたも守ります!」
「二人ともっ、考えている暇はないですよ!」
マリーさんが爆弾を投げる。少しして、轟音。でも「それ」は止まらない。
ッ!!!
煙の中から勢いよく飛び出してきた尻尾によって、私の体は宙を舞った。
まだ昼間だというのに、赤く染まる空。何度も見た、終わりの予感。
かちあげられて、全身が痛い。閉じそうになる瞼を押し上げ、反転する。
【この世界は、もう終わりなんじゃないのかーーー?】
そんなはずはない。
地面を転がる。やつはまだ健在、早く戻らないと。
飛ばされた先で、なにかが私を支える。
支えていたミュートが無言で私の隣に立つ。
いつもの優しい目でうなずいた。
ーーーありがとう、みんな。
でもこれは私の役目だから。みんながこんなに必死になっているのに私が最初にあきらめるわけにはいかない。
【ここはもうだめだ。はやく、次の世界にいかないと】
うるさい!
心の声に蓋をする。
【目の前のやつを倒せたとしてどうする?他の場所の解決法があるとでも?】
うるさい!
私は時間を止めてやつの急所にありったけの力を注ぎ込む。
【だから、期待をするなといったのに…】
うるさい!うるさい!うるさい!
その時、蛇が大口を開けて教主様に襲い掛かる。
私は気づいたら、駆け出していた。
鋭い牙が教主様をとらえる。
その前に何とか体を滑り込ませる。
教主様の見開いた眼が遠くに流れていく。
やつの牙が間近に迫る。
速い。
もう、時間も止められない。
避けられない。
痛みはなかった。
ただ胸が燃えるように熱い。
見上げればすぐそばに貴方の顔が映る。
そっと、教主様の顔を手で触れる。
なんて悲しそうな顔をされているのだろうか。彼から流れ落ちる涙、こんな状況でも一枚絵のようにあなたは美しかった。
でも、私はあなたには笑顔が一番似合うことを知っている…。
だから、私が涙を拭わないと。
「ごめんな…さ…教主…様…」
うまくしゃべることができない。だめだ。私が今すぐ涙を止めてあげないと。
「リニュア、喋らないで……」
教主様の声が震えている。涙が、私の頬に落ちる。
「守れな…て…ご…めんなさい」
「そんなこと言わないでくれ…!リニュア、お願いだ…」
教主様はずっと「嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ」とつぶやき続けている。
私は、教主様の手をそっと握った。
まだ、温かい。ああ、私幸せだな。
ーーーああ、これで終わりなのか。
もう、世界のおわりも見なくても済む。
もう、孤独のなか一人戦わなくて済むんだーーー。
思えばなんとあっけない終わりだろう。何百回も繰り返してきて、結局このざまとは...
ごめんなさい、教主様。
ごめんなさい、エレナ様。
でも……教主様を、最後に守れて……よかった。
最後まで、あなたのおそばに……いられたから……
——でも、これで終わりではなかった。
次の瞬間、私の目の前に浮かび上がったのは——
『Dimension: R-1』 『Restarting...』
また、始まる。
終わりなき、旅が——。